ウマ娘プリティーダービー~青き伝説の物語~   作:ディア

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前回のあらすじ
ニジンスキー「マルゼンスキーは私に良く似ている」
シンボリルドルフ「ヤマトダマシイたん(;´Д`)ハァハァ」


第37R ウマ娘と競走馬の議論

 ヤマトダマシイがオールカマーに勝利し、菊花賞に出走するかと思われたが予想外の出来事が起きる。

 

 

 

「ヤマトダマシイ先輩、菊花賞じゃなく天皇賞秋に出走って本気ですか?」

 

 それはヤマトダマシイが菊花賞ではなく秋の天皇賞に出走登録するという出来事だ。この事実を確認する為に二代目が尋ねるとヤマトダマシイが頷いた。

 

「本気も本気だ。私が三冠のタイトルを獲得するにはこれしかない」

 

「三冠は三冠でも来年以降でも取れる秋のシニア三冠でしょう。しかし菊花賞はクラシック級限定のレースです。クラシック級で恐ろしいのはハヤヒデ先輩だけでしょう?」

 

「確かにハヤヒデは強いが勝てない奴ではないし、サクラスターオー先輩からも菊花賞を取るように言われている」

 

「それじゃ何故?」

 

「菊花賞を勝ったところで年度代表ウマ娘になれないからだ」

 

「え?」

 

 

 

「この年の年度代表ウマ娘になるにはGⅠ競走で最低でも3勝しなければならない」

 

「その根拠は?」

 

「オグリキャップ先輩だ。あの先輩は既に大阪杯と安田記念を制している上に宝塚記念で連対している。そのオグリキャップ先輩に勝つにはGⅠ競走を3勝する必要がある」

 

「それなら菊花賞と有馬記念を制すればいいじゃないですか。それにNHKマイルCでGⅠ競走3勝でしょう?」

 

「バカ。それまでの間にオグリキャップ先輩が天皇賞秋、JCのうち1勝でもしてみろ。年度代表ウマ娘になれなくなる。それに他のウマ娘、メジロパーマー先輩やタマモクロス先輩の二人のうち一人が二連勝しても年度代表ウマ娘になれるチャンスはなくなる。NHKマイルCはGⅠ競走であるもののマイルなだけあって中長距離のGⅠ競走に比べたら優先順位が劣る」

 

 

 

 非常にややこしい話だが同じGⅠ競走でも賞金に差があり所謂その競走における格が生じてしまっている。

 

 その中でもマイルやスプリント路線のGⅠ競走は格が低く、史実においてGⅠ競走2勝したヤマニンゼファーが、菊花賞を勝ち有馬記念で二着を取っただけのビワハヤヒデに年度代表馬の座を奪われ議論されている。尚、近年では逆に天皇賞春や菊花賞と言った3000mを超える二つのレースの評価が下がりつつあり、2000m~2500mのGⅠ競走が最も高い格と言える状況だ。

 

 ちなみに先代のいた世界では無敗で二冠を制したセイザバラットが年度代表馬となっている為に議論が交わされることはなかった。

 

 

 

 閑話休題。

 

 

 

 この世界では史実よりもマイル・スプリント路線は恵まれているがGⅠ勝利数が等しいと、賞金がマイル・スプリント路線よりも中長距離路線の方が多く出る為に中長距離のGⅠ競走を如何に多く勝つかに決められている。

 

 両者とも勝利数が同じ数でそれを覆すとすればマイル・スプリント路線で活躍しているウマ娘が年間無敗であること、そして中長距離路線で活躍したウマ娘がGⅠ以外で幾度なく惨敗していることが前提条件になる。もちろんそんな前提条件は過去に存在しないし先代の世界でもなかったことなのであり得ない話と言える。

 

 

 

「それでしたら菊花賞を回避せず天皇賞秋を回避すればいい話でしょう。菊花賞、JC、有馬記念を三連勝すればGⅠ競走4勝でオグリキャップ先輩は大阪杯と天皇賞秋、そして安田記念とマイルCSのGⅠ競走4勝で判断材料としてはヤマトダマシイ先輩に分があると思いますが」

 

「菊花賞が芝2000mのGⅠ競走なら良いが、実際はそれよりも1km長い3000m。消耗が激しいレースであることは明らかだ。シンボリルドルフ会長ですら菊花賞の後のJCで負けている。それに対して秋の天皇賞に出走したウマ娘がJCで勝つのは珍しい話じゃない」

