織斑一夏の一件以降、全世界で同時に行われた調査にてISを起動出来る二人目の男として表舞台に立つ事になったシュウは、現在デュノア社の持つ研究所に顔を出していた。
目的は自分の専用機となる新たなラファールの受領と塗装や装備の要望、正直なところISによるテロ活動やそれに伴う対IS戦の経験がある以上どのような機体に乗せられても十全に使い熟す自信を持っている彼からすれば、それこそ時間の無駄でしかないのだが、様々な理由を建前にしてでも男性操縦者のデータが欲しいのだろう。
彼は自分の正体に繋がるパーソナルデータ等の提出は拒否してはいるが、それの代償としてその部分を除いたあらゆるデータが観測される、今回の呼び出しもその為の物だ。
「やあやあ我が社の救世主どの、よくぞここまで来てくれましたな、我々一同貴方様の到着を––––」
「……本題に入れ、時間の無駄だ」
シャルロットの護衛として雇われていた彼はその都合もあり、そのままデュノア社に囲われる様な形でなし崩し的に専属の操縦者として再雇用される事となった、いや正確には結果が出た瞬間に迅速に雇用条件の見直しと再契約を行ったと言うべきだろう。
マスコミが追加報道するよりも早く二人目の身柄を抑えたデュノア社は、それを盾にするかの様に政府と交渉を行いつつも支援の約束を取り付けた為、それまでの冷遇から一転して予算も潤沢になった。
それ故に研究所に足を運ぶ度におべっかを使う開発者連中にシュウは軽い嫌悪感を抱く、その一言一言が既に時間の浪費でしか無いのだから。
顔を隠す包帯の下から覗く射殺すような視線にたじろいだのか、出迎えた男は冷や汗と共に顔を逸らして手に持つ端末を操作する。
「こ、今回は君の要望通りにカスタムしたラファール・リヴァイヴ・カスタムⅠの装備をチェックして貰うのが目的だ」
「……深紅の塗装は?」
「無茶を言うな!! あの忌々しい紅の所為で我が社にどれほどの被害が出たと思うんだ!! 世間ではラファールの紅は鮮血の紅だと揶揄されるほど、後ろ指を刺される物なんだぞ!!」
「……ふん、なら目立つ色にしろ」
かつての搭乗機に愛着など無いが赤い色は良く目立つ、自分の存在を証明する事の出来る色だとシュウは感じていた為、専用機のカラーリングを要望したが残念ながら通らなかった。
仕方がないので二番目に目立つ色として金色を選び、それの通りに塗装されて行く機体を一瞥した彼は、手渡された資料の内容を頭の中へと入れて行く。
以前使用していた機体はラファール・リヴァイヴ・カスタムⅡであった為か、それなりの差異はあるものの基本的な操作感までは変わらないはず、乗り慣れないと言う事は無いだろう。
資料に一通り目を通した彼は今しがた読み終えたソレを通り掛かりの職員へ押し付けると、腕を組みながら塗装の完了を待つ。
今回自分の乗る機体はカスタムⅠ、大幅な改修がされたカスタムⅡに比べて攻撃・防御面に劣るものの、コンセプトは機動性重視。
迅速且つ的確な一撃を叩き込む事が出来るのなら、対IS戦においては無数の武器など不要だとこれまでの経験から感じていた彼は自分の機体の武装にそれを取り入れた。
まず機動性・運動性を手に入れる為に装甲の軽量化とスラスターを増設、
射撃兵装は一応ランスの縁に搭載されたマシンキャノンがあるにはあるが、装弾数と連射力を重視した射程・集弾率が劣悪な代物、もう一つのハンドガンも普通の装備の枠を超えたモノでは無いので超攻撃型のISに仕上がった。
大型シールドを構えながら超高速で吶喊し、ランスやパイルバンカーで相手を叩き落とす、以前の多彩な装備に比べて非常に簡素な物になった理由は彼の身体にある。
ズキリと走る心臓の痛み、肉体の不調がここ最近余計に酷くなった。
シュウは人知れず胸を押さえながら痛みを堪える様に拳を握る、デュノア社に潜入してからというもの、碌な延命治療を受ける事が出来ていない事が要因だろう。
コレが意味する事、それは即ち……。
(––––
先が無く、独断専行を繰り返す金の掛かるモルモットか、完全にデメリットの無いモルモット、選ぶなら断然後者。
(それならそれで構わん、どの道俺は生きる事を許されていない失敗作、
遠く離れた島国に居る己と同じ顔を持つ
それと同時に塗装が終わったらしく、彼は格納庫へと向かって歩き出すのだった。
亡国機業からは一応延命用の薬は送られて来てますが、たったそれだけなので普通にガリガリ寿命が減ってます。
そのせいで顔も……。