遊戯王BV~摩天楼の四方山話~   作:久本誠一

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予告だけしてずっと書き終わらなかった後語りです。
前作に続きネタバレ等への配慮は皆無ですので、本編全部読み終わってまだ暇な人だけが読み進めることを強く推奨します。


PS. デュエルポリスの軌跡

世界観について

 

 まあ、まずはここから始めましょう。オリキャラいっぱい……というか前作と違ってオリキャラオンリーのオリジナル世界だし。

 改めておさらいしておくと、作中舞台は日本……のどこかにある海辺の町、家紋町。そうたいして栄えた町ではないといういきなりタイトル詐欺みたいな展開だけど勘弁してください。考えてみりゃ恐ろしいことに摩天楼1回も書いてねーなこいつ。

 それはさておきもう少し細かい話をすると、基本的にはこの世界と同じようなものです。日本、フランスといったおおまかな地名も一致していますし、歴史にもさほど違いはなく、カードプールは現行のものそのままです。もっともルールに関しては私がいつまで経っても遅々としたペースでしか更新しなかったせいで新マスタールールで止まってますが。おかげで途中からはしょっちゅう「だーっ、ここリンクマーカー向いてないからモンスター並べさせられねえじゃん!書き直し!」ってなりました。反面「まいったな、ここ本気出せばもっと展開できる……そうしたらコイツこのターンで余裕で勝てちゃう、何かプレミの原因作らなきゃ……あ、マーカー先増やすほどの余裕はないからどう頑張ってもここで展開終わりじゃんラッキー」となることもあったのでまあ良し悪しですね。

 閑話休題。大まかな歴史は先述の通り大して変わりありませんがどこかで歯車が別の回り方をした結果デュエルモンスターズ(「遊戯王」ではない)がこちらの世界以上アニメ(DM~VRAINSまでの総称。SEVENSはゴーハデュエルの細部不明なのでちょっと除外)未満といった発展を遂げ、デュエルディスクによるソリッドビジョンシステムまでは実用化されるに至った世界。

 

 そして、ここからはちょっと裏話。作中での重要ワードであり、タイトルにも使われた『BV』ことブレイクビジョンですが、まあ要するにネタ元はARK-Vでおなじみのリアルソリッドビジョンシステムですね。モンスターと共に地を駆け宙を舞い、フィールド内を駆け巡り……はしませんが、鳥居たちはかつてそれを実際に夢見ていました。

 そもそも私がこの話を書き始めたとっかかりが「質量をもったソリッドビジョン、ってヤバくないか?」というシンプルな感想からで、試しに挙げてみるとまあ悪用方法が出るわ出るわ。幸いあちらの世界ではその技術が悪用された世界線は分離され一部を除き跡形もなくなりましたがそれをもう少し狡猾に、明確な悪意をもって世界に広がった場合どうなるか、というある意味では私なりのあの世界の再構成です。それを作中で体現したのが鳥居浄瑠であり、エンタメデュエルと『BV』の可能性を一時だけでも信じ魔界劇団を操る彼の姿はまさに同作でのデュエルモンスターズとリアルソリッドビジョンを純粋なパフォーマンスの一環に昇華させた世界の善性を体現しているとも……言えなくもなくもない、のかもしれません。実際他のキャラもやれ超重武者だそれ妖仙獣だと、どこかで見たようなテーマが多めですよね。そもそも記念すべき初デュエルからして同作の象徴、ペンデュラムテーマのメタルフォーゼですし。

 世界観としてはひとまずここまで。続きまして、キャラクターです。

 

キャラクターについて

 

 別名デュエリスト名鑑。時系列順に……の前に、まずはこの2人。

 

1、赤髪の夜叉:糸巻太夫(いとまきだゆう)

 言わずと知れた本作主人公。味方にすれば頼れる姉御肌、敵に回せば何するかわからない動く爆薬庫。猪突猛進な直情傾向……に見えて決して頭の回転が鈍いわけでもなく、敵の裏を読む能力にも長けたしたたかさを併せ持つ赤髪ロング。元プロデュエリストでも実力、人気共にトップクラスのプレイヤーであり、主に元プロ同士の繫がりからあちこちに顔が効く。

 ということで糸巻さんです。まあ彼女はある意味では動かしやすく、そしてある意味では作者である私自身にも底知れない女でした。というのも彼女、上記の設定からもわかる通りかなり言動の幅を広くとってあるんですよね。これは前作主人公だった遊野清明でストーリーを作るうえでちょっと反省していたことなんですが、ストーリーの進みを重視してガンガン話を進める際には「ほんとにコイツこの場面でこんなこと言うのかな?」みたいな解釈違い、と言ってしまえばちょっと大げさですが、微妙にキャラがぶれているのではないか?でもここでこっちに舵を取らないとストーリー進まない……みたいな状況がどうしてもあったりなかったりするわけですよ。まあそんなときには大体チャクチャルさんがいい感じに思考誘導かましてくれましたが。

