ウマ娘プリティーダービー~青き伝説の物語~   作:ディア

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前回の粗筋

アマゾン「アタシは蚊帳の外か!?」
ナリブ&主人公「絶対に勝ってやる!」


第3R 試合と勝負の結果

「一着 アイグリーンスキー。二着 ナリタブライアン。三着 ヒシアマゾン。四着 エアダブリン。五着 スターマン」

以降、次々とゴールした順に名前を呼ばれ、先代が口を挟む。

 

『ふぅ~、勝ったか。ヒシアマゾンに邪魔された時はヒヤッとしたが流石俺と同じ名前を持つ二代目だ』

「先代、最後はありがとう。あれのお陰で勝ったよ」

先代の遠回しな自画自賛を無視して二代目が先代に頭を下げた。

『最後のは俺のお陰とは言いがたい。あれはチームギエナの根性論がお前の身に染みていたから出来たことだ。もしチームギエナにいなかったら負けていただろう。皮肉なことにな』

「そう言えば競り合うウマ娘は皆潰せがギエナの方針だったね……」

 

二代目がうんざりした顔でチームギエナの時にいた頃を思い出す。今思い出すだけでも超が二つ三つ付くほどスパルタでそこにいたウマ娘達はよくチームを離脱しなかったなと思えるほとであった。その前に辞めさせられているのが事実だが。

 

 

 

ウマ娘達がゴールしてからしばらくしハナがウマ娘達を集め口を開いた。

「さて今回の模擬レースの結果を元に、内定者を発表する」

ウマ娘達が上位二名である二代目とナリタブライアンを見つめるが予想外の名前がハナから放たれた。

「ヒシアマゾン」

「え、アタシ!?」

ハナの口から出てきたウマ娘の名前は三着になったヒシアマゾンだった。ヒシアマゾン自身もこれには予想外でハナに視線で問い合わせるとハナがそれに答えた。

 

「ヒシアマゾンは荒削りかつ豪脚のみで三着に粘ったことを考慮し、成長力があると見込んで内定者にした」

「じゃあ、アイグリーンスキーかナリタブライアンかのどちらかが落ちたってことになるけどそれは一体?」

「アイグリーンスキーだ。内定者はナリタブライアンだ」

 

はっきりとハナが告げると二代目が涙目になり、それを先代があやす。その様子はまさしく親子のようだったが、先代の姿どころか声すらも誰にも聞こえないのでただ二代目がぶつぶついいながら泣いているだけだった。

 

「……何故ですか?」

「ナリタブライアン、それを聞くのか?」

「はい」

「良いだろう。ナリタブライアン、お前が負けた理由は前までチームに入っていたかいなかったかの違いだ。もしお前がチームに所属していれば早仕掛けも僅差で負けることもなかった。何も所属していなかったにも関わらず僅差まで追い詰めたお前の素質を評価して内定者にしたんだ。アマゾンも同じ理由だ。以上だ、他に質問あるか?」

「……ありません」

「では解散!」

その声にウマ娘達が解散しナリタブライアンとヒシアマゾンの二名以外はふらふらと足取り重く帰宅することになった。

 

 

 

「チームに所属していたら不利なんて聞いてないよ……」

シンボリルドルフに推薦され一着でゴールしたにも関わらず、リギルに所属することは叶わず。どれだけこの世界が理不尽な世界かということを二代目は知る。

『どうやら天の神様ってのは何が何でも二代目の指導者を俺にしたいらしいな。それともチームギエナのトレーナーが根回しをしているのかのどちらかだが』

「……先代、聞いていい?」

『言ってみろ』

 

「先代の世界ってどんな世界なの?」

『ウマ娘がいない代わりに競走馬がいるってこと以外は基本的にはこっちとそう変わらないな』

「そうなの?」

『ああ。こっちの世界でウマ娘用の固定電話や携帯電話の機能があるって時は驚いたぜ。それに荷物を運ぶのに適した馬がいないのにここまで文明が発達したのも驚きだ』

 

「じゃあ質問を変えるけど、先代が競走馬だった頃、こっちの世界でいうトレーナーはいたの?」

『ああいたぞ。調教師、厩務員、調教助手の三種類の職員がトレーニングや体調の管理をしていた。さらに騎手という競走馬に騎乗して競走馬を巧みに操って勝利に導かせる職業もあったぞ。今の俺のような立場だな』

「え、それじゃ皆私と先代みたいに魂と意志疎通が出来るの!?」

『異世界の競走馬が転生した云々について語っていることから、俺達の前例がない訳ではないが極稀なケースだろう。もし全員が意志疎通出来るなら既に学園内の座学で教えられているはずだ。そうでなくともチームのトレーナーが指導するはずだ。その方がよっぽど効率がいいからな。俺達のケースが稀なだけだ』

「言われてみれば確かに……」

 

『でその調教師、厩務員、調教助手の三職がどうしたって?』

「先代はどんな人に管理されたの?」

『遠征のエキスパートだ。どこにいっても実力を発揮出来るような強さを持たせるようにするのが上手かった』

「じゃあ私もその人を探せば──」

『俺達競走馬の世界とウマ娘の世界では管理する人が同一とは限らない。むしろ異なっているのが当たり前なくらいだ。チームリギルもその例だ』

「え?」

 

『リギルの先輩にマルゼンスキーとシンボリルドルフがいるだろ?』

「え、もしかして……」

『俺達の世界ではマルゼンスキーとシンボリルドルフは同厩舎、つまり同じチームじゃなかった。その他にもサクラスターオーとメリーナイスもこの世界ではチームギエナで同じチームでも俺達の世界では別の厩舎でズレがある』

