東京優駿、最後の100m。ナリタブライアンと二代目が並び、壮絶な叩き合いが繰り広げられる。
【和製ミルリーフか、ニジンスキーの後継者か、二人の叩き合い! 凄まじいデッドヒートだ!】
二代目、ナリタブライアン共に互いに譲らないデッドヒートに観客達が興奮し、地面を揺らすほどの歓声を上げる。
そんな時、悪魔の呟きが二代目に囁いた。
「ナリブー知っている?」
「何をだ!」
「おハナさんの乳首、彼氏に吸われ過ぎて両乳首常に伸びたままなんだよ!」
「ぶごはっ」
案の定、ナリタブライアンは笑ってしまい息を一瞬だけ乱してそれまでの走りが崩れ失速した。
【あーっと、ナリタブライアン失速! アイグリーンスキー、このまま先頭でゴールイン!】
「どうだナリブー、サンデーサイレンス先生情報の恐ろしさ思い知ったか」
『……どうしてこうなった』
ナリタブライアンを蹴落としたことに二代目が何の罪悪感を感じないことに対して、先代は唸り、呟く。
【おっとこれは審議、審議です。一体何が起こったのでしょうか】
『どうやら俺と同じ結果になりそうだな』
「え?」
『俺は競走馬成績で三度の敗戦がある。そのうち国内の一敗はナリタブライアンに対して斜行──要は競走妨害をして二着に降着させられたんだ』
第41R 二代目デビュー&共同通信杯
有馬記念が終わり、年度代表ウマ娘の表彰式。
大阪杯、安田記念そしてマイルCSを勝利しその他のGⅠ競走も好走したオグリキャップが年度代表ウマ娘に選出され、GⅠ競走2勝のヤマトダマシイがクラシック級最優秀賞、朝日杯FSを勝ったナリタブライアンがジュニア級最優秀賞を受賞し年末を終える。
そしてクラシック級だったウマ娘はシニアに、ジュニア予備とジュニア級のウマ娘達は、それぞれジュニア級とクラシック級にクラスが変わってから時が流れ二月半ば。共同通信杯が開催される日となった。
しかしほとんどが共同通信杯を見に来たのに対して一部のウマ娘、主に二代目に関わりのあるウマ娘達はそちらに注目していた。その共同通信杯の大本命もそちらに注目していた。
【アイグリーンスキーまだ先頭、まだ先頭! アッツライが追い詰める! しかしまだアイグリーンスキーだ】
『おいまだ抑えろ。まだだ!』
先代の声に従い、二番手のウマ娘──アッツライにギリギリ迫るスピードにする。
『よし、行け!』
そして残り200m時点でようやく先代から指示が飛びアッツライを突き放してゴール板を通過した。
【アイグリーンスキー、二バ身差で勝ちました。二着にはアッツライ、そして離れてムーンライブがついていま──ああっと!? アイグリーンスキー、ゴールを過ぎてもまだ止まりません! まだアイグリーンスキーの中ではレースは終わっていない!】
「な……!?」
「あれだけ走って体力尽きないなんて、なんて化け物……!?」
二代目はそのまま余分に400m走ってようやく減速した。
【ようやく停止しました。しかし何だったんでしょうか?】
「ウイニングライブどころかウイニングランまでやるとはお疲れだ。グリーン」
「ナリブー……あれをウイニングランと思っている内は日本ダービーに勝てないよ?」
「お前こそそんな調子で日本ダービーに間に合うのか?」
「ヤマトダマシイ先輩と同じローテーションで行けば何一つ問題ないよ」
「弥生賞や皐月賞には行かないのか?」
「確かに皐月賞は欲しいけど、皐月賞時点の私が万全じゃない状態でナリブーに勝つのは無理。勝てないレースに挑んで調子狂ったら元も子もない。だけどダービーの時点なら万全の状態じゃなくても勝てる」
「それは随分大口叩くな?」
「もう三度敗北したからね。一生分の敗北を味わったよ」
『確かに俺の生涯戦績の敗北の数は三回だから一生分の敗北ってのは間違いじゃないな』
「ならその一生分をさらに増やしてやるだけだ。じゃあな」
ナリタブライアンがその場から去り、共同通信杯のレースに出走する。もちろんナリタブライアンはその共同通信杯に勝利し、皐月賞の最有力候補として名前を上げた。
