ウマ娘プリティーダービー~青き伝説の物語~   作:ディア

35 / 36
前回のあらすじ
サッカーboy「アイアムアウマ娘トレーナー」
キャプテン・グレー「同じくウマ娘トレーナー。治療をハジメマース」
タマモクロス「うぎゃぁぁぁぁーっ!?」
タマモクロス覚醒


第34R 芦毛の怪物目覚める

 東京競バ場で行われる芝1600mのジュニアC及びシニア混合のGⅠ競走、安田記念。

 

 このレースが国内では年度初となるシニアとジュニアCのウマ娘達が競走出来るGⅠ競走だが、時期が時期である為にシニアのウマ娘がほとんどを占めるだけでなく、ジュニアCのウマ娘が勝った事例はジュニアCのみで行われていた時代である。

 

 今年もその例に漏れず、ジュニアCのウマ娘が出走登録をすることはなくシニアのウマ娘のみで埋め尽くされていた。

 

 

 

 閑話休題

 

 その安田記念で人気を集めていたのはオグリキャップ。地方からやってきたスーパースターということもあり断トツの一番人気に支持されていた。

 

「この勝負負けられない……私を応援している人々や地方の皆の為にも」

 

「あら、地方の皆云々はともかくここにいる皆様がそれぞれの期待を背負っていますわよ」

 

 オグリキャップの独り言に反応するマティリアルがそう呟いた。

 

 

 

「マティリアル……」

 

「ご機嫌よう、オグリキャップ」

 

「確かに貴女達にも背負うものがあるだろう。しかしそれでも私は負けない。勝って皆に報告するんだ。地方のウマ娘が中央のウマ娘相手でもやれると」

 

「それで調子に乗った地方のウマ娘がボロ負けしたら貴女の責任ですわよ?」

 

「その時はその地方のウマ娘が他のウマ娘よりも強くなかっただけのことだ。そこまで責任は持てん」

 

「無責任ですわね」

 

「強くなろうとする向上心は芽生える。そこの芝のようにな」

 

「知らないんですか? この芝は人工芝ですわよ」

 

「茶化すなマティリアル。とにかく今日のレース必ず勝つ。それだけだ」

 

 オグリキャップが再び無言になるとマティリアルがつまらなそうにそれを見る。

 

 

 

 そんなマティリアルを見ていたのは二代目とチームマシムの二人組だった。

 

「アイグリーンスキー君、本当にこのレースを見る価値はあるのか? オグリキャップ先輩の一強の安田記念で収穫があるとは思えないが」

 

「まあ普通はそう思いますよね。しかしサンデーサイレンス先生によると理想の自分のイメージと自分の現実の走りが矛盾した時に覚醒しやすくなるらしいです」

 

「しやすくなるということは既に覚醒したウマ娘が私達の他に他にもいるのか?」

 

 ビワハヤヒデがそう尋ねると二代目が頷く。

 

「ええ。昨日ジュニアAのフジキセキ、ジェニュインの二名を覚醒させることに成功しました」

 

「早い……!」

 

「フジキセキ、ジェニュインともに私とも併せウマをしたんですが何度も覚醒しないので、互いに勝つイメージさせてみたところ覚醒したようです」

 

「そんなことでええんかい!?」

 

「ええ。しかし私以外のウマ娘が覚醒出来たのはベストコンディションで最高の力を発揮出来る自分と現実の自分にギャップを感じたから覚醒したのであって、ベストコンディションの自分でも敵わないような相手に勝つイメージを自分に重ねると覚醒しないようです」

 

「本当に限界突破って奴やな」

 

「二人を覚醒させることに成功出来たのはサンデーサイレンス先生がウマ娘の情報を細部に渡りデジタル化したからこそです。つまり私やメジロパーマー先輩、そしてお二方のご協力あってこその覚醒ですよ」

 

 そしてファンファーレが響き、各ウマ娘達がゲートから出ようと待ち構えていた。

 

