ウマ娘プリティーダービー~青き伝説の物語~   作:ディア

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ふと思いついたネタ
テイエムオペラオー「ちょっ、止めて、擽るのは止めたまえ! 僕は偉大なる歌劇王テイエムオペラオーなんだぞ!」
オペラオーが質の悪い観光客に石を投げられるのが元ネタですが、石を投げるのを読者の皆さんが真似しないように考慮した結果こうなった。

前回の粗筋
ヤマトダマシイ「てめえら殺す気でかかってこいやあ゛っ!」


第28R 最も幸運なウマ娘決定戦

 日本ダービー、正式名称東京優駿。

 

 ウマ娘の生涯でたった一度しか行われないジュニアCクラス限定の日本最高峰のレース。今回の日本ダービーは四強対決であった。

 

 

 

 まずホープフルSと皐月賞を勝ったナリタタイシン。四強の中でも屈指の豪脚を持つ追い込みのスペシャリストであり唯一無二春の二冠のチャンスがあるウマ娘でもある。

 

 次に連対率100%の実績を持つビワハヤヒデ。前走の皐月賞でこそナリタタイシンに敗れたものの弥生賞ウマ娘ウイニングチケットに先着し、その実力を見せた。

 

 そして日本ダービーの本命、ウイニングチケット。弥生賞を勝って皐月賞でも本命視されたもの中山競バ場を得意としなかったのか4着に終わるが東京競バ場を得意としその走りは期待出来る。

 

 最後に突如現れたルーキー、ヤマトダマシイ。昨年度のジュニアCの三冠の全てのタイトルをかっさらっていった──皐月賞と菊花賞はサクラスターオー、日本ダービーはメリーナイスが制覇──チームギエナ改め、チームカノープスの所属メンバーであり、トレーナー曰く昨年度のダービーウマ娘メリーナイスを大きく上回る実力を持っているとのこと。

 

 以上、この四名が日本ダービーの有力候補として知られていた。

 

 

 

 無論、その四名以外にも有力候補として名を上げようとしていたが、トライアルレースで僅差で勝利したり、ノーマークだの勝利だったりと有力候補には程遠かった。

 

【さあ日本ダービー、ジュニアC最強の栄光を掴み取るのは一体誰なのか。いよいよスタート!】

 

「やはり厄介なのはハヤヒデか……」

 

 ビワハヤヒデが先行し、ヤマトダマシイが眉を顰める。有力ウマ娘の四名のうち前に出るレースを得意とするのはビワハヤヒデのみでヤマトダマシイを含めた三名はそうではなく、レース終盤で力を発揮するウマ娘だ。

 

 それ故にウイニングチケットやナリタタイシンはビワハヤヒデをマークせず互いにマークする事態に陥っている。

 

 この状態が続けばナリタタイシン、ウイニングチケットともに牽制しあって何も出来ずに終わる。

 

 そう予測したヤマトダマシイはビワハヤヒデの真後ろについてウイニングチケット達を差し置いて先行する。

 

「さあ、どうする?」

 

 ヤマトダマシイが微笑み、二代目にやられたようにビワハヤヒデに並びかけ三番手に躍り出る。

 

 

 

「どうしたハヤヒデ、頭でっかちなお前らしくもない」

 

「くっ……! どうなっている!?」

 

 ビワハヤヒデは混乱していた。

 

 何故追い込みウマ娘たるヤマトダマシイが自分よりも先行しているのか。いくら前走で先行で押し切ってもそれは1600mの話であり2400mのダービーですることではない。

 

 ではヤマトダマシイの体内時計がズレているのか? いやヤマトダマシイほどのウマ娘がそんなイージーミスをするのか? ミスをしていないとするなら逃げウマ娘のペースがいつの間にかスローペースになっていた可能性がある。

 

 ビワハヤヒデがそう思考し、自分の前を行く逃げウマ娘の1Fのタイムを測るが予想外のことが起こる。

 

「上手いことだ」

 

 ビワハヤヒデに聞こえるように呟きヤマトダマシイがビワハヤヒデの後ろに下がる。

 

