前回の粗筋
二代目「ヤマトダマシイ先輩を救えた……!」
「先代、このウマ娘はどう?」
『フジキセキか……こいつは微妙だな』
「このフジキセキってウマ娘は駄目なの?」
『駄目と言われればそうではない。寧ろ俺の世界では三冠馬になっていただろうと言われていたほどの素質の持ち主だ。3戦目で朝日杯三歳S*1を勝ち、4戦目の弥生賞も勝利した後屈腱炎を起こして引退しただけに不安要素も大きい』
「三冠を獲れるなんて言われるほどの素質の持ち主……ヤマトダマシイ先輩以上じゃない!」
『フジキセキを勧誘する場合、リスクとリターンをじっくり考えてみることだ』
「それじゃこのゴールドシップは?」
『……ゴールドシップだと? それは見間違いじゃないのか?』
「うん、ちゃんとここに書かれてあるよ」
『やはりむちゃくちゃだ……この世界は』
「そのゴールドシップってどんな競走馬なの?」
『ゴールドシップはGⅠ6勝の名馬だ』
「GⅠ6勝……!? めちゃくちゃ強いじゃない!」
『この時代じゃ驚くのは無理もないか。だが同時にこいつはかなりのワガママで人間のわんぱく坊主のような奴だ。もし真面目に走っていたらGⅠを後2勝くらいしていただろうと言われるほとだ』
「じゃあそのウマ娘をスカウトしようよ!」
『スカウトする分には構わないが別人という可能性もある。俺の世界のゴールドシップはフジキセキよりもずっと後の世代に産まれている。何せゴールドシップの父親ですらフジキセキの後輩にあたるんだからな』
「そうなの?」
『ゴールドシップの特徴は芦毛で体が大きい』
「芦毛で体格が大きい。うん間違いなそうね」
『そしてイタズラ大好きで何を仕出かすかわからない』
「それも合っている」
『奴の誕生日は3月6日だがそっちは?」
「それも合っているよ」
『そこまで来ると本人そのものか……せいぜい噛まれないように気を付けろよ。ゴルシの親父、祖父、曾祖父と父子三代全て肉食獣だったからな』
「え、ちょっと待って、肉食ってどういうことなの?」
先代の意味深な言葉に二代目が尋ねるも帰ってくるのは沈黙。余程ゴールドシップの父親が気性難だったと伺える。
いざ二代目がフジキセキ達をスカウトしようとすると人だかりが出来ていてスカウトしようにもそれどころではなく、その人だかりが出来た原因を突き止める為に、ウマ娘に話しかける。
「何の騒ぎ?」
「何でも米国の二冠ウマ娘が特別講師として来日したんだって」
「特別講師……」
「ほらあそこよ」
そしてウマ娘が指差した先にいたのは青鹿毛の長髪に頭上の白いアホ毛、さらに緑のスカーフが特徴のウマ娘だった。
「ぜんじんみとぉぉぉっのおぉぉぉーっ! スゥゥゥパァァァサイィアァァァーっ!」
特別講師と思われるウマ娘がテンション高めに叫び体を傾けさせ、両腕を頭上に上げる。
「喜べ愚民ども! 米国で二冠を制したこのサンデーサイレンスがわざわざ特別講師として来日してやったぞ!」
「ぐ、愚民って……」
二代目を始めとしたウマ娘やハナ等のトレーナーはサンデーサイレンスなるウマ娘を見てドン引きし、頭を抱える。
しかしこの中で一人だけ別の意味で驚いていた。
『サンデーサイレンス!?』
「先代、どうしたの?」
小声で二代目が先代に尋ねると興奮を隠しきれないのか声が震えていた。
『サンデーサイレンス……まさかあいつが特別講師としてやってくるなんてな。どうやら俺達は大当たりを引いたかもしれねえ』
「どういうこと?」
『俺の知るサンデーサイレンスは連対率100%のGⅠ6勝馬。現時点の日本じゃシンザンしか成し遂げてない偉業を達成した馬だが、競走成績以上に種牡馬成績──つまり父親としての活躍が目立っている』
「そうなの?」
『初年度ながらにしてフジキセキを輩出しただけでなく史上二頭目の無敗の三冠馬の父でもあり、ゴールドシップの父父としても名前を残している偉大なる種牡馬だ』
「そんな凄い馬なの?」
『父親としての実績は、13年間国内獲得賞金ランキング一位を獲得。日本以外でもこれ以上の実績を成し遂げているのは二頭くらいしか思い当たらないから化け物だろう』
「競走成績で例えるとどのくらい凄いの?」
『そうだな……競走成績で例えるとニジンスキーか?』
「なっ……!?」
『とにかくだ。そいつが特別講師として日本に来ているんだ。フジキセキやゴールドシップよりもその価値は高いから専属契約しておけ』