【安田記念スタート!】

 

 そしてゲートが開き、安田記念が開始されると先行するウマ娘の後ろの集団の先頭にマティリアル、そしてそのすぐ側にオグリキャップが続いていた。

 

 

 

「マティリアル先輩にしては珍しく中団差しの作戦ですね」

 

「せやな。あの追い込みバカのマティリアルが他のウマ娘よりも前に行くのは珍しいな」

 

「オグリキャップ先輩を意識しているんじゃないのか?」

 

「それはあるかもしれへん。あいつの差し脚は一級品……オグリを差すことが出来るのはウチだけや。他の連中はオグリより先行して逃げ切るしかあらへん」

 

 三人がマティリアルについて語れる理由は三人がマティリアルについて知っているからだ。二代目は同じチーム、タマモクロスは同期としての情報を持っており、一見何の関係もないビワハヤヒデもデータ解析の為にマティリアルの情報を知り尽くしている。

 

「アイグリーンスキー君、このレースに出ているとしたらどうするか参考までに意見を聞きたい」

 

「その時の体調次第で決まりますよ。なんて言ったって私のレーススタイルは自在。タマモクロス先輩のように追い込むことも出来ればメジロパーマー先輩のように逃げることも出来ますからね」

 

「そら偉い自信持っとんな自分。上がり3Fはいくつや?」

 

「マイルの上がり3Fですと平均33秒3、最速32秒8ですね」

 

「そら確かに追い込みでもいけるわな」

 

「しかし私がマイル路線を走ることはありませんよ。どちらかと言えばステイヤーですからね」

 

 そしてオグリキャップの方へ視界を移すとそこにはオグリキャップが内埒とバンブーメモリーの間に挟まれ道を塞がれようとしていた。ここでバンブーメモリーが道を塞けば確実にオグリキャップは沈み、良くて三着止まりが限界だろう。

 

 

 

「ここで斜行して道を防ぐことも出来るっスが、ここは真っ向勝負っス!」

 

 だがバンブーメモリーはそれをしなかった。あくまでも真っ向勝負という形で勝負しオグリキャップを正々堂々と打ち負かすことでオグリキャップに勝ったことを証明したかった。

 

【バンブーメモリーはこれを真っ向勝負で捩じ伏せる気だ。さあ勝負だオグリキャップ。オグリ、バンブー、そしてマティリアルの三つ巴の戦いになった】

 

「随分と甘いことをほざきますわね。私であれば卑怯と言われようが降着処分を受けなければ何でもしますわ!」

 

 マティリアルはそれを批判する。真っ向勝負に拘らずとも勝てばそれでいいという考えはマティリアルだけではない。

 

 むしろマティリアルのように降着しなければいいという考えは主流でありバンブーメモリーのように真っ向勝負で捩じ伏せるという考えは異端そのものに近い。

 

【ここでマティリアル更に伸びる、更に伸びる! マティリアル先頭だ!】

 

 

 

「こいつは意外やな。あの不調のマティリアルがオグリを突き放すなんて。あいつも覚醒したんか?」

 

「いやそもそもマティリアル先輩はマイラーなんですよ。それ以上の距離だとスタミナが切れて逆噴射してしまいます」

 

「……ええんかい? そないなことをべらべら喋って」

 

「喋ったところで無意味ですよ。何故ならマティリアル先輩はマイル路線しか出走しませんから今言った弱点は露出しませんよ」

 

『これを見てわかっただろう。マティリアルは本来追い込みで瞬発力に優れている。瞬発力あってこその勝負根性だ。先行して場所を取り、直線で粘るというよりも突き抜ける……それがビワハヤヒデのレーススタイルの完成形だ』

 

「そのようだな……」

 

 ビワハヤヒデが納得し、二人を見るとビワハヤヒデの中にいる魂のビワハヤヒデが口出ししてきた為に無理やりそのように返事を返す。

 

 

 

