みなさんこんにちは。
わたしは
食べることが大好きな、ごく普通の中学生だったわたしですが、実は普通ではないところがいくつかあるのです。
色々ありすぎて何から説明すればいいのか分からないけど、まず一つだけ言えることがあるならば――
――私、伊勢小鈴は、ある日突然魔法少女になってしまった、ということです。
何言ってるんだ、と思うかもしれませんが、わたしだってわけが分からないのです。
ある日、喋る不思議な小鳥さんに出会った私は、この世界に現れる実体化したクリーチャーを覚えたばかりのカードゲーム、デュエル・マスターズで退治するという役目を背負ってしまいました。
しかも、お母さんが書いていた小説に出てくる魔法少女の恥ずかしい恰好で戦わなくてはいけないので、とても恥ずかしいです。
自分で説明していても、やっぱりわけが分からないし納得いかないことだらけですが、これがきっかけで沢山の人に出会いました。
憧れの
だから、この生活も大変だけどまだまだ、魔法少女としての日々も続けていくことになりそうです。
☆ ☆ ☆
とある夏休みの昼下がり。
わたし達は、近所の図書館で勉強をしていました。
8月になったというのに、恋ちゃんの夏休みの宿題が全く終わっておらず、訳あって彼女と同居している剣崎先輩に遊びに行くのを禁止されちゃったようです。
カードショップ、『Wonder Land』では今度大会が開かれます。でも、このままでは恋ちゃんだけ遊びに行けません。剣崎先輩に頼まれたのもあって、わたしは恋ちゃんの見張り、そして宿題を手伝っていました。
前に勉強会した時は結局皆デュエマしちゃったし、図書館なら大丈夫だよね。
「……だるい、頭がいたい、もうしぬ……寝る」
「駄目だよ、恋ちゃん。まだ、こんなにページ残ってるのに」
「……なら、私のかわりにこすずが、やって」
「恋さん、そういうのは
「うん、ユーちゃんも静かにね。ここ図書館だから」
「あぅ、ごめんなさい、小鈴さん……」
立ち上がって恋ちゃんに注意するユーちゃんことユーリアさんを窘め、座らせる。
そう、一緒に勉強をしているのは恋ちゃんだけではありませんでした。
ユーちゃんも大方恋ちゃんと似たような状況で双子の姉のローザさんに遊びに行くのを禁止されちゃったみたい。
元気が良すぎるから、図書館に連れていくのは少し迷ったけど、状況が状況なだけに止むを得ませんでした。
わたしが付きっ切りで2時間教えて、ようやくユーちゃんは国語のワークが5ページ、恋ちゃんは数学のワークが2ページ進みました。
「とにかく、2人共もっと頑張ろうよ……このままじゃ、大会にいけないんだよ?」
「そうだ……答え写そう……それがいちばん手っ取り早い……」
「だからズルはダメだって! 恋ちゃんのためにならないよ!」
「……つきにぃが言ってた……数学ならいっそ解法を見ながらやっていった方が解き方は覚えるって……これはズルじゃなくて、ごうりてきな宿題の仕方」
う、うん? そんなものなのかな? 何かそれっぽいことを並べたてられてるようなだけな気がするけど、剣崎先輩――つきにぃは恋ちゃんの剣崎先輩に対する呼び名――がそう言ってたのなら仕方ない、かなぁ。
それに、このままじゃいつまで経っても終わらないもんね。
「小鈴さん! ここの問題、解けました!」
「ユーちゃん、図書館では静かに……って、コレ平仮名がところどころ右左が逆になってるよ!」
「ふにゅう!? やり直しです……」
……うん、2人に悪気は無いんだろうけど、正直とっても先が思いやられます。ユーちゃんは外国から来たから日本語が上手じゃないのは分かるんだけど。
「ん?」
ユーちゃんの問題集を返そうとして立ち上がった時、わたしの目にふと留まったのは、向こうの席に座っている女の子でした。
その子が目を引いたのは、ユーちゃんの綺麗な銀髪とは対照的な金髪でした。目も碧いし、外国人の子なのかな。
「あっ……」
その時、その子と目が合いました。
びくっ、と肩を震わせて、彼女は立ち上がり、そそくさと図書館から出て行ってしまいました。
人見知りな子だったのかな、じろじろ見られたかと思ったのかな。とにかく、悪いことしちゃったなぁ、と思いつつ。
「小鈴さん、どうしたんですか?」
ユーちゃんが袖を引っ張ってきます。机に突っ伏している恋ちゃんを揺すり起こしながら、私は「何でもないよ」と首を横に振ります。
とにかく午後はずっとこの2人の勉強に付き合うことになりそうです。このままで終わるのかなあ、と思っていたその時でした。
「やぁ、忙しそうだね、小鈴」
図書館の窓から、パタパタと何かが飛んできて、机の上に止まりました。
わたしはびっくりして、シャーペンを手放してしまいました。
ぐったりしていた恋ちゃんも、頭を抱えていたユーちゃんもそれに注目します。
「鳥さん!?」
「ああ、すまない。時間が無いんだ。すぐに来て欲しい」
鳥さんは、わたしに魔法少女の力を与えた張本人。
そして、街にクリーチャーが出てきたときだけ姿を現します。
「ということは、クリーチャーが出てきたってこと?」
「そうなんだけど、ちょっと様子が変なんだ。とにかく、小鈴の力が必要だ」
「……やっぱり、お約束。だけど、タイミング的にはグッド」
「恋ちゃん?」
恋ちゃんはデュエマが強いから、クリーチャーとの戦いの時はとても頼りになる。
だけど、今の発言は聞き逃せなかったよ? 絶対勉強から逃げられるって思ったよね?
