ウマ娘プリティーダービー~青き伝説の物語~   作:ディア

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前回の粗筋
エセ関西弁のウマ娘「ワシがメジロパーマーや!」


第15R シニア最強ウマ娘との併せウマ

「さてお手並み拝見やジュニアのガキ。着いて来れるもんなら着いて来てみろや!」

メジロパーマーの挑発に二代目は思考する。あえてその挑発に乗り、メジロパーマーをねじ伏せるか、それとも着実に攻めるか。その答えは言うまでもなかった。

「上等ですよメジロのお嬢様」

名目上併せウマである以上競り合わなければ意味がない。二代目はメジロパーマーを凌いで先頭に立った。

「っ! 後で潰れても知らへんで!」

メジロパーマーが言っていることと裏腹に競り合って二代目を潰しにかかる。

 

かつて、チームギエナに所属していたカブラヤオーが皐月賞で潰したレイクスプリンターというウマ娘が無理にカブラヤオーと競り合った為に重度の故障を起こして、予後不良処分が下された。なお、予後不良となったレイクスプリンターは故障することで有名なチームギエナではなく別のチームであったことはまさしく皮肉であった。

 

メジロパーマーもカブラヤオーと同じく、二代目を潰そうとしていた。それにも関わらず二代目は更にペースを上げ、メジロパーマーの前でうろちょろと鬱陶しさを感じさせるように突き進む。

 

それを見ていた第三者ことサンデーサイレンスが時計を見る。

「ふむ……1000m58秒9か。とても3200mの途中ラップではないな。2000mのレースの途中ラップと言われた方がまだ信じられる」

殺人ペースとも呼べるほどハイペースで二人が走っているのを見て顔を顰めるサンデーサイレンス。どちらかが折り合いをつけてくれればそれに越したことはない。しかし二人はとにかく前を譲らない。

「メジロパーマーは脚質上仕方ないがアイグリーンスキーは自在のはずだ。それにも関わらず何故逃げに拘る?」

その問いに答えるものは誰もいない。残り半分を過ぎたところで更に競り合う。

「そういうことか」

サンデーサイレンスが時計を見て、そう一言だけ呟く。二代目が1600mを通過した時点でのその時計は1分35秒を刻んでいた。

 

 

 

『これがお前の作戦か?』

メジロパーマーを横に二代目に話しかける先代。このままであればスタミナ切れしてしまう……そう思った瞬間、二代目が加速した。

「そうよ先代、これが私の作戦よ」

2000、2400、2600mをそれぞれ1分58秒、2分24秒、2分36秒で通過し、およそ1F──およそ200m──あたり12秒前後で走り、メジロパーマーについていく。

「これが最高の走りよ」

二代目の言葉通り、残り200mを切った時点でメジロパーマーを突き放した。

 

 

 

「なにいっ……!?」

メジロパーマーが二代目に突き放され、驚きを隠せず表情に出てしまう。しかしメジロパーマーとて狼狽えるだけに終わるウマ娘ではなく、二代目に追い付かんと最後の力を振り絞ろうとするがそれまで無理してきたツケが回ってきたのか、二の脚が発揮しなかった。

「なんでや……なんで、そんなに速く走れるんや?」

メジロパーマーが問いかけ、頭に様々な思考が遮る。デビュー戦すらも終えてないジュニアのウマ娘がグランプリ連覇を果たした自分に勝てるなどということはあってはならない。それもスタミナ勝負なら尚更だ。あるとしたら──

『それはあいつがお前よりも強いだけの話……違うか?』

「うぇっ?」

メジロパーマーが自分が考えたことを当てられた男の声に、トンチキな声を出してしまう。

『そんな無力なお前に俺が力を貸してやる。俺はお前自身だからな』

男の声が消えるとウマ娘メジロパーマーの背中に誰かが押すように前へと爆進していく。

 

 

 

そしてメジロパーマーが二代目を捉えた。

「嘘、でしょ……!?」

『ウマ娘のメジロパーマーは化け物か?』

この事に冷静な先代すらも驚愕の声を上げ、二代目に助言してメジロパーマーを差し返した。

「まだまだやっ! ワシの力見ておけや!」

だがメジロパーマーは二の脚どころか三の脚を使って二代目を更に差し返し、3200mを走り切った。

 

 

 

「これが、シニア最強の、ウマ娘の実力、や」

息切れしながらメジロパーマーが、疲れのあまり横たわっている二代目に声をかける。

『久しぶりに負けたな』

「……」

『なんだ、声も出せないのか? まあ確実に従来の日本レコードを更新したんだから当たり前といえば当たり前か。後で計測しているサンデーサイレンスに聞いてみな』

先代は二代目の身体の疲れに影響しないのか饒舌に喋る。

「やっぱりグランプリ連覇ウマ娘の名前は伊達じゃないか」

「当然や。そもそもデビュー戦もやっておらんジュニアのお前がワシを追い詰めること事態が異常なんや」

「流石にジュニアBとシニアの差はデカイですね」

「ちょい待て、お前ジュニアBなんか!?」

メジロパーマーが目を見開き、二代目のいる方へ振り向く。

 

「ええ。最速でもデビュー戦まで後半年以上待たなきゃ行けません」

「そんだけ身長デカイから調整に時間かかっているかと完全に思っとったわ。そういえば身長いくつなんや?」

「前計測した記録ですと170cmですね。まだまだ成長していると思いますけど」

「170cmかいな……最近のジュニアBのガキは発育がええのう」

「発育がいいのは私だけですよ。同じジュニアBのナリタブライアンやヒシアマゾンは平均くらいですから」

二代目がやんわりと自分だけが例外であることをメジロパーマーに告げる。

 