 だから心機一転舞台一新、新たに主役に統べた彼女の場合はもう少し話を進めるうえで(こっちが)やりやすくしようと脳筋から策士、すっとこどっこいから理論家まで幅広くキャラクターの範囲を取ろうとしたわけですね。学生だった清明とは違いこちらは栄光から転落、酸いも甘いも知る女ということで始めたキャラでしたしちょうどいいかなあと。

 それが吉と出たのか凶と出たのかは正直、書き終えた今でもわかりません。確かに何を言い出しても違和感はないから便利ではあったんですけども、果たしてこの女は心の内で何を考えているのか。飄々とした態度の裏で、どんな感情を燃やして閉じ込めているのか。仮にも生みの親である私にすらそれを容易に見せてくれなくなった彼女は、いつも不敵にただ笑い。なればこそ病院で語った過去(ターン28)、そして最終決戦で見せた感情の爆発(ターン40)の炎をより一層激しく燃え上がらせて見せてくれたのでしょうから。

 自分に苦しみ、過去に囚われ、時と共に膨れ上がる一方の重石から逃れるために完全敗北を心のどこかで望みながらも、それすら10年以上もの長きにわたり与えられなかった勝利の二文字に呪われる女。それでも嫌いな自分から目を逸らさずに最後は必ず立ち上がり、ただ胸を張り最前線で背中で語る。いい女ですよ、彼女は。

 

2、エンタメデュエリスト:鳥居浄瑠(とりいじょうる)

 言わずと知れた本作もう1人の主人公。ある意味では本作全ての始まりともいえる『BV』事件の被害者となったことから、彼の人生は大きく動き出した。新米デュエルポリスではあるが腕は本物であり、数多の元プロデュエリスト相手に大立ち回りを繰り広げるだけの確かな実力と胆力を持つ。

 はい鳥居です。ある意味本作一番の被害者、今だから言えるけど彼にはほんとすまんかった。そのことについて釈明する前にまず彼の生い立ちから話していくと、まあARK-Vですね。あまりいい話を聞かないこの作品ですが、私個人としては悪しざまには言いたくないんですよね。こと1年目だけで話をすれば、今でもあれは間違いなく遊戯王の最高傑作だったと思っています。2年目以降もちょいちょい面白いところはあったし、絶対に素材自体は悪くなかったと思うんですよ。色々と言われがちなエンタメデュエルに関しても、これは絶対にうまく魅せることができるはずだと。

 ……結果?察してください。エンタメデュエル、予想以上に難しい題材でした。これは反省しかないのでもうどんどん具体例も出しちゃいますが、最初のうちはよかったです。鳥居も確かな経験とそこからくる自信に裏打ちされたエンタメをノリノリでやってくれたのでこちらも筆が進む進む。具体的にはFile1の裏デュエルコロシアム全般からFile2の朝顔戦(ターン13)、ここまでですね。巴戦(ターン15)、ここからなぜか歯車が狂い始めました。そもそもあの試合、当初の予定ではあそこまで派手に負けさせるつもりじゃなかったんですよね……うまいこと理由付けて中断に持っていくか、負けるにしてもせめてもうちょっと深刻じゃない、前向きに闘志を燃やせる負けっぷりにするか。書いていくうちにどんどん深刻に重くなっていって、再登場の際(ターン19)にはまだ傷も癒えていないボロボロの姿で精神的にも駄目押しを喰らうという。なんでこの人こんなボロックソに堕とされてんの……?いや書いたのは全部私ですが。

 おそらくですが(なぜか他人事)、エンタメデュエルは特性上明るく楽しくを第一に観客へのショーに徹するという都合上、極端な陽に傾きがちなんだと思います。陰陽のバランスがおかしい。だからこそ、何かのきっかけで1度転げ落ち始めるともう止まらないのでしょう。現に彼は、私が当初描いていた想像も想定も全部ぶち抜いて、堕ちるところまで堕ちていってしまいました。最終的にはどうにか軌道修正して再び主役の片割れに返り咲きましたが、正直あれもかなり無理のある展開だったと思っています。

 書きたいものは間違いなくあったのに、その裏にある闇に気が付くことができなかった。これは物書きとしての私の明確な敗北であり、何かの形でリベンジしたいものです。

 

 ……と、まあこの2人はやっぱり別格の位置に置いておきましょう。続いては時系列順に、ストーリーと登場キャラについて振り返ります。

 

File1-裏デュエルコロシアムについて

 

 本シリーズ始まりの地。コンセプトとしては世界観に触れつつキャラ紹介もしつつとにかくいっぱいデュエルすること。初手大会編というなかなか変則的なスタートでしたが、おおむね書きたいものは書けましたね。主約2人はもちろん後のシリーズでも大きな役割を果たすことになる七宝寺、八卦、巴もここで出せましたし、前作はGX沿いという都合上なかなか書くわけにもいかなかったシンクロ召喚以降の召喚法もたっぷり使えました。余は満足であるぞ。

 

3、名無しの権兵衛-チンピラ

 Q、なんでこいつが3人目なんです?

