ウマ娘プリティーダービー~青き伝説の物語~   作:ディア

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ふと思いついたネタ
テイオー×ルドルフ
ルドルフ×テイオー
……攻めが男の娘という、これ以上書いたらアカン奴ですね。

前回の粗筋
メジロパーマー「天皇賞春はワシの勝ちや!」


第26R 勝って兜の緒を絞めよ by大和魂

 NHKマイルC

 

 ジュニアCの春のマイル最強ウマ娘を決めるレースと言っても過言ではないこのレースにただ一人、桁違いに気合いの入ったウマ娘がいた。

 

「……」

 

 黙っているからこそなのか、黙っているのに関わらずなのか、いずれにせよこのウマ娘の圧倒的なオーラに威圧されたウマ娘が後を絶えず萎縮してしまう。ここに出てくるウマ娘のほとんどが初めてのGⅠ競走であることを考慮してもこの事態は異常だった。

 

「すげえ。あのウマ娘は誰なんだ?」

 

「えーと、ヤマトダマシイだってよ」

 

「戦績は3戦3勝のパーフェクトウマ娘。断トツの一番人気だ」

 

「俺達も買うか?」

 

「ああ。レースに絶対はないが今回に限って絶対はある。よし、全財産つぎ込むぞ!」

 

「俺もだ!」

 

「いや俺は記念バ券に買う!」

 

 次々とヤマトダマシイの単勝バ券を買う者が絶えず、最終的には単勝オッズが1.1倍ととんでもないことになっていた。これを支持率に変えると80%前後で、ヤマトダマシイがどれだけ人気出したか理解出来るだろう。

 

 

 

「さて漸く奴の全力が見れるな」

 

 サンデーサイレンスが待ちわびたと言わんばかりに腕を組む。

 

「えっ、ヤマトダマシイって全力を出していなかったのですか?」

 

 右隣にいたマティリアルが思わずそう声を漏らし、サンデーサイレンスに尋ねると首を縦に頷く。

 

「そうだ。奴は本気は出したことはあっても全力を出したことはない。奴に自覚はないがな。出したとしても直線のみだ。あいつはレース全体で走ったことがない」

 

「ですね。日本ダービーは直線のみで勝てるほど甘くない。それはマティリアル先輩が一番知っていることでしょう?」

 

「私の場合距離適性の問題もあるから……」

 

「どちらにせよダービーポジションを確保するには直線で後方に控えるなんてことは出来ない。今回ヤマトダマシイには課題を出した」

 

「課題?」

 

「シンボリルドルフ得意の先行押切で勝て。それだけだ」

 

 

 

【さあ残り200mを切って先頭はヤマトダマシイだ。ヤマトダマシイ他のウマ娘をここで突き放す】

 

「信じられませんわ。あの追い込み専門のウマ娘があんな戦法も取れるなんて」

 

「ただ本人が追い込みが好きなだけで元々その素質はある。お前のように勝つ為の追い込みとは違う」

 

「そのようですわね……」

 

「マティリアル、ヤマトダマシイから聞いたとは思うがお前は中距離ですらスタミナが足りない。しかし余の見立てではこのままではマイル路線に移っても勝てんよ」

 

「それはどういう意味ですか?」

 

「スプリングSでのことを思い出せ。あのレースでお前が追い込みで勝てたのは何故だ?」

 

「それは私の末──いえ、違いますわね。あの時、私の豪脚が炸裂したのではなく前のウマ娘達が自滅したから?」

 

「よくぞ己の都合の悪い部分と向き合えた……それだけでも十分価値はある。マティリアル。お前がスプリングSを勝てたのは偶然だ。メリーナイスを含め前のウマ娘達が自滅したからに過ぎない。実際お前の上がり3Fのタイムもそんなに優れたものではない」

 

「……」

 

「マティリアル。お前に課題を出す。今度の安田記念で自分のレーススタイルを確立しろ」

 

「承知致しましたわ」

 

「期待しているぞ」

 

【ヤマトダマシイ圧勝、ヤマトダマシイ一着! 二着は微妙です!】

 

 二人がそんな会話をしている間に、ヤマトダマシイが他のウマ娘を寄せ付けず先頭でゴール。まさしく王者そのものだった。

 

