前回の粗筋
スーパークリーク&二代目「前哨戦勝ったお!」
【さあナリタブライアンが先頭。ナリタブライアン一バ身、二バ身、三バ身差をつけてゴールイン! 姉の無念を晴らしたナリタブライアンお見事です!】
ナリタブライアンが皐月賞を圧勝し、レコードタイムを出すと二代目が呟いた。
「強いね、先代」
『こりゃNHKマイルC登録して正解だったな。皐月賞であいつに勝てない上にダービーにはもっと強くなるだろう』
「そうね……」
【時計はレコード、時計はレコード! フロックでもなんでもない。シンボリルドルフ以来の三冠ウマ娘誕生なるか? 日本ダービー、菊花賞が楽しみな結果です!】
『まあ実際奴は三冠のタイトルを獲得したから過剰に評価されるのは無理もないか』
「でも先代の世界とこの世界は完全にリンクしている訳じゃない。日本ダービー時点でナリタブライアンを超えてみせるよ」
数日後、公開練習が行われていた。その公開練習の内容は併せウマであり一種の模擬レースだった。
「す、すげえ……これが本当にクラシック級のレベルかよ。今の時点でシニア混合出ても勝てるぜ」
「いや英ダービーに出ても勝てるレベルだ」
ナリタブライアンとビワハヤヒデの併せウマに唖然とする記者達。
ビワハヤヒデは京都記念、阪神大賞典を2連勝し、天皇賞春の前評判ではスーパークリークを抑え最有力候補とまで呼ばれるようになっている。
そのビワハヤヒデに併せウマでほぼ互角以上に戦えるナリタブライアンを見て記者達がそう呟くのは無理なかった。
だが記者達は欧州トップクラスの最強ウマ娘、ラムタラに当時の日本が誇るエースだったメジロパーマーが敗れたことを誰も知らない。
それもその筈、この時ラムタラはまだ1勝しか勝っておらず欧州ですら無名に近くその存在を知っているのはごく一部である。
次に目に映ったのは別のコースで走るヤマトダマシイに常に先行するヒシアマゾンの姿だった。
「嘘だろ!? あのヤマトダマシイに先行している!?」
「奴も追込だけのウマ娘じゃないってことか……」
ヤマトダマシイといえば昨年のNHKマイルCとJCを勝利したウマ娘でマイル~中長距離においては抜群の安定感があり、前走の大阪杯でこそ2着に敗れたがそれでも絶大な信頼感があり、今度の天皇賞春ではビワハヤヒデとスーパークリークに次ぐ有力候補であり、距離適正のある宝塚記念に至っては最有力候補となっている。
「流石にこれだけの面子ならあいつらも意識しないで済むだろう」
リギルのトレーナー、ハナの目的はナリタブライアンとヒシアマゾンの二人はシニアの中長距離のNo.1とNo.2相手に難なく着いていっている実力を示し、ナリタブライアンやヒシアマゾンの不安を払拭させるべくそう仕組んだ。
何故ならナリタブライアンやヒシアマゾンはどちらも二代目に一度負けており、特にヒシアマゾンの方に関しては意識しすぎている。
本人の性格上プラスになる時が多いがマイナス面もあり、それを少しでも削いでプラス面に持っていこうとしていた。
その為には二代目の普段の併せウマの相手であるヤマトダマシイが必要でチームトゥバンに調整したところ空いており不審に思ったがこれ以上ない機会と思い、チームトゥバンの敷地内で公開練習をするという条件付きだったもののそれを申し込み、現在に至る。
そしてその四人の併せウマすら霞む併せウマが行われていた。
「なあ、アイグリーンスキーの隣にいるのって、ミスターシービーじゃないか?」
記者達が二代目と併せウマをしているミスターシービーともう一人のウマ娘を見て、ハナ達が思わず目を擦る。
ミスターシービーは史上三人目となる三冠ウマ娘となった歴史的ウマ娘であり、シンボリルドルフには劣るがそれでも歴代ウマ娘の中でもトップクラスの実力者でありWDTで勝ち星を挙げたこともある。
そんなミスターシービーがわざわざ二代目の為に併せウマをするとは思えず現実逃避に目を擦ってもその視線の先にはやはりと言うべきかミスターシービーが映し出されていた。
「(やられたっ! これが狙いだったのか!)」
三冠ウマ娘というネームバリューは余りにも大きい。現在シニアを引っ張っているヤマトダマシイやビワハヤヒデですら出られないWDTに招待されるのは当たり前であり三冠ウマ娘全員が必ず一勝している。
ハナはそんなウマ娘と併せウマをするということはどういうことか理解出来ない無能なトレーナーではない。唯一恥を晒したのは二代目をリギルに入れなかったことくらいだ。
だが自身が育てたシンボリルドルフは余りにも完璧過ぎてトレーニング相手を潰してしまい、いくらヤマトダマシイ達に喰らいつけてもこの時期のナリタブライアンやヒシアマゾンでは逆に潰れてしまう可能性が高い。
