シンボリルドルフ、倒れる
「ひ、酷い目にあった……」
「そうか?」
シンボリルドルフとたづなに叱られ、気力を削られた二代目に対してサンデーサイレンスは何事もなかったかのようにピンピンしている。
「サンデーサイレンス先生はシンボリルドルフ会長に駄洒落を言うだけ言って逃げたからいいですけど、シンボリルドルフ会長を病院送りにさせて、全部責任を押し付けられた気持ちがわかりますか? その結果がたづなさんの着せ替え人形の刑ですよ。本来ならただ叱られるのをサンデーサイレンス先生が余計なことをしたせいでそうなったんですから責任取ってくださいよ」
「それも一理ある」
サンデーサイレンスが携帯電話を取り出し、あるウマ娘に連絡を取った。
「Hello,My name is Sunday Silence. Is there Northern Dancer?」
流暢な英語でサンデーサイレンスが電話をすること数分後、電話を切る。
「これで良し」
「一体何をしたんですか?」
「余が米国のウマ娘だというのは知っているよな? その米国にいた時の先輩に頼んで、その先輩の知り合いのウマ娘をお前の一日専属講師として来日するように頼んだ。これで貸し借りなしだ」
「……そのウマ娘はどんな方なんですか?」
「さあな、あの先輩のコネクションは幅広すぎて誰が来るかわからん。ただ一つだけ言っておくとその先輩自身やノーザンテーストが来ることはない」
「ますます気になりますよ、それ」
二代目がそう呟くも、サンデーサイレンスは何処吹く風で、うんとも寸とも言わなかった。
「アイグリーンスキー、ここにいたのか」
サンデーサイレンスと話をしていると後ろからナリタブライアンが声をかけ、そちらに振り向くとナリタブライアンの他に癖毛が特徴のウマ娘がそこにいた。
「ナリタブライアンと……どちら様?」
「ジュニアCのナリタタイシン先輩だ」
「どうもナリタタイシンよ」
ナリタタイシンなるウマ娘が挨拶をし、二代目がそれに合わせ頭を下げる。
「はじめましてナリタタイシン先輩。ジュニアCということはヤマトダマシイ先輩のことを聞きたいんですか?」
「……」
「それともう一つ、タイシン先輩は跳ね返りウマ娘だから口に出せないだけだが、併せウマの協力をしてもらいたいんだ」
「ちょっとブライアン!」
「すみませんが併せウマは会長達に控えるように言われまして」
「えっ?」
こう声を漏らしたのはナリタブライアンの方であり、二代目を凝視する。
「むっふっふっ、アイグリーンスキーの言うことは真実だ。何せ余も同じように叱られたのだからな!」
「自慢出来ることじゃないでしょう!」
「別に、構わんぞ」
二代目が突っ込みを入れるのと同時に第三者の声が響く。
「シンボリルドルフ会長、いつ退院してきたんですか?」
「救急車で散々笑ったら病状が収まった為に即解放されたんだ」
「北海道はでっか──」
「サンデーサイレンス先生、シンボリルドルフ会長に何か恨みでもあるんですか?」
二代目が駄洒落を言うサンデーサイレンスの口をふさぎ、シンボリルドルフの病院送りを回避させる。
「それよりも話を戻す。私は迷惑をかけるな、とは言ったが併せウマを禁止していないぞ」
「そりゃそうですけど」
「そう言えばアイグリーンスキー、私からの罰を与えていなかったな。ナリタタイシンと併せウマをしろ」
「ちょっと、シンボリルドルフ会長!」
ナリタタイシンが抗議の声を上げるとシンボリルドルフが手で制し、口を開く。
「ナリタタイシン、お前が努力していることも、お前が出来るだけ一人であろうとすることも知っている。しかし一人でやっていては永遠に勝てない。私も相棒のシリウスシンボリがいたからこそ無敗の三冠ウマ娘となった。孤高を貫くのはレースだけで十分だ」
「……わかりました。それじゃ明後日、体育館に来てよね」
「わかりました」
「では会長、失礼します」
「あ、待って下さいタイシン先輩。それじゃアイグリーンスキー、また授業で会おう」
その場を去るナリタタイシンをナリタブライアンが追いかける。
「シンボリルドルフ、一つ聞いて良いか?」
「なんだ?」
一応講師の立場であるサンデーサイレンスにタメ口で答えるシンボリルドルフ。それだけサンデーサイレンスに恨みがあったのだろう。
「シンボリやナリタってのは何かの一族なのか?」
「ナリタはともかくシンボリと名の付くウマ娘はその一族に含まれる場合が多い」
「だったらマティリアルはシンボリ家の出身でありながらもシンボリと名付けられることはなかったのはシンボリ家を追放されたからなのか?」
「マティリアルは期待されているからこそあのようにシンボリの名前を敢えて外して名付けられたんだ。シンボリ家を追放した訳じゃない。ちゃんとシンボリ家に訪れれば歓迎する」
「そうか。ならその言葉マティリアルに伝えておこう」
二代目がビワハヤヒデから貸してもらったICレコーダーをサンデーサイレンスが懐から取り出した。
「あっ、いつの間に!?」
「それじゃアバヨー」
二代目が瞬きする間もなく、サンデーサイレンスがその場から消え去りこの場に残された。
後書きらしい後書き
今回は短めですみません。
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尚、次回更新は一週間後です
次にウマ娘として出てくる青き稲妻の物語の競走馬はどれがいい?
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ボルトチェンジ
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シンキングアルザオ
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アブソルート
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