精神崩壊済み主人公なのでモラルはありません。
マドカとの出会いで蓋をしていた感情が顔を出す様になったシュウは、亡国機業の持つフロント企業の地下で自分が撃墜し、奪い取ったIS『ラファール・リヴァイヴ』をマニュアル片手に整備していた。
この機体は凡用機としては優秀であり、多彩な装備を切り替えながら戦う事によってあらゆる距離に対応出来る強みがある。
今回強奪した機体には基本的な装備が一式揃っており、
シュウは細かな歪みや機体の各種バランス、システム面の調整などを手際良く且つ完璧にこなして行く。
それは監視役として付き合わされたオータムすら舌を巻くような腕前であり、マニュアル片手と言う不恰好な様であるにも関わらず熟練の整備士の様であった。
(これが究極の人類って奴か? ハッ、パラパラページ捲っただけで辞書みてぇな量の内容丸暗記できる様な記憶力と見た事もねぇエラーが出た瞬間に最適な答えを出せるような能力持ってる奴のどこに人間味を感じろってんだよ)
スコールが回収した研究データの一部に彼の評価が乗っていたが、オータムからすれば薄気味悪い怪物でしかなかった。
この男は身体能力だけではない、頭脳面でも他の被験体を大きく上回って居たが人類として致命的な欠陥を有した為、不合格の烙印を押されている。
しかしそれは裏を返せばその欠陥さえなければ彼は問題無く石垣の上に立つ存在として認められていただろう。
(テロメア遺伝子の異常、究極の人類っつーにはクソみてぇに短けぇ命だったわけだ、そりゃ確かに出来損ないだ)
究極の人類を生み出したとしても、その寿命が短過ぎれば呆気なく死ぬ、人智を超えた知能も超人的身体能力もその定めには逆らえない。
そんな哀れな不良品をオータムが鼻で笑っていると、ISの調整と
「んで? 終わりか? なら帰るぞエス」
エス––––シュウに対してスコールから与えられたコードネームを呼びながらオータムは彼を連れて地下施設を出る。
道中は完全に無言だったが、店の外へと出た瞬間に珍しくエスが口を開いた。
「––––オータム、ISを盗ってくる」
「おう、勝手に––––って今なんつったクソガキ」
いきなりの発言にうっかり流しそうになったが、世界に467機しか存在しないISを奪って来ると言った様に聞こえたオータムだったが、その言葉の意味を確かめる前にシュウはラファールを展開して飛び去って行った。
「……
勝手な行動をしたシュウに対する毒を吐いたオータムだったが、一応命令であるフルスモークのヘルメットを着用してる事を確認すると、頭を抱えながら恋人に連絡を入れるのだった。
––––一方の空を翔けるシュウ、彼がISを奪う目的は単純な話
この行動の数日前、初会合以降毎日の様に彼女と殺し合いを繰り広げながら自分の持つ技術を叩き込んでいたのだが、今の時代の最強の代名詞と言えばIS。
自分も教えられるほどISを扱った訳では無いが、それでも女である以上それを扱えなくてはならない。
その為シュウは彼女にISを使わせたかったのだが、今自分達の手元にはスコール・オータム・自分の三人分のISしか無かった。
自分のラファールを与える事も考えたが、その場合対IS戦をするのがスコールかオータムと言う事となり、マドカの価値をこの目で見極める機会が減る。
––––ならば単純な話、無いのなら有る所から持って来たら良い。
攻撃対処は何処でも良かったし奪う機体も何でも良かった、挑発する様に空を飛んで向かって来た相手を撃ち落とす、たったそれだけの事。
その為に深緑の塗装を深紅に塗り替え、街中を低空飛行しながらその存在を知らしめる。
ISでの戦闘は今回が初めてだったが、搭乗者の動きが基本となる以上ただの人間に遅れを取る事は無いとシュウは本気で思っていた。
「そこの紅いラファール・リヴァイヴ!! 所属と目的を答えて下さい!!」
そんな傲慢とも言える暴走から数分も立たない内にISが二機彼の後を追って来た。
一機は眼鏡を掛けた自分よりも多少年上の女性、乗っている機体は自分と同型機でカスタムされているらしい、資料で見た事のあるその女性は山田真耶、日本の代表候補生だ。
そしてもう一人は彼女の後輩らしき人物、資料に特に記載は無かったのと新型のIS『打鉄』を纏っている事からテストパイロットか何かだろう。
そうあたりをつけたシュウは速度を上げながらサブマシンガンを
打鉄は横に逸れる事でシュウの攻撃を回避したが、真耶はその攻撃を物理シールドで敢えて受け止めた。
代表候補生である以上狙いも定めていないような弾を避けるのは造作でもない、しかし此処は市街地のど真ん中避けなかった理由は彼女の後ろにあった。
それは一組の買い物帰りであろう親子、彼女が良ければその瞬間流れ弾がこの家族を襲っただろう。
幸い打鉄を扱う女性が避けた先には人が居なかった、しかしアスファルトの道路を切り裂く様に弾丸が直撃し、大きく捲れ上がってしまっている。
その動きを見たシュウは知識として頭に入れていた
そして事前に拝借して搭載した亡国機業製のバズーカをコールし、反撃に移れば一般人に直撃し全力で身代わりになりに行けば間に合うと言う絶妙な位置に爆撃を開始する。
当然真耶はそれを庇う、その性格もあって搭載した武装全て迎撃に回す勢いで壮絶な射撃戦を開始したが、シュウが使う兵装は全て爆風を伴うものであり、真っ先に避難経路を爆破された逃げ遅れの一般人達に熱波による被害が出始める。
そしてそんな様子を見かね、雄叫びのような怒りの声と共に打鉄が斬りかかるがそれに対して悲鳴を上げたのは防戦一方の真耶だった。
「ダメッ!! その人の狙いはッ!!」
彼女がその言葉を言い切る前に周囲一帯に強烈な衝撃が走る。
真耶は青ざめた顔でハイパーセンサーから送られて来た光景に目を向ける、そこには炸薬式六九口径パイルバンカー
絶対防御すら貫通させられる様に出撃前に無理矢理の改造を施した三連装パイルバンカー、それは一発目で絶対防御に杭を食い込ませ、続く二発目と三発目でその部分へ強引に打ち抜き搭乗者を粉砕する代物。
シュウは機能を停止した打鉄から
これで追っ手が来たとしても救助活動や火災の消化に回さざるを得ず、自分は悠々と帰投できる。
––––自分が引き起こした地獄を一瞥したシュウは、そのまま別の拠点へと飛んで行くのだった。