「とにかく、街にクリーチャーが出たなら仕方ないですね!
「恋ちゃんも、ユーちゃんも、終わったら宿題の続きやってもらうからね?」
「うにゅっ……分かってます……」
「……知ってた」
取り合えず退路は断っておこう。勉強会は一旦中断だよ。あくまで”一旦”だけど。
「とにかく決まったようだね」
「今は3人しかいないけど、大丈夫かな」
「大丈夫、心強いよ。とにかく急いで欲しいんだ」
というわけで、突然勉強会は中止。
わたし達はクリーチャーが出てきているという場所に向かうことになった。
……クリーチャーもそうだけど、私は2人の宿題の方が心配だよ。
☆ ☆ ☆
鳥さんに連れてこられるままに、わたし達は街に出た。
一応、クリーチャーが出て来てはいけないから、人目のつかない場所に出た所で、私は魔法少女の姿に変身する。
相変わらずユーちゃんや恋ちゃんは可愛いとかあざといとか言ってるけど、私は今、とても恥ずかしいです。何回やっても慣れないよ。
そんなこんなで辿り着いたのは、外れにあるビルの裏でした。そこにはのっぺりとした壁しかないはずなんだけど、今は違った。
そこでわたし達の足はすくんだ。
ごうごう、と大きな唸り声をあげて、大きな穴がぽっかりと開いていた。
何なんだろう。穴の先は何も見えず、渦がぐるぐるぐるぐる回るばかり。
「鳥さん、これって……」
「クリーチャーが開けたものだ。それも、とても力の強いクリーチャーによるものだね。物理的に開いた穴というより、空間に開いた穴と言った方が適切かな」
「どういうことですか?」
「要するに……ここと違う場所と繋がってる……穴」
「よく分かったね。その通りだよ」
だとしたら、この穴はどこに繋がっているんだろう。
見つめていたら、引きずり込まれそうになってしまう。
とにかく、こんなのがずっと放置されていたら危ないよね。これを作ったクリーチャーを倒さなきゃ。
「カメー」
何やら、妙な鳴き声が聞こえた。
わたしは思わず足元を見る。ユーちゃんと、恋ちゃん、そして鳥さんも私の足元を見た。
そこにいたのは、亀だった。
ただ、妙にピカピカしていて、甲羅が宝石のような亀さんだった。
しかも、鳴き声がおかしいよ。亀って鳴く亀さんって聞いたことがないよ。
「……小鈴。これ、怪しさ満点」
「確かに、この穴の近くに落ちていたということは、この穴を通ってきた可能性があるね。でも、クリーチャーにしては酷くマナが弱いな」
「でも、可愛いです!
「でも、この亀……どこかで見たことがあるような……あ」
思い出した。この亀さん、前に戦った【不思議の国の住人】の代用ウミガメさんが使ってた切札の《
ということは、この穴を開けた犯人は、あのカメさんなのかな?
でも、これを開けたのはとても力の強いクリーチャーさんみたいだし、あの気弱なカメさんがやったとは思えないような……やっぱり違う気がしてきました。
「小鈴、それに不用意に近づいてはいけないよ。クリーチャーかもしれない」
「というか……こんな、亀いない。十中八九、クリーチャー」
「えー、でも亀さんをいじめるのは可哀そうです!」
「それに、何かとても弱っているみたいだよ」
カメー、と弱々しい声を上げる亀さん。何だろう、病気にかかっているような様子です。
流石にこんなに弱った子をデュエルで倒すなんて、出来ないよ。
と、亀さんについて意見が割れていたその時でした。
『デス、デス、デェース!!』
何やら声が聞こえてきた。
穴の中から甲高い女の子のような声が聞こえてくる。
そして、それは不用意に穴の傍に立っていた私に向かって――
「デース!!」
ふわっ、と空中に舞い上がり、飛び込んできたのでした。
胸に飛び込んで来たから尻餅ついちゃったよ。変身していなかったら、絶対怪我してた。
「……何、この人」
「あ、穴の中から出てきました!?」
「あ、あの、え、えと、だ、大丈夫ですか……?」
しどろもどろになりながらわたしが聞いても反応はありません。
見ると、目を奪われるのは綺麗な金髪碧眼。さっき図書館で見た女の子に似ているけど、ずっと背が高い。
「う、うぅ……」
完全に気絶しちゃってるようです。どうしよう、このまま放っておくわけにもいかないし……。
「小鈴さん、あれ!」
「え?」
「穴が……小さくなってる」
恋ちゃんとユーちゃんが指差した方にあった大穴が、どんどん消えていきます。
そのまま元の壁に戻っちゃいました。どうしよう。この女の人、どこから来たのか分からないけど、元いたところに帰れるのかな?
