変形する前の家「なんじゃと!? 本当にトレーニングをするというのか!? ならば仕方ない……うおぉぉぉぉぉっ!!」
変形した後の家「ふぅぅ……こうなった以上、逃げることは出来ん。貴様らをたっぷり鍛えてやるぞ……覚悟しろ」シュワンシュワンシュワン
二代目がグリーングラスと同居し、1ヶ月が経過した頃、トレセン学園はあるウマ娘達が話題となっていた。
そのウマ娘達の名前はオグリキャップとイナリワン。双方とも地方から転入して来たウマ娘でありながらも、他のウマ娘を千切れる速さを持っていた。しかしそれに待ったをかけたのが、ダービーウマ娘メリーナイスを始めとしたそれまでトレセン学園に在籍しているウマ娘であった。
地方の挑戦か、中央の意地か。それが今のトレセン学園の話題を占めていた。
「私も今や過去のウマ娘ね」
小さく【二冠ウマ娘サクラスターオー、引退か?】と隅に書かれた新聞を見てそう呟くのは名門サクラ家の一員であり、去年の二冠ウマ娘サクラスターオー。彼女は去年の有馬記念で故障してしまい、二代目同様に入院していた。
二代目とは違い、成績を残しているおかげでチームギエナから追放されなかったが、入院があまり長引くと筋肉が衰えるだけでなく走ることを忘れてしまう。そうなればGⅠ競走を勝つどころかOP戦すら勝てなくなってしまい、二冠ウマ娘としての価値はほとんどなくなってしまう。
いっそのこと、医者になったテンポイントや学園教師になったトウショウボーイのように引退して別の道に歩むか、長い時間をかけてリハビリを行い競走ウマ娘として活動するか、サクラスターオーは決断を迫られていた。
「何にしてもこの体を治さないと、話にならないわね」
体の痛みをこらえ、無理やり動かそうとするとあるウマ娘が入室してきた。
「スターオー先輩、いますか?」
そのウマ娘はサクラスターオーと同じチームギエナのメンバーのウマ娘であり、ジュニアCクラスで期待がかかっているヤマトダマシイだった。
「ヤマちゃん」
「お見舞いに来ましたよ、スターオー先輩」
ヤマトダマシイが人参と林檎をサクラスターオーに渡すと、サクラスターオーが気まずさからベッドに座った。
「ヤマちゃん、お願いがあるけど聴いて」
「スターオー先輩、何でしょうか?」
「ヤマちゃん、絶対にダービーと菊花賞を勝って」
「皐月賞はいいんですか?」
「出来ることなら三冠ウマ娘になって欲しかったけど、そこまで望まないわ。そこまで望んで貴女の体を壊したら元も子もないよ」
「う……」
「去年のダービーは不出走に終わっただけにものすごく無念を感じているの」
「スターオー先輩、それ去年のマティリアル先輩に似たようなこと言ってましたよね?」
「え? スターオー、わかんな~い」
サクラスターオーがアホの子を演じて惚けるがヤマトダマシイはそれをスルーした。
「それでマティリアル先輩が惨敗して、夢を託さなかったメリーナイス先輩が勝ったものだから物凄く気まずい思いしたの思い出せないんですか?」
「だ、大丈夫よ! 今度こそは勝つ、今度こそは! やるのはヤマちゃんだもの!」
「だからこそ嫌なんですよ。それで負けたら話になりません。ですからその二冠は私が誰にも言われず自力で取ってきます」
「ヤマちゃん……」
「ですからスターオー先輩、必ず復活してくださいね」
サクラスターオーにそう告げ、ヤマトダマシイはその場を後にした。
その頃、二代目はグリーングラスの指導のもと、着実に体力を着けていき、無尽蔵とも言えるスタミナを手にしていた。
「グリーングラス先輩、手紙届いてますよ」
「オラに手紙? 差出人は誰だ?」
「えーと、九州地方のウマ娘トレーニング施設からですね。青森県の先輩に何の用事があるんでしょうか?」
二代目が手紙をグリーングラスに渡すとグリーングラスがその封を開け、読み始めた。
「……なるほどな。理由としては納得がいくべ」
「何て書いてあったんですか?」
「オラの教え子の一人が地方で活躍しているのを見た地方トレーナーがオラをトレーナーとしてスカウトしたいらしいべ」
「まあその気持ちはわかります。グリーングラス先輩、私をここまで鍛えてくれましたもんね」
「トウショウボーイがトレセン学園で教師になっているならそのライバルのオラを取り入れるのは当たり前のこと何だが、オラにはまだやることがあるだ」
「それって私のことですか」
「そうだよ。後、アイグリーンスキーの地方アイドルデビューが決まっただぞ」
さらっとグリーングラスがとんでもないことを告げると二代目が吹いた。
「い、いきなりですか?」
「地方アイドルデビューと言っても地方自治体の催しの一つだ。明日の運動場でライブを行うだ」
「明日!?」
「いきなりかもしれないがこの地域はこれが当たり前なんだ。ライブの曲は最初の曲に合わせてあるから安心するだよ」
