ウマ娘プリティーダービー~青き伝説の物語~   作:ディア

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実際にあった出来事をウマ娘で再現したい
スペシャルウィーク「栗毛のウマ娘なんて、大嫌いですっ!」o(*`ω´*)o
史実のスペは人に育てられた経歴のせいか人には優しいが馬嫌いで有名。そこの部分だけ性格がサンデーサイレンスと言っても良かったほど。
また栗毛の繁殖牝馬に種付けし過ぎて栗毛嫌いになり、久しぶりにグラスワンダーと再会したらスペの方が威嚇した話も有名。


前回の粗筋
日本ダービー決着


第29R 英国の踊り子

 ウイニングチケットが勝った日本ダービーの翌朝、二代目は朝食を食堂でとっていた。

 

『セイザ兄貴のいないダービーを制したのは向こうの世界で二着だったウイニングチケットか。ヤマトダマシイではセイザ兄貴の代わりにはなれないか……』

 

「先代のお兄さんが偉大なのはわかるけど、ヤマトダマシイ先輩は先代のお兄さんじゃないんだよ」

 

『ポテンシャルはそのくらい秘めているはずなんだよな、あいつは』

 

 二代目が先代と話しているとナリタブライアンが詰め寄って口を開く。

 

「アイグリーンスキー、聞きたいことがある」

 

「聞きたいこと?」

 

「あの日本ダービー以来、姉貴──ビワハヤヒデがおかしいんだ」

 

「おかしい?」

 

「先ほどお前が独り言を呟くように姉貴も独り言をぶつぶつと呟くようになったんだ。何か心当たりないか?」

 

「あることにはある──」

 

「本当か!?」

 

「ただ診てみないことにはわからないよ。私と同じ病状なのか、それとも別の病状なのかね」

 

「それでもいい。とにかく放課後チームマシムの拠点に来てくれ。そこが姉貴のチームだ」

 

「マムシじゃなくてマシムね。了解ナリブー」

 

 

 

「ナリブー?」

 

「ナリタブライアンだからナリブー。いい渾名でしょ?」

 

「そうか……それじゃ私もお前のことをグリーンと呼ぶぞ」

 

「どうぞ。ただしグリーングラス先輩が来たらややこしくなるからその時は普通に呼んでね。私は今度やってくる新入生の中にブライアンと名付けられたウマ娘と区別するためにそう呼んでいるだけだから」

 

「いるのか? そのブライアンと名付けられたウマ娘が」

 

「いや今年はいないよ。でもいずれやってくると直感が告げているんだ」

 

『その直感は大切にしろよ。ナリタブライアンのブライアンの由来は父親のブライアンズタイムだからな。それに因んで名付けられた馬も多いから、そうやって区別するのは大切だ』

 

「それじゃグリーンはまずいか……待てよそう言えばマルゼンスキー先輩がお前のことを──」

 

「それはダメ。その渾名はマルゼン姉さんとグリーングラス先輩とグリーングラス先輩の故郷の皆にしか許していない。それ以外に呼ばれることは誰がなんと言おうと私が許さないよ」

 

「それだけ多いんだから良いだろう……」

 

「私なりのこだわりだよ。学園内ではあまり呼ばれたくないし」

 

「仕方ない……グリーン、姉貴の件頼んだぞ」

 

 ナリタブライアンがその場を立ち去り、残された二代目にヤマトダマシイが話しかける。

 

 

 

「今のはお前のクラスメイトか?」

 

「ええ。それがどうかしましたか」

 

「いやどうもしないな。それよりもサンデーサイレンス先生がお前のことを呼び出しているんだ」

 

「私を?」

 

「そうだ。屋上で待っているから飯食ったらすぐに来いとのことだ」

 

「すぐに行きます」

 

 それまで大量に残された食べ物が二代目の食事のペースが早まったおかげで一気に無くなった。

 

「ちゃんと噛めよ……」

 

 ヤマトダマシイが二代目のあまりの早食いにそう突っ込みを入れる。

 