『お、おい、小娘達……ワシが見えるのだな?』
声が聞こえた。皆も身構えた。
思わず、それが聞こえてきた足元を見ます。
『彼女はワシの主……助けてやってくれ……!』
見ると、さっきの亀さんが喋っているようです。
やっぱりクリーチャーだったんだ。
「主……こすず、やっぱりこいつ怪しい」
「確かに、この子に取り付いている可能性があるね」
『失礼な!! ワシをそこらのワイルドカードと一緒にするな!』
「ワイルド……カード? すまない。君の言ってることが僕には分からないな」
『ふん、失敬な!』
ガミガミと頑固なお爺さんみたいに怒鳴る亀さん。
そりゃ、最初っから疑われたら怒るよね……。
でも、この女の人とどういう関係なんだろう。
「ユーちゃんには、亀さんが悪いこと考えてるようには見えません! 助けなきゃ、かわいそうです!」
「そ、そうだけど……」
確かに、こんなに必死に懇願している姿を見ると、どうも悪いクリーチャーには見えなかった。
鳥さんはこのクリーチャーの事、どう思ってるんだろう。
「鳥さん、このクリーチャーは何なの?」
「分からない。かなり弱ってるようだし、少なくとも僕が知っている方法で実体化したクリーチャーじゃないみたいだね。それに、敵対するつもりはないようだ。どうする?」
それなら、話は決まった。この人達は放っておけないよ。
☆ ☆ ☆
あの後、しばらく涼しそうな物陰に倒れた女の人を運んでいました。亀さんも心配した様子で女の人に付き添っています。
熱中症になっちゃいけないから、一応スポーツドリンクとかも近くの自販機で買い、戻ってきたところで女の人は飛ぶように起き上がりました。
「デース!?」
いきなりでびっくりしたけど、取り合えず自力で起き上がれたみたいだから安心だよ。
女の人は辺りをぐるぐる見回し、落胆したように溜息をついた。
「ど、どこに行ったデスか、あのクリーチャー……」
クリーチャー? ってことは、この人も実体化してるクリーチャーについて知ってるのかな。
すると、ようやくわたし達に気付いたみたい。
「あ、お見苦しい所を見せたデス! ありがとうございましタ!」
「困ってるときはお互い様です! はい!」
「でも、お姉さんはどうしてこんなところに?」
「え、えーと……言っても信じてくれないと思いマスけど……」
「……今、クリーチャーって言ってた」
ぼそり、と恋ちゃんが呟く。それを聞いて、女の人は諦めたように首をもたれた。
「う。やっぱり聞かれてたのデスね。で、でも」
「ちょっと、君のことについて教えてほしいな」
女の人の前に鳥さんが飛んできた。って、急に出て来ちゃ駄目だよ!
流石にびっくりしちゃうかもしれないし……鳥さんをすかさず隠そうとするわたしだけど、金髪の女の人は物珍しそうに鳥さんを見た後に言った。
「ああ、ナルホド! この子もクリーチャーデシタカ! じゃあ、皆さんクリーチャーが見えるんデスね!」
「うん、間違ってはいないね」
良かった。呑み込みが早い人で。ということは、わたし達みたいに実体化したクリーチャーを探している人なのかな。
「お姉さんもクリーチャーを追っていたんだ」
「ということは、ユーちゃんたちと同じ、ですね!」
「ハイ! 同じ境遇の人に助けられてよかったデス!」
と、納得しちゃった。
やっぱり、クリーチャーのことについて知ってるんだ。
「やっぱり、ワイルドカードを追っている人は多いってことデスネ……」
「え、え? ワイルド、カード?」
「ふむ、小鈴。やっぱり今回の事件は、どうやら僕の感知していないところで発生したもののようだ」
「ふぇ? どういうことデスカ?」
さっぱりわけが分からないよ。
鳥さんもこんなことを言ってるし、鳥さんも知らない所で事件が起こっていたってこと?