「(これが、表参道を歩んできたウマ娘だというのか……? いや、違う。これは私の十二分に発揮した実力じゃない。十二分に発揮すればマティリアルにも勝てる!)」

 

 オグリキャップがそう思考したその瞬間、オグリキャップの頭が地を這う程に下がり、超がつくほど前傾姿勢を取るやいなやオグリキャップのスピードが急上昇し府中の坂などなかったかの如くバンブーメモリーを置き去りにしてマティリアルを捕らえた。

 

【オグリ来た、オグリ来た!】

 

『せっかく前傾姿勢になっているんだ。上ではなく後ろに蹴って前に飛んで少しでもストライドを伸ばせ! 出来ない訳じゃないだろ』

 

「わかっている!」

 

 オグリキャップが自分の魂のアドバイス通りに極端のまでの前傾姿勢を利用しストライドを伸ばし前に飛ぶように走る。

 

 すると並んでいたマティリアルを瞬く間に追い抜いてしまった。

 

【オグリだ、オグリだ、オグリキャップ一着!】

 

 

 

「あり得ませんわ……あそこからあんな末脚を炸裂させるなんて」

 

「マティリアル先輩!」

 

 汗を滝のように流したマティリアルが倒れ、二代目が慌てて駆けつけるとヤマトダマシイといったチームカノープスのメンバー達がマティリアルを囲うように集まる。

 

「マティリアル、大丈夫?」

 

 メリーナイスが珍しく優しく声をかけると、マティリアルが苦笑気味に笑みを浮かべる。

 

「ちょっと自力じゃ立ち上がれませんわ。手伝ってくれませんか?」

 

「さあ行きましょうか、お嬢様」

 

 メリーナイスがマティリアルの手を取るとマティリアルがメリーナイスの肩に寄りかかりながらも歩き始めた。

 

「メリーナイス先輩とマティリアル先輩って意外と仲良いんですね」

 

「そう見えるお前は大物だ。ああ見えて双方ともにかなり牽制しているぞ」

 

 ヤマトダマシイが突っ込みを入れると二代目が二人の様子を見るがどこからどうみても互いに仲の良いウマ娘同士にしか見えなかった。

 

「あれのどこがそうなんですか?」

 

「マティリアル先輩の実家は名門シンボリ家だからマティリアル先輩に下手な皮肉は通じない。それをメリーナイス先輩はわかっているんだ」

 

「……あんな顔して牽制しあっているとか、もはや別次元の話ですね」

 

 

 

「ところで先代、競走馬の方のビワハヤヒデに何か言いたいことあったんじゃないの?」

 

『大したことじゃねえよ。てめえの弟が有馬で戦いたかった、と一言を伝えるだけだ。あいつら兄弟は俺とは顔を合わせたことはあるが、兄弟二頭が互いに顔を合わせることなかったからな。その時にブライアンの野郎がぼやいていたんだよ。お前は兄貴と戦えてズルいってな』

 

「そう言えば先代は宝塚記念で勝ったんだっけ?」

 

『そうだ。宝塚記念でセイザ兄貴(二冠馬)ハヤヒデ(菊花賞馬)を、有馬記念でブライアン(三冠馬)を撃墜させて、俺は当時の現役世界最強馬となったんだ。だが俺はその後ラムタラに二度負け世界最強の称号を奴に一時的に渡すはめになった。……二代目、絶対にアイツに勝ってくれ』

 

「わかった」

 

 先代の思いを受け取った二代目が向かった先はトレーニング場であったのは言うまでもない。




後書きらしい後書き
ストック切れ怖い……


それはともかくこの第34Rのお話をお楽しみ頂けた、あるいはこの小説自体をお楽しみ頂けたならお気に入り登録や高評価、感想の方を宜しくお願いいたします。
また感想は感想に、誤字報告は誤字に、その他聞きたいことがあればメッセージボックスにお願いいたします。

尚、次回更新は一週間後です

 ▲ページの一番上に飛ぶ
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。