ウマ娘プリティーダービー~青き伝説の物語~   作:ディア

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前回の粗筋
シンボリルドルフ「お前ら併せウマな」
ナリタタイシン「マジすか?」
二代目「マジですね」


第22R タイシンカイシン

ナリタタイシンとの併せウマをするために二代目は体育館に来ていた。

「しかし何故体育館なんだろう」

 

体育館は校内集会や学校の行事に使われることが多いが本来の使用用途はバスケやバレーボールなど室内スポーツが出来るようにする為である。その為ある程度激しい運動は出来るが、体育館は広さに限度があり陸上競技などの競走に対する適性が屋外に比べると不適であり、併せウマなどもっての他。不可能と言っていいだろう。

 

何故ナリタタイシンがそんな体育館を併せウマをする場所に指名したのか、二代目が疑問に思うのはごく当たり前のことであった。

 

「んー? あんた確かヤマトダマシイと付き添いの……アイグリーンスキーだっけ? なにやってんの?」

二代目に話しかけてきたのは黒鹿毛のウマ娘でそのウマ娘はヤマトダマシイと同じクラスのウマ娘だった。

「どうもウイニングチケット先輩。ナリタタイシン先輩と併せウマの約束をしていたんですが肝心のナリタタイシン先輩が来なくて」

「あー、タイシンの体育館に来いって奴は信頼しない方がいいよ。そういう時は百割隠れているから」

「百割じゃなく十割ですよ。百割だと1000%になりますから」

「いいんだよ。細かいことは!」

「ウイニングチケット先輩、ビワハヤヒデ先輩から一日一回以上お小言貰っているでしょう……」

「……」

ウイニングチケットが目をそらし、無言になる。それを肯定を見なした二代目が頭を掻き、別の話題に逸らす。

 

「それでウイニングチケット先輩、ナリタタイシン先輩の場所に心当たりはありますか?」

「ん、そうだね。体育館に呼び出したってことは保健室か自室に戻っていると思うよ。アリ……アリの巣つぐりだっけ? それの為にやっていると思うから」

それを言うならアリバイだろう。

「もう私はツッコミませんよ。他にナリタタイシン先輩がいそうな場所はありますか?」

「基本一人で人気のない場所にいるよ。例えば屋上とかトイレの個室とか、倉庫の裏手とか」

「ありがとうございます。ウイニングチケット先輩」

「いいよ。それよりタイシン探すなら私も探すよ。やることないしね」

「ウイニングチケット先輩、何から何までありがとう──」

「礼ならタイシンを見つけてからにしようよ。ね」

その言葉に二代目の心が締め付けられ、心臓の音が鳴り響いた。

「ウイニングチケット先輩……」

「それじゃ探そうか」

ウイニングチケットの後を着いていき、二代目はその背中を見つめる。その背中を見るだけでも胸が高鳴り、そしてついに両腕を上げ襲いかかろうとしていた。

 

 

 

『やめろ二代目。そいつの前世は牡馬で襲いかかったら同性愛以外の何者でもないぞ。同性愛はサンデーサイレンスだけで十分だ』

先代が身体の主導権を奪い取り普通に歩く。二代目が何か言い返そうとしても口すら開けない。

『まあこいつの娘が俺が愛した女だからわからんでもないがな……』

付け加えるように先代が呟く。

 

『ちなみにサンデーサイレンスのことを同性愛と言っているのは何も根拠がない訳じゃねえ。奴は気性が荒く他の種牡馬達に自分がリーダーだと威嚇していたんだが、とある芦毛の種牡馬に通じなかったものだから何度も絡んでいる内に惚れてしまった……とはいっても同性愛だけでなく異性にも愛はあったからな。そうでなきゃサンデーサイレンスに種付けされた牝馬が俺にのろけ話をしないからな』

「……」

先代の悲哀に二代目は気まずくなり、身体の主導権を戻したにも関わらずウイニングチケットの背中から目をそらしてしまう。

『前にウイニングチケットがいる以上話せないのはわかる。だから暇潰しに俺の知るウイニングチケットの話をするぞ。ウイニングチケットはセイザ兄貴と同じ世代の弥生賞を勝った競走馬だ。父は後のリーディングサイアーのトニービン、母父にマルゼンスキー、そして母親がスターロッチの孫、言ってみればサクラスターオーの親戚筋にあたる』

「!」

サクラスターオーの名前を聞いた途端、身体が反応し、声を漏らす。

 

 

 