じゃあこの女の人は何なんだろう。
「……そうデス! そういえば、宝石みたいにキラキラした亀さんがこの辺にいませんでしたカ!?」
『探偵……無事のようじゃな……』
呻くような声が聞こえた。さっきよりも弱っている亀さんの声だった。もう少しで死んじゃいそうだけど、どうすればいいのか分からないよ。
「ワ、ワンダータートル! そこに居たんですカ!?」
『さっきからずっとおったわい、バカモン!』
「Sorry! 今助けマス!」
そして、やっぱり亀さんとお姉さんは知り合いなんだ。
いや、知り合いというよりも……何だろう、友達とも違うような気がするし、相棒同士、っていうのかな。ああいうのは。
「やっぱりマナが不足してるんだね。どうやって補給するのかは分からないけど」
「それじゃあ、亀さんは……」
「だ、大丈夫でしたカ、ワンダータートル! しっかりするデス!」
『探偵……早く、ワシにマナを……』
すると、女の人が手に持っていたカードが光って亀さんも光に包み込まれまれました。
その亀さんを女の人は頭の上に乗せました。見ると、すっかり元気になったようで、甲羅がピカピカと光出しました。
やっぱりその亀さん、クリーチャーだったんだ。だけど、クリーチャーに取り付かれているというわけではないみたい。
「え、えと、とにかく事情を話さないといけないようデスネ」
改めて風貌を見ると、本当に変わった人だった。
どこかの学校のブレザーの制服――少なくともこの辺りじゃない――に、この暑い日にアニメや漫画の探偵が着けているような帽子を被っている。
そして、その探偵っぽいお姉さんはくるりん、と一回転すると決めポーズ。何でこんな恥ずかしい恰好が出来るんだろう。私には真似できないよ。
「私は或瀬ブラン! 高校2年生の、名探偵デス!」
うん、もうわけが分からないよ。探偵って何? 少なくとも、私にはコスプレしてる人にしか見えないんだけど。
「え、えと、それじゃあその亀さんは……?」
『失礼じゃなあ、小娘。ワシは由緒正しいエリアフォースカードの守護者。そこらのワイルドカードと一緒にするでないぞ』
「え、えと、さっきからよく分からないんだけど……ワイルドカードって何?」
「……喋ってる言語が、色々違う」
「でも、外国人さんみたいですし、仕方ないですよ! ユーちゃんはその気持ち、よく分かります!」
うん、ごめんねユーちゃん。ユーちゃんもわたし達からすると外国人なんだよ。
「じゃあ、何て言ってるのか分かるの?」
「ワイルドカードとか、さっぱりです!」
「だよね……」
「し、知らないんデスか!? クリーチャーを追いかけてるのに!? Why!?」
とにかく、色々波乱に満ちた事件が始まってしまいました。
ワイルドカードとか、エリアフォースカードとか、人間と仲良くしてるクリーチャーとか、分からないことだらけです。
一回、情報を整理した方が良いかもしれません。どこで話した方が良いのかな。
「ギ、ガ、ギ……」
妙な声が聞こえました。
わたし達は思わず振り向くと、壁から何かが現れてきます。
それは真っ赤な身体をした、機械のようなクリーチャーでした。
全身を鎧のような装甲で覆った巨大な怪物です。でも、全身が鎖に覆われていて、動けないみたい。
でも見たことある。あれって、カメさんが前に使ってたゴーレムに似てる。
「ふにゅ!?
「……いや、多分クリーチャー。それも……ゴーレム」
「あれは、《紅の猛り 天鎖》。メタリカのクリーチャーでゴーレムだね。だけど、何故あんな化物がどうしてこんなところにいるんだ?」
鳥さんが驚いたような声で言った。
あのゴーレムさん、そんなに強いクリーチャーなんだ。でも、見た目からして今まで戦ってきたクリーチャーのどれにも劣らないくらい強いのは分かるよ。
「それに、マナは感じられるけど、意識というものが全く感じられないな。まるで、人形だ」
「……どうでもいい。とにかく……倒すしかない」
「このままじゃ、危ないです!」
「そうだね、小鈴。行くよ」
鳥さんの叫び声。あれ? これ、いつもの流れだよね?
一瞬、わたしの服が輝いたかと思うと、いつもの青いひらひらした魔法少女の姿になっていた。
ちょっと! 初めて会った人の前でこれは恥ずかしいよ!
「ワオ……これがJapanの魔法少女、Magical girlデスネ!」
「相変わらず……あざとい」
「可愛いです、小鈴さん!」
「うん、もう何でもいいよ……」
「小鈴、いくよ!」
とにかく、デュエルでクリーチャーを倒すしかない。
鳥さんの叫び声と共に一瞬の浮遊感が身体を包み込み――わたしの前に、いつものあの空間が現れる。
――はずだった。
「……え!?」
何も、起こらない。
デッキも手元には出てこないし、シールドも目の前には現れなかった。
「な、何で……!? 何で何も起こらないの!?」
「おかしいな。ちゃんといつも通りにやってるはずなんだが……」
「小鈴さん!? どうしたんですか!」
「……何か、様子が変」
ゴーレムさんがその巨大な手を振り上げようとしている。あのままじゃ鎖を引きちぎって今にも暴れだしちゃうよ。
「待ってくだサイ! 皆さん、それはワイルドカードデス! エリアフォースカードがないと、戦うことができまセン!」
戦うことが出来ない……?
あれが、さっきから亀さんやブランさんが言ってたワイルドカード? じゃ、じゃあ、どうすればいいの!?
