ウマ娘プリティーダービー~青き伝説の物語~   作:ディア

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前回のあらすじ
オグリキャップ「すまんなマティリアル、お前の役割は私の噛ませ犬なんだ」
バンブーメモリー「なんか第18Rと同じこと言っているし、噛ませ犬すらもならないっスか?」


第35R 覚醒した者同士の対決

 6月末、阪神競バ場にてGⅠ競走であり、春期最後のグランプリレース宝塚記念が行われていた。

 

『そろそろ来るぞ、気を付けろ』

 

「当たり前や。ここから勝負どころや!」

 

 1000mを通過しメジロパーマーが更に後続のウマ娘を突き放し、差を広げていくが誰も着いていかない。いや数人を除いたウマ娘達はメジロパーマーが生み出すペースによって体力が削られ過ぎて着いていこうにも着いて来れなかった。

 

 

 

 例外のウマ娘達が着いていかなかった理由はまだ仕掛け時ではないと判断した為であり、メジロパーマーを全くと言っていいほど見ていなかったからだ。見ていたのは互いに人気の芦毛のウマ娘達だった。

 

「やるなら今しかないで」

 

 そのウマ娘の一人であるタマモクロスは宝塚記念の三コーナーにて、異世界の自分に声をかける。

 

『よし、行ってこい』

 

 その瞬間タマモクロスがオグリキャップよりも先に仕掛け前に躍り出る。タマモクロスが見ていたウマ娘、それはオグリキャップ。

 

 地方でも名を馳せトゥインクルシリーズでも名を馳せた芦毛の怪物をマークした理由はメジロパーマーがハイペースに身を任せ他のウマ娘達を潰す潰し屋である為にメジロパーマーをマークすればその先に待っているのは自滅あるのみだからだ。その為タマモクロスはメジロパーマーに次いで厄介な有力ウマ娘であるオグリキャップをマークすることで自滅を回避した。

 

 

 

 そしてもう一つの例外であるウマ娘、オグリキャップはまだ仕掛けていなかった。

 

『おい、何故仕掛けない? タマモは行ったぞ!』

 

「仕掛けようにも仕掛けられん。あのフォームはカーブだと曲がりきれず斜行する欠点がある」

 

 オグリキャップの指摘する通り、あのフォームは前傾姿勢過ぎる故に真っ直ぐに走り過ぎてカーブを曲がりきれず斜行してしまう。幾度なくオグリキャップが実証し、直線のみに用いるようにしている。

 

『しかしあれを使わずともスピードを上げるくらいのことは出来るだろう?』

 

「異世界の私らしくもない。仕掛けことしていないが種は既に撒いている」

 

『何?』

 

「直線に入ってからわかる」

 

 オグリキャップがそう告げ、ただひたすらに無難に走っていった。

 

 

 

 その頃、タマモクロスは捲りに捲って二番手集団にまで追い付きメジロパーマーを射程圏内に捉えると笑みを浮かべた。

 

「ようやっと追い付いたで」

 

 そして二番手集団から二番手になりメジロパーマーの横に並ぶとメジロパーマーが引きはなそうとする。

 

「白い稲妻嘗めんな!」

 

 タマモクロスはそれを一蹴し、自分の渾名の通り稲妻の末脚でメジロパーマーを一瞬で交わす。

 

「なんやと!?」

 

【メジロパーマーここで沈んだ。メジロパーマーここで沈んだ。先頭はタマモクロス、タマモクロスだ】

 

「こないなバカなことあってたまるか!」

 

【いや沈まない、沈まないぞメジロパーマー粘るっ!】

 

 メジロパーマーが二の脚を使い、タマモクロスを差し返そうとするが勢いのついたタマモクロスを差すことは出来ない。あくまでも粘ることだけがメジロパーマーの悪あがきだ。

 

 

 

【大外からオグリキャップ来たーっ!】

 

 しかしそのメジロパーマーの悪あがきを成敗するかの如く、オグリキャップが地を這う走法で仕留める。

 