「ん? どうかした?」

「いえ、ウイニングチケット先輩ってサクラスターオー先輩とどこか似ているなって」

「スターオー? ああ、確かにスターオーとは親戚だよ。曾祖母ちゃんが一緒だから再従兄弟の関係にあたるのかな?」

「再従兄弟でしたか」

「うん、時々見舞いにも行っているけど怪我している所以外無事で安心したよ。有馬記念前に曾祖母ちゃんが死んで、有馬記念でスターオーまで死んだら悲しすぎるからねっ!」

ウイニングチケットが突然木を蹴り飛ばすと木が揺れ、葉が擦れる音、枝が折れる音が響き渡る。

「きゃぁぁぁぁっ!?」

そして最後にウマ娘の悲鳴が響き渡り、そのウマ娘はウイニングチケットの腕に落ちる。

「タイシン見ーつけた」

「チケット、何故わかった……?」

身体を両腕で抱えられる──所謂お姫様抱っこされた状態でナリタタイシンがウイニングチケットにそう尋ねた。

「音だよ。それより酷いじゃんタイシン、後輩を騙すなんてさ」

「……騙される方が悪い」

「タイシン先輩、どちらがいいですか?」

「何がだ?」

「この場で謝ってトレーニング場で併せウマをするのと、シンボリルドルフ会長に叱られる方ですよ」

「何故会長が出てくる」

「ナリタタイシン先輩はただ嘘をついたに過ぎないと思うかもしれませんがこちらには証拠があるんですよ。現在そのデータはサンデーサイレンス先生が所持していますが、このことがサンデーサイレンス先生やシンボリルドルフ会長にバレたらナリタタイシン先輩がどうなるか想像もつきませんよ」

「う……じゃあトレーニング場に行こう。チケット、逃げないから降ろして」

「はいさ」

ウイニングチケットが観念したナリタタイシンを降ろすと逃げないように監視した。

「だから逃げないって……」

「それじゃ行きましょうか」

その後、ナリタタイシンと二代目は併せウマをし、有意義な時間を過ごした。

 

 

 

「……っ! 後少し」

ナリタタイシンが手を伸ばし、少しでも二代目の前に出ようと足掻くが更に突き放された。

「肩透かしっ!」

二代目がそう決め台詞を放ったままゴール。余りにも楽勝だった。それと言うのも二代目に土をつけてきたグリーングラス、メジロパーマーの双方はどちらもベテランとも言えるレース経験のあるウマ娘であり、ナリタブライアンなどデビュー戦前のジュニアBのウマ娘どころか、皐月賞前のジュニアCのウマ娘相手に勝って当たり前の相手であり、後一歩まで追い詰めた二代目やメジロパーマーに圧勝したラムタラが異常なのである。

しかしナリタタイシンはGⅠ競走であるホープフルSを勝利していてジュニアCトップクラスの実力の持ち主であるが常識範囲内のウマ娘でしかなく、メリーナイスなどシニアトップクラスのウマ娘とは大きな壁が存在し現状勝てる相手ではなく大差をつけられて終わりだろう。

 

つまり図にすると

 

ラムタラ>メジロパーマー≧二代目>メリーナイス>(超えられない壁)>ナリタタイシン>ナリタブライアン

 

となる。

 

閑話休題

 

そんな訳でナリタタイシンに圧倒した二代目は息を少しだけ乱していたが、違和感を感じていた。しかし過呼吸までしているナリタタイシンほど疲れている訳でもない。自分の脚を確認しても無理をしているどころか寧ろ少しだけ解すだけで脚の疲れが治ってしまう。

 

 

そんな二代目は余裕を持って大の字で倒れているナリタタイシンを見下し、口を開いた。

「タイシン先輩、こんな調子じゃ今度の皐月賞、連対どころか掲示板すらも厳しいかもしれませんね」

それは二代目なりに、併せウマをさせたシンボリルドルフの意図を汲んでの発言だった。

「……っ!!」

ナリタタイシンはGⅠ競走の一つホープフルSに勝利したものの、それからの活躍は2戦2敗と勝利から遠ざかっていた。その原因はホープフルSに勝ったという驕りが産み出したものだ。しかも敗北こそしていたがその2戦は連対──つまり二着であり、惨敗している訳ではない為にトレーナーも口を挟むことが出来ず、併せウマをさせることが出来なかった。

「今まで一人でやってきたツケが今回の併せウマに響いた。それだけは覚えて下さい」

しかし今回明らかに格下であるジュニアBのウマ娘に圧勝されたことで、四の五の言っていられる状況ではない。それを自覚したのかナリタタイシンが無言で頷いた。

「では失礼します。ウイニングチケット先輩、ありがとうございました」

無言ながらもナリタタイシンが頷くのを見ると二代目がウイニングチケットに頭を下げその場から去っていった。




後書きらしい後書き
ちなみに先代が菊花賞云々抜かしていた馬は架空馬で青き稲妻の方で先代の産駒の一頭が菊花賞を勝ったことは記載されていても名前は出ていません。所謂裏設定という奴です。


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尚、次回更新は一週間後です

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