真・恋姫†無双 秋の夜長の夢   作:shizuru_H

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4話 胡蝶の夢は下に着く

疾風の如く馬が駆ける。

一瞬の風切音と放たれた弓が奏でる弦楽器にも似た残像音

その音が鳴るたび、一人また一人と倒れていく。

 

怒号が飛び交う洛陽近くの小さな農村。

夏侯姉妹が妹、夏侯淵の弓矢から逃れられる賊はその場にはいなかった。。。

 

黄巾党の残党がいるという報告を受け、一個中隊を引き連れてきたのだが、

そこまで必要なかったかもしれないな。

しかし数が多いな。

残党自体の戦闘力は高くない。

先の大戦を潜り抜けた兵士達には、大した脅威とはならなかった。

ただ近辺の散っていた人数が集まったのだろう。

一瞬で制圧できる人数ではなかった

 

「きゃあ~」

「待てっ」

農村の奥では、勝つことが不可能と悟った残党が少女を人質を取ろうとしていた。

さらに数人の盗賊が商人と思わしき行商たちを同様に人質にしようと襲っている。

「ふんっ、いくら魏の正規軍だろうがこの人数を人質にとれば何もできまい!」

そういって粋がる男の周りには5人の男。

そして5人が人質となっていた。

少女や老人、力のない民が人質となっていた。

「くそが!」

若い兵士が苦虫を潰したように、愚痴る。

守るべき民が人質になっているのだ。そうは動けない。

「人質を殺されたくなかったら、道を開けろ!」

月並みなセリフだがその効果は絶大だった。

兵士の動きが止まる。

にやっ

「そうだよ、それで良いんだ。」

来い!と言いながら残党を連れて行こうとする男だったが、

 

ざすっ、ざすっ、ざすっ、ざすっ、ざすっ

 

「うっ」

「ぐふっ」

「げふ」

「がっ」

勝負は一瞬だった。

「な、何が?」

そういう男の胸には矢が突き刺さっていた。

「お前らごときに、好き勝手させるわけなかろう」

一瞬五射で賊の命を断った綺麗な青髪の奥には、明らかな侮蔑と怒りを灯していた。

「あいつが守った国を賊風情が汚せると思うな」

そのつぶやきが聞こえたかは知らないが、兵士たちが賊の残りを一掃していき、

 

「ありがとうございます」

「ありがとうございます」

口々に感謝を言われるまでさして時間はかからなかった。

問答無用で屠ったそのオーラを感じたのであろう。

さしたる抵抗もなく。大半の賊は降伏した。

 

部下たちに賊の確保と移動の準備を指示し、助けた人々に近寄る。

そのたびにお礼を言われる。

今回は村人に死者はいなかったが、それでもやはり考えてしまう。

あいつならば敵の死にさえ嘆きそうだと。

 

「ありがとうございます」

そんなことを考えながら歩いていると、一人見知った老人がいた。

いや正確には対して親しいわけではない。

それどころか話したのもあの一度きりだ。

目深に布を被った老人のような占い師。

相変わらず顔は分からないが、この声は忘れるわけがない。

 

「大局の示すまま、流れに従い、逆らわぬようにしなされ。

さもなくば、待ち受けるのは身の破滅」

もしこの時の占いの内容をきちんと考えていれば。。。

 

何度そう思ったか分からない。

華琳様や姉者と覇道を誓った日がすべての始まりなら、

終わりが始まってしまったのはこの時ではないか。

そう思えるほどに、苦しく苦しく過去は今を縛ってくる。

 

「お主からは強い相が見えるの」

いつぞや聞いたようなセリフだ

「ほう、私に強い相が見えると?」

「えぇ、ただ中々に歪な相ですな」

「…どういうことだ?」

「胡蝶の夢。つまり不思議な体験をするでしょう」

胡蝶の夢か、その話も昔あいつが華琳様としていたな。

「ほう、それは詳しく聞かせてもらおうか」

「いえ、私が言えるのはここまででございます」

「ふっ、それではなんとも言えんな。」

「申し訳ありませぬ」

「まぁいい、忠告として受け取っておこう」

「はい。ですが最後に、、、」

 

はたして運命なのか

ある男の将来を予見した老人は、次は女の将来を占ってしまった。

「影と手を繋ぎなさい。」

「そうすれば本当の。。。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「可愛い。。。」

「そうか?」

 

ショッピングモールでの試着室前で、俺は現代に帰ってきたことを、

そして秋蘭を現代に呼んでくれた誰かに、今までにないぐらい感謝した!!

もともと美女の秋蘭だが、現代の洋服を着るとその破壊力はとんでもなかった。

特段高い洋服を買ったわけでもなく(と言うか普通の学生にそんな高い服は買えない。。。)

ユ●クロの服なんだけど、ヤバイ綺麗だ。

今は白いブラウスに、青のロングスカート。ただそれだけなのに!それだけなのに!!

「またほんごう、目が危険だ

少し距離を置かれてしまった。

どうやらあまりの可愛さに一瞬理性が飛んでいたようだ。

自粛しよう…

 

 

 

…自粛しよう?