ところが二代目の相手、ミスターシービーは違う。確かにトレーニング相手を潰すこともあるがシンボリルドルフほど酷くはなく二代目程度であれば潰れることはない。
「むっふっふ……もう一人のウマ娘もよく見るが良い。豪華メンバーなんてレベルではないぞ」
サンデーサイレンスがそう指差しもう一人のウマ娘に注目する。そのウマ娘はミスターシービーと同期のウマ娘だった。
「か、カツラギエース!? あれはカツラギエースじゃないか!?」
ハナが声を挙げた理由、それはカツラギエースというウマ娘にあった。
「そう、あやつはJCを日本のウマ娘として初めて勝利を納めただけでなく、ミスターシービーやシンボリルドルフをまとめて蹴散らしたカツラギエースだ」
カツラギエースはクラシック三冠こそミスターシービーに取られたがシニアになって以降の成績はカツラギエースの方が上であり宝塚記念を勝利した他、ミスターシービーの出走したレース、毎日王冠、天皇賞秋、JC、有馬記念において天皇賞秋以外はカツラギエースが先着しており、WDTでもミスターシービーやシンボリルドルフ相手に勝利している。
「まさかカツラギエースまでこの併せウマに出てくるとは……」
「一昔前の二冠ウマ娘達──カブラヤオー*1やキタノカチドキ*2では世界の強豪に太刀打ち出来ない。あの二人はWDTに勝利していないからな。その点ミスターシービーとカツラギエースは世界のレベルに届いている」
「チームトゥバンのメリットは日本一巨大なチームであるが故にコネがある。WDTの勝者二人に揉まれる経験などこのチーム以外じゃリギルくらいのもの。そのリギルですらマルゼンスキーやシンボリルドルフと言った国内のコネしか通用しない」
「海外にコネがあるとでも?」
「無論だ。余には米国は当然、欧州にも幅広い人脈がある」
「なるほどな……確かにお前が前任者に負けず劣らず有能なトレーナーだというのはわかる」
「あいつを美化しすぎじゃないか?」
「バカを言うな。確かに故障こそ多かったが全てが全て奴一人の責任ではない。むしろあのトレーナーがいたからこそギリギリ故障しない程度の高強度トレーニングのノウハウが広まったんだ」
「あくまでも反面教師という意味でだろう?」
「前任のトレーナーを認めたくない気持ちもわかるが、あいつ程日本のウマ娘を進化させたトレーナーがいないのも事実だ。そうでなければチームトゥバンの元になったチームギエナが発展する訳がない。それにもしあの男が無能なら欧州のウマ娘のトレーナーになれないはずだ」
「確かにな。だが問題があり追放されたのは事実。いくら優秀でも長くはあるまい」
「かもしれないな」
その頃、当の本人はというと自ら手掛けたウマ娘達を労っていた。
「マークオブエスティーム、バランシーン、そしてムーンバラッド。特にお前達はよくやった」
「ありがとうございますトレーナー」
「お前達は欧州にいながらドバイ所属というややこしい立場だがその逆境に負けることなくここまでこれたのはお前達自身の力だ。自信を持ってこれからのレースに挑むように。以上、乾杯!」
「乾杯!」
ドバイのウマ娘達によるドバイミーティング完全制覇を成し遂げ、それをしたトレーナーは上機嫌に酒を飲む。
「さて、これから俺はラムタラの様子を見に行かなきゃいけない」
「ええ~っ!?」
不満気にウマ娘がブーイングするとトレーナーが続ける。
「確かにこのまま勝利に酔いしれたいがそう言う訳にもいかない。日本から追放されたのはそれが原因だったからな」
「それなら仕方ないですね」
「じゃあな。羽目を外すのはいいが明日の練習に響かない程度にしておけよ」
トレーナーがそう言って予め手配していた車を使い運転手に行き先を告げさせ移動すると残ったウマ娘達は頷いた。
「それじゃお開きにしましょうか」
「そうだね。また改めてやりましょ」
「トレーナーのいない祝勝会なんてチーズと具がないピザのような物ですし」
そう言ってウマ娘達がタッパーを使って食物をあたかも食事をしたかのように取り、片付け始めた。
皮肉にも日本で追放されたことによりトレーナーはウマ娘の精神面を気にするようになり、ウマ娘から慕われサンデーサイレンスの予想が外れることになった。
後書きらしい後書き
マグナだけでなくシンキングアルザオも早くウマ娘化しないと(謎の使命感)
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尚、次回更新は未定です
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