ウマ娘プリティーダービー~青き伝説の物語~   作:ディア

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1日遅れの明けましておめでとうございます。本来であれば昨日仕上げるはずが疲れ果てて寝てしまい遅くなりました。

前回のあらすじ
タマモクロス「すまんのオグリ、パーマー、あんた達の役割は私の噛ませ犬なんや」
メジロパーマー「前回のコピペすんなや!アホ!」
オグリキャップ「それよりも何か食べ物をくれ!」


第36R 丸善杉というスーパーカーの評価

 宝塚記念から数ヶ月後、札幌記念から始動したヤマトダマシイはここを勝利しダービー二着ウマ娘の貫禄を見せつけ、再びシニア混合の重賞レース、オールカマーに出走登録していた。

 

 しかしこのオールカマーは前走の札幌記念とは違い昨年の年度代表ウマ娘メジロパーマーをはじめとした有力なウマ娘達が出走登録していた。

 

「しかし覚醒したメジロパーマー先輩が相手なんて……ヤマトダマシイ先輩は勝てるの?」

 

『現状無理だろうな』

 

「どうして?」

 

『中山レース場の特性、2200mという中途半端な距離が関わってくる。俺達の世界で中山競馬場は追い込み不利でこっちでも同じく、追い込みを得意とするウマ娘が中山で勝てない。二代目、何故だかわかるか?』

 

「中山は直線の距離が短いのと心臓破りと呼ばれるほどの急坂があるから?」

 

『だいたい正解だ。しかしそれ以上に中山で負ける理由、それは中山競馬場のカーブが他よりも小さくそれを回る為に少しだけ減速する。その減速した分だけペースも落ち、それだけ追い込み馬も不利になる。あのソンユ*1ですら有馬記念は先行した程だ』

 

「もし先代が追い込みで勝つとするならどうするの?」

 

『直線が短いから途中でスパートをかけて捲るしかないな。直線に入る頃には5、6番手あたりから先頭集団を差しきるしかない。二代目、お前を除いた同期の中でそれが出来るのはヒシアマとナリブくらいだ』

 

「やっぱりあの二人は違うね」

 

『何を言ってやがる。あの二頭を相手に俺は勝ったんだ。決して勝てない敵じゃない』

 

「うん」

 

『ちなみにこの世界でメジロパーマーから逃げ切ったラムタラはそれ以上のことをする。中山競馬場のオールカマーなんぞあいつにとってはただの練習台にしかなりゃしない』

 

「先代……」

 

 その瞬間、朝食を終える予鈴が鳴り響き先代が更に口を開く。

 

『さてそろそろ授業のようだ。終わったら声をかけてくれ』

 

「先代、昼休みに起こすね」

 

『了解だ』

 

 

 

 そしてオールカマー当日、中山レース場。一番人気に支持されたメジロパーマーと三番人気のヤマトダマシイが並んだ。

 

【さあ今年のダービー二着バは強いぞ、強いぞ。逃げるメジロパーマー、追い詰めるヤマトダマシイ】

 

「絶対に負けられへん!」

 

 メジロパーマーがヤマトダマシイに併せて併走し、その差を少しでも詰めさせないようにする。

 

【メジロパーマーが突き放す! クラシック級には負けられない!】

 

「舐めるな! 私だって負けられない」

 

【しかしヤマトダマシイが追い詰める。どっちだ、どっちだ、どっちだっ!】

 

「姿勢の乱れはタイムの乱れ! 姿勢対策に体幹を鍛え上げてきた私に勝てると思うな!」

 

 メジロパーマーとの併走に付き合いきれないと言わんばかりにヤマトダマシイが一歩、二歩、三歩とメジロパーマーの前へと進み差を開いていき、そのまま中山レース場のゴール板を通過した。

 

【ヤマトダマシイです! ヤマトダマシイ一着! 大金星を飾ったのはヤマトダマシイーっ!】

 

 その実況と共に大歓声が沸き上がる。

 

 昨年のグランプリ連覇に加え今年の天皇賞春を勝利したウマ娘メジロパーマー。今年の宝塚記念こそタマモクロスらに抜かれたがその強さはフロックではないことを証明している。

 

 そのメジロパーマーを打ち破ったヤマトダマシイはGⅠ競走を勝利しているとはいえ1勝。メジロパーマーの方が圧倒的に格上なのか言うまでもない。

 