「皐月賞はナリタブライアンで確定だが、残る二冠はアイグリーンスキーが来そうだな」
サンデーサイレンスが腕を組んでそう答えると隣にいたウマ娘、ジェニュインが尋ねる。
「まだデビュー戦を飾ったばかり、それもウイニングライブも嫌がっていたウマ娘がですか?」
「ウイニングライブはレースに関係ない。海外のウマ娘でウイニングライブを強いられたせいで気性が荒くなった奴もいる。我が師匠ヘイローとかな」
「あの米国のヤベー奴ですか?」
「流石にヤクザ当然のセントサイモンやダイヤモンドジュビリー程ではないにせよ、相当気が荒い。余が子供の悪戯なら向こうは真剣と言える程やることがえげつない……かつてのチームギエナのトレーナーと同じようなものだ」
「うわぁ……凄くやる気失せますね」
「風が少しでも吹けばやる気をなくすお前が何をいうか」
尤もな指摘を受けジェニュインは黙る。このジェニュインはとにかく神経質かつ気紛れ屋な部分が多く風が吹いただけでやる気をなくすほどだ。しかしその素質は確かなものでジュニア級の中ではフジキセキに次ぐものがある。
そしてタマモクロス、このウマ娘もまた二代目を見ていた。
「共同通信杯にグリーンがおったらどないなっていたやろな?」
『さあな。だが仕上がり具合で言えばナリタブライアンの方に分がある。だが立ち回りはグリーンの方に分がある』
「へっ、相性しだいって訳かいな」
『相性はわりと重要なものだ……オグリキャップが年度代表ウマ娘に選出されたのは地方からやって来たという贔屓から来るもんじゃない』
「言われんでもわかっとる。ウチがGⅠ競走1勝なのに対してオグリは2勝。だけどウチとオグリが出たレースはウチが全部先着しとるのは事実や」
『ヤマトダマシイもな』
「そう言えばあいつに一回も先着しとらへんな。海外行く前に大阪杯行ってケリ着けた方がええかな?」
『ドバイ遠征ならしてもいいだろう。ヤマトダマシイに勝てなかった理由はあいつがオグリキャップやお前がいてこそ力を発揮したからだ』
「そんなもんなんか?」
『ヤマトダマシイの実力はお前達に劣るが立ち回りが上手く、お前達の実力を逆に利用されたんだ。ところが海外にお前をマークする奴はいない……十分に勝ち目はあるし、立ち回り次第では圧勝するぞ』
「そういうことかいな」
タマモクロスが納得し頷くとら何故かサッカーboyを引き連れた二代目が声をかけた。
「タマモクロス先輩」
「ハロー。Mrs.タマモ」
「何でミセスだけ滑らかな英語なんやねん! ちゅーかウチはまだ未婚や!」
「子供扱いしても怒って、大人扱いしても怒る。思春期の子供ですね」
その瞬間タマモクロスの血管の切れる音が響いた。
「うるさいわアホー!」
「身代わり君8号!」
タマモクロスの口にサンデーサイレンスをモチーフにした人形が咥えられるとサッカーboyが親指を立てる。
「んがぁぁぁっ!」
タマモクロスが憤怒し荒れ狂うと二人が顔をあわせて頷いた。
「よし撤収っ!」
「ラジャー、Miss.Airi」
「待たんかいおどれらぁぁぁっ!!」
目を三角にしたタマモクロスが二代目とサッカーboyを追いかけるその様子はまるでGⅠ競走のようであった。
後書きらしくない後書きというか思い付いたネタシリーズ
転生悪役令嬢物の主人公がキングヘイロー、ざまぁされるヒロインがスペシャルウィークだったら
【日本ダービーを制したのはキングヘイロー!逃げ切りましたーっ!】
スペ「なんでよぉぉぉっ!史実やアニメだと私が勝ってんのになんでヘイローが勝つのよぉぉぉっ!?」
キング「それですわ。スペシャルウィーク、主人公という役割に胡座をかいて努力しなかったのが貴女の敗因です!」
割と想像出来てしまうけどそこまで持っていける文才がない……
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尚、次回更新は未定です
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