真・恋姫†無双 秋の夜長の夢   作:shizuru_H

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5話 凍った心は直火で炙るが吉

「秋蘭、貴女は今晩は私のところに来るように」

「はい。。はい?」

「あら。私と閨を共にするのがそんなに嫌なのかしら?」

「い、いえ、そんなことはありません。ただ」

「ただ?」

「最近ご無沙汰だったので、急で少し驚いてしまって」

「そう?そういえば最近はあまり可愛がってあげられてなかったわね。なら今晩はその分も可愛がってあげるわ」

「はっ」

「ふふっ、あぁ今夜は貴女一人で来なさい。せっかくだし良いでしょう?」

「はい、もちろんです.。ただ、、」

「何かしら?」

「こう、皆の前で言わなくても宜しいかと」

「ふふっ」

 

 

「はぁはぁ」

「ん、ぁむ」

「んぁ、かり、ん、さ、まぁ。。。」

「秋蘭、次は四つん這い」

「っ、、はい。。あ、んっっ。」

 

「ねぇ秋蘭、貴女最近寝れているのかしら?」

やはりこの人にはお見通しか。

「一応。とは言っておきます」

「やっぱり」

ぎゅっ

「華琳様?」

「そろそろあいつがいなくなった季節だものね」

「。。!?」

「分かっているわ、一刀がいなくなって、それでも一刀が守ってきたこの平和を維持しようとして頑張って」

かなわないな。。

「それでもちょっと前までは忙しさに身を任せていれば良かった」

そして気づく

「でも最近は平和にもなってきて、考える仕事が増えてきて」

華琳様のお体も以前に比べると若干痩せて。。。

「考える時間ができてしまうと考えてしまうのよね、一刀のことを」

あぁ、きっと華琳様も私と同じ。。。

「私も以前あいつに命を助けられたわ。私のことを殴ってまでね」

「そうでしたね、華琳様に手を挙げるとは、さすがです」

「本当よ、この曹孟徳を殴るなんて」

ふふっ

「でもだからかしらね、最近思うのよ、あの時一刀に助けられなかったらって」

「。。。」

「そしたらきっと、今こうやって貴女を抱きしめることもできないんだって」

「。。。。」

「それなのに、そのことの重要さに、生きていることの幸せをこんなにも再確認したのに、」

「。。。。。」

「それを教えてくれたあいつに、ありがとうを伝えたいのに。あいつはもうどこにもいないんだもの」

「。。っ、ぅ」

涙が自然と頬を伝って枕を濡らした。

「秋蘭」

「っ、はいっ」

涙で濡れた顔で主の顔を見つめる

「貴女は赤壁での感謝で、存在をかけて救ってくれた感謝で、届かない感謝で苦しんでいる」

そうだ、もし私があそこで撃たれていたら、今頃一刀が私の代わりに華琳様と寝ていただろう。

その方がいっそ、

「でも、もしあの戦いで貴女が撃たれていたら、きっと一刀は苦しんでいた」

「。。。えぇ、そうだと思います。」

そうだ、そうなっていたらきっとあの男は、平和になった後でも、死んだ私やほかの兵たちを思って苦しんでいただろう。

そういう男なのだから。

「だから秋蘭、貴女は、いえ私たちはあいつへの感謝を胸に秘めながら明日を生きなくてはならないのよ」

「、、っ、はい」

 

 

「すーすー」

静かな寝息が、規則的に聞こえる。

月の光が薄く世界を照らしていた。

その照らされて輝く銀の髪を撫でながら華琳は思う。

月の光は嫌いだ。一刀が消えた日を思い出すから

そしてまた誰かが消えてしまうのでは。そう思えてしまうから。

そう、例えば隣で眠る愛すべき部下。彼女も消えてしまうのではないかと不安になるから。

「生きなくてならない。。か」

生きなくてはならない。生きていたい。

近い様で違うこの言葉の差の重さを、小さな覇王は噛みしめながら呟いた。

 

 

 

  

 