「ええっ!?」

『まあそういうことだ。何もトレーナーまで同じ奴を探す必要はない。もっともそれ以前に俺との約束を守ってもらうがな』

「そうだった……」

『さあいけいけ。チーム所属はとっておきの方法で出来るからさっさと外泊許可をもらいに行け!』

先代の声に憂鬱になりながらも外泊許可を貰いに足を進める二代目。その数分後、二人とも予想しない事態が起きた。

 

 

 

「あっさり半年間も外泊許可が取れたのは何故だろうか」

『全く以て不可解な現象だ。ここまで簡単に取れると却って不自然だな』

 

それは拍子抜けするほど簡単に外泊許可を取れたことだ。外泊許可を受けるに当たっては長くなるほどそれなりの理由が必要であるが二代目に関しては理由も聞かずに即座に許可を出してくれた。あまりにもあっさりと許可を出したので二人とも警戒してしまう。

しかもその上、メールで課題が提示され、それをこなした上でトレセン学園に郵送すれば授業に出なくとも良いとも許可を貰っていて外泊というよりかは自由気ままな放浪旅であった。

 

「それで先代、川で体力つける云々は冗談だよね?」

『いやそれなりに本気だったが、予想以上にお前の体力があったから別のトレーニングを考えている』

「本気だったんだ……危なかった、ナリタブライアンに勝ててよかった」

安堵のため息を吐くと共に、とあるウマ娘が二代目の視界に映り、そのウマ娘に声をかける。

 

 

 

「ヤマトダマシイ先輩」

 

そのウマ娘はヤマトダマシイ。チームギエナのメンバーの一人であり、二代目にとって姉のような存在で、チームギエナを追放されてから疎遠になっていたが、倒れた二代目を病院に運んでくれただけでなくチームギエナにいた頃はよく世話になっていた。

 

「グリーン、体の方はもう大丈夫そうだな!」

ヤマトダマシイが喜びの声を上げ、二代目に抱きついた。

「ええ、チームギエナを追放されてから会えませんでしたが先輩には感謝の声しか出ません」

二代目の言葉にヤマトダマシイが硬直した。

 

「つ、いほう? グリーンが自主的に辞めたんじゃないのか?」

「ええ。病院で、お前のような軟弱な奴はいらないとクビにされました」

「あのやろう! グリーンがギエナの練習に耐えきれず逃げたヘタレなんて大嘘吐きやがって!」

ヤマトダマシイが地団駄を踏み、怒りを表し、放っておいたらすぐにでもその矛先はトレーナーへと向かうだろう。

「倒れた以上、強ち間違いでもないんですけどね」

「それがおかしいんだ。ウマ娘はデリケートなんだ。合う練習と合わない練習がある。トレーナー足るものそれは絶対にしてはいけないことなんだ。それをするどころかウマ娘のせいにするなんて最低ゲス野郎のすることだ」

「まあ、それは言えなくもないですけど」

「後、二戦したら私もチームギエナを脱退する。そしてあいつの悪行を公表するんだ」

「先輩……」

 

 

 

「ところでその荷物はなんだ?」

ヤマトダマシイが二代目の荷物を指差し、それを見つめる。その荷物の量は授業に出るにしては過剰過ぎた。

「これですか? これは武者修行の旅に出ようと思いまして。ちゃんと学園の許可もありますから安心して下さい」

 

二代目がヤマトダマシイに外泊許可証を見せると納得した声が響く。

 

「武者修行か。あれから他のチームに所属していないのか?」

「所属活動はしましたが成長力がないと言われまして、それならいっそ独自で鍛えた方が強くなれるのではないかと思って武者修行の旅に出ることにしました」

「なあ、グリーン。もし武者修行が終わったら私が立ち上げるチームに所属しないか?」

「お世話になった先輩の勧誘なら喜んで」

「よかったよかった。お前がそう言ってくれるだけでもありがたい。それじゃ武者修行頑張るのもいいが体に気をつけてな」

「はい、ありがとうございます」

 

 

 

「先代、これからどうしようか?」

『…………』

 

ヤマトダマシイと別れ、二代目が先代に声をかけるが無反応。まるで誰もいなくなったかのような孤独感に襲われる。

 

「先代?」

『ああすまん。少し考え事をしていたんだ。あのヤマトダマシイの名前、前世でも聞いた覚えがあるんだがどうも思い出せない。GⅠを勝っているって訳でもなければルックスを見込まれ誘導馬として有名になった訳でもないのは確かなんだよな』

「そうなの? 滅多に褒めないトレーナーが逸材だと褒めまくるウマ娘なのに?」

『どうしてこう記憶に靄がかかって思い出せないんだ。前世は50以上生きたからボケているのか?』

 

ちなみに競走馬で30まで生きれば大往生すると言われる年齢であり、その1.7倍以上生きた先代はまさしく妖怪とも言える。しかしそれを知らない二代目はその事に関してスルーした。

 

「先代、何かヤマトダマシイ先輩について思い出したことがあったらすぐに言って下さいよ?」

『わかった。思い出したら話す』

その後、先代はヤマトダマシイについて一日に何度か思いだそうとするがそれに気づくのはしばらく後のことだった。




今回出てきたヤマトダマシイは、ビワハヤヒデ世代の一頭で誰もこんな競走馬を知らないだろうと思い、取り上げました。ヤマトダマシイがビワハヤヒデ達BNW三強に割り込む逸材だったというエピソードも史実に沿っています。そんな彼の生涯はネタバレになるのでいずれ書かせていただきます。

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尚、次回更新は西暦2019年1/1です

青き稲妻に出てくる競走馬が主人公以外で登場して欲しい?

  • ぜひとも登場して欲しい
  • 出さなくて良い。つーかイラネ

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