シリアス&一夏敵対作品、アンチタグは付いてますが本格的なアンチはしません。
あくまで敵対です。
––––かつて織斑計画と呼ばれる究極の人類を創造すると言う狂気の計画が存在した。
別名プロジェクト・モザイカ、膨大な時間と多大な資金を投じて行われたそれは、一定の成果を上げはしたもののそれによって創り上げられた存在を超える至高が既に存在していた為、完成と共に頓挫してしまう。
成功例は二体、そして計画外のつがいとなる成功個体が一つ。
成功例の一つはその弟となるつがいを連れて逃げた、もう一人の妹の存在を知らずに。
しかし、逃げた彼女を作る為に制作された『
無論生かしておくだけ金がかかる、権力者達はそんな出来損ないを使う事も考えたが個々にムラがあり過ぎた。
だからこそ、その中の一体であるPM–S10と呼ばれる個体に一体づつ処分させて行く事に決める。
彼は頭脳・肉体のスペックが共に合格基準を大きく上回っており、脱走した成功体のつがいとして期待されていたのだが、彼には致命的な欠点があった、それ故に全てのスペックが高水準であっても出来損ないの烙印を押され同胞の処刑を淡々と行わされていた。
彼に不満は無い––––その様な物は許可されていない。
彼に涙は無い––––その様な物は究極の人類には不要。
彼に躊躇いは無い––––その必要は無い。
彼に未来は無い––––それが彼唯一の欠点。
そんな彼がとある地下研究所に出荷され、機械的に、事務的に仲間を処理し続けて数年が経った頃、返り血を拭うことも無く頭部が弾けた
普段ならば処理場に送られて来たソレらを処理して数分で与えられた部屋への帰投が指示されるのだが、今日は何故かその指示がない。
分厚いコンクリートの壁越しに聞こえる研究者達の焦り声から何事か起こったのだろうと予測できるが、それに対する意見・行動を指示されていない為、彼は無表情のまま立ち尽くす。
そのまま更に数分で処理場にスピーカー越しの声が聞こえて来た、新たな指示だろうと当たりをつけた彼はスピーカーへと目を向ける。
『S10番!! 侵入者だ!! アメリカかドイツか或いはそれら以外かその全てかは分からん!!』
「…………オーダーを」
抑揚のない機械と錯覚しそうなほど平坦な声で彼はそう告げる、それは新たな指示を受けた際に復唱と再確認の為に発する数少ない彼の言葉だった。
『チッ!! 融通の利かん出来損ないめッ!! この基地内に存在する
苛立ちを隠さずに怒鳴り付ける研究者、彼からすれば一刻も早く脱出しなければ命が危ないと言うのに見捨てる予定の廃棄物と会話をしなければならないのは精神的にクるのだろう。
––––だが、彼はこの瞬間重大なミスを犯した。
最強の廃棄物、S10は兎に角融通の利かない存在であった為、指示を与えるには正確且つ詳細な言葉にしなければならない。
故に、焦りによって口を滑らせた『全ての勢力』と言う言葉に自分達も含まれている事を見落としてしまう。
「……了解、認識した」
唇から出た言葉は最早取り消す事など出来ない、相互の誤解を訂正できないままS10の持つ端末に侵入者の情報が送られると同時に処理場の扉がアンロックされ––––その先に居た逃げ惑う研究員達は皆鏖殺された。
原型が無くなるまでカスタムされた彼専用のハンドガンとアタックナイフ数本、たったそれだけの装備を引っさげた彼は血溜まりの中を堂々と歩いて行く。
そしてターゲットを見つけると閉鎖空間なのを利用し、壁を蹴って天井の溝に靴先を引っ掛ける事で身体が落下する前に足を踏み出して天井を駆け抜け、突入部隊の背後に回る。
そして外見から見て十数才の少年が見せた現実離れした光景に意表を突かれた者達に容赦無く凶弾を放つ。