「私達の出番……痛ッ」
『探偵、無理をするでない! ヌシの身体は、先の戦いでもうボロボロじゃ!』
「じゃ、じゃあ……Magical girl! これを受け取るデス!」
ひゅん、とわたしの方に何かが投げられた。
それは、何も書かれていない真っ白なカード。
「これを使えば、実体化したワイルドカードと戦うことができマス!」
「え、えと、どうすればいいの?」
「デュエルエリアフォースって叫んでくだサイ!」
「……なんか、魔法少女の、呪文……っぽい」
うう、この姿で、そんなよく分からない横文字まで叫ばなきゃいけないなんて……完全に魔法少女みたいだよ。誰かに聞かれてたら、もうお嫁さんにいけない……。
でも、もう仕方ない、やるしかないよ。
「デュエルエリアフォース!」
☆ ☆ ☆
今度はデッキも、シールドも目の前に現れた。
いつもとはちょっと形式が違うけど、やることは同じみたい。
こうなったら、もうとことんまでやるよ。
さて、わたしとゴーレムさんのデュエル。鳥さんはメタリカのクリーチャーって言ってたから、カメさんの時みたいに《ワンダータートル》が来ないように気を付けないと。
「ギ、ガ、ゴギ……正義ヲ執行ス……」
マナゾーンには光のカードが2枚。
そして、空中にローマ数字の11番の文字が現れ、鎖に縛られた赤い鎧のクリーチャーが現れる。
「呪文、《ヘブンズ・フォース》。効果デ、コスト4以下ニナルヨウニクリーチャーヲダス。《龍装者 バーナイン》召喚。効果デ手札ヲ引ク」
「いきなり出て来ちゃった……」
どうしよう、2ターン目から《バーナイン》が出てきちゃいました。
たしか、メタリカが出てくる度にカードが引けるんだっけ。
カメさんとのデュエルの後、ちょっと調べたけど、メタリカのデッキはまだ知らないことだらけだよ。何をしてくるんだろう。
「わたしのターン、マナをチャージしてターン終了!」
「ギ……ギガゴ……」
呻くような音を上げて、ゴーレムさんの手からカードが飛び出す。
タップされたマナはまた2枚。《クリスタ》を出すのかな、とわたしは思っていたけど――
「《紅の猛り 天鎖》、召、喚」
現れた巨大なクリーチャーを前に、私は足がすくみそうになった。
本当に2マナのクリーチャーなの!?
この威圧感、大きさ、とてもそうとは思えないよ。
「《天鎖》ハパワー14500ノT・ブレイカー……タダシ、ジブンノシールドガ6枚以下デハアンタップデキナイ」
「えっ……!? えぇ!?」
どうしよう。あんなにパワーが高いクリーチャー、どうやって除去すれば……。
えっと、確かメタリカにはシールドを増やすクリーチャーもいたんだっけ。
だとしたら、いくら今はアンタップしないと言っても、あのロボットさんが動き出すのはそうそう遅くないかもしれない。
「え、えと、わたしのターン!」
カードを引いたわたしは2枚のマナをタップする。
「《風の1号 ハムカツマン》召喚! 効果でマナを1枚増やすよ!」
今はマナを増やすだけしかできないけど、手札に引いたカードは《天守閣 龍帝武陣》。これを次のターンに唱えれば、コストの低い《天鎖》、そしてマナ武装で《バーナイン》も倒せる。
次のターンに反撃だよ。
ターン4
天鎖
場:《天鎖》、《バーナイン》
盾:5
マナ:3
手札:3
墓地:1
山札:26
小鈴
場:《ハムカツマン》
盾:5
マナ:4
手札:4
墓地0
山札:26
「ガ、ギ、ゴ……正義ヲ執行ス……我ガ主ノ、正義ヲ……4マナデ《正義の煌き オーリリア》召喚」
ぽちゃん、とバトルゾーンに落ちた青い雫。
そこに11のローマ数字が浮かび上がり、それは徐々に形を成していく。
現れたのは目玉を持った何とも言えない無機質で怖いクリーチャーだった。
「《バーナイン》ノ効果デ1枚ドロー、ソシテ《バーナイン》デ攻撃」
巨大な剣を構えた銀人がわたしのシールドを切り払った。
だけど、その攻撃は次のターンのわたしの力に変えるよ!
「S・トリガー、《金縛の天秤》! その効果で、カードを2枚引くよ――」
「ラビリンス、発・動」
カッ、と《オーリリア》の目が光る。
みると、《金縛の天秤》が灰色になっている。
唱えようとしたけど、何にも起こらない。ラビリンスって確か、シールドが相手よりも多かったら発動する効果だよね。ということは、これは《オーリリア》の効果?
「相手ハモウ、コスト5以下ノ呪文ヲ唱エルコトガデキナイ」
「えっ……?」
そ、それじゃあわたしのデッキに入ってるほとんどの呪文が無効化されたってこと?
