Fate/fighting admiral(Iot) 作:ピロシキィ
少女は数日前より同じ夢を見る。
内容は覚えていない。
それでも同じ夢を見ているという不確かな確信があった。
それは少女が偶々手に取った一冊の本が運命の歯車を狂わせた物語。
素に銀と鉄。 礎に石と契約の大公。
降り立つ風には壁を。 四方の門は閉じ、王冠より出で、王国に至る三叉路は循環せよ
閉じよ(みたせ)。閉じよ(みたせ)。閉じよ(みたせ)。閉じよ(みたせ)。閉じよ(みたせ)。
繰り返すつどに五度。
ただ、満たされる刻を破却する
――――告げる。
汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に。
聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ。
誓いを此処に。
我は常世総ての善と成る者、
我は常世総ての悪を敷く者。
汝三大の言霊を纏う七天、
抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ―――!
陰湿でおぞましく空気の淀んだその地下霊廟。
魔法陣は発光し、そこから漏れ出した光は、この空間に不釣り合いな桜の花弁となりて、優しく召喚者に降り注いだ。少女の名前と光の花弁は奇しくも同じ名前。
「呼ばれて飛び出てじゃじゃじやーん!」
魔法陣から勢いよく顕れたるは2頭身のセーラー服を着た小人。
「ヒャッハー! 汚物はバーナーで消毒だァァ!」
「やったるで~」
「召喚そうそうで害虫駆除とか、おかしいやろ」
「告訴もじさない」
「ワレ、飛行場ノ建設ヲ具申スル」
「これ
それも一体や二体ではなく、わらわらと数を増やしていく。
「提督が着任しました。これより指揮に入ります」
そして魔法陣は一際光輝いたあと、そこに立っていたのは桜に錨。それを葉が囲む金色帽章がついた軍帽を被り、濃紺色の生地で作られた立襟、縁や袖に黒の縁飾りの軍衣を着用した青年の姿があった。見るものが見ればそれが大日本帝国海軍の士官用第一種軍装であるとわかる。白が眩しい両手の手袋で太刀の柄頭を抑え、鞘尻が床に。
「…ライダー推参」
ひどく短い口上で静かに少女を見つめる青年。
「…Nuapurista kuulu se polokan tahti♪
Jalakani pohjii kutkutti♪Ievan äiti se tyttöösä vahti♪
Vaan kyllähän Ieva sen jutkutti♪Sillä ei meitä silloin kiellot haittaa~♪」
彼の肩で口を開けたままの小人が緑色の細長い葉のようなものを上下に降り続けながらフィンランド民謡を歌ってる。一体どのように歌ってるかは謎であるが英霊という超常の存在が顕れたのだから、細かいことは気にしてはいけない。
召喚の影響で魔力が少ない少女。
体に蠢く蟲から送られる痛みと淫靡の波に蝕まれながらも、そのあまりに滑稽な姿が可笑しくて笑ってしまう。
「フィンランドの…いや、しかし帝国海軍の軍服」
召喚を見届けた老人は困惑といった表情で召喚された青年を見つめる。
「……(…冗談でヴァルハラ行くわ。って言ったら型月世界とか、しかもラスボス桜さん陣営とか、ワロス…ワロス…。あぁいいよ。ここまでは非常に遺憾ながら受け入れてやろう。だがなっ! どうしてわしがライダーなんだよぉ! おっぱい眼鏡のいないこの世界にゃ、ワシのヒロインがいないじゃないか!)」
ぼくの考えるヒロイン候補
うっか凛:彼女には圧倒的に足りないものがある。よって却下。
腹ペコ王:身長はいいだろう。だか、彼女には圧倒的に足りないものがある。よって却下。
イナズマ:なんか色々混ざった。とにかくアイツペロリンの少女も圧倒的に足りないものがある。よって却下。
寺の人妻:俺にNTR属性はない。先生と好きなだけいちゃこらしてろ。もげろ。
タイガー:実家がアウトロー。無いわー。
腹悪後輩:おっぱい合格! だがしかし、ラスボス。
ヒロイン不在とか、バカなの死ぬの?