「うへぇ……本気だこの先輩」
「とは言ってもいつも通りの練習をしておけばいいだ。オラは少し用事があるからおめ一人でやってくれ」
『随分体力がついてきたな』
ダンスの練習を終え、先代が話しかける。先代の言うとおり、緩急を織り混ぜたダンス、スピード任せのダンス、逆にダンスとは思えないほど遅い動きのダンス、そして普通のダンスを踊っては踊りまくりの連続でありダンスを通してスタミナがついてきた。またそれだけでなくルームランナーのおかげでレースのスピードの緩急や維持も自在に出来るようになり、どの位置取りでも自分のレースが出来るようになっていて、このことに関してはグリーングラスも太鼓判を押すほどであった。
「あんだけ動いたからね。チームギエナのトレーナーがどれだけ非効率か実感するよ」
『故障率はともかくとしてあれはあれで優秀だぜ。実際皐月賞、菊花賞の二冠を制したサクラスターオーやその年のダービーを勝ったメリーナイスを始め多数のウマ娘にGⅠ競走を幾度なく勝たせている。実際、二代目の競り合いの強さも俺の影響よりもそいつの影響の方が強い』
「そうなの?」
『俺が負けた三つのレースのうち二つは競り合いで負けたからな。競り合いが強くなったというこの点だけはあいつに感謝しておけ』
「うん……」
『もっとも付け焼き刃みたいなものだがな。それ以外の方法で勝つ方法は色々ある』
「……今はまだその時じゃないでしょ?」
『ああ。レースで一番大切なのはタイムだ。どんなに無敗で強くともレコードタイムを出さないだけで批評される。逆に言えばレコード更新を何度もした上で無敗のまま引退した奴は総じて最強馬と評価されていた。クリフジやトキノミノル、マルゼンスキーがその典型例だ』
「マルゼンスキー先輩も?」
『そう言えばマルゼンスキーについて話してなかったな。マルゼンスキーの戦績について8戦無敗、レコード勝ちを何度も収めたパーフェクトホース。父は英国三冠馬ニジンスキー、母父は米国年度代表馬となったバックパサーと超良血馬だ』
「あのニジンスキーとバックパサーがマルゼンスキー先輩と血縁関係にあるなんて……」
『競走馬の俺の血統は父ニジンスキー、母父グリーングラス、母母父ダマスカスだから俺自身も割りと悪くないぞ?』
ちなみにダマスカスはバックパサーと同じく米国年度代表馬に選ばれたバックパサーの最大のライバルであり、種牡馬──つまり競走馬達の父親としても活躍していた馬である。
「え゛っ? それじゃマルゼンスキー先輩が私に姉呼びを強要する理由って先代と競走馬のマルゼンスキー先輩が腹違いの兄弟だからってことなの?」
あ行濁点使いとなった二代目が先代と、競走馬のマルゼンスキーが同じ父親を持っていることに気がつき、そう尋ねる。
『多分な。マルゼンスキーと同じ配合──つまり父親と母父が同じ競走馬のヤマニンスキーはウマ娘になってねえ。ヤマニンスキーがいたらニジンスキー産駒三人衆なんてやらされていたかもしれないからいない方がマシかもな』
「ちょっと気になったんだけど産駒って何?」
『父親が同じ競走馬のことだ。俺達競走馬は腹違いの兄弟姉妹は兄弟姉妹とは呼ばず同じ産駒と呼ぶ。兄弟姉妹の関係にあるのは同じ母親から生まれてきた馬だけだ』
「それじゃ先代がシンボリルドルフ会長を見たときセイザ兄貴と口ずさんだのは、その馬が競走馬のシンボリルドルフの息子かつ、先代のお兄さんだったから?」
『まあそういうことだ。セイザ兄貴はシンボリルドルフ産駒かつ俺の種違いの兄貴だ。レーススタイルはともかくルックスは一番父親に似ていたらしいぜ』
「やっぱり」
『もっともセイザ兄貴はウマ娘になっていないようだし、当てても意味がないんだがな』
「それもそうだね。さてそろそろフィジカルトレーニングに移ろうか」
二代目の休憩が終わると先代も黙りこんでフィジカルトレーニングに集中させ、トレーニングを終わらせ、その夜を過ごした。
今回の前回の粗筋の元ネタは大神に出てくる小柄鬼斬斎というキャラクターがモデルです。
しかしウイポ8のバックパサー本当に有能ですね。本来バックパサーの牝馬を作るつもりが牡馬で、その馬がリーディング2位になったときは驚きました。流石にサンデーサイレンスには勝てなかったよ……
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尚、次回更新は西暦2019年1/14です。
青き稲妻に出てくる競走馬が主人公以外で登場して欲しい?
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ぜひとも登場して欲しい
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出さなくて良い。つーかイラネ