これは困ったな……。
しかも、クリーチャーを並べてるのに全然手札が減ってないよ。
何とかして《天鎖》と《オーリリア》も破壊したいけど、手札の超次元呪文も除去呪文も使えないよ。
仕方ない、こっちも手数で応戦しなきゃ。
「わたしのターン、4マナで《
これで残るロボットさんのクリーチャーは2体だけ。
攻撃できるのは《オーリリア》だけだよ。
これでターンは終了。次のターンからは呪文が自由に使える。さらにダメ押ししなきゃ。
《天鎖》がアンタップしないようにシールドを減らしておかないと……。
「よし、《ハムカツマン》で攻撃! シールドをブレイクだよ!」
《ハムカツマン》のヌンチャクがシールドを叩き割った。
だけど、割られた盾が光になって輝きだした。
「S・トリガー、《プロテスト・ミスト》。効果デカードヲ1枚引キ、手札カラ《奇石 ソコーラ》ヲ出ス。ソシテ、次ノ自分ノターンノハジメマデ《ソコーラ》ニブロッカーヲ与エル。《バーナイン》ノ効果デ1枚引ク」
「う、だけど、攻撃できるクリーチャーはもういないし、ターンエンドだよ」
あう、結局相手のクリーチャーは減ってない……。
だけど、厄介な《オーリリア》はどかしたし、これで良いのかな。
ターン5
天鎖
場:《天鎖》、《バーナイン》、《ソコーラ》
盾:4
マナ:4
手札:5
墓地:2
山札:23
小鈴
場:《ハムカツマン》、《ボスカツ闘&カツえもん武》
盾:4
マナ:5
手札:3
墓地0
山札:24
「……呪文、《ヘブンズ・フォース》。ソノ効果デ、コスト4以下ニナルヨウニクリーチャーヲダス」
またあの呪文だ。
今度は何を出すんだろう。
とにかく、何が来ても次のターンに《龍帝武陣》で破壊できるけど……。
「《紅の猛り 天鎖》ヲ2体、バトルゾーンニ出ス。《バーナイン》ノ効果デ2枚引ク」
「えっ……」
わたしの顔から、さっと血の気が引いたのがわかった。
次の瞬間、地面からさらに2体の鎧をまとったゴーレムさんが出てきました。
そうか。コスト4以下になるようにクリーチャーを出すんだから、ああやってコスト2のクリーチャーを2体出すこともできるんだ。
って、感心してる場合じゃない。どうしよう、パワー14500のT・ブレイカーが3体も並んじゃったよ。
でも、あれが起き上がりさえしなければ大丈夫……? なのかな。
「3マナデ《奇石 タスリク》召喚。効果デ相手ノ呪文ヲ唱エルコストハ2増エル」
また呪文を封じてきた。だけど、《龍帝武陣》のコストは4。次のターンにわたしのマナは6枚になるから、唱えられるよ。
「《ソコーラ》デ《ハムカツマン》ヲ攻撃。ソノ効果デシールドヲ1枚増ヤス。」
変な形をした石が《ハムカツマン》を撃ち抜いて破壊した。
やっぱり殴り返してきたよ。しかも、シールドも増えてるし。
「《バーナイン》デシールドヲブレイク」
再び巨大な剣がわたしのシールドを切り裂いた。
だけど――
「S・トリガー、《網斧の天秤》で《タスリク》をマナに置くよ!」
……わたしのシールドはあと3枚しかない。
だけど、ゴーレムさんの場には《天鎖》が3体もいる。
どうにかしてどかさないと……!
「わたしのターン、6マナをタップして、呪文・《天守閣 龍帝武陣》を唱えるよ! 効果で、コスト3以下の《天鎖》を破壊! そして、多色マナ武装4で《天鎖》をもう1体破壊! そして、《ボスカツ闘&カツえもん武》で《ソコーラ》も破壊するよ!」
「ニンジャ・ストライク4発・動。《光牙忍 ハヤブサマル》デソノ攻撃ヲブロック」
「あう……」
クリーチャーの数は減らせたし、これで大丈夫……なはず。止められちゃったけど……。
でも、このゴーレムさん、何か動きが変だ。カメさんが多用してた攻撃曲げをほとんど使ってきていない。
それがかえって不気味だよ。
ターン6
天鎖
場:《天鎖》、《バーナイン》
盾:6
マナ:5
手札:4
墓地:2
山札:18
小鈴
場:《ボスカツ闘&カツえもん武》
盾:3
マナ:6
手札:3
墓地2
山札:23
「ドロー……6マナヲタップ」
ゴーレムさんのターン。
その手から、再び光輝いたクリーチャーが現れた。
「開闢セヨ、《陰陽の果て 白夜》」
宙から現れたそれは、バトルゾーンを大きく揺らす。
ごつごつとした岩肌を持つ、全身が鉱石でできた巨体だった。
「《白夜》ノ効果……マズ、シールドヲ1枚増ヤス。ソシテ、ラビリンス発・動」
バトルゾーンが光煌く鉱石の迷宮に変わる。
カメさんの時とはまた違う。
「効果デ、自分ノクリーチャーハ次ノ自分ノターンノ始メマデ、スベテノバトルニ勝ツ。《バーナイン》ノ効果デ1枚カードヲ引ク」
……えっ? ええ!? 全部のバトルに勝つ、ってパワー関係なく、ってこと?