 

「でも天皇賞秋を勝ったウマ娘がJCを勝つ例はないですよ」

 

「セントライト初代会長が三冠ウマ娘になる前は三冠を制することは不可能なんて言われていた。同じくメジロラモーヌ先輩が史上初の桜花賞、オークス、秋華賞のトリプルティアラを制するまでトリプルティアラは不可能と言われていた。しかしそれぞれが初めて制したことによって不可能から難しいに変化していった。秋のシニア三冠も同じ事だ。前例がないというだけで不可能という訳ではない」

 

『わかる、わかるぞヤマトダマシイ。俺が凱旋門賞を制するまで、日本馬はおろかアジアの馬が凱旋門賞を勝つのは不可能って言われていたからな』

 

 ヤマトダマシイに共感した先代が同調する。

 

「それに私が秋のシニア三冠を制すれば、誰もが私を年度代表ウマ娘として認めるだろう。何せ会長ですら成し遂げられなかった史上初の快挙なのだからな」

 

「それはそうですけど」

 

「そもそもこの話はフジさん*1から提案されたものだ」

 

「あのフジさんが?」

 

「そうだ。フジさんのローテーションは他の二人よりも比較的緩めな上に距離適性を考慮してくれるからタイトル獲得もしやすい」

 

「ローテーションもトレーニングもきついマツさんならともかくフジさんがそう言うなら仕方ないのかな?」

 

「そう言うことだ。その上今回の天皇賞秋はハイレベルだが、大本命なしの混戦が予想される。そういうレースほど私のレーススタイルに嵌まるんだ」

 

「それってどういう……?」

 

「それは自分で考えろ。ウマ娘足るものレース展開を予測しなければならないからな」

 

 ヤマトダマシイが二代目の肩を叩いてその場を去る。

 

 

 

 そして菊花賞。ビワハヤヒデが一番人気に支持された。

 

【さあ先頭はビワハヤヒデ、ナリタタイシンは完全に沈んだ】

 

 ナリタタイシンがほぼ最後方のまま伸びずにもがき苦しむが逆に距離が離されてしまう。

 

【ウイニングチケットも来ない。ウイニングチケットも来ない。強い強い! ビワハヤヒデ一着でゴールイン!】

 

「強いな……」

 

『それは俺の所でハヤヒデがセイザ兄貴に勝ったレースだからな。勝って当たり前だろうよ』

 

「……うん」

 

『ところで二代目。今回のナリタタイシンとウイニングチケットを見てどう思った?』

 

「信じられない。その一言に尽きるよ。特にナリタタイシン先輩は今まで掲示板に載っていたのにブービーを出すなんて。距離が合わなかったのかな?」

 

『負けた理由は距離適性じゃない。俺の世界のナリタタイシンは阪神大賞典で惨敗するどころかむしろハヤヒデに食らいついていた程だったし、二着のステージチャンプは距離適性のみならハヤヒデを上回る』

 

「じゃあトライアルレースを使わないぶっつけ本番だったから? それとも運動誘発性肺出血を起こしたから?」

 

『それも一理あるが、どれも本命の理由じゃない』

 

「じゃあ何なの?」

 

『聞き方が悪かったな。距離適性ならハヤヒデを上回るステージチャンプが、ハヤヒデに勝てなかった理由。それがわかった時こそヤマトダマシイの言っていたことがわかるはずだ』

 

「そういうものなの?」

 

『ヒントはお前がレースの中で実践していることだ。それでもわからないなら来週のヤマトダマシイのレースで知ることだな』

 

 先代の言葉もヤマトダマシイの言葉も理解出来ずに悶々と悩む二代目に先代は何も語らなかった。

*1
チームトゥバンの三人のトレーナーの中でも特に体調と効率を重視するトレーナー




後書きらしくない後書き
≫今何のゲームをしている?
・switchを購入してポケモン剣とWinning Post8 2018をプレイ。
≫作者の考えていることは?
・キンカメVSディープの小説のネタとアグネスタキオン世代にトウカイテイオー産駒の転生者が青き稲妻の世界で活躍する小説のネタ


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尚、次回更新は未定です

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