ウマ娘プリティーダービー~青き伝説の物語~   作:ディア

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前回の粗筋
二代目「私の青ゴスロリ服姿なんて誰得よぉぉぉっ!?」
作者「俺得でサーセンwww」


第17R 最強のライバル登場

ヤマトダマシイのレースから三日後、その人物は突如現れた。

 

「どいつもこいつも腑抜けた顔してやがる……」

 

その人物はチームカノープスのメンバーがチームギエナ時代のトレーニングよりも生ぬるいトレーニングを行っていたことに嘆き、頭を抱えていた。

 

「マティリアルはもう少しペースを速くしろ。メリーナイスはスタートが苦手なんだから足下に気を付けろ」

 

指導するようにその男は遠目で観察し呟き続ける。端から見れば不審者のそれでいつ通報されるかわかったものではない。しかし言っている内容はどれも正しくマティリアルもメリーナイスもこの声を聞いていれば頷かざるを得ないほど的確なものであった。

 

 

 

「何しているんですか……元チームギエナのトレーナーさん」

 

そんな時、青髪の大柄なウマ娘がその男──元チームギエナのトレーナーに声をかける。

 

「……アイグリーンスキーか。久しぶりだな」

「トレセン関係者でない貴方が何故ここにいる?」

「そう堅いことを言うなよ。俺は今日仕事として来ているんだ」

「仕事?」

「そうだ。トレセン学園のウマ娘トレーナーを首にされた俺は海外に行き、そこのウマ娘トレーナーとして就職出来た。これが今の役職だ」

 

言葉とは裏腹に丁寧に名刺を渡す元トレーナー。そこには【欧州ウマ娘トレーニングセンターウマ娘トレーナーリーダー】という役職が書かれていた。

 

「こんなのがトレーナーリーダーなんてどうかしている」

「こんなのとは失礼だな。俺が正当に評価された結果だ。その結果を出した俺がここに来た理由、それは留学生募集の案内と視察だ」

 

「留学生募集と視察?」

「そうだ。欧州の連中はダービーウマ娘シリウスシンボリが凱旋門賞で惨敗しているのを見たせいか日本のウマ娘に見向きもしなかった。だがカツラギエースやシンボリルドルフがJCを勝っているのを見て再評価し始め、日本のウマ娘を留学生として迎えることにした。しかし連中は日本のウマ娘のことをよく知らない。そこで俺に白羽の矢が立ったと言うわけだ」

 

「それでここから良い留学生候補は見つかったの?」

「いやいないな。どいつもこいつも情けないウマ娘ばかりだ。今日俺が見た限りじゃシニアはマルゼンスキー、ジュニア以下はナリタブライアンくらいしかいない。他はビッグレースどころか重賞を勝つかも怪しいな」

「それは私を含めて、という意味でも?」

「お前は故障するからな。強さ云々以前に除外しているだけだ」

何故このトレーナーリーダーといい、ハナといい二代目の評価が低いのだろうか。そんなことを先代が考えているとトレーナーリーダーが口を開く。

 

「そして視察の方だが、俺はとあるウマ娘を預かっていてそいつと共にトレセン学園のレベルを測りに来たんだ。だがさっきも言った通りここのレベルは低い。連れてきたのが間違いだった」

「あ?」

「トレーナーリーダーから離れて」

二代目が半ギレしながら問い詰めると小柄かつ無表情な栗毛のウマ娘が現れ、二代目とトレーナーリーダーの間に割り込み、二代目を離す。

「噂をすればなんとやらというやつか。こいつが俺が今最も育成に力を入れているウマ娘、ラムタラだ」

「ラムタラ。以後よろしく」

「こいつはダービーを制する前のメリーナイスがダービーを勝つよりも、素質を期待されていなかったが俺の育成により頭角を表し、欧州ウマ娘の次代のエースになった」

「次代のエースってことはジュニアCクラスのウマ娘? それにしてはやたら小柄な気がしますが」

「私はまだジュニアBクラス」

「……ってことは私と一緒?」

「そういうことだ。アイグリーンスキー、お前は確かに素質のみならGⅠ競走の前線で戦えるだけの素質がある。だからこそ警告しておく。KGⅥ&QES、凱旋門賞、JCに挑むのは止めておけ。お前達が勝利しないのは目に見えている。何故ならウチのラムタラが全部取ってしまうからな」