 A、だって初デュエルの相手だし……一応再登場もして出番2回もあるし……名前はないけど。

 【メタルフォーゼ】使いのチンピラ。伝統と信頼のお約束、初デュエルは3000打点の継承者。糸巻曰く年は若いらしく、彼女の手によって1度は返り討ちにあうものの苦し紛れに吐いた裏デュエルコロシアムの情報を取引材料に逃げ出させてもらう。巴を代表とする元プロを多数抱え持つ裏世界の組織……の末端中の末端であり、後のカードショップ「七宝」襲撃にも参加している。

 デュエリストとしては2流どまりで、灰流うららや超融合といったパワーカードを所持しているもののいかんせん本人の実力がカードパワーに追い付いてはいないイメージ。それでもヘマした時に足がつきにくい末端構成員としてはマシな方であり、それなりに使われる立ち位置のつもりで書いた人。平たく言えば有象無象の上澄み。

 

4、戦う違法社長-兜大山(かぶとたいざん)

 『BV』被害からの復旧事業でうまいこと財を成した成金企業、兜建設の初代社長。冴えない太った好々爺といった風貌ではあるが商才は高く、デュエルモンスターズに関しても理解と造詣が深い。巴と手を組んで裏デュエルコロシアムの海上確保から資金供給、そうかと思えばそれとは組織の対立する七宝寺と手を組んで海上プラントの建設までやってのけた。カードに対してはかなり思い入れもあるらしく、隠し持っていたエースカードたる究極伝導恐獣(アルティメットコンダクターティラノ)は精霊の付いたカードであることが終盤明かされ、本人には自覚はなかったがその事実がまた鳥居のことを精神的に追い詰めていた。

 この人は一見するとあちこちに振り回されたあげくやさぐれた鳥居によって大怪我まで負わされた被害者だけども、作中の事件を色々考えると割とこの人が悪いよなあと。この人さえいらんことをしなければ……まあその場合でも、巴に七宝寺なら別の手段で遅かれ早かれ同じようなことをしていたでしょうが。そう考えれば糸巻のいる町で全ての歯車が回りだしただけマシだったのでしょう。

 単体で見れば決して悪人じゃないけどもロクなことしない人、いますよね。そういう人です。

 

5、蕾の中のHERO-八卦九々乃(はっけくくの)

 みんな大好きサブヒロイン。主択2人を筆頭にどいつもこいつも現実世界の荒波に飲まれて感性も何も擦り切れに擦り切れた中、突如として現れた毒気の一切ない純粋な天使。七宝寺、糸巻と作中トップ勢に囲まれての無自覚パワーレベリングによってメキメキと才能が開花していったが、それでもまだまだ経験の浅い蕾の段階。大輪の花を咲かすべく、今日も意気揚々と己の魂とも呼ぶべきカードであるクノスぺを操る。

 糸巻と鳥居は干支ひとまわりほど年が離れていますが、さらにそこからもう1周下の新世代代表。生来の性根と育ちの良さ、そして何より若さが生んだ純真さからくる行動力はまさにメインキャラの人たちに欠けているもので、そういう意味でも動かしていて楽しい娘……というよりむしろ今作では一番自分の意思でしゃべったり動いたりしてくれたキャラクターで、彼女がメインの間は私からストーリーを作らずともこの子らしいやり方でお話を進めてもらうことも多々ありました。糸巻さんのことを過剰なまでに慕うその姿は少々アヤシイ気配も漂いますが、当人に元々そっちの気質があったのか両親と離れ離れになったことで欠けていた母性を無自覚のうちに彼女に求めていたのか、はたまた恋に恋する少女ならではの自分の想いの読み違いなのか。その辺は、私からはノーコメントで。

 ちなみに余談ですが彼女が得意とし、またその代表格ともいえる攻撃ロックコンボ、通称クノスペシャル。あれはまさに彼女の未熟さの表れでもあり、一定以上の実力を持つ上位勢には通用しないように描写してきました。事実あのロックは登場するたびに返しのターンで単体除去だの効果無効だのであっさり突破されていて、唯一維持できたのは元から攻撃する気がない夕顔戦(ターン10)のみなのは密かなこだわりポイントだったり。

 

6、グランドファザー:七宝寺守(しっぽうじまもる)

 職業:プロデュエリストの先駆けにして頂点、界隈では文字通りの生ける伝説。『BV』の台頭とほぼ時を同じくして隠居の身となり、長らく姿を隠していたが実は家紋町で小さなカードショップを営んでいた。裏事情に独自の情報ルートを持っているらしく、世界中で行われる違法デュエルの情報は筒抜けといってもいい。

 ……はいここまで表の顔。その実態は『BV』開発者で、その際には世界全ての認識を歪めデュエルモンスターズとカード界を政界、財界とためが張れるレベルの一大事業にのし上げさせたとんでもない男。元凶も元凶、大元凶ですね。