 

 

 ウイニングライブが終わり、二代目がヤマトダマシイの元に掛けていく

 

「流石ヤマトダマシイ先輩。NHKマイルCをただ制するだけでなく、サンデーサイレンス先生の無茶な課題をついでにこなしてしまうなんて」

 

「ああ課題をこなすことにはこなせた。しかし新たな課題が出来た」

 

「それは一体どんなことですか?」

 

「ダービーの距離でのレーススタイルの確立だ。私はシンボリルドルフではない故にどこからでもレースが出来る訳でない。今回はマイル戦ということもあり、スピードでごり押しする事が出来たがダービーはこれよりも800m長く、スピードや瞬発力でごり押し出来るほど甘くはない」

 

「ですね……」

 

「距離の延長だけはどうしようもないが、誤魔化すことは出来る。ミスターシービー前会長もマイラーでありながら皐月賞、ダービー、菊花賞を勝っているのだからな」

 

「どうやって誤魔化す気ですか?」

 

「それは……これから考える」

 

 二代目が崩れ、ヤマトダマシイが背を向けてインタビューへと向かった。

 

 

 

「ヤマトダマシイ、本当にやるのか?」

 

 NHKマイルCが終わった直後、ヤマトダマシイはチームカノープスのトレーナーの一人、フジと話し合っていた。

 

「もちろんだフジさん。効率良くやるトレーニングも悪くない。しかしそれだけじゃ絶対に勝てない」

 

「そうか……だが絶対に無理をして怪我だけはするな」

 

「はい」

 

「今、メジロパーマーとアイグリーンスキーを呼ぶ。ただしメジロパーマーについては呼べるかわからないからそこのところは理解しておいてくれ」

 

「ありがとうございます」

 

「今回だけだぞ。お前の体は故障しやすいんだからな」

 

 

 

 数分後、そこにはメジロパーマーと二代目がヤマトダマシイの元に現れた。

 

「メジロパーマー先輩、態々来てくださりありがとうございます。グリーンも協力ありがとう」

 

「いやええよ。ワシはそこのデカブツのおかげで天皇賞春を勝てたし、ワシらのチームで日本ダービーに出られる奴はおらんしな」

 

「先輩の日本ダービー制覇に協力出来るなら併走くらいなんでもありませんよ」

 

「そう言ってくれると助かる……」

 

「それで今回の併走は何コースでなんぼや?」

 

「芝2500mの左回りです。メジロパーマー先輩の得意の距離でしょう?」

 

「何でその距離なんや?」

 

「今度行われる東京優駿──ダービーの距離は2400m。本来であれば2500mなどではなく2400mにするべきなのでしょうが、それでは本番の時にゴールする前に気持ちがゴールするようになります。だから余分にすることでその気持ちを絶ちます」

 

「ほなら、ワシの他にアイグリーンスキーを併走させるのはなんでや?」

 

「今回のダービーの有力ウマ娘は私の他にビワハヤヒデ、ウイニングチケット、ナリタタイシンがいます。このうち一番厄介なのはビワハヤヒデです」

 

「ビワハヤヒデ……ああ、いかにも堅物のあのウマ娘か」

 

「私や他二名のように一瞬の切れを持ち味とせず、メジロパーマー先輩のように長く使える脚を持っているウマ娘です」

 

「つまりワシは仮想ビワハヤヒデって訳かいな?」

 

「いいや、ビワハヤヒデの上位互換ですね。私達はまだジュニアCのウマ娘です。シニアの最強ウマ娘たるメジロパーマー先輩に敵うとしたらメジロパーマー先輩が自滅するくらいしか思い付きません」

 

「なるほどな……まあそこにおるジュニアBのデカブツウマ娘は覚醒したワシをあと一歩まで追い詰めたけどな」

 

「グリーン、本当か?」

 

「ええ。それでも負けましたよ」

 

「しかし、アイグリーンスキー。あれからまた更にでかくなったんちゃうんか?」

 

「あ、わかりますか? つい最近身長測ったら172cmになっていたんですよ」

 

「ほんまにデカいな!?」

 

「ビワハヤヒデ──身長171cm──よりも大きいのか……」

 