「冗談キツイで華琳、いくらなんでもそないな冗談笑えへんわ」

霞が発した言葉に

「こんな冗談私が言うと思う?」

キッ

魏の王は部下を睨みつけた

「!?」

目が赤く、明らかに泣いた後であることが分かる。

この覇王が泣くことなどほとんどなく、

たとえ泣いたとしてもそれを他人に気取らせるなんてことはありえない。

それなのにはっきりと号泣したと分かる跡。

そして三国を平定し、すべてが満ち足りたこのタイミングで彼女が泣くなど余程のことだと分かる。

華琳の泣き腫らした目

ここにいない唯一の仲間

それだけで、部下たちは理解した。

『北郷一刀は天の国に帰った。もうこの世界にはいないし、会えない』

そう宣言した主の言葉が事実なのだと。

 

「ははは、そんな訳ないやん、一刀がうちらのこと置いてくなんて」

霞は半笑いになりながら、涙を浮かべて反論した。

「そ、そうですよ華琳様。霞のいう通りです。いくらなんでもあの男がいなくなるなんて」

珍しく桂花が一刀を思い遣る発言をした。

「ねぇ流琉、ボク、華琳様が言ったことよく聞こえなかったんだけど。。。」

「季衣、私も、、だよ」

肩を震わす季衣にそっと寄り添う流琉、認めたくない現実に脳がついて行っていないのだろう。

「一刀殿が天に?一刀殿が?私たちを置いて?」

凛は永遠と思考の渦に巻き込まれていた。

「お兄さん。やっぱり。。。」

風は何かに気づいたように衝撃を受けていた。その衝撃のせい飴を落としたことにも気づいていない。

「う、嘘なの。隊長が私たちのこと置いてくなんて、そんなはずないの!」

「そ、そうやで、大将。嘘、、、なんやろ?」

涙を浮かべて沙和は抗議し、それに真桜も続いた。

「隊長。。。私は。。。」

凪は呆然として、天を見上げた。

「でも、華琳様、あいつは戻ってくるんですよね?」

絶望半分、希望半分で春蘭は聞いた。

「分からない。。わ」

そう答えるのが精一杯だった。

「、、、かず、と、、」

いつもなら姉を宥める秋蘭は空を見上げて一言つぶやいただけだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「今はちゃんと食べてるみたいだけど、あの国ではどうだったんだろう」

春蘭ほどではないが、少しだけ姉妹の面影のある食べ方をしている秋蘭を見てそんなことを思ってしまった。

皆どうしてるだろう。

「ん?どうかしたのか?」

「いや、なんでもないよ」

知っている顔より少しやつれた美少女を見てそう思ってしまった。

しかし、、

「美女」に「ハンバーガー」

なんでこんなにもミスマッチなんだろう。

はむはむ。と、ゆっくり食べてはいるが、知っているよりも食が早い気がする。

まぁ、このジャンキーな味はあの時代にはない、魔性の味なので仕方ないか。。

俺も修行中なんどマク●ナルドに行こうと思ったことか。

「?やっぱり食が止まっているようだが?あまり好きではなかったのか?」

「大丈夫だよ。秋蘭こそ、味大丈夫だった?あの時代にはない味付けだっただろう」

「あぁ、問題ない。特にこの「照り焼き」とかいうものは、特に好みだ」

照り焼きバーガー。甘いものが好きな子供が一度ははまるであろうバーガーを、

例にもれずこの現代食初心者の武将もはまったらしい。

「ソースついてるよ」

「ん、ありがとう」

ふふっ、

そんな他愛無いことでさえ笑えてしまう。

やっぱり、この時代に戻ってきて、俺寂しかったんだな。

 

 

一刀が笑っている。

釣られて私も笑みがこぼれる。

どうしてこうもこの男と一緒にいると楽しいんだろうか

分かってる。

好きだからだろう。

私がこの男を。

だから久しぶりにこんなにも食事が美味しい。

何を食べても、好きだった物を食べても何も感じなかったのに。

ふっ

全くこの夏侯淵がこうなるとはな

しかし、、

 