 この老人の正体については既定路線です……ともあながち言い切れないかも。間違ってはいないけどね。もう少し詳しく説明すると、最初からこの人が元凶でラスボスにしようとは決めてました。だけどまさか、ただのカードでしかなかったデュエルモンスターズを文字通り1瞬のうちに世界中に歴史レベルで広めてのけたほどの人だとは。こんなに壮大な話にするつもりはなかったのですが、ねえ。この人のおかげでこの世界の歴史も運命も文字通りに様変わりしたので、もし彼が居なければ糸巻さんはただの気丈な美人、鳥居も無名の劇団員で生涯を終えていた可能性は多分にあります。たくさんの才能を発掘し表舞台に引き込んだ功と、それすらもかすんで見えなくなるほどの罪。そんな常人ならば頭のおかしくなるような清濁を呑み込んでなお平然としていられる、その精神力こそが二つ名の『グランドファザー』たる所以なのかもしれません。

 プラントでの最終決戦における立ち回りについてはもう少し後でまた喋らせてね。

 

7、お山の大将-山形仁鈴(やまがたにすず)

 誰?という人も多いでしょうが、なんてことはなく裏デュエルコロシアムの1回戦、潜入中の鳥居が最初に戦うこととなったチンピラの大将です。一応名前付きなのに手下のチンピラより出番の少ない人。

 彼のデッキは私の作品としては珍しくモチーフや特定テーマが存在せず、なんとなく思いついたコンボの元をそのまま形にして叩きつけたタイプですね。伝説のフィッシャーマン3世のダメージ倍加能力に2000打点ダイレクトアタッカーのヴァンドラをレベル5戦士族という点で組み合わせ、相手がバトルフェイズに追加モンスターを出そうとも確定ワンショット(初期ライフが4000のため)。今では3世の特殊召喚も登場時点に比べはるかに簡単になったことですし、割と実際に組んでもいい感じで回りそうだなーなんて久々に読み返してちょっと自画自賛気味に思ったりしました。

 キャラクターとしては典型的なやられ役、というかもっと言えばあの場面での鳥居の引き立て役なので正直語るところが……。ただまあいちいち最高の反応を素で返してくれるあたり、パフォーマーとしての適性は割とありそう。本人は不本意だろうけど。

 

8、多重結界のショーマン-蜘蛛(くも)

 裏デュエルコロシアムの開催を糸巻に嗅ぎつけられたことに気が付いた巴がとりあえず牽制代わりにぶつけた雇われの賞金稼ぎデュエリスト。本名は不詳、蜘蛛の呼び名の由来は対戦相手をじわじわと身動きできない状況に絡めとる戦闘スタイルから。

 この人にも謝らなければいけないことがあって、単純に彼はもう1回ぐらい出番作るつもりだったんですよね。具体的にはカードショップ七宝襲撃メンバー、あそこに入れようと当初は思っていました。詳しくは後々話しますが、結局その案が没になったことで彼の物語は半端なところで宙ぶらりんに。もっとも元プロの人たちとは異なり始めから裏街道のデュエリストとして始まった彼に関しては、あまり表で進めるようなものではないのかもしれません。それにしたってモブでいいから後半で何かしらのセリフぐらいは言わせておけばよかった。

 

9、太陽光発電-青木勝(あおきまさる)

 私の書く話にしては珍しい、特定のカード(ソーラー・ジェネクス)ありきのデッキ使い。まあ八卦ちゃんもそのタイプですが。薄幸というか間が悪いというか要領が悪いというか、常に損な役回りを押し付けられて、それでもぐっと耐えながら人生歩んでいく感じの人ですね。個人的には好印象ですが、それはそれとして絶対人生交代したくはないタイプ。言動から隠し切れない「いい人」感が滲み出るような言葉遣いを意識してやっていたような覚えがあります。それで最後は大火傷して意識不明の入院だからやっぱり報われない。この人はもちろん後述のロブや朝顔、それに一本松もですが、一応エンディング前後でどうにか意識は戻り怪我からも復帰して元の暮らしに戻っていったという設定はあります。どこにも書いてないだけで。

 しかし前作が学生ばっかだった反動なのかプロは全員大なり小なり落ちぶれたという設定のせいなのか、やたら苦労人の比率が高いなあ。

 

10、おきつねさま-巴光太郎(ともえこうたろう)

 元凶その2。といっても彼の場合どちらかというと時代に振り回されて翻弄され、彼なりに足掻いて自分の居場所を自分のやり方で死守しようとしていただけなのでむしろ被害者といってもいいのかもですね。

 それはともかく、彼は糸巻さんのライバルであり、正反対の宿敵であり、ある意味では鏡写しの存在です。女と男という性別から始まり豪放磊落な彼女に対する慇懃無礼。種族操作のアンデットワールドに対する属性書き換えのシャドウ・ディストピア。その他もろもろエトセトラ。

 ですが皮肉なことに、その価値観の相違からくる憎悪には同時に同族嫌悪も混じっています。彼は間違いなく彼女にも負けないほどの身内想いであり、一度自らの傘下に入り込んだ人間に対してはなんのかんの言いつつも全力で向き合います。ただの嫌味な奴ではなく、そういうところがあるから彼の側にもいつだって誰かしら人がついてくるわけです。

 基本的には糸巻さんの逆を行きつつ、根っこの部分には同じところがあり、それでいて最終的には真逆の結論に至る。ありふれたキャラ付けといえばそうかもしれませんが、彼と彼女はどこかでなにかが一歩違えばお互いに逆の道を歩んでいた可能性もあるわけで。ある意味ではお互いの存在こそが、お互いを自分の道から迷わずに進ませた原因といってもいいのかもですね。