「おかげでストライドも大きくなりましたし、身長様々ですよ」

 

「体がデカいってのはそれだけで得やな……でもデカきゃ勝てる思うたら大間違いや」

 

「メジロパーマー先輩、ここで前の併せウマのリベンジしてあげますよ」

 

「リベンジするのは構わないが、グリーン。お前を呼んだ理由は豪脚を見込んで呼んだんだから最初からメジロパーマー先輩に並びかけるな」

 

「わかっていますよ。先輩の特訓を妨害するほどバカじゃありませんし、そんなことをしなくても勝ち目はあります」

 

「よし。フジさん、準備の方をよろしく頼む!」

 

「その前にお前達、準備運動はしなくていいのか?」

 

「もうしてきましたよ」

 

「同じく。そういうヤマトダマシイは?」

 

「来るまでの間にやり終えましたよ」

 

「流石、一流のウマ娘達だ……それでは位置につけ!」

 

 ウマ娘達が位置につき、構える。

 

「スタート!」

 

 全員が飛び出し、スタートダッシュを決めた。

 

 

 

「さてそれじゃシニア最強のウマ娘の実力見せてやるわ」

 

 メジロパーマーが二番手のヤマトダマシイを一バ身、二バ身と突き放し、最終的には九バ身まで突き放していく。

 

「流石メジロパーマー先輩だ。あそこまで豪快に逃げるとは……よし!」

 

 それを見たヤマトダマシイは逃げるメジロパーマーと後ろについてくる二代目を注意しながらペースを守る。そのペースは日本ダービーの1Fあたりの平均ラップを0.1秒遅くしたペースだった。

 

 

 

『久しぶりに追い込みか……前にメリーナイスとマティリアルの併走に乱入したのは舐めプだから懐かしく思える』

 

「そうだね」

 

『二代目、追い込みしか出来ないこの状況でお前はどうするんだ? 前に引っ付いているヤマトダマシイはともかく逃げるメジロパーマーが厄介だぞ』

 

「もちろん、こうするんだよ」

 

『……! そう来たか』

 

 二代目がヤマトダマシイの隣に並び、少しずつ差を開かせるとヤマトダマシイが僅かにペースを速める。それを見た二代目がヤマトダマシイと並ばせる。

 

『嫌らしい戦法だ。相手がシンボリルドルフでもこれに引っかかるぞ』

 

 ヤマトダマシイが二代目の動きを見てペースを落とす。目の前にメジロパーマーがいたなら、二代目の策略に引っかかることはなかったがメジロパーマーは遥か前方におり、距離感が狂わされていた。

 

 そんなこんなでメジロパーマーが2000mを2分0秒で走破し、残り500mを切った。

 

「流石にきついな、こら」

 

『お前に残された道はこれしかない。俺がそうだった様にな』

 

「せやな……泣き言言う暇はないわ」

 

 会話のドッチボールをするほどにメジロパーマーがバテてしまうがまたリードは残されていた。

 

 

 

 その頃、メジロパーマーの後方ではヤマトダマシイと二代目のデットヒートが繰り広げられていた。

 

「まだまだ!」

 

 二代目が鼓舞させ、ヤマトダマシイを引き離さんばかりに豪脚を爆発させる。

 

「一気にぶっちぎる!」

 

 ヤマトダマシイもそれに負けじと二代目に並ぶ。

 

「うぉぉぉぉっ!」

 

 二人の叫び声が木霊し、2400m時点でメジロパーマーと並ぶ。

 

「なんやと!?」

 

 メジロパーマーの体内時計が間違っていなければ2400mを通過したタイムは2分24秒から2分25秒の間であり、このタイムは日本ダービーのレコードを上回るタイムだ。いくら坂が緩やかとはいえジュニアの二人が出すタイムではない。ましてやそのうち一人はレースデビューすらしていないジュニアBのウマ娘が出したものである。

 

「負ける訳にはいかんなぁっ!」

 

 メジロパーマーが更に脚を伸ばし、ヤマトダマシイと二代目のデットヒートに加わり、粘り込みを果たす。

 

「うぉぉぉぉっ!」

 

「差し殺してやるっ!」

 

「シニアのウマ娘を舐めるなぁっ、ガキども!」

 

