― 3 ―
一也はとある街に現れた怪人を追って、調査に来ていた。
その街で、人生を謳歌していると言わんばかりのバイオリニストに出会う。
彼の名は紅音也。彼もまた一也と同じ怪人を追っていたのだった。
音也と出会って数日後、街の近くにある工場まで音也は怪人を追い込んでいた。
一也が現地に駆けつけると、既に音也が仮面ライダーイクサへと変身し、怪人を倒していた。
「さぁて、勝負は俺の勝ちだな」
音也は変身を解除しながら、後ろにいた沖一也にそう告げる。
目の前で倒した怪人、はぐれファンガイアをどちらが早く退治できるかという勝負を音也は提案していた。
途中から目撃したとはいえ、一也は音也の実力を理解せざるをえなかった。
「あぁ、キミの勝ちだ。音也」
「よぉし、一也。それじゃ、ひとつ約束を聞いて欲しい」
人差し指を一也の目の前に出し、音也は一也に向けて真剣な顔で告げた。
「俺としても、知り合ったばかりの男に、こんなのを言うのはあまり乗り気じゃないんだが、お前は俺よりも強いと見込んでの頼みだ。【俺がもし死んだ後、息子に危険が迫った時にはおまえの力で救ってやってほしい】」
「……あぁ、わかった」
告げられた理由はあえて聞かなかった。なにか聞いてはいけない気がした。
すぐに返答をしてくれた一也を見て、音也の表情は笑顔へと変わっていく。
「よし、確かに頼んだぞ」
「……音也、こちらからも一つ質問だ。キミに息子はいるのか?」
一也は音也と出会ってから息子がいるなんて、言葉は一度も聞いていなかった。
空を見つめ、音也はつぶやく。
「……いるとも。正真正銘、俺の息子だ。人生に迷ってばかりだがな」
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― 4 ―
「こぉぉぉぉぉぉっ……」
ゆっくりと息を吐き、呼吸を整える沖一也。まぶたを閉じている間、紅音也との約束を思い出していた。
対峙する仮面ライダーキバは事前に聞いていた姿とは全く異なる出で立ちをしている。首から下が全て鎖で拘束され、さながら鎧を見にまとう騎士のようにも見えた。一也は目を見開くと、大きく飛び上がった。
「とぁっ!!」
すぐさま跳び蹴りを繰り出すも、キバの攻撃に阻まれてしまう。
「ぐぅっ!」
空中で姿勢を変え、なんとか着地をした一也は、再度身構える。
「君のお父さんと約束したんだ。絶対に君を助けると!」
『ガァァァッ!!』
一也の声には目もくれず、攻撃を繰り出すキバ。
(聞いていた姿とは異なる点で一番、違和感があるのは…)
一也はキバの姿を改めて確認していくと、ベルトの部分だけは鎖が巻きついていない事に気づいた。代わりに機械的な装置のようなものが取りつけられているようだった。
(おそらく、あれが渡君を操っている正体か)
「はぁぁぁぁっ、たぁっ!!!」
ベルト部分めがけて、正拳突きを繰り出す一也。
『ガゥッ!!』
攻撃をいなさずに後ろに飛び退くキバ。
「そこが弱点か! ならば!!」
一也は自分もキバとの距離を開け、瞬時に変身のポーズを構える。
「はぁぁぁぁぁぁっ……変身!!」
虹色の光を放ちながら、沖一也は仮面ライダースーパー1へと変わっていく。
『いくぞ!!』
スーパー1の姿を認識したキバの動きが、一瞬止まると、電子音と共にベルトに備え付けられていたランプが光りだす。
直後、キバの姿が一瞬で消えた。
『!!?』
すぐに攻撃を察したスーパー1は両手で花びらを包み込むように繰り出した型を変える。
『赤心少林拳、【梅花】!!』
『ガウッ!!!』
梅花の型は、全方位の攻撃を受け流す為に使用する技だったのだが、キバの繰り出した攻撃はあまりにも強力すぎた。
スーパー1は勢いよく吹き飛ばされてしまう。
『ぐああああっ!?』
吹き飛んだスーパー1に追い打ちをすべく、飛びかかろうとするキバだったが、動きがピタリと止まる。
『………に、ゲ、てく、ださい』
『!? 渡君、君なのか!』
『はや…く………、ガアアァァァァァアアアアア!!!』
両手で頭を抱え、咆吼をあげたキバは、すぐさまジャンプをして、そのまま逃げ出した。
『待てッ! グッ…』
すぐに立てない事を把握したスーパー1は地面に拳を突き立て、悔しがる。
『……クソッ!!』
獣のような気配が遠ざかるのを認識し、スーパー1は変身を解除し、沖一也へと元に戻る。
「渡君、辛いだろうが待っていてくれ。次は絶対に助け出す」
誰でもない自分に言い聞かせるように一也はそうつぶやいた。