 もっと平たく言えば糸巻さんが最後まで闇落ちしなかった最大の原因。逆も真なりですがそれやっちゃうといよいよこいつと同じになっちゃうし、彼を書くことでその手の欲求が全部発散できていたので……。なので今だからぶっちゃけると、作者の立場として彼には割と感謝してます。

 

11、後ろ帽子の(バックキャップ・)ロブ-ロベルト・バックキャップ

 「身の丈2メートルの寡黙な大男」を、この作者は実力者の符号として使いたがる節があるんですよねどうも。その原点がどこにあるかというとまさにこの男、元をただせばロベルト・バックキャップのせいです。

 というのもこの男、かれこれ10年は前に書いていた一時創作の短編。その主役の設定をそのまま流用したんですよね。いやー懐かしい。オリジナルの世界では探偵でしたが、こちらの世界ではめでたくデュエリストになりました……あ、今はたとえ探しても読めませんのであしからず。ですが裏デュエルコロシアム鳥居サイドの大ボス、それも魔界劇団のデュエルを書く上でやっぱり外せないであろう対妖仙獣。そんな大一番に持ってくるあたり、なんのかんの私も彼のことは頭の片隅で気にしていたんでしょうねえ。

 寡黙で知恵が回る大男、トレードマークは後ろ向きに被った帽子。本名不明経歴不詳、ついたあだ名が後ろ帽子の(バックキャップ・)ロブ。そんなわけで、ある意味では彼がこの作品の中で清明を抜いてぶっちぎりの古参キャラともいえる人間です。まあだからといってどうということもありませんが。

 

12、錬金武者-鼓千輪(つづみせんりん)

 実質的には次の次の章からの人間ですが、一応彼女の初出はここのエピローグですのでこちらで語ります。銀髪ロングのゆる三つ編み、クールな口調と芯のある性格の切れ者、灰色の縦セタにロングスカート、そして何がとは言わないけれどでっかいの。この時点で再登場することと最終決戦前に離脱することはもう確定事項だったので、どうせ活躍期間が短いならと遠慮なく私の性癖ぶち込みました。

 そういった欲望ダダ洩れな出自が影響しているのか、この人は書いていて良くも悪くも素直なキャラクターでしたね。ここに出せば当初のシナリオ通りに話を進めてくれる、というか。私の予想を決して下回らず、かといって飛び越えることもないというか。戦力的には糸巻さんたちの補強でしたが、ストーリー的にはむしろ私の補助でした。自由に書いてるとすぐ思い通りに暴れようとして収集付かなくなるんだもんあの人たち。

 ただ逆に、もうちょっとはっちゃけてくれても良かったなあ……なんて言うのは贅沢でしょうか。自我が私に近いところで常に安定していた反面想定以上の上振れを見せてくれることもなかったので、もう少し彼女に関しては底を掘り下げたかった気もします。

 

File2-精霊のカードについて

 

 全力で雑にまとめると現れる敵をただ返り討ちにするチュートリアル的な裏デュエルコロシアム編も終わり、いよいよ自前の物語を動かし始めたころ。八卦ちゃんの一言から始まるストーリー、ちらりと除く糸巻さんの過去、前作からは元主人公の再登板、そして完全に私にとっても予想外だった鳥居の離脱と、まあ短いのにイベント盛りだくさん。

 ただある意味では、一番糸巻さんたちの戦力が充実しておりわだかまりも何ひとつなかったこの章が一番楽しかったかもしれません。今となっては、ですが。

 

13、欲望の対価-男

 糸巻さんには名前を覚えてもらえなかったものの、デュエルポリスとしての新人時代にデュエルを通しての対話から彼女に鮮烈な印象を植え付けた元プロ……から、『BV』売春事業の斡旋役にまで堕ちた男。とはいえ完全に魂を売りきったわけでもなく、プロ時代からずっと愛用してきた蟲惑魔カードに関しては誰にどれだけ金を積まれようと頑として実体化を断ってきたらしい。もっともこれを聞いても彼女は認めるどころか余計に怒るだろうな、とも思うけれど。辛いから嫌だ?なにアンタだけいいカッコしようとしてんだ、そんな資格ないんだよアンタには、って感じで。

 ちなみに心折れてこのような道に走った彼に対して彼女が答えた「消え去らない、往生際の悪い老兵に引導を渡す」というひとつめの行動理念ですが、これは後述の(時系列的にはもう少し前の)デュエルポリス糸巻の誕生秘話で彼女がこの職を選んでからの苦しみと良心の呵責と負い目引け目、そういったあらゆる負の感情に押し潰されないように考えに考え苦し紛れに縋った言い訳です。何度も自分にそう言い聞かせて行為を正当化し続けるすることで、いつしか本当にそんな気になるという自己暗示。もうひとつの「現状のデュエルモンスターズは間違っている、未来のため」……こちらはより綺麗事ですが、それだけに彼女の本心に近いです。このふたつの言葉はともに彼の心に届きはしましたが、だからといって既に歩みを止められないところまであの時の彼は来てしまっていたわけですね。