それじゃあ、殴り返すことさえできないよ。
「マズ、《ソコーラ》デ攻撃スルトキ、シールドヲ1枚増ヤス。シールドヲブレイク。ソシテ、《バーナイン》デ《ボスカツ闘&カツえもん武》ヲ攻撃……自分ノ光ノドラゴンガ攻撃スルトキ、革命チェンジ発・動」
ドラゴン……って、そうか。《バーナイン》はドラゴンギルドだから、ドラゴンという扱いなんだ。
さらにゴーレムさんの手札から光が飛び出して、《バーナイン》とバトンタッチ。
出てきたのは――
「――《タイム2 ファソラXII》。ソノ効果デ、光ノコスト4以下ノ呪文……《攻守の天秤》ヲ唱エル」
飛び出してきたのは、シルクハットをかぶったドラゴン……なのかな?
だけど、今度はその手札から呪文が飛んでくる。
そして、光が降りそそいだかと思ったら――
「ソノ効果デ、《天鎖》ト《ソコーラ》ヲアンタップスル」
ぶちぶちっ、と音が聞こえた。
今の今までずっと鎖に縛られていたゴーレムさんがついに動き出す。
赤い鎧に覆われた切れ間から狂暴な瞳が光った。
「シールドガ6枚以下ノトキ、《天鎖》ハアンタップシナイ……シカシ、今ノ我ガシールドハ7枚。コレデアンタップダ。《天鎖》デ、シールドヲW・ブレイク」
轟!! と嵐のような鉄槌がわたしのシールドをすべて薙ぎ払った。
あの巨体からは想像できないほどの凄まじい速さ、そして威力。
身体が吹っ飛ばされそうになった。
まずい。このままクリーチャー達をどかせなかったら、わたしの負けだよ。まだ場にはアンタップした《ソコーラ》が残ってるのに……!
「……来た! S・トリガー、《ドドンガ轟キャノン》! 効果で《天鎖》を破壊! そして、S・トリガーで唱えた時、わたしの残りシールドが無いから、スーパー・S・トリガー効果を発動するよ! 最後に《
次の瞬間、わたしの背後に現れた巨大な砲台。
そして、耳をつんざくような爆音と共に、火砲がゴーレムさんの場を焼き尽くす。
これでもう、攻撃できるクリーチャーはいないよ!
「……わたしのターン! 《熱湯グレンニャー》を召喚して、効果で1枚ドロー! そして、《超次元 ボルシャック・ホール》で《勝利のリュウセイ・カイザー》をバトルゾーンに出すよ! これで、ゴーレムさんはマナにカードをタップしておかないといけないよ! そして、《クロック》でシールドをブレイク!」
これで、ゴーレムさんのシールドは残り6枚。
巻き返してきた! だけど、まだ油断できない。あと1回でも攻撃されたら、わたしの負け……!
ターン7
天鎖
場:なし
盾:6
マナ:7
手札:5
墓地:6
山札:14
小鈴
場:《熱湯グレンニャー》、《勝利のリュウセイ・カイザー》、《終末の時計 ザ・クロック》
盾:0
マナ:7
手札:4
墓地3
山札:21
「……1マナデ、《赤攻銀 カ・ダブラ》召喚。6マナデ《正義の煌き シーディアス》召喚」
再び雫がしたたり落ちて、一つ目玉の怪物が現れる。そこに、包帯で顔を巻いた銀人も姿を現した。
「《シーディアス》ノラビリンスデ、他ノクリーチャーハ選バレナイ」
うわぁ、また新しいラビリンス持ちクリーチャーだ。
でも、マナも十分。手札もさっきの攻撃で揃ってる。
チャンスは1回。このターンだけ。一気に攻め込むよ!
「わたしのターン! 3マナで《ハムカツマン》を召喚! その効果でマナを1枚増やすよ! そして、《グレンニャー》を
そう、このデッキはわたしが今までいろんな人に関わる中で手に入れてきた力。
それを見せてあげるよ。
これが、わたしの力だ!
「――《
魔砲の巨鯨の力は、どんな呪文でも自在に操れること。
そう、墓地からも、そして手札からも。
今だからこそ、この一撃を叩きこむよ!