 

 

「ヤマトダマシイ……強なったの。嫌やわ世代交代ちゅうのは」

 

 ウイニングライブが終わり、メジロパーマーがヤマトダマシイにそう呟く。

 

「メジロパーマー先輩、その台詞は天皇賞秋までとっておいて下さい。その時こそ世代交代の時です」

 

「ほならまだチャンスはある言うことやな」

 

 メジロパーマーが野望を剥き出しにして目を光らせる。

 

「チャンスはあってもそれを掴み取れるかは別の話ですがね。何故なら私がいますから」

 

「おもろいことを言うの。せやけど覚えておけや。天皇賞秋にはメジロパーマーっちゅうウマ娘がおることをな」

 

 メジロパーマーが立ち去るとヤマトダマシイはその背中を見て新たな強敵に備え、その場を後にした。

 

 

 

 その頃、二代目はサンデーサイレンスに取っ捕まえられた後、自分の部屋である作業をしていた。

 

「これでよし」

 

【いつか頂点】と書かれた掛け軸を壁に掛け、満足げに頷く二代目がそこにいた。

 

『二代目、本当にそれでいいのか?』

 

「現状ウマ娘のトップはメジロパーマー先輩。それに対して私はデビューすらしていない無名のウマ娘。それなのに自分が頂点だなんて恥ずかしいよ」

 

『それでこれか……』

 

「来年のダービーと宝塚記念。最低でもこの二つのレースで勝ったら掛け軸を変える」

 

『どんな奴だ?』

 

「【いつも頂点】。驕りじゃなくそれ以降も頂点であり続けられるようにね」

 

 

 

『難しいことを言っているな。それが出来たのは俺が知る限り三頭。クリフジ、マルゼンスキー、そして……』

 

「先代の息子さん?」

 

『俺の甥の息子だ。そいつは天皇賞春でレコード勝利はおろか、半世紀以上更新されなかった八大競走の最大着差を更新した競走馬だ』

 

「そんな競走馬がいたんだ……」

 

『レコード自体は俺が生きている時に更新されたがそれでも長距離に関しては奴の方が上だと評価されている。まさしく【いつも頂点】、史上最強のステイヤーと呼ぶ存在だった』

 

「それくらいのパフォーマンスをしないとダメなんだね……」

 

『確かに必要といえば必要だ。だがそれ以上に勝ち続けることに意味がある。一度だけ大差勝利してもそれはまぐれ当たりでしかない。しかし何度も続けることで人はようやく認める。クリフジやマルゼンスキーがその典型例だ』

 

「なんとなく理解出来たよ」

 

 二代目の頭の中でマルゼンスキーの爆走する姿を思い浮かべる。

 

 マルゼンスキーの朝日杯FSの圧巻の逃げ切りは誰もが勝てないと言わしめる程だったが、それ以上に幾度なく勝利しており二着につけた合計着差は61バ身というものだ。

 

 マルゼンスキーがビッグタイトルを獲得していないにも関わらず、シンボリルドルフと並んで最強ウマ娘と呼ばれるのは常に差をつけて勝利しているからだ。

 

『何にせよその掛け軸を飾った以上、来年のダービーと宝塚記念の二つは獲れ。例え相手が三冠ウマ娘だとしても、その姉だとしてもな』

 

 

 

「アイグリーンスキーいるか?」

 

 先代が引っ込むとシンボリルドルフが扉をノックしてきた。

 

「います。少々お待ちを」

 

 二代目が掛け軸の文字を隠し、扉を開いてシンボリルドルフを迎えるとシンボリルドルフが興味深そうに掛け軸を見る。

 

「おや、アイグリーンスキー。掛け軸に何も書いていないのか?」

 

「まだ準備段階ですので……それよりもシンボリルドルフ会長、一体何の用ですか?」

 

「うむ、私は8月にシリウスシンボリの付き添いでとあるウマ娘に会ってきた」

 

「8月の副会長の付き添いということは英国ですか?」

 

「その通りだ。そしてそのウマ娘からお前宛に手紙を預かっている」

 

「私宛……もしかして!」

 

 シンボリルドルフから手紙を受け取りその中身を凝視すると達筆な英語で書かれていた。

 

【アイリへ、偶々日本のウマ娘が英国KGⅥ&QESに出走すると聞いて手紙を書いた】

 