 

14、オール・フォー・熱血指導-夕顔燃(ゆうがおもゆる)

 シリアスやった反動なのか想定の8割増しぐらい弾けてしまった男。まあそんなこともあるよね。「熱血指導」だけで勝利する……これもまあ、ライフ4000制ならではの勝機のある遊びですよね。5回決めれば勝ち。それまでに削りきられたら負け。せっかく厳密にはOCGルールと違う制度でやっているから、こういう書いていて楽しいデッキを書きたかった。最初はジャイアントレーナーの口上も2つ目以降は特に考えてなかったのに、いいや熱血だ!って脳内のこいつが叫ぶもんだから急遽エクシーズ召喚のたびに毎回違う口上を考える羽目に。

 でもこの馬鹿馬鹿しさのおかげで、数話連続でシリアスに寄りつつあった作品のバランスを一時的にでも反対側に傾けることができたから面白いものです。蛇ノ目戦(ターン25)では初登場時にさんざんはっちゃけていた彼が本気で怒り、そして力及ばず返り討ちに合う姿を見せることで八卦ちゃんの覚悟を決めるという大役も果たしたことですし。作中戦績は振るいませんでしたが、決める所はきっちり決めてくれたできる男です。

 

15、二色のアサガオ-朝顔涼彦(あさがおすずひこ)

 巴サイドの右腕兼苦労人ポジション。奴は有能だけどいかんせん対人となれば神経逆撫で待ったなしなので、基本的な交渉や雑務はすべてこの男がこなして緩衝材の役割を果たしていた。プロ歴の長さから顔が広く人望も厚い、デュエルの腕前も糸巻と巴の両者が一目置くレベルで、頭も回り身体能力も高いと実は相当なハイスペックなのよこの人。ただし極端な羞明を患っていて、夜だろうが常に遮光用のサングラスを付けていないと碌に周りが見えなくなる。このあたりを生かした描写を、具体的には襲撃されるあたりに入れようと思っていた(罠に嵌められたことは悟るも光で目を眩ませられ退路を封じられたためやむを得ず実力行使に出た等)けども、さすがに冗長になりすぎるのであえなくカット。結果として本編の描写だけではなぜか室内でもグラサンを付けただけの人に。

 巴も自らのすぐ煽りたがる悪癖と、それを承知の上でうまく立ち回ってくれるうえに何かあっても自力で活路を切り開くだけの実力がある彼のことは相当信頼していました。だからこそ彼1人で、かえって足を引っ張りかねない護衛も抜きに敵対組織との交渉に向かわせた(ターン19)わけですが……ただいかんせん、元プロだけあってエンターテイナーとしての戦い方、ある程度ターン数をかけて殴り合いの攻防を繰り広げる癖が体に染みついていたわけで。それが裏目となり、蛇ノ目のワンショットキルを前に不意を突かれる形で初見殺しをまんまと食らいました。その結果として次章、デュエルフェスティバル編の事件は起きることとなるから何が災いになるかわからないものです。

 大人というより大きくなった子供みたいな人間の多いこの作品で、数少ないまともな大人です。それだけに苦労も多かったようですが、なんのかんの人生を楽しむ方法とそのコツもちゃんと知っている人だと思いますよ。

 

16、鉄砲水の神官-遊野清明(ゆうのあきら)

 登場させたときはもうちょっと叩かれるかと思ったけど、案外そんなこともなかった前作主人公。時系列は前作最終回のちょっと後。敵方ばかり後から後から出てくるのに味方の加入ペースは遅々として増えない本作ではゲストだからといって容赦も遠慮もなく、即戦力になる彼は精霊の視認能力というこの世界にはそぐわないオカルトパワーも駆使してがんがん実戦に駆り出させてもらいました。戦力的にはともかくとして、まだ年若い八卦ちゃんを大人の抗争に積極的に駆り出すほど糸巻さんは落ちぶれてはいないのです。その点この男、見た目は15、6ですが実年齢はこんなんでも23ですし。それでも実は鳥居より若いという。

 あと前作と決定的に異なる点として、前作ラストで叩きこまれた恋人関連のトラウマの存在があります。さすがに前作のネタバレまでするのはここでは遠慮しておきますが、なんだかんだ自分のトラウマや苦しみをどっしり受け止めて苦しむ糸巻さんとは違い、彼の場合は傷が癒えていないのに化け物じみた精神力だけで無理やり上から抑えつけています。この新旧主人公、自己嫌悪という点ではお互い様ですが、時にはどっしり腰と覚悟を据えて自分の暗部と正面から向き合える彼女に対し未だ前すら向けず心の中のドロドロしたものをひたすら溜め込んで抑えつけてばかりの彼の方が精神的にはよほどまずい所にいるんですよね。少なくとも、まだ彼の物語は終わってはいません。書く気が起きるかどうかは別として。