「しかしこの時代の食はすごいな。」

「ん?」

「こんなにも多種多様なものが食べられるとは、野菜だけでなく肉や魚、それに見たこともないものばかりだ」

周りを見渡して思う。

「ふーどこーと」なるところに連れてきてもらったが、様々な匂いがする。

そして、目にする食材は多種多様だ。

あの時代では、割と似た食事を出す店が多かった。

それでも味付けなどが違うので、色んな店に通ったものだ。

だけどここはそもそも取り扱っている食材が違うように見える。

「あぁ、そうだね。あの時代には冷凍庫とかないしね」

「れいとうこ?」

「そう、食材を凍らせる技術」

「食材を凍らせる?」

あまりピンと来ていないようだ。

それはそうだ、あの時代冷凍技術などないから、氷水に冷やすなどして食材を冷やすしかなかった。

「そう、凍らせるんだ。そうすることで長時間痛まずに済む。」

「それは分かるが、」

食材が傷みにくいことは理解できているようだが、それと食材が多様にあることが繋がらないのか。

「成都で畜産している牛を食べたい。とするだろう?その場合、どうすればいい?」

「そんなの決まっている。成都に行くしかないだろう?」

「その通り、だけど今の時代だと凍らせれば、肉が傷むことなく手元に届く。簡単に言えば洛陽で成都の牛の肉を食べることができるってこと」

「あぁなるほど、それはすごいな」

「しかも、この時代の移動手段はあの時代の早馬の比じゃないからね」

しゃべりながら気が付いた。秋蘭の移動速度があの時代だったから、たとえ食材を凍らせたとしても、それが他の街まで届くことが想像できていないんだ。

クール宅急便なんてないしね。

「あぁ、確かにさっき乗ったバスとかいう乗り物も速かったしな」

「うん、でもあれ以上の速い乗り物もあるよ。しかもあの乗り物もまだ速くなるし」

新幹線とか飛行機とかね

「!? あれ以上速くなるのか?」

「なるよ、しかも運送するときには、常に冷凍状態で運べる乗り物とかもあって。。。」

 

 

まさか、自分が秋蘭に物を教える立場になるとは。

この光景を見てたら

『へぇ~良いご身分ね、一刀』

って華琳は言うだろうし

『貴様!秋蘭に説教垂れるとは何事だ!』

って春蘭は追いかけまして来るだろうな。

うん、改めてこの時代に来たのが妹の方で良かった。。。

「どうかしたのか?」

秋蘭が不思議そうな顔をしている。

「いや、来たのが春蘭じゃなくてよかったな。って思っただけ」

「…あぁ、まぁ確かに姉者がきてたら大変だっただろうな」

秋蘭も理解してくれたらしい。もし来てたのが姉だったら、この建物が倒壊する可能性に。

「あ、でも、秋蘭をもとの時代に帰す方法も考えないとね」

俺がこっちに来た時同様、一瞬しか時間が経ってなければ良いんだけど、

逆パターンで戻ったらすごく時間が経ってましたじゃ、笑えないし。

気持ち的にはブゥに精神と時の部屋に閉じ込められた時のピッ●ロさん。。

「そうだな、いずれ帰らねばならないが、せっかくだししばらくはこの時代を楽しむさ」

「なんか余裕そうだね」

俺が向こう行ったときはもっと、四苦八苦したのに

「何かあっても一刀が何とかしてくれるだろう?」

そう言って笑う秋蘭を見れば、何とかしないわけにはいかないなぁ。

 

決意が一つ増えた昼下がりだった。

 




読んで下さった皆さま。
お久しぶりでございます。
もう読んでくれてる人いないんじゃないか?と思いつつも、最新話公開いたします。
宜しければご感想頂けるとすごく嬉しいです。

今、BORUTOの二次小説も書きだしており、サラダが千鳥を覚えるきっかけをオリジナルで書いています。そのせいで遅れてしまいました。
宜しければこのシリーズももうしばらくお付き合いください。

ちなみに私もマクドナルドでは照り焼きが一番好きですw

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