 

 

「なあ、アイグリーンスキー。一つ聞いてもええか?」

「何でしょうか?」

「ゾーンって知っとるか?」

「ゾーン?」

「アスリートの用語なんやけどな、最高のパフォーマンスを発揮できる超集中状態のことや。この状態に入ると道が動く歩道になったり、ゴールが近くに見えたりするんや。アイグリーンスキー、このゾーンの状態に入っていたのか?」

「いえ、特には」

「かー~っ! ほんまかいな。100%の力でワシの120%と互角言うんか?」

「もしかして先輩、ゾーンに入ったんですか?」

「そや。変な声が聞こえてな、その声に従ったら力がみなぎってきよった」

「変な声?」

「男の声やった。何でもそいつが言うにはワシのことを自分自身や言うんやねん」

「先輩、それは別の世界の自分の声ですよ」

二代目がそう告げるとメジロパーマーが首を傾げた。

 

 

 

「そらどういう意味や?」

「メジロパーマー先輩、授業でウマ娘の御先祖様はヒラコテリウムが猿人と触れあう内に人寄りに進化したものだって習いましたよね」

「ひ、平社員?」

「ヒラコテリウム。四足歩行の動物ですよ。そのヒラコテリウムがウマ娘に進化しなかった世界というのがあります。その世界ではヒラコテリウムが四足歩行のまま走ることに特化して進化したのが競走馬で、その世界にはいないウマ娘の代わりにGⅠ競走を始めとした多数のレースで走っています」

「ふーん、それがどないしたんや?」

「先代──異世界の私が言うには競走馬が生まれ変わったのがウマ娘らしいです」

「その根拠はなんや?」

「この学園の伝承ではウマ娘が異世界の魂について語られています。もしウマ娘が異世界の競走馬の魂を受け継いでいなければそんな伝承があるはずがありません」

「方便かもしれへんで」

「メジロパーマー先輩、そう思うなら異世界の自分自身に話しかけて下さい。それでわかるはずです。魂が一度覚醒したなら尚更」

メジロパーマーが正論を突かれると、しばらく無言になりコメカミの部分を指で弄る。

 

 

 

「……なあ、異世界のワシ。こいつの言うとおりなんか?」

『そうだ。俺は異世界で競走馬をしていた』

「ほんまに通じよった!?」

『俺が魂の存在となった後、お前のことを何度も呼び掛けたが今日まで反応せずずっと見守るだけになっていた。しかしようやく俺の存在がお前に認められた』

「はぁ~、ワシ毎日声かけられていたんか。驚いたわ。せやけど何で魂の自分の声が聞こえるようなったんやろ?」

首を傾げメジロパーマーが魂のメジロパーマーに語りかけると二代目が首を突っ込む。

「極限までに追い詰められたからじゃないですか? 私もそうやって覚醒しましたし」

 

「ほほう、つまり魂の声を聞いていない余は追い詰められていないと?」

更にサンデーサイレンスが割り込みメジロパーマーが顔を顰め毒を吐く。

「割り込み特別講師、どないな追い詰められ方したんや?」

「インフルエンザで死にかけたり、学園に入学拒否されかけたり、交通事故でチームの皆が死んでチーム存続の危機に遭ったり、セクレタリアトに学園の食糧全て喰われて餓死しかけたりしたな」

最後を除いて全て史実通りであり、サンデーサイレンスは何度も死にかけ追い詰められている。

 

「それにも関わらず覚醒しないとなると、追い詰められる他に何か原因があるのかもしれませんね」

「あれ? セクレタリアトが起こしたトレセン学園食糧消失事件について興味ないの? あの事件のせいで余はおろかセクレタリアト以外のトレセン学園関係者全員が死にかけたんだぞ」

「興味ありませんよ。そんな事件」

「というかその話えらい長そうやし遠慮しておくわ」

サンデーサイレンスがウマ娘二人にばっさりと切り捨てられ肩をしょんぼりと落とす。米国のトレセン学園関係者が見たら今のサンデーサイレンスの姿を写真に納めていたであろうが、二人はそんなことを知らないので話題を変えた。

 

 

 

「そやサンデーサイレンスはん。ワシらのタイムはなんぼやった?」

「ん? ああ、聞いて驚け。メジロパーマーのタイムは3分17秒6、アイグリーンスキーのタイムは3分17秒8だ。二人とも春の天皇賞ならスゥゥ~パァァ~レコードだ!」

「ジュニアBの若造が3分17秒8!? その身長といいお前ホンマに年齢誤魔化してないやろな?」

勝ったはずのメジロパーマーが負けた二代目のタイムに驚き、二代目に問い詰める。

「だから誤魔化してませんって」

二代目に年齢詐称疑惑が生じるがそれ以外は無事にメジロパーマーとの併せウマが終わり、メジロパーマーと二代目共に大きな収穫があったトレーニングであった。




後書きらしい後書き
はい、という訳でメジロパーマーが覚醒しました。しかしメジロパーマーが出したこのタイムは史実通りで、それまでのレコードよりも速かったのも事実です。しかしそんなメジロパーマーでも三着……前二頭、ライスシャワーとメジロマックイーンがそれよりも速かっただけですのでメジロパーマーが弱かった訳ではないんです。


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尚、次回更新は西暦2019年5/5です

青き稲妻に出てくる競走馬が主人公以外で登場して欲しい?

  • ぜひとも登場して欲しい
  • 出さなくて良い。つーかイラネ

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