 それと、これは完全に余談ですが。久々に彼を書いていて思ったのは、意外にも一抹の寂しさでした。前作は一部の話を除きずっと彼の一人称で話を進めてきたのですが、あの時に比べこの男が明らかに動かしにくくなっていたんですよね。どうも私の中での彼のキャラ像がぶれてきたというか、成長した彼とのずれが私の中で生じたというか。以前はこちらの思考と彼の動きがシンクロしていたのに、今ではそれに一拍の遅れが出るようになったというか。この感覚を説明するのはちょっと難しいですが、とにかくあの時よりも確実に書きにくい、動かしにくいキャラクターに成長してしまいました。それはそれで喜ぶべきことかもしれませんが、やっぱり寂しいものは寂しいですね。

 

17、カードの精霊-儚無みずき

 まあ一応キャラクターではあるし、ということでこの章が始まった全てのきっかけで、元はといえば廃図書館の本棚の裏にでも偶然落ちていて忘れ去られていたカード。たまたまその近くに清明が次元の壁を越えて現れたことでその余波を受け精霊が目覚め、さらに近場でドンパチやっていたデュエルポリスとテロリストのデュエルに使用された『BV』の余波で強制的に受肉されたという偶然の三重奏。なのでこの一件に関しては本気で誰一人として意図的な関与は行っていません。『BV』によるソリッドビジョン実体化のエネルギーが切れたことで徐々に消えていく肉体に訳が分からないなりに本能的な恐怖を感じ、とにかくどうにかしようと誰も頼るものもいない中で1人ぱたぱたとしていたところを一般人に何度か目撃され、その話に尾ひれがついて結果的に冒頭の幽霊騒ぎが出来上がったわけですね。

 

File3&4-デュエルフェスティバルについて

 

 正直ここ分割する意味はそこまでなかったよね、なデュエルフェスティバル編。最初はデュエリストフェスティバル編だったけども、やっぱり実在のあれと被るのはよくないよなあと直前になって変更した思い出。

 そんな裏話はさておき、お話としては鳥居が徐々にフェードアウトする反面鼓さんが正式なメンバーに加入する前半と、ひたすら大会進行の裏でデュエルポリス2人が町の平和を守るべく奮闘する後半の王道ストーリー(自称)。祭りを何事もなく終わらせてやりたいデュエルポリス達、手段と目的はともかく実行犯が気に食わない巴サイド、今後の計画を進めるためにもこの第一歩をなんとしても成し遂げたい七曜サイド、そしてギリギリまで何も知らなかった少女コンビと4勢力の書き分け……できてたかなあ。私の頭の中ではどうにか大きく破綻することもなく仕上げられたつもりですが、読者の皆様はどうだったでしょうか。

 

18、もうひとりのエンターテイナー-一本松一段(いっぽんまついちだん)

 鳥居の設定上当然いるはずの、彼がまだ子役だった頃の兄弟子。せっかく元劇団員なんて設定にしたからには、どこかで出したかった旧メンバーですね。腕が立ち、頭が回り、フットワークも軽く、デュエルポリスに肩入れする理由もあると、まさに情報のタレコミ役をやってもらうにはうってつけの人間だったので満を持してここで出しました。もっとも、彼が倒れたせいで鳥居の闇は急速に深まることになりましたが。登場を決めた時の私はそこまで頭が回らなかったのです。

 まあ気を取り直してこの男についての話を続けると、やはり同門の兄弟子であるからには鳥居のエンタメと通じるところがどこかに欲しかったんですよね。オーバーに芝居がかった口調も(鳥居はデュエル時のみ、彼は四六時中と若干の違いはあるものの)そうですが、モンスターの召喚時にはたとえ即素材になるのが仕事の下級であってもいちいち二つ名をつける反面エースモンスターであっても特に長々とした召喚口上を述べたりしないのはデュエンギルド特有の代々続くスタイルです。曰く、デッキに選んで入れたカードならばその全てが主役であり、みな平等であるとの信念の表れらしいですよ。

 

19、ワンショットキラー-蛇ノ目龍作(じゃのめりゅうさく)

 朝顔の項でもちらりと触れたプロデュエリストの弱点である短期決戦の弱さとは、一方的な試合展開や問答無用の蹂躙は盛り上がりに欠けるし、何より放送時間とかの関係でスポンサーから好まれないという理由があります。少なくとも私の世界ではそうなってます。テレビ等での中継も、せっかく時間が取ってあるのに5分で終わりではあんまりですしそうおかしな設定ではない……と、思います。プロ時代の彼はそれを逆手に取って多少下準備に時間がかかったとしてもとにかくワンショットキルに拘り続け、「次はどんなギミックを持ち出すのか」に観客の興味をすり替えさせて自分の地位と需要を確保したわけです。魅せたいものがワンショットキルである以上、1つのデッキを使い続けるようなこともありません。むしろ、それをやっていたらすぐにファンが離れるであろうことを知っていたのは他でもない彼自身です。