「そういうこと」

それまで無表情だったラムタラの口元が僅かに笑みを浮かべ、どや顔していた。

 

「ふーん……口先だけならなんとでも言えますよ?」

「アイグリーンスキー、お前ならそういうだろうと思っていた。ラムタラはこれからチームアルビレオのメジロパーマーと併せウマをする予定だ。昔のよしみだ。なっ、一緒に行こうぜ」

「一緒にって言われても私はアルビレオの関係者じゃないし、何よりも今の貴方とは無関係です」

二代目が冷たくあしらい、そう告げるとトレーナーリーダーは意外な行動をした。

「そうかそうか。自分を負かしたウマ娘が同期に負ける姿見たくないもんな。無理を言って悪かった」

口調とは裏腹に笑みを浮かべた状態で頭を下げるトレーナーリーダー。あからさまな挑発だがこれに二代目は乗った。

「……良いでしょう。そこまで言うならそのラムタラが無様に負ける姿、見てみましょう」

「私は負けない」

ラムタラと二代目の間に火花が飛び散るがそれでもお構い無しにトレーナーリーダーが馴れ馴れしく二人の肩を組む。

「そんないがみ合ってないで同じウマ娘同士仲良くしろ……な?」

「……ふんっ!」

「べーっ!」

子供のようなやり取りにトレーナーリーダーは本当にこのウマ娘達が世界を引っ張るほどの素質の持ち主なのかと疑問に思ってしまう。

 

 

 

そんないがみ合いが何度も続き、メジロパーマーのいるチームアルビレオのウマ娘達がトレーニングを行っていた。

 

「おっ、アイグリーンスキーやないか」

メジロパーマーがトレーニングを中断し、二代目に駆け寄り喋り始めた。

「お久しぶりですメジロパーマー先輩。調子の方はどうですか?」

「そらもうバッチリや。あの併せウマから身体がスムーズに動くようなってな。これならタマモクロスもオグリキャップもなんも怖くあらへん」

 

「それは何よりです。ところでこのトレーナーから聞きましたが今日併せウマの予定らしいですね。よろしければご見学させてもよろしいですか?」

「このトレーナー……ってお前の元トレーナーやないかい! 何で学園を追放された奴がおるんや!?」

「彼は今欧州地方のトレセン学園でトレーナーリーダーの役職に就任しています」

「そやったんか。で、そのちみっこいのがワシの相手かいな?」

「そういうことだメジロパーマー。こいつ、ラムタラは俺が見てきた中で最高の素質を持つウマ娘だ。俺が見てきたカブラヤオー、テンポイントよりも強くなると確信している。何せ併せウマをしようにも同期では相手にならない。こいつとまともに併せウマが出来るウマ娘はドバイ遠征にいってしまっている。日本トップクラスのウマ娘なら相手になるんじゃねえかと思ってな」

「ほう……わかっとるやないか。ワシは確かに暫定とは言えトップや。ついこないだ阪神大賞典も勝ったしの」

「そんなトップなメジロパーマーに尋ねる。本当に併せウマをするのか? それで負けたらお前の名声は急降下するぞ?」

「今日の併せウマは大阪杯や天皇賞秋と同じ距離──芝2000mや。勝とうが負けようが天皇賞春と宝塚記念の評価は変わらへん」

「それじゃラムタラ、準備しろ」

「はい」

メジロパーマーとラムタラが準備し、二代目がスタート合図をすることになった。

 

 

 

「スタート!」

コースに銃声が鳴り響き、メジロパーマーとラムタラが競り合うように走る。それはかつて二代目がやった方法と全く同じだった。

「そういうとこもあいつと同じやな」

「……」

「だんまりかいな、つまらんやっちゃ」

ラムタラが反応しないのを見たメジロパーマーが無言になりレースを進める。200mを過ぎ、ラムタラが半バ身リードしそのままメジロパーマーを突き放していく。

 