その言葉に二代目が頷きサンデーサイレンスに近寄る。
「どうだ、そこのウマ娘ちゃん、二冠ウマ娘たるサンデーサイレンスの指導を受けてみないか?」
「え、別にいいです……」
隣にいたウマ娘が断るとすかさず二代目が挙手した。
「じゃあ私達のチームにお願いいたします!」
それを見たサンデーサイレンスが奇声を上げ、二代目に近寄る。
「よーし、それじゃ余を諸君らのチームに案内してもらおうか!」
二代目とサンデーサイレンスが立ち去るとウマ娘達が騒然としていた。
その数分後、二代目とサンデーサイレンスは寄り道しながらフジキセキ等、史実におけるサンデーサイレンス系のウマ娘達を捕まえ、ヤマトダマシイのいるチームトゥバンの所で説教を食らっていた。
「アイグリーンスキーぃっ、私はジュニア予備のウマ娘を連れてこいとは言ったが特別講師のウマ娘を連れてこいとは言わなかったはずだぞ?」
ヤマトダマシイが声を荒くし、サンデーサイレンスの耳はロバの耳となっていた。
「ヤマトダマシイ先輩、そう言わないで下さい。ジュニア予備のウマ娘はいくらでもいます。しかしこの特別講師サンデーサイレンスは優れたウマ娘を見抜くスペシャリストです」
「ほう……? そのウマ娘達が優れたウマ娘だと?」
「余の目利きに間違いはないっ!」
サンデーサイレンスが見下し過ぎて見上げるポーズを取りヤマトダマシイに指差す。
「特にこのフジキセキ!」
「ひゃっ!?」
サンデーサイレンスにいきなりセクハラされたフジキセキが条件反射で声を上げ、飛び立つ。
「余の見立てが正しければシンボリルドルフに匹敵するくらいの素質を持っている!」
「え、あ、え?」
フジキセキがまるで何を言っているのかさっぱりわからず混乱する。それもそのはず、シンボリルドルフといえばこのトレセン学園の頂点に君臨するウマ娘であり、それと素質のみなら同格と言われて動じないはずがない。
「なあ私は?」
「ゴールドシップ、お前はもう……」
「動かない~!」
「その時計~!」
何故か歌って爆笑し握手するウマ娘二人に、二代目を含めたウマ娘達が頭を抱える。
『1+1は2ではなく200だなこりゃ。10倍だぞ10倍!』
先代の言葉に二代目が同意したくないが同意してしまった。
「本当に大丈夫なのか?」
「多分大丈夫でしょう。サンデーサイレンス先生は米国で二冠獲得したウマ娘ですよ」
「いや、何と言うかウマ娘というよりも悪魔と契約してしまったような気がする」
ヤマトダマシイの指摘にぐうの音も出せない二代目。その傍らにあやとりを二人で続けるゴールドシップとサンデーサイレンス、話についていけないフジキセキ達ジュニア予備のウマ娘達。それを見かねたマティリアルが口を挟んだ。
「皆さん、これから練習場に参りましょう。実際にチームトゥバンに所属するに従って練習環境を見て判断して貰わなくてはなりませんわ」
「わかりました!」
ゴールドシップを除いた全員が返事をし、機嫌を良くしたマティリアルが練習場へと向かった。
後書きらしい後書き
ウイポ9……何故90年代スタートなんだ? もし70年スタートだったら購入したかもしれないのに。
ウイポのサンデーサイレンスことSSは毒にもなるし薬にもなります。
おそらく皆様がウイポで一番予後不良にさせた馬はSSなのではないでしょうか。
かくいう作者も幾度なくSSを予後不良にさせて他の馬の系統確立をさせています。
それはともかくこの第12Rのお話をお楽しみ頂けた、あるいはこの小説自体をお楽しみ頂けたならお気に入り登録や高評価、感想の方を宜しくお願いいたします。
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またアンケートのご協力お願いします! アンケートの結果次第で登場ウマ娘が追加されます。5/5にアンケートは終了します
尚、次回更新は西暦2019年5/2です
青き稲妻に出てくる競走馬が主人公以外で登場して欲しい?
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ぜひとも登場して欲しい
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出さなくて良い。つーかイラネ