そう思った矢先に秋蘭が寄った店は、あろうことかランジェリーショップ、いわゆる下着を売っているお店!

大抵の男なら目線を反らしてしまうお店を秋蘭様はお選びになられました!!

「おや、この店では選んでくれないのか?」

「秋蘭…分かって言ってるだろ…」

口では真面目に言ってる風だが、明らかに目が笑ってる。

普通の人には気づかないかもしれないが、あれだけ付き合いの長かった俺には分かる。

絶対こっちの反応を楽しんでいる。

「ふふっ、」

「いらっしゃいませ~」

こちらの会話に気付いたのだろう。

ニコニコとしながら、店員が近づいてくる。

自分達よりも少しだけ年上な女性だ。

営業なんだろうけど、気を聞かせてこないという選択肢を取ってくれてもいいのに!

「どのようなモノをお探しですか?」

「あぁ、この男が気に入るようなモノを探していてね」

ニヤニヤ

「なるほど、そうでしたか~、どのようなモノがお好みですか?彼氏さんは」

ニヤニヤ

あぁ、これは店員さんも分かってやってるな。。

なんでこうも、年上の女性には弱いのだろう。

「そうだな、あぁ見えて意外と夜には強いんだ。」

何人もの女を侍らせてる種馬だからな

まぁ、それならお姉さんも気が気ではないのでは?

あぁ、だから一発で堕とせるやつを頼むよ。

あらまぁ、それなら。。。

そんな会話をしながら奥へと向かっていく秋蘭と店員さん。

…まだこっちに来てそんなに経ってないのに何でそんなに馴染んでるんだろう。

そしてなんで二人して、そんなに楽しそうな顔でこちらを見ているんだろう。。。

こちらの黒い・・・スリットが入ってまして・・・レースの刺繍が可愛く・・・

男の人は意外と白も好きで・・・ピンクだとフリルがついていると・・・

…絶対こっちまで聞こえてるの分かってる。

…逃げよう

そう決めると、とりあえず近くのベンチ(店の中は見えない位置)へと腰を下ろした。

 

「疲れた~」

そう言って秋蘭が来たのは30分後、両手にはあまり大きくない袋がある。

お金を事前に渡しておいて良かった。。。

その大きくない袋を渡すために店の外まで出てきた店員がやけに生き生きと手を振るのと

満足気な笑顔を見ていると、なんというかこうゾワゾワする。

目が言ってる。

”今晩は頑張ってくださいね!”

あいまいな感じで会釈する以外、何もできなかった・・・

「この時代の物売りはすごいな」

「ん?」

なんかあったのだろうか

「商品を渡す時に店の外まで持ってきて渡すのか、まるで華琳様になったようだ」

両手の袋を見て感慨深げにつぶやく秋蘭に、

あぁ、確かにこの国のサービスは凄いんだよな

と改めて思ってしまう。

確かに行き過ぎることもあるが、基本的にはそれが日本人のいいところだと一刀は思う。

「こういうところも魏に普及したいな」

くすっ

でもやっぱり考えていることは魏のことらしい

 

並んでショッピングモールを歩く。

口には出さないが、聞きたいことは山ほどあるのだろう。

珍しくきょろきょろと周りを見ている。

そして時折我慢できずに

「北郷あれはなんだ?」

「あれはエレベータだよ。」

「北郷あれは、」

「あれはテレビだね」

「北郷、、」

といった具合に質問責めにしてくる。

まぁ、ショッピングモールなんて、現代の技術が至る所に散りばめられてるし。。

 

…これが春蘭や季衣だったら大変だっただろうなぁ~

猪突猛進に色々なところに行って、下手したら何かを壊していそうだ。

流琉がいてくれれば少しはマシか?

三羽烏なら、真桜が電気屋から離れないだろうし、沙和は洋服やアクセサリーショップから離れなさそうだし、

それどころか「隊長買って~」とねだられそうだ。

凪はそんなことしないだろうが、きっと周りが気になってチラチラ見てる凪が気になって俺が何かを買ってあげそうだ。

…別に凪だけ特別なわけじゃないぞ。。

華琳だったら。。。

 

ふと、そんなことを考えていると

「ん?」

秋蘭がこちらを見て微笑んでいた。

「今、姉者や季衣だったら大変そうだ。という顔をしていたぞ」

ギクッ

「よ、よく分かったね」

「ふ、分からいでか」

 

北郷は分かりやすいからな。

 

そう言って笑う秋蘭はほんとに可愛くて、可愛くて。。。

それに、と続けて

どれだけ一緒にいたと思っている。

 

そんなことを言うもんだから、、

だからこそ少し怖くなる。。。

 

これは夢じゃないのかと

 

 

 

 

 




色々とあり、全然更新できませんでした。。
構想と枠組みだけなら1月には出来てたんですが。。。

あいも変わらず駄文ですが、読んで感想頂けるとすごく励みになります。

コロナで皆さん大変だと思いますが、少しでもお役にたてれば幸いです

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