「……」

 

 ビワハヤヒデがそれを見て先行する逃げウマ娘のタイムを測り終えると11秒9と普通よりも少し早いくらいのペースだった。

 

 

 

 それからビワハヤヒデが逃げウマ娘のタイムを3F測り終えるとやはりタイムは1Fあたり12秒前後のペースを保っておりヤマトダマシイはその逃げウマ娘をマークしている。

 

「そうか、そう言うことか」

 

 ビワハヤヒデが気づき、納得していると隣にはヤマトダマシイが更に並んだ。

 

「もうその手には食わないぞ、ヤマトダマシイ君」

 

 ビワハヤヒデが自分の体内時計を使って、ペースを守る。

 

「やっぱり頭でっかちだなハヤヒデは」

 

「頭でっかち云々は後で取り消して貰うぞ、ヤマトダマシイ君」

 

 笑みを浮かべるヤマトダマシイを警戒し、ビワハヤヒデは自分のペースを守る。

 

 

 

 これでペースを守った──なんて思っているんだろうな。だがそれこそが罠なんだ。

 

 

 

 ヤマトダマシイは自分の隣に並んでいるビワハヤヒデを見ながら心の中で呟き、1000mを通過して自身とビワハヤヒデのペースを測る。二人のタイムはそれぞれ12.1秒/Fと12.0秒/Fとそのタイム差は0.1秒/Fもズレがある。

 

 しかしその後11.9秒/Fに戻しており、2Fの平均は12.0秒/Fのペースを保っていた。そのはずがビワハヤヒデがヤマトダマシイのペースに釣られ徐々に11.9秒/Fに近づいていた。

 

 そう、ヤマトダマシイはビワハヤヒデの体内時計を狂わせていた。それが出来たのは日本ダービーという最高峰の舞台での緊張による心拍数の上昇によるものが大きい。心拍数が上昇によって脳に流れる血液の流れが速くなり、時間を体内時計で計測しようにもズレが生まれ、ヤマトダマシイはそれを利用した。

 

 その事に気づかないビワハヤヒデはマイペースを守っていると錯覚し、そのままヤマトダマシイを突き放して逃げウマ娘を捉えに行く。

 

「この日本ダービー、私の勝ちだ」

 

 そして最後の直線まで100mを切ったビワハヤヒデが先頭に立ちそのまま逃げ切りを狙う。

 

 

 

「えげつなさすぎる」

 

 ヤマトダマシイのビワハヤヒデ潰しにそう顔を顰め、観客席で呟く二代目。

 

『あれによく気づいたな。二代目』

 

「そりゃ私がやったことだし、気づくよ」

 

『まあ世の中には犯罪皇帝なんて名付けられたウマ娘もいるからあんなのは序の口だ。審議判定になりもしない以上、立派な作戦だ』

 

「それはそうなんだけどね。あそこまで改良するなんて想像出来る?」

 

『……普通は出来ねえな。あんな博打は打たない。ましてやあいつ一人だけが有力ウマ娘ならともかく、他にも有力ウマ娘がいるとなるとそいつらに潰させた方が効率的だ』

 

「ごもっともね」

 

 この会話に気づくものは誰もいない。何故なら直線で有力候補だったビワハヤヒデが失速し、ビワハヤヒデのファンやビワハヤヒデのバ券を買った者達が絶叫したからだ。

 

 

 

【ビワハヤヒデは苦しい、ビワハヤヒデ苦しい。先頭に立ったのはヤマトダマシイ、大外からウイニングチケット、内をついてナリタタイシンがやってくる!】

 

「残るはお前達をまとめて千切るだけだ!」

 

 ヤマトダマシイが加速し一バ身、二バ身と突き放しそうとするが、差は開かなかった。

 

「ハヤヒデを潰すのに体力を使い過ぎたか。だが勝てない訳じゃない。怖いのはウイニングチケットだけだ」

 

 ナリタタイシンの豪脚は皐月賞で発揮した程ではなくヤマトダマシイより少し速い程度であり、リードしている差から計算しても逃げ切ることが出来る。

 