「まずは、《クロック》でシールドをブレイク!」
「トリガーハ……ナイ」
「そして、《クジルマギカ》でシールドを攻撃……するとき、効果発動! 手札から《母なる星域》を唱えるよ!」
この呪文は、場にあるクリーチャーを1体マナに置けば、マナゾーンの枚数以下のコストを持つ進化クリーチャーを1体、マナゾーンから場に出せるというもの。
「効果で、《クロック》をマナゾーンに置くよ! そして、《ハムカツマン》を進化!」
そう、これはわたしがあの人から貰った大切な切札。
順当で純正な、進化の形。
「――《エヴォル・ドギラゴン》!」
飛翔した炎の龍。
いつも以上に、傍にいる《ドギラゴン》が心強い気がする。
「そして、《クジルマギカ》でシールドをW・ブレイク!」
これで残るゴーレムさんのシールドは3枚。
ここまで削るのが長かったよ。
「S・トリガー、《ジャスト・ラビリンス》。《シーディアス》ヲタップシ、1枚カードヲ引ク。ソシテ、《シーディアス》ハ攻撃曲ゲ持チ――障壁トナル」
「ううん、《エヴォル・ドギラゴン》はバトルに勝てばアンタップする。どんな障壁だって、《ドギラゴン》と一緒なら乗り越えてきたし、これからもそうだよ! 選ばれないけど攻撃ならできるから、《ドギラゴン》で《シーディアス》を攻撃! バトルだよ!」
一瞬で炎が《シーディアス》を焼き尽くし、その爪が一瞬で水晶の怪物を切り裂いた。
パワー14000の《エヴォル・ドギラゴン》に勝てるクリーチャーはそうそう存在しない。
一方的に破壊だよ。そして、バトルに勝ったからアンタップだ。
「今度は《ドギラゴン》で《カ・ダブラ》も攻撃! パワー14000と7000でこっちの勝ちだよ! バトルに勝ったから、アンタップ!」
「ギ、ギギ……!!」
「そして、《ドギラゴン》でシールドをT・ブレイク!!」
焼き尽くされるゴーレムさんのシールド。
もう、トリガーも何もないようだった。
それなら、これで終わりだよ。
「《勝利のリュウセイ・カイザー》でダイレクトアタック!」
☆ ☆ ☆
終わった。空間は崩れ去り、《天鎖》はカードの姿になって地面に落ちる。
デュエルが何とか終わってへたりこんだわたしはあることに気付いた。
あれ? 確かにおかしいな。今までのクリーチャーなら、マナの塊になって、それを鳥さんが食べていたのに。
「成程、これでは食べられないわけだ」
「そうなの?」
「これはただの紙でしかない。どうやらワイルドカードというのは、彼女が居た場所で起こっている、ただのカードにマナが宿る現象というわけだ。しかもそれだけで説明できる単純なものでもなさそうだよ」
そうなんだ……だからかは分からないけど、普通のクリーチャーとは違って、この真っ白なカードがないと戦えないんだ。
「小鈴さん!」
「こすず……」
ユーちゃんと恋ちゃんの声が聞こえてきた。
そして、足取りはおぼつかないけど、ブランさんもやってくる。
「You、本当に強いデスね! すごいデュエルデシタ!」
「ブランさん、あの大穴を開けたのは、さっきのクリーチャーなんですか?」
「それは違いマス……わたし達もよく覚えてないんデスけど……」
『あいつは唯の尖兵じゃろ。もっと強いのがおる。どのみち、放置していればもっと滅茶苦茶なことになるじゃろうな。同じ正義を司る光のクリーチャーが聞いて呆れる』
ということは、ブランさんが追ってきたという謎のクリーチャー。それが何なのか突き止めて、倒さなきゃいけないってことか。
しかも、まだ今みたいなのが何体もいるってことだよね……。
「とにかく、お願いデス! 私の仲間がこの辺りに落ちていればいいのデスけど……探してくれマセンカ?」
『落ちた場所は近いはずじゃ。1つの穴から分岐したのならな』
「わたし達でよければ……それに、ブランさんの言ってたワイルドカードも放っておけないよ」
「……仕方ない。一応、協力、する」
「ユーちゃんも賛成、です! はい!」
皆も協力してくれるみたい。
まずは、ブランさんの仲間、そしてこの街にやってきたクリーチャーを探さないと……。
「コスズ、でしたヨね? 本当にThank youデス!」
「……ところで、さっきの仲間……通信機器が使えるなら、それで連絡した方が良いと思う」
確かに、恋ちゃんの言う通りだ。
それを聞いて、徐にブランさんはスマホを取り出す。
「それじゃあ、試しにスマホで連絡を……あれ?」
ホーム画面を開いたブランさんは、硬直した。
どうしたんだろう。
「あ、あれ? おかしいデスね?」
「どうかしたんですか?」
「いや、このスマホの時計は電波時計アプリで自動的に時計を合わせるようになってるんデスけど……日付が4年前になってるんデス」
「え?」
「おかしいデスよね……今日は2017年8月16日のはずなのに……Why?」
これは、大変なことになったかもしれない。
最初こそ時計機能がおかしくなったのかと思った。
ブランさんが頭を打ったのかと思った。
だけど、そうじゃないのかもしれない。だって、この人はあの大穴からやってきたから。そして、その大穴が繋がっていた先は――
「……今は2013年8月16日、ですよ?」
――未来、なんだ――!
☆ ☆ ☆
根暗で、引っ込み思案な私には友達と呼べる人が誰一人いなかった。
本だけが、そして、本の中に出てくる
だけど――
「――」
彼は、私を拒絶しない。
彼になら、私は魂を売っても良いかもしれない。
私は――
「友達に、なろう?」
というわけで、コラボ番外編第一話でした。
交換で短編を書くという企画のはずが、自分の方が長引いてしまって短編とは言えない長さになってしまいました。とはいえ、他作品のキャラを書く事自体が良い経験になりました。小鈴ちゃんのデッキもトリッキーな所がありつつも破壊力抜群なので書いてて気持ちが良かったですね。
また、やってみたかったマジカル☆ベルキャラの会話。それぞれ個性が強いのでこれも楽しかった覚えがあります。
誤字感想だとかその他諸々ありましたら、よろしくお願いします。ではでは。