 そしてそんな努力の日々は、テロリスト側についた現在に最悪の形で実を結びました。ダメージが実体化する『BV』下でのワンショットキルはもはや兵器の域であり、デッキをころころ変える特性は下手人の特定を難しくし、何より魅せるための殴り合いのスピードに慣れたプロにワンショットのスピードは初見殺しにもほどがあります。今にして思えばなにからなにまで自分の磨いてきた技能と相性のいいこの世界は、むしろ彼にとっては天国だったのかもしれませんね。

 

20、夢見て跳ねる文学少女-竹丸夢(たけまるゆめ)

 彼女、結構いろいろな事情があって生まれたキャラクターなんです。初期プロットには影も形も存在しない子だったし。まず、めっっちゃいい子がどうしても書きたかった。作中の良心が、なんだかしだいにはっちゃけ始めてた八卦ちゃんだけじゃカバーしきれなかった。これはバランスを取るためにどうしても必要なキャラクターだったのです。

 というのが最初の、そして最大の理由。極端な話として攫われヒロイン相手に八卦ちゃんが奮闘する話を書くだけだったら相手はモブでもいいわけだし、私としてはあえてネームドにした時点で今後も出番を作るつもり満々でした。だから主に私のモチベーションのために年齢の割に出る所は結構きっちり出てるなんて設定も付けたわけで(小声)。逆に同じ話で初登場したタッグデュエルの相手2人は特に出す気も凝った設定もなかったので最後まで名無しのモブでした。

 次に、デュエルフェスティバルの目的が明かされた時点でふと、それを体現するためのキャラクターが欲しいなあと思ったこと。あれを見てデュエルは楽しいんだと思い、新しくその世界に足を踏み入れる……そんな具体例が欲しくなったわけですね。特に今回、世界設定の都合上完全に真っ白な初心者はなかなか出しづらい感じでしたから。

 そして実際のところ、八卦ちゃん以上に過酷なパワーレベリングもありめきめき上達する彼女の成長は、私としても結構楽しかったです。本編時はずっと借り物のグレイドルを使っていましたが、新エースとして位置づけられたブラッド・メフィスト。それに叶わなかった、けれど大切な初恋の思い出を胸に彼女はこれからもどんどん伸びていくでしょう。

 

21、考古学者-寿紳助(ことぶきしんすけ)

 ……時系列的には次は清掃ロボだけど、あれの解説とか書くこと特にないから飛ばしてこの人。正直この爺様にも書くほどのことがあるわけでもないけども、これは丁度この時期私が凝っていたブロックンロールでシンクロしたモンスターと生成したトークン、あと1枚何か上級を使ってフルパワーデミウルギアのリンク召喚を消費抑えつつ行う方法をそのまま使うにあたりそれっぽいキャラクターを考えた結果こんな人になりました。星遺物の物語を追い求める語り部の老人。

 次に紹介する笹竜胆もそうですが、この2人にはなにも世のプロデュエリスト全員がデュエルポリスとテロリストに二分されたわけじゃないよ、というのを示して欲しかったのもあります。当然デュエルモンスターズから足を洗った元プロもいるし、そういう人はそういう人でまた自分の人生を歩んできたんだよ、と。それでも結局カードから完全には離れられず、だからこうしてこの場に戻ってきてデュエルを観客に魅せているわけですが。

 

22、十六夜の決闘龍会-笹竜胆千利(ささりんどうせんり)

 ロリではないけどのじゃが書きたかった。時々こういうこってこての口調が強いキャラ出したくなるんですよ。なんかこの小説、こんな理由でキャラ付けが決まる子多くない?特に女子。まあ済んだ話だしいい……ですよね。

 そんな彼女の使用デッキ、言うなれば植物軸ツィオルキン。これは私がずっとどこかで書きたかったデッキのひとつで、八卦ちゃんの【クノスペシャル】ともども割と長いこと温めてきたものです。だからなんだという話ですが、前作だとGXという都合上シンクロもHERO被りもなかなかやる機会がなかったんですよね。

 ちなみに彼女、実を言うと最終決戦時以降の家紋町に再登場させる予定はありませんでした。やや好評だったものだから急遽出番が増えただけで。いやあ、何がどうなるかわからないものです。

 

23、成金の女王-七曜菊(しちようきく)

 何気に下の名前はここが初公開の七曜さん。皆名字でしか呼ばないんだもん。

 紛れもない加害者ではあるのですが、作中では巴の目を掻い潜りながらカードを集めることに成功するも陽動に放った蛇ノ目が返り討ちになり、同時に自身の潜伏場所も探知され一気にピンチに陥るも一足早く殴り込みに来た鼓相手に一歩も引かず冷静に説得から当たり、それでも駄目ならとやむをえず実力行使でどうにかしようとして事実あと1歩まで彼女を追いつめるもそれを乱入者の闇堕ち寸前な鳥居に阻まれ、ならばと乱入の承認と引き換えに手札にライフの補充という要求を通してみせ、どうにか有利を保ったまま相手になるも普段ならば絶対されないであろう理不尽を押し付けるタイプのワンキルを叩きこまれ敗北からの逮捕、と徹底的に可哀そうな目にしかあっていない人。本人は何も悪手を取っていない、それどころかその場でできる中では常に最善の判断を重ねていたのに健闘虚しく結果がこれというのