ウマ娘プリティーダービー~青き伝説の物語~   作:ディア

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ふと思い付いたネタ
SS「これがスペシャルな役! 私の本命は大三元~っ!」
SW「私のテーマソングを勝手に替え歌にして使わないで下さい!」

前回の粗筋
二代目、貴女疲れているのよ


第19R 暴走

大阪杯当日、阪神競馬場では大歓声が響いていた。

【オグリキャップ、オグリキャップ先頭だ、オグリキャップ、オグリ一着! 笠松からやって来たアイドルウマ娘、オグリキャップが大阪杯を制しました!】

それはオグリキャップがGⅠ競走の大阪杯を制したことに対する歓声だった。オグリキャップは元々地方のウマ娘であり、そこから成り上がってきた所謂主人公のような経歴を持つウマ娘で人気を集めていた。更に言うと観客から投げられた人参をウサギのように食べる姿が女子受けし、おぐりん等とファンからは呼ばれるようになっていた。

 

 

 

しかしオグリキャップが勝利した影で涙を流すものもいる。チームカノープスに所属しているウマ娘達を始めとした敗北者だ。

「オグリキャップ……!」

「私の末脚が炸裂すれば……!」

その中でも悔し涙を特に流していたメリーナイスとマティリアル。この大阪杯は先日行われた阪神大賞典や今後行われるGⅠ競走に比べればメンバーのレベルが低くチームカノープスの二人がマークするべき相手がオグリキャップのみという有り様だ。故にメリーナイスは有馬記念でやらかした大失態の名誉挽回のチャンスを、マティリアルは悲願のGⅠ競走を逃しただけに余計にショックも大きかった。

 

「負けちゃったか、先輩達」

『あれは仕方ない。オグリキャップはあいつの父親だからな』

「あいつ?」

『大阪杯に該当するレース産経大阪杯を12連覇果たした競走馬の父親がオグリキャップだ』

「ぶっ!? それって最低でもGⅠ12勝している計算になるじゃん!」

『そいつが現役の間の産経大阪杯はGⅠ競走じゃなかった。もしあの時代に産経大阪杯がGⅠ競走になっていたら前人未到の大記録になっていただろうな。俺ですらJC5連覇だからな』

「さりげなく先代もとんでもない大記録を立てていること言わないでよ……」

『とにかくそんな産経大阪杯を得意とした競走馬の父親がオグリキャップだ。適性が無いわけがない』

「先代、オグリキャップの戦績ってわかる?」

『有馬記念2勝、マイルCS、安田記念、他重賞7勝、全成績32戦22勝とオグリキャップが活躍した当時では超一流の名馬だが、競走馬のオグリキャップは産経大阪杯に出走していない上にタマモクロスよりも若い』

「……え?」

『オグリキャップが有馬記念を制したのはウマ娘でいうジュニアCの時とその二年後だ。昨年ジュニアCクラスだったオグリキャップが有馬記念に出走することすら叶わなかったことを考えると一番ウマ娘と競走馬とのギャップがあるんじゃないのか?』

「確かに。でも覚醒もせずそれを阻止したメジロパーマー先輩って、本当に何者なんだろう?」

『確かにな。だが有馬記念で勝てなかった分、バタフライ効果が現れて大阪杯を制することが出来たって訳だ』

「バタフライ効果ね」

 

 

 

『まあ何にせよ今年のシニアウマ娘の実力者なのは違いないし、来年もその実力は衰えず二代目と中距離路線で戦うことになる。注意することだな』

「注意か。ラムタラに比べたら怖くも何ともないよ」

『……ラムタラ信者だなお前は。俺の影響もあるしそろそろあいつの戦績について話そうか?』

「ぜひとも」

『英ダービー、KGⅥ&QES、凱旋門賞を無敗で制し、有馬記念当日にエキシビションマッチレースで負けたことを除けば4戦4勝の無敗のまま引退し超一流の名馬だ』

「その言い回しだと最後に負けたということでいいのね? それを打ち破った馬は誰なの?」

『俺だ』

「えっ? オレダ?」

先代の答えに現実逃避してしまい、オレダという競走馬がラムタラに勝ってしまったのだと二代目が思考する。

 

 

 

『そんな馬がいるか……俺ことアイグリーンスキーがラムタラに勝ったんだよ。俺はシンボリルドルフ同様に生涯三度しか敗北していない。そのうちの一敗は日本ダービー。そして残りの二つがラムタラが制したKGⅥ&QESと凱旋門賞なんだ』

「それでリベンジする為にエキシビションマッチレースを開催したの?」

『正確には俺の馬主が開催したんだがな。そのエキシビションマッチレースで俺はどうにかラムタラに勝つことが出来たが、レース展開だのなんだのそう言ったものは覚えていない』

「ダメじゃん!」

『ただ一つだけ覚えているのは直線での出来事……競り合わず大外からあいつを差し切ったということだ。あいつの弱点は競り合いに強いが故に大外から強襲されると競り合えず力を発揮出来ない。それを狙ったことだけは覚えている』

「……ラムタラから逃げるかラムタラを差すかのどっちかわかっただけでも十分だよ先代」

『十分なものか。この世界のラムタラを差すにはヤマトダマシイ以上の豪脚が必要だ。あのトレーナーが優秀なだけあってこの世界のラムタラは俺の世界のラムタラよりも強くなっている。むしろ何故あのトレーナーに師事したマティリアルがGⅠ競走を勝てないのかが謎なくらいだ』

「じゃあ特訓しないと!」

『そう急くな。がむしゃらにやってもただ故障するだけだ。競走馬として6年間調教を受けてきた俺の経験はお前の自主トレに役に立つ……それは何度も言っているよな?』

「わかっているよ。それで何をすればいいの?」

『これからお前にやってもらうことは単純だ』

先代がそう告げ、トレーニング内容を伝えると二代目はそれに頷き、その場を後にした。

 

 

 

翌日、チームカノープスにて二人のウマ娘が対峙していた。

「しかしこうして貴女と一緒に公開トレーニングのように併せウマをする日が来るなんて思いもしませんでしたわ」

「これも重賞勝ちしたウマ娘の定めだと思うけど?」

「それもそうですわねメリーナイス」

チームカノープスのウマ娘達がメリーナイスとマティリアルとの併せウマという名前のマッチレースに盛り上がり、歓声を沸き上がらせる。

 

「さあさあ、メリーナイスとマティリアルの一騎討ちだ。どちらが勝つか賭けてみないか!?」

「焼きそばー、焼きそばいかがすっか!」

サンデーサイレンスがバ券を勝手に発行し胴元として、ゴールドシップが屋台で焼きそばを販売し、それぞれ金を稼いでいた。

 

「とんだ見せ物ですわね」

「見せ物で結構。どうせここにいるのは大半がチームカノープスのウマ娘達だから」

「メリーナイス、貴女はダービーを勝ったウマ娘です。しかしそれはあくまでもフロックでしかありませんわ。何せ私がマークされる中、貴女とサニースワローだけが悠々と先行していたのだからあんな状況なら誰でも勝てます。しかし今回は違います。貴女に格の違いというものを教えて上げましょう」

「負け犬の遠吠えにしか聞こえないなー」

「ほざきなさい。ヤマトダマシイ、そろそろ準備を」

「わかりました」

ヤマトダマシイが旗を上にし、メリーとマティリアルに合図を送ると三人が走行体勢に入る。

「よーい、スタート!」

ヤマトダマシイがそう告げた瞬間、メリーナイスとマティリアルが飛び出していった。

 

「ヒャッハー! 私も混ぜろーっ!」

突如、二代目が乱入しマティリアルから3バ身ほど遅れスタート。マッチレースはエキシビションレースとなってしまった

「おい、誰かあいつを止めろー!」

それを見ていたトレーナーのフジとマツが止めにかかる。

「まあ待ちたまえ。何か事情があるんだろう。ここを通りたければ余の屍を越えていくことだな!」

しかしバ券を販売していたサンデーサイレンスがそれを阻止し、二人を失神させ口角を上げると口を開いた。

「さあ、アイグリーンスキーの単勝バ券を今から30秒まで販売だ! さあ買った買った!」

「焼きそば売り切れです! あざーした!」

サンデーサイレンスが二代目の単勝バ券を売り、ゴールドシップは焼きそば売り切れを宣言する。まさしくカオスだった。

 

しかしそんな状況とは裏腹に二代目がその出遅れをものともせずマティリアルから1バ身まで詰め寄った。

「あら、アイグリーンスキー。乱入なんていい度胸しているじゃない。もっともメリーナイスと私のマッチレースになるからそこで大人しく見ていなさい」

マティリアルが後ろに着いていく二代目に話しかけ、挑発するも二代目が鼻で笑っていた。

「さてどうでしょうか? 油断していると私の背中を見ながらゴールすることになりますよ」

「それならこれに着いてこれるかしら?」

マティリアルがペースを上げるとそれに合わせ二代目がマティリアルの真後ろで徹底的にマークし、磁石のようにくっついて走行する。

「無理しなくてもいいんですよ? マティリアル先輩追い込みウマ娘なんですから?」

「私のレーススタイルを理解した上で私の後ろに着いているってことは私に対する挑戦状でいいのかしら? アイグリーンスキー?」

「そういうことです。なんなら6バ身さらに離れましょうか? 先輩達昨日走ったばかりでしょうからね、ハンデにそのくらい上げましょう」

「やってもいいですけどそれで後悔しても知りませんわよ?」

 

マティリアルの動きに合わせて徐々に二代目が離れていく。そしてマティリアルに10バ身離れた状態で直線へと入ろうとした瞬間、二代目が大外に膨れ騒然とした。二代目に賭けていたものは既にバ券を投げ頭を抱え、逆にメリーナイスとマティリアルのバ券を持っていたものはホクホク顔でいつゴールするか待機していた。

【さあここでメリーナイス、メリーナイス先頭、追い詰めるマティリアル、マティリアル、マティリアルが先頭に立った!】

マティリアルが悲願の勝利なるか、と言わんばかりにメリーナイスを差し切り、メリーナイスを突き放していく。

「っ!」

しかしマティリアルは違和感を感じていた。メリーナイスを差し切ったもののメリーナイスはマティリアルと互角なだけありマティリアルから突き放されることはない。それは正しくすぐ後ろから聞こえる蹄鉄の音も聞こえる。しかし問題点はその音が一人だけで発せられる音ではなかったということだ。

「嘘っ!」

メリーナイスが短くそう声を出したのを聞いて恐る恐る後ろを振り向こうとするもその必要がなくなった。

【な、なんと外からアイグリーンスキーだ!】

「嘘でしょぅ!」

あんな大差をつけられ勝てるはずがない。それは追い込みウマ娘であるマティリアルが一番良く知っていることだ。マティリアルの上がり3Fは34秒を叩き出しており、このタイムで10バ身以上離れた場所から追い付くには上がり3F33秒を切らなければならない。しかしそんなウマ娘は欧州のダンシングブレーヴ、米国のシルキーサリヴァンくらいしか不可能と言っていい。

 

それだけに信じられなかった。ジュニアBクラスのウマ娘がそんなウマ娘達と並ぶほどの末脚を持っていたことに。プライドの高いマティリアルが起こした行動はただ一つ、二代目を差し返す。ただそれだけだ。

【アイグリーンスキー、更に1バ身ほどリード、ゴールイン! これほどまでに強いのかアイグリーンスキー!】

「な……!」

マティリアルが「無理ー」とも言う間もなく二代目が更に突き放しゴールイン。マティリアルはそのことに放心した状態でゴールし、帰るまでの間の記憶をなくしていた。

 

 

 

少し過去に遡り大外に膨れた二代目は前を走るメリーナイスとマティリアルをガン見していた。

「先代、本当にこれでいいの?」

急ドリフトしながら前を走るマティリアルを捉えようする二代目が先代に話しかける。

『ああ。確かに内側は最短ルートだ。しかし最短ルート=ベストルートじゃねえ。競走馬やウマ娘の中でも走りやすいルートってもんがある。そこを意識すれば上がり3F32秒も夢じゃない。逆に今のマティリアル達みたいにベストルートを通らないと豪脚は発動しねえ。本来の末脚だけに頼ることになる。メリーナイスとマティリアルには悪いがこれで消えてもらうぜ』

その瞬間、二代目が一気に加速し10バ身あった差が9バ身、8バ身、7バ身と徐々に縮まっていき、メリーナイスを、そしてマティリアルを捉え突き放してゴールインした。

 

 

 

「……すげえ、すげえもん見ちまった」

ゴールドシップが新たに販売したお好み焼きを焦がしてしまうほどに二代目を凝視する。

「ゴルシ焦げているぞ」

「あ、やべえっ! 廃棄廃棄!」

焦げたお好み焼きを廃棄するのをジト目で見るフジキセキ。

「……確かにあの末脚は凄いな。止めようとした私を殴りたくなる」

フジキセキも途中乱入してきた二代目を止めようとしたがサンデーサイレンスにアルゼンチンバックブリーカーを極めた状態で側転されてしまい、二代目を止めることが出来なかった。

「むっふっふっ、ボロ儲けボロ儲け! 余の一人勝ちぢゃーっ!」

サンデーサイレンスが高笑いし、メリーナイスとマティリアルに賭けていたウマ娘達を見下す。

「ふざけるな!」

「金返せ!」

史実におけるサンデーサイレンス産駒のウマ娘達が暴徒化。史実においてサンデーサイレンスの血を継いでいるだけあってウマ娘達も気性も荒く、サンデーサイレンスを追いかける。

「誰がなんと言おうとこれは余が儲けた金だ! 絶対に渡さーんっ」

しかしサンデーサイレンスは史実においてその親であり、関係者からは「サンデーサイレンスよりか子供の方がマシ」と言われるほどの気性が荒かった為に、ウマ娘のサンデーサイレンスがそうなることを見越すのを予想しており、逃げ足も早かった。

 

 

 

後日、二代目とサンデーサイレンスがこっぴどくシンボリルドルフとたづなに叱られることになったのは言うまでもない。




後書きらしい後書き
今回の公開トレーニングの内容は2015年の皐月賞がモデルですね。二代目=ドゥラメンテ、マティリアル=リアルスティール、メリーナイス=キタサンブラックと言ったところでしょう。


それはともかくこの第19Rのお話をお楽しみ頂けた、あるいはこの小説自体をお楽しみ頂けたならお気に入り登録や高評価、感想の方を宜しくお願いいたします。
また感想は感想に、誤字報告は誤字に、その他聞きたいことがあればメッセージボックスにお願いいたします。

尚、次回更新は一週間後です

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