「……」

ラムタラがメジロパーマーを視野にも入れずただひたすら寡黙にメジロパーマーとの差を広げ突き放す。

それを黙っているほどメジロパーマーも愚かではない。少しずつページを上げラムタラに詰め寄り対策する。

しかし対策していたはずが400mを通過した時には1バ身、800mを通過した時には2バ身と400m単位で1バ身ずつ突き放されてしまう。

『おい、もっとペースを上げろ!』

魂の状態のメジロパーマー(競走馬)が残り600mを切ってスパートをかけるように声を荒げ、メジロパーマーはそれに従ってスパートをかける。しかしまだその差は縮まらないどころかさらに突き放されていく。

 

「どういうことやねん……」

二代目の時は普通に競り合えた。しかし今回は違う。いくらペースを上げてもラムタラに追い付けない。

海外のウマ娘はこんなに強いのか。JCで世界を見てきたつもりがそれはあくまでも井の中の蛙でしかなかったのか? 本当の世界トップクラスのウマ娘はジュニアBの時点で覚醒した自分を打ち負かせるのか。

そのような思考がメジロパーマーの中で巡り、一つの結論に達する。

「理不尽、や」

そう一言呟き、メジロパーマーの世界が白く染まってしまった。

 

 

 

メジロパーマーの心が折れた瞬間、それはラムタラがメジロパーマーに5バ身差でゴールした瞬間だった。

「流石だラムタラ。あいつに400m毎に1バ身差をつけ最後に5バ身差をつけて勝つ。お前のレーススタイルでないのに見事だ」

「……」

トレーナーリーダーが褒め、ラムタラが無表情ながらも頷き反応を示す。それは勝者ならではの光景だった。

 

「冗談やない……ワシら二人でもこのザマかいな」

その一方で心の折れたメジロパーマーが汗を滝のように流し、一言呟き倒れた。

「メジロパーマー先輩!」

二代目が横たわるメジロパーマーに声をかけ、不安げに見つめる。

 

「おう、アイグリーンスキー……お前も難儀な世代に生まれたな」

「身体の方は大丈夫で──って凄い汗!」

二代目がメジロパーマーのジャージを触ると汗にまみれるあまり、ジャージがずぶ濡れになっていた。

 

「距離が短かったお陰でなんとか天皇賞春には出走出来そうやけど、しばらく休ませてくれ」

「メジロパーマー先輩、休憩所まで運びますから大人しくしてて下さいね」

二代目がメジロパーマーをお姫様抱っこで担ぎ上げ、チームアルビレオの休憩所に移動する。

「すまんの」

担がれたメジロパーマーが顔を紅潮させ、目に涙が溢れ出す。その姿はまさしくラムタラ達勝者とは真逆の敗北者の姿そのものだった。

 

「こんなものなの? 日本のウマ娘って」

ラムタラが二代目の背中に向かってそう問いかけるが二代目は無反応。メジロパーマーをシニア最強のウマ娘と思っている二代目が反論出来る余地はなく無言でただ立ち去ることしか出来なかった為である。

「……」

二代目の目に涙こそ溢れなかったが、その背中は震え、チームカノープスに戻った頃には目が座り、誰も寄せ付けないトレーニング魔神となっていた。




後書きらしい後書き
はい、という訳で今回はラムタラの登場&元チームギエナのトレーナーの再登場回です。このトレーナーは本来二代目を刺してデビューを遅らせる人物でしたがボツにしました。

なお史実のラムタラは本来95世代でフジキセキ達と同じ世代になっています。また青き稲妻の方でもラムタラはアイグリーンスキー(94世代)の一つ下の世代と史実に沿添っています。
しかし物語の都合上このようになってしまいました。仕方ないやん……このくらいのことをしないと凱旋門賞がダイジェストになりますので。



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尚、次回更新は西暦2019年6/3です

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