『なるほどな。パーマーの野郎が粘れるのはタマモが他のウマ娘のペースを上げたからか。てめえはそれに気づいて敢えて仕掛けなかった。仕掛ければこんな豪脚にはならねえ』

 

「そう言うことだ。後はスパートをかけすぎたタマを一気に抜き去るだけだ」

 

 

 

【オグリキャップがタマモクロスを捉えるか、タマモクロスが凌ぐか! 真っ向勝負!】

 

 その実況を聞いたバンブーメモリーが複雑そうな顔でオグリキャップを応援する。

 

 オグリキャップに負けたウマ娘として自分を負かしたウマ娘には勝って貰いたい。ましてや真っ向勝負で打ち負けた相手ならば尚更だ。

 

「行けーっ、オグリ!」

 

 バンブーメモリーの応援によりオグリキャップが伸び、タマモクロスを捉えにかかる。

 

「タマモクロス先輩、余力を使い果たせば勝てる!」

 

 そう声を出したのはタマモクロスと同じチームのビワハヤヒデをはじめとしたメンバー。チームマシムは芦毛のウマ娘──それもジュニアA当初では評価の低いウマ娘が集まるだけあってか零細チームである。その為重賞勝利はタマモクロスが勝つ前はシービークロスというウマ娘しか名前が記載されていない。勿論GⅠ競走勝利など皆無であり、チームマシムにいる誰もが勝利に貪欲でありタマモクロスは家庭環境のせいもあってかその中でも一際目立つ程貪欲だ。

 

「ウチは絶対に負けん!」

 

「私だって地方の皆が応援しているんだ!」

 

 オグリキャップがタマモクロスに迫っては距離を維持させられ、維持させられては迫る。その繰り返しをするうちにオグリキャップが思考する。

 

「(このままでは引き分けることはあっても勝つことはない。ならゴールする一瞬だけ抜かす。そのタイミングを頼むぞ。異世界の私)」

 

『それでこそ飽くなき執念、オグリキャップだ』

 

 二代目すらも出来なかった、いややらなかったことをオグリキャップがやらかしている頃、タマモクロスもまたオグリキャップの事を考えていた。

 

 

 

「(ウチを抜かせんとなるとオグリがやることはウチの隙をついて抜かすこと、そしてそれが出来なんだらゴールする瞬間に抜かすことやな。となるとウチがやれることはただ一つ)」

 

 タマモクロスがオグリキャップに近づき、バ体を併せる。

 

『そうだ、体を併せろ。併せた時の自分の勝負根性は自分が一番知っているんだからな』

 

「オグリ、絶対負けへんで!」

 

 タマモクロスが取った作戦はオグリキャップに体を寄せて併走する、所謂勝負根性を少しでも引き出すというものだった。

 

 競走馬の中には併走をして力を発揮する者、そうでない者がいる。競走馬のタマモクロスは前者を代表する競走馬であり、タマモクロスがモデルとなった某競馬漫画の主人公(ミドリマキバオー)にも受け継がれている程だ。

 

 ウマ娘のタマモクロスも同じで勝負根性は競走馬のタマモクロスに劣らない。それ故の判断だった。

 

 

 

『よし今だ!』

 

 競走馬のオグリキャップの合図を受け取ったウマ娘のオグリキャップのストライドが更に伸びる。

 

 タマモクロスが某競馬漫画の主人公のモデルとなったようにオグリキャップの走法もまた某競馬漫画のライバル(カスケード)の走法に酷似している。

 

 それは何故かというとそのライバルの走法モデルとなった某競走馬が競走馬のオグリキャップと同じ走法だった為にそうなってしまっただけの話だ。

 

 

 

 その走法を産み出した張本馬から指導を受けたオグリキャップが通常であれば追い付くことすらままならないタマモクロスを捉える。

 

「観念しろ」

 

「それはウチのセリフや!」

 

 宝塚記念史上稀に見るデットヒート。そんな勝負に勝利の女神が微笑んだのはタマモクロスだった。




後書きらしい後書き
ストック切れました……


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尚、次回更新は未定です

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