 しかしウイニングチケットは違う。ヤマトダマシイとの差はナリタタイシンに比べてそれほどある訳ではない上にヤマトダマシイよりも速く、抜かすのは時間の問題であった。

 

「後ろよりも前だ。そこにはあいつらがいる」

 

 ヤマトダマシイはメジロパーマーと二代目の幻影を生み出し、それに追い付かんと二の脚を炸裂する。ウイニングチケットを除いたウマ娘達の心が折れた。

 

「無理ーっ!」

 

【まだヤマトダマシイ先頭、ヤマトダマシイ、ウイニングチケットが並んだっ!】

 

 

 

 その頃、ビワハヤヒデは驚愕のあまり顔を歪め、前にいるウマ娘達を追い抜こうとするが届かない。

 

「な、何故だ!? 計算では少なくとも後200mは持つはず……っ!」

 

 ヤマトダマシイ、ウイニングチケット、ナリタタイシンの有力候補だけでなくその他のウマ娘に抜かれバ群の中に消えていくビワハヤヒデが悲鳴を上げる。

 

「してやられたっ!」

 

 ビワハヤヒデの脳裏に思い浮かんだのは現在先頭にいるヤマトダマシイ。やたら動き回っていたヤマトダマシイこそ、ビワハヤヒデを嵌めたウマ娘であることに結び付きビワハヤヒデが悪辣を放つ。

 

「だが、私はここで負ける訳にはいかない、行かないんだぁぁっ!」

 

 その瞬間、ビワハヤヒデの脳裏にスイッチの入った音が響き覚醒した。

 

『お前に足りない物は瞬発力だったが、俺の声が聞こえる……って聞いてないな』

 

 ビワハヤヒデの頭の中で声が響くがそれ無視して前にいるナリタタイシンをあっさりと交わし、先頭のウマ娘二人を捉えに行く。

 

『おい、聞いているか? ビワハヤヒデ。こいつらを差すのはむ──』

 

「うるさいっ!」

 

 ビワハヤヒデが感情を剥き出しにして、ウイニングチケットとヤマトダマシイに半馬身まで迫る。

 

「限界を超えたら理屈どうこうの話じゃないんだ! 私はデータを捨てる!」

 

 そしてヤマトダマシイ、ウイニングチケットに並びゴールインした。

 

 

 

【ビワハヤヒデ、ビワハヤヒデが凄い脚だ。ビワハヤヒデ、ヤマトダマシイ、ウイニングチケット三人並んだままゴールイン!】

 

「あ、三人?」

 

 アナウンスの声にようやくビワハヤヒデの存在に気がついたヤマトダマシイが目を丸くする。

 

「なんでここにいる……ハヤヒデ」

 

「私が怒涛の追い上げをしたからだ。それ以外に理由が必要ならば3000文字以内で説明するぞ」

 

「いやそれだけで十分だ」

 

 3000文字で説明される間に着順が確定されるだろう。今聞くべきことはそんなことではなく、自身の着順だ。

 

「この中の三人のうち誰かが、ダービーの勝者だ」

 

 ヤマトダマシイは時計を見ながら審議判定を待つ。

 

 そして十数分後、ウイニングチケットが一着、ビワハヤヒデとヤマトダマシイが二着同着とアナウンスがあり、それを見たウイニングチケットが感動のあまり涙を流していた。

 

「健康骨折。アタシの勝ちだーっ! アタシを応援してくれた皆ありがとーっ!!」

 

「それをいうなら乾坤一擲だ」

 

「私達はこんなバカに負けたのか……」

 

 こうして今年の日本ダービーはビワハヤヒデが突っ込み、ヤマトダマシイが頭を抱える結末となった。




後書きらしい後書き
概ね史実通りでしたが史実との相違点は
・ウイニングチケットとビワハヤヒデの着差はハナ差。
・ヤマトダマシイが日本ダービーに出走
・ナリタタイシン以下着順がズレる
といった点ですかね。


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尚、次回更新は一週間後です

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