なので一発放った瞬間、まるで水風船が弾ける様に射線上に居た全ての人物が砕け散った。
無論こんな物は撃った方にも反動が来る、処分予定の個体に持ち合わせる情などない故に引き金を引く度に腕の骨が砕けるのだが、彼は自分に処理した研究者達から手に入れた治療用ナノマシンを複数本投与することでその欠点を克服する。
人間離れした少年に対する動揺と混乱、それによって足の止まった者達を殺戮する事など彼にとっては赤子を捻るよりも容易く、瞬く間に彼らは全滅した。
それをS10は幾度も繰り返し続けてあらゆる勢力を血溜まりと肉片に変えた後、彼は最後の生き残りと対峙する。
––––彼女が幸運だったのはISを纏っていた事だろう、既存の兵器を全て過去の物へと変えたソレは閉鎖空間と言う不利な地形であっても十二分に脅威であった。
S10の持つ特別性の銃もISの技術が使われているとは言え所詮は通常兵器、超至近距離ならばともかく距離を離された状態では通用しない。
––––そして同時に彼女が不幸だったのはそれ故に最後の最後に処分を回された事だろう。
ISを確認した彼は一度その場から逃げ、巧妙に他の階層に大量の爆薬を仕掛けながら最下層まで相手を誘導した。
この場所は
崩落位置を正確に把握していた彼は無傷で生き埋めとなったISへと近寄って行き、瓦礫の隙間に銃を捩じ込み露出した首元目掛けて特注の弾丸を放つも、シールドバリアに弾かれる。
だが彼は気にする事なく引き金を引き続ける、いくら超兵器ISであろうとも身動きが出来ない様に固定してシールドバリアを発動させ続ければそれに応じたエネルギーがほんの僅かづつとは言え消費されて行きいずれ限界が来る、その瞬間まで引き金を引き続ければ良い、ただそれだけだからだ。
地下施設を地上部ごと丸々破壊し、その超質量に押し潰された侵入者、ISは優秀な機体であるラファール・リヴァイヴであったがそれでも限界は来てしまう。
何発目かも分からないその一発を放った時、瓦礫の一部が沈み込む。
それと共にそれまで無様に命乞いをしていた女の声が消えた、何かが潰れるような音と共に。
彼は瓦礫を漁って待機状態となったISを圧死した女から回収する、死亡確認の意味が強かったのだが次の瞬間彼の体には今しがた処理した女のISが纏われていた。
女にしか使えないISが男の自分に何故?と言った事は考えなかった、オーダーを済ませて次の指示を待つ彼にとってそんな物はどうでも良い。
「––––あら? 貴方面白いのね?」
–––––だから、ぶち抜いた天井から降りてきたISに乗った金髪の女性に次の指示を求めた。
「……オーダーを」
「せっかちな坊やね? 先ずは自己紹介といきましょう? 私はスコール、この施設に用があったのだけれど何か知らない?」
「……戦闘行為の結果」
「そう、で? 貴方の名前は? 二度も聞かせるなんて、モテないわよ?」
自ら聞いたにも関わらず施設の状態など興味ないと言わんばかりの態度の女––––スコール。
彼女に対し彼は名を名乗れない、その様なものは与えられなかった。
だから個体番号を答えたのだが、今まで決まった語句しか話して来なかったのか、発音に少々難があったらしい。
「PMー
「そう、シュウと言うのね? 気に入ったわ、私といらっしゃい」
エスジュウと答えた筈がスコールはシュウと聞き間違えてしまった、彼は名前と言う符号に興味が無かった為訂正をしなかった。
––––この後に彼が引き起こす惨劇の序章はこうして終わったのだ。
ISを生身やるならヤスリで山を削るような真似したらいいんじゃね? と思ってやってみました。
通用しないってだけでシールドバリアを使用したらエネルギーは僅かでも減るだろうと言う考えが元なので多少は大目に見てください。