「ではヤマトダマシイ先輩、失礼します」

 

 二代目がそう告げ、屋上へと向かうとそこに円の中にHを書き込んでいるサンデーサイレンスがそこにいた。

 

 

 

「何をしているんですか? サンデーサイレンス先生。ミステリーサークルはそう書くんじゃありませんよ」

 

 二代目よ。お前は何度か書いたことがあるのか。

 

「おお来たか。これはミステリーサークルじゃない。ヘリポートを作っているんだ」

 

「なんでそんなものを?」

 

「いつぞやに約束しただろう? 一日専属講師を準備する*1と」

 

「ああ! あのことですか!」

 

「その様子だと忘れていたようだな。だがしかしぃっ! 余は決して忘れはせん。Come on Nijinsky Ⅱ !」

 

 

 

 ──以下、都合により英語等の外国語を日本語で表記します──

 

 

 

「おい、サンデーサイレンス。私に命令するな」

 

 ヘリコプターから降りてきた鹿毛のウマ娘は身長175cmの大柄なウマ娘だった。

 

「で、デカイ……!」

 

 二代目も大柄な方ではあるが、それでもそのウマ娘に及ばず見上げる形になっていた。

 

「むっふっふ、よくぞ来てくれた。歓迎するぞ、ニジンスキー」

 

「サンデーサイレンス、我が師匠に聞いた通りの傍若無人さだな」

 

 ニジンスキーと呼ばれたウマ娘がサンデーサイレンスにため息を吐き、腕を組む。

 

「サンデーサイレンス先生、もしかしてこのウマ娘が……?」

 

「そうだ。今日一日専属講師となるニジンスキー先生だ」

 

「よろしく、アイグリーンスキー」

 

「さ……」

 

「さ?」

 

「サインくださいっ!」

 

 二代目がどこからともなく色紙とTシャツを取り出し、ニジンスキーにサインをねだる。

 

「おい一体どういうことだ?」

 

「私、ニジンスキーさんの大ファンなんですよ! だからこうして会えただけでも感激で昇天しそうですぅぅっ!」

 

「まさかこいつがポンコツになる時がくるとはな……話が進まないし、サインを書いてやってくれないか?」

 

「構わない」

 

「あ、ニジンスキーさん。アイリへって書いてくれますか? あとアイリって呼んで頂けますか?」

 

「いいだろう、アイリ」

 

 ニジンスキーが色紙とTシャツにサインすると二代目が絶叫しながら注文し、体をくねらせる。

 

「ありがとうございますぅっ! これは家宝にしますぅっ!」

 

「キモいな……」

 

 流暢な英語で猫なで声を出す二代目にサンデーサイレンスがドン引きしていた。

 

 

 

「さてアイリ。まず最初にお前はどんなタイトルを勝ちたい?」

 

 それを目にしているにも関わらず、ニジンスキーが冷静に声をかける。

 

「ニジンスキーさんが獲れなかった凱旋門賞を勝ちたいです」

 

「凱旋門賞か……まだジャパニーズは勝てていないんだったな」

 

「はい。それどころか掲示板にも入っていません」

 

「日本の芝と洋芝の違いは何だかわかるか?」

 

「日本の芝は高速芝と呼ばれる芝でタイムが出やすいのに対して、洋芝はその逆でタイムが出にくく、スタミナを必要とする芝ですね」

 

「大体あっているな。では洋芝タイムが出にくい理由はなんだ?」

 

「芝の長さです。芝が長く足が捕らわれやすい為にスピードが減少しスタミナを浪費してしまうからです」

 

「その通りだ。そしてロンシャン競バ場で行われる凱旋門賞はそれ以上にスタミナを要する」

 

「はい。坂の高低差が10m以上もありますもんね。英セントレジャー*2を勝ったニジンスキーさんですらスタミナが足りずに負けましたから生粋のステイヤーでも勝つのは厳しいですよね」

 

「そうだ。ロンシャン競バ場に比べて高低差の差が少ない京都競バ場ですら坂をゆっくり上ってゆっくり下らなければならない。ロンシャン競バ場でそれをやらなかったらどうなるかわかるな?」