──そんな貴方に朗報です。
ほほう? 聞いてやろう。
──材料を用意しましょう。
水35L、炭素20㎏、アンモニア4L、石灰1.5㎏、リン800g、塩分250g、硝石100g、硫黄80g、フッ素7.5g、ケイ素3g、その他少量の15の元素、石油適量、鋼鉄適量、弾薬適量、ポーキサイト適量、及び貴方の「血液」。
まさかの人体錬成!?
──建造です。
え、なに俺の能力って艦これ?
──厳密には妖精使いのようですが、概ねその認識でよろしいかと。
…フフ、フハハハハハっ! 勝つる! これは勝つる!
シローにも負けないハーレムが俺を待っている!
──まずは工廠を設置しましょう。場所はここでよろしいかと
そうか、では
「…はじめようか」
妖精=サーン。工廠建設お願いしまーす。
妖精さんたちが一斉に動き出す。バーナーで蟲を炙るもの、赤レンガをどこからともなく取り出すもの、それを積み上げでいくもの。バーナーで爺を炙るもの、木材で足場を作るもの。
それを眺めながら俺氏、熟考。
朧気な記憶を辿ると確か、我が召喚主は体中に蟲がいて妖怪爺の核蟲が心臓に寄生してて、汚染された聖杯の欠片も取り込んでるとか。凄くヘビィじゃないか? しかも兄がワカメで日常的に色んなものの発散の道具にしているとか。重すぎない? とりあえず兄貴の方は陸式で可愛がりしてやろう。
それより爺と聖杯だ。屋敷中の蟲は現在、妖精さんたちによって焼却処分中である。心臓の核蟲、これが本体。
牙突で殺っちゃえないだろうか?
──宿主も死ぬのでは?
そこはダメコン女神様がいるじゃろう。
あとは彼女の魔術の才能「架空元素・虚数」て言うウルトラレアがなんかいい感じで発動してなんかいい感じになる。…といいよねー。
──なるほど。
逃げ惑う妖怪爺と世紀末な格好で追う妖精さんから、倒れ込んでエロい感じになってる召喚主に視線を移す。
そういや、自己紹介してなかったな。
「…君が名は?」
「…さ、桜。間桐桜です」
「桜か」
……ああ、この響きは実に君に似合っている。
とどこぞの弓使いなら言うのだろう。
残念ながら現在のところ好感度足りない。
それじゃあ、いっちよいってみよう。
深く腰を落とし刀の切っ先を倒れ込んでる少女の胸に向け、その峰に軽く左手を添える。
ドスッと胸を貫けば、甲高い蟲の叫びが聞こえ、刀を抜けば血が吹き出した。そこから気味悪く卑猥な蟲が飛び出し、のたうち回る。
近くにいた妖精さんによって焼却処分で駆除完了。
ダメコン妖精さんを発動しようとしたが、傷口から蠢く影のような触手。
これ、多分聖杯の一部だろ。引っ張ったら引き剥がせないかな。
蠢く触手に手を突っ込んで体から引き剥がす。
意外にもある程度抵抗あったものの無事引き剥がせた。
ダメコン妖精さんお願いしまーす!
召喚主、間桐桜が光に包まれて、息を吹き返した。ただ、傷口は開いたままだ。そこにすかさすバケツを持った妖精さんは中身をぶっかけ、みるみるうちに傷口がふさがった。
ダメコン妖精さんって言ったからか。女神様って言えば良かったな。
何はともあれ、これでラスボスは封じられただろう。
もう何も恐れるものは…他のサーヴァントは怖いな。
万全の体制を整えよう。
謎の液体をぶっかけられた少女(気絶中)をこのままにしておくのは忍びないので担いで彼女の部屋を目指す。
──貴方が召喚からここまで行った行為は外道なのでは?
ふむ、桜から見た場合、大切なペット(蟲)を焼き殺し、不法占拠の如く勝手にリフォーム(工廠作り)をはじめ、祖父にも火炎放射を浴びせ、挙げ句に己の命を奪う。
なるほど! 外道だな!…明日、土下座しよう。
これより歯車の狂った物語がはじまる。