「やはり間違いない……ニジンスキーさんだ!」

 

 文頭と文字だけを見てニジンスキーと判断するあたり二代目は変態なのかもしれない。

 

【英国に帰る前に一度だけマルゼンスキーなるウマ娘と走ったがあれはスピード、スタミナともに私達欧州のウマ娘でもトップクラスの実力者だ。しかしそれ以上に驚いたのが最も私に近いウマ娘でもあるという事実だ】

 

「えっ……」

 

【ラムタラに勝ちたいのであればマルゼンスキーに併せウマをしてもらえ。私のトレーニングがそこで生かされる。マルゼンスキーにも話を通しておく】

 

 ── by Nijinsky Ⅱ

 

「ニジンスキーさん……」

 

『願わくは俺の世界のニジンスキーとも会いたかったな……俺が俺が生まれて間もない頃に死んでしまったからな』

 

 ニジンスキーの手紙を読み終えた二代目と先代が呟く。互いに切ない感情になり遠い目をする。

 

 

 

「シンボリルドルフ会長」

 

 そしてその数秒後、決意をした二代目がシンボリルドルフに声をかける。

 

「何だ?」

 

「チームリギルにいるマルゼン姉さんと併せウマを申請しますのでおハナさんに口添え出来ませんか?」

 

「私ではなく何故マルゼンスキーを?」

 

「私がマルゼン姉さんを指名した理由は二つ。一つ目はこの手紙が理由です」

 

 ニジンスキーから渡された手紙をシンボリルドルフに渡すとシンボリルドルフが頷き納得した顔になっていた。

 

「なるほどな……しかし残りの理由はなんだ?」

 

「チームリギルの為ですよ」

 

「?」

 

「正確にはトレセン学園に在籍するウマ娘の為ですね。チームギエナからチームトゥバンになって以降トレーニング内容等が公開されるようになりましたがトゥバンに在籍するウマ娘自身が閉鎖的な為に併せウマをしたがらない。特にヤマトダマシイ先輩はその傾向が強い」

 

「……確かに」

 

 シンボリルドルフはヤマトダマシイのことを溺愛しており、何度もヤマトダマシイを誘っていた。

 

 しかしプライベートならともかくトレーニングとなると誘いを全て断るようなウマ娘であり、チームギエナ以外のほとんどのウマ娘がチームギエナのウマ娘の併せウマを諦めていてシンボリルドルフですら別の形でヤマトダマシイと接することにした。

 

 それ故に先日メジロパーマーがヤマトダマシイと併せウマをしたと聞いた時は嫉妬の余り目に血の涙を流して荒れた。それを知っていた二代目はスラスラとシンボリルドルフに説明し始める。

 

「しかし現在私やジュニアAの世代が併せウマをし始めることで上の世代も他のチームのウマ娘と併せウマをするようになります」

 

「ほう……」

 

「そして最終的にはヤマトダマシイ先輩がシンボリルドルフ会長と併せウマをするようになります」

 

「何だと!?」

 

 冷静沈着なシンボリルドルフが取り乱し二代目に詰め寄る。

 

「実際メジロパーマー先輩がヤマトダマシイ先輩と併せウマが出来ているんですからそれがシンボリルドルフ会長になるのは当たり前のことですよ。尤もチームリギルがチームトゥバンと併せウマをしないというのなら話は別ですが」

 

「何が何でも説得してみせよう」

 

 シンボリルドルフがそう宣言した翌日、マルゼンスキーとの併せウマの日程が決まった。

*1
先代の長男、カーソンユートピアのこと。当時の古馬王道完全制覇を成し遂げた名馬




後書きらしい後書き
≫Winning Post10が出たらやって欲しいこと
・キタノカチドキらを保有出来る1970年スタート、系統確立をより確実にする為にエディットで仔出し数値の操作ですかね。


それはともかくこの第36Rのお話をお楽しみ頂けた、あるいはこの小説自体をお楽しみ頂けたならお気に入り登録や高評価、感想の方を宜しくお願いいたします。
また感想は感想に、誤字報告は誤字に、その他聞きたいことがあればメッセージボックスにお願いいたします。

尚、次回更新は未定です

次にウマ娘として出てくる青き稲妻の物語の競走馬はどれがいい?

  • ボルトチェンジ
  • マジソンティーケイ
  • シンキングアルザオ
  • アブソルート
  • リセット

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