 

「惨敗ですね。ビリは当然、ブービーでもまだマシなくらいの」

 

「その通りだ。その上、偽りの直線と呼ばれる坂を下った後に出てくる直線がある。それに惑わされたウマ娘は数多くいる。つまり頭を使わないと勝てないレースでもある訳だ」

 

 ニジンスキーの言うとおり、凱旋門賞は非常に難易度が高いレースであり、ありとあらゆる能力が求められたレースと言える。

 

「凱旋門賞を勝つには底知れぬスタミナとスパートをかけるタイミングがキーポイントになるということだ」

 

「はい」

 

「しかしスパートのタイミングは出走するウマ娘次第で変わる。そこは現時点では対処のしようがない」

 

「ではどうするんですか?」

 

「洋芝に慣れる方法を指導する」

 

「洋芝に慣れる?」

 

「サンデーサイレンス、例の場所に行くぞ」

 

「了承した。それじゃアイグリーンスキー、ヘリに乗れ」

 

 サンデーサイレンスがヘリコプターの操縦席に座り、ニジンスキーと二代目が後座席に座るとヘリコプターが羽音を鳴らしながら飛んでいった。

 

 

 

 数分後。サンデーサイレンスが芝がおいしげるゴルフ場にヘリコプターを着地させる。

 

「ここって、ゴルフ場ですよね?」

 

「ああ。メジロ家が学園に寄付したゴルフ場だ」

 

「何故ゴルフ場を寄付したのかわからない……」

 

「アイリ、頭をかかえていないでこっちに来い」

 

 ニジンスキーが二代目をラフ*3とセミラフ*4の境界に呼び寄せる

 

「このゴルフ場は日本のウマ娘の名門が造らせただけあってか各コースが世界各地の競バ場に酷似している。そしてそのうちこの16番ホールはロンシャン競バ場をそっくりそのまま似せている」

 

 ニジンスキーがゴルフ場のパンフレットを取り出し、二代目が確認すると、確かに凱旋門賞の舞台であるロンシャン競バ場に酷似していた。

 

「本当だ……でもニジンスキーさん。何故英国のウマ娘たる貴女が、日本のウマ娘たる私ですら知らないこのゴルフ場の存在を知っていたんですか?」

 

「サンデーサイレンスが教えてくれた」

 

「サンデーサイレンス先生ですね。納得しました」

 

 サンデーサイレンスの一言で納得してしまう二代目が頷く。

 

 

 

「さて、アイリ。このロンシャン競バ場に似せたこの16番ホールで私と走ってもらう」

 

「えええっ!? いいんですか!?」

 

「アイグリーンスキー、メジロ家が寄付したとはいえここは滅多に使われていないゴルフ場だ。余が知る限りではメジロパーマーくらいしか使っていない」

 

「いやだからって……コースを荒らしてもいいって訳じゃ」

 

「ほう、それじゃアレか? ここでニジンスキーと走る機会を失ってもいいのか?」

 

「ぜひ走らせて頂きます!」

 

 二代目の頭の中の天秤が一気に傾き、倫理の文字がセントサイモン*5に殺される猫の如く天井に叩きつけられた。

 

「決まりだな」

 

 二代目とニジンスキーがジャージに着替え、準備運動をし体を温め始めた。

*1第21R参照

*2英国で行われる芝3000mのGⅠ競走。英国三冠の最後のレースで菊花賞のモデルになった

*3ゴルフ場における深い芝のこと。ここでゴルフボールを打ってもコントロールすることは難しい

*4もっともコントロールが簡単なフェアウェイとラフの間の長さの芝のこと

*5史実のセントサイモンは種牡馬として有名だが同時にサラブレッド史上最も荒い馬としても有名でもあり、猫を天井に叩きつけたエピソードもあるほど




後書きらしい後書き
セントサイモン……もしセントサイモンが現代に現れたら絶対に話題になりますよね。

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尚、次回更新は一週間後です

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