 2500mを通過し、本来であればその時点で終わるはずが、三名はそのままレースを続行。では後何m走るべきなのか。ウマ娘三名の答えは「心が折れるまで何mでも走り続ける」という脳筋そのものの発想だった。

 

 

 

 スタート地点から2600mを通過し、未だに三人が並んだまま走り続ける。

 

「そこまでだ!」

 

 目の前にはトレーナーの一人であるハルが腕を広げた状態で三人を受け止めるべく構えていた。

 

 ウマ娘達はここでアイコンタクトを取る。このハルというトレーナーは非常に力が強くウマ娘の突進どころかダンプカーを止めた正真正銘の人外で、ウマ娘三名ごときの突進を止めようと思えば止められる。

 

 ではどうするか。メジロパーマーは障害の経験を活かして飛び越え、ヤマトダマシイはハルの右脇をすり抜け、二代目は大外に膨らんでそれを回避した。

 

「くっ、しまった!」

 

 慌てて振り向いて三人を追いかけようとするがハルの足では追い付けない。確かに戦闘力のみでいえばウマ娘にも勝てるほどの持ち主であるが、足に関しては常人であり追い付ける要素が全くなかった。

 

「お任せください」

 

 その声が聞こえた瞬間、緑色の影がハルの横を通り過ぎ、二代目を組伏せた。

 

「なっ……」

 

「次」

 

 二代目を組伏せた後、その影はヤマトダマシイ、メジロパーマーと順に組伏せて暴走を止めた。

 

「これで宜しいでしょうか。トレーナーの皆さん」

 

「ありがとうございます。たづなさん」

 

 トレーナー二人が緑色の影改め、たづなに頭を下げ礼を告げると、たづなが目を細め三人を正座させる。

 

 

 

 その後、三人はたづなに滅茶苦茶に叱られ気力を使い果たした。

 

「ではフジさん、ハルさん。私から言いたいことは言い終えましたので失礼しますね」

 

「たづなさん、ありがとうございました」

 

 たづなに頭を下げる二人を見てウマ娘三名はたづなに畏怖する。

 

「一体たづなさんって何者なんだろう……」

 

「噂によればかつて名のあるウマ娘だと聞く」

 

「たづなさんって人間じゃないんですか?」

 

「たづなさんの耳を一度も見たことがないから人間かウマ娘かよくわからん」

 

「そう言えばいつも帽子被っている上に人間の耳の場所に髪がありますよね……」

 

「ええこと思い付いたわ。今度の夏休みの自由研究に、たづなはんの正体を研究──」

 

「私が何ですって?」

 

 いつの間にか元に戻ってきたたづながメジロパーマーのウマ耳を掴み、お仕置きをするとメジロパーマーが悲鳴を上げその場に倒れる。

 

「人体実験は以ての他ですよ、三人とも」

 

 笑顔で威圧し、たづなが今度こそその場を去る。

 

「どうします? ヤマトダマシイ先輩」

 

「止めよう。これ以上先は触らぬ神に祟りなし、マルゼンスキー先輩の年齢に触れる真似は控えよう」

 

 この場にマルゼンスキーがいたら憤怒しヤマトダマシイを〆ていただろうがあいにくこの場にいるのは二代目と気絶しているメジロパーマーだけだ。

 

「そうしましょうか。サンデーサイレンス先生に興味を持たれないうちに帰りましょう」

 

「そうだな。グリーン、メジロパーマー先輩を運ぶから手伝ってくれ」

 

「わかりました」

 

 メジロパーマーを担ぎ、二代目とヤマトダマシイが後始末をして美浦寮に帰っていった。

 

 尚、三名が2500mを通過した時のタイムが2分30秒1と有馬記念のレコードを遥かに上回るタイムであったのは後日知ることになる。




後書きらしい後書き
二代目が更に縦に成長しました。うーん、これはデカイ。

それはともかくこの第26Rのお話をお楽しみ頂けた、あるいはこの小説自体をお楽しみ頂けたならお気に入り登録や高評価、感想の方を宜しくお願いいたします。
また感想は感想に、誤字報告は誤字に、その他聞きたいことがあればメッセージボックスにお願いいたします。

尚、次回更新は一週間後です

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