先代「マルゼンも俺も父親は同じだ」
二代目「じゃあマルゼンスキー先輩とは腹違いの兄弟!?」
「ググラことグリーングラスです!皆ー、今日は新しいウマ娘のお姉さんを紹介するよー! アイグリーンスキーことアイリちゃんです!」
透き通るようなアニメ声で標準語で集まった観客達にグリーングラスが二代目を紹介すると、歓声が沸き上がった。
「紹介に預りましたアイグリーンスキーです。本日は私のライブに──」
「はい、そんな堅苦しいこと言わない。もっと気楽に!」
「私のライブに来てくれてありがとぉぉぉっ!!」
「YAAAAAA!」
やけくそ気味に二代目が拳を上げると観客達の魂に火が付いたのか、テンションMAXで盛り上がった。
「さてそれじゃ早速、アイリちゃんのライブ行きまーす!」
~ウマ娘ライブ中~
二代目のライブが終わり、一汗かくとグリーングラスがマイクを持って口を開いた。
「さて、ここでアイリちゃんの質問タイムが設けられています。何か質問がある人はいませんか!?」
「アイリちゃんは何でここに来たの?」
「私はトレセン学園、ウマ娘の皆が集まって勉強しながら走るトレーニングをする場所で、そこでトレーニングをしていたんですが物足りなくて武者修行の旅に出てその過程でグリーングラス先輩と会ってグリーングラス先輩に弟子入りすることになりました」
「ググラちゃんの歳を知っていますか? 知っていたら教えてください」
子供のその質問に会場が凍りつき、連れてきた親は子供を叱りつけ頬を引っ張る。そしてグリーングラスは二代目に誤魔化すように視線を合わせる。もしこれを断れば即座に破門され北海道にもいけなくなってしまう。それを回避するために二代目が出した答えは当然の如く誤魔化すということであった。
「グリーングラス先輩の年齢は人間年齢に換算すると永遠の18歳だそうです。それ以上のことはわかりません。ごめんね」
『上手くごまかしたな』
二代目の誤魔化し方に先代が笑みを浮かべたような気がした。
「アイリちゃんはトレセン学園に在籍しているウマ娘って聞いたけど、どのくらい強いの?」
「まだ走る方はデビューしていないからわかりませんが、先日同学年一番と評判高いウマ娘に勝ちました!」
「つまり学年で一番強いってこと?」
「はいそうです」
キッパリと言い切り、観客達にある疑問が産まれそれを二人に問いかけた。
「それじゃあさ、ググラちゃんとアイリちゃん、どっちが強いの?」
その質問は二人にとって予想外の質問で戸惑ってしまう。
「現役を引退したとはいえTTGのうちの一人、ググラちゃんが勝つに決まっているっぺ!」
「いーや、若いアイリちゃんが勝つ!」
観客達が騒然とし、それを収拾させる方法はただ一つ。グリーングラスが口を開いて収拾させた。
「皆さん、落ち着いてください! 私は現役を引退しましたし、アイリちゃんはまだデビューすらしていません。その為どちらが現時点でどちらか強いか比較するなら実際に勝負してみないことにはわかりません! ですから後日、マッチレースをしたいと思います」
観客達が最も納得がいく形、つまり二代目とグリーングラスが実際に走って比較するというものだった。
「不公平のないよう盛岡競バ場をお借りして芝1600mの舞台で決着を着けたいと思います」
「待った!」
初老の男性が手を上げ、待ったをかけると観客達がざわめき始める。
「何でしょうか?」
「盛岡競バ場までは遠い。ただ足の速さを比較するのであればこの運動場を使っても良いのではないのか?」
「ここの運動場だと直線が短すぎて脚に負担がかかって危険です」
「直線が短すぎる?」
「はい。盛岡競バ場の直線は300mで、主要競バ場で直線が310mと最も短い中山競バ場よりも短いのですが、それよりもさらに100mも短いこの運動場では小回りどころではなく、曲がる回数が多くなりすぎて脚に負担がかかってしまい、故障してしまう恐れがあるため引退した私はともかくデビュー前のアイリちゃんにそんな真似はさせられません」
「しかし……遠いし……盛岡競バ場は青森県じゃないし」
それでも言い淀む男性にグリーングラスがトドメを刺した。
「誠に申し訳ありませんが、この運動場ではあまりにも狭すぎるので場所を移すことには変わりありません。芝コースがあってかつ最も近い競バ場が盛岡競バ場ですのでそこを借りようと思います!」
グリーングラスの発言により、その一週間後、盛岡競バ場等の許可が降りてマッチレースを開催した。
『まさかグリーングラスと戦うことになるとはな』
グリーングラスのライブも終わり、一人星空を見ていると先代が二代目に話しかけた。
「先代、グリーングラス対策はわかる?」
『グリーングラスと俺は祖父と孫の関係に当たるくらい年代が違うから詳しいことはわからん。ナリタブライアン同様に中団差しのレーススタイルだったということがわかるだけだ。おまけに盛岡競馬場に行ったことすらないから実際に見てみないとわかりゃしねえ』
「盛岡競バ場は中山競馬場の直線を短くして、坂を急にした競バ場よ」
『そういうことか。中山よりも短い直線となると追い込みで勝てる訳がないから追い込みは止めておけ』
「どういうこと?」
『追い込みってのは直線が長いほど有利な分、直線が短いと不利になる。シンボリルドルフ以来無敗で三冠馬となった馬も追い込み馬で、有馬記念で一度負けている。それだけならまだ良いが、弥生賞で僅差勝利と見るに耐えないレースがある』
「……」
『奴が何故そうなったのか、俺が考えるに直線が短いと追い込み馬の特徴である直線での鋭い豪脚を発揮する場面が短くなるからで、短くなった結果、中山が苦手になったんじゃないかと推測している。追い込み馬が勝つにはコーナーで捲って勝つしかない』
「確かに……」
『あるいはハイペースで先行集団が自滅するとか、余程のことがない限りは無理だ』
「余程のことがない限りね……」
『俺がグリーングラスを仕留めるとしたらスピードに任せて仕留めるがお前はどうする?』
「私は──」
二代目が意見すると、先代は何も言わずにそれを黙って聞き、二人が眠りについた。
≫ディープインパクトは中山が苦手
私なりの独自解釈です。追い込み馬=中山苦手 というのはディープインパクトよりもブエナビスタが三度も有馬記念を逃したせいでそのイメージが強くなったと思われます。追い込みで有馬記念を勝った例はオペラオー、ディープインパクト(2006年)、ドリームジャーニー、ゴールドシップくらいしか思い付きません。
ついでにウマ娘の時系列考察を活動報告にてしています。もしよろしければそこに来て下さい。
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尚、次回更新は西暦2019年1/28です。……え? 更新速度が逆噴射のツインターボしてるって? これはな、いつぞやのニエル賞を再現しているんだよ!
青き稲妻に出てくる競走馬が主人公以外で登場して欲しい?
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ぜひとも登場して欲しい
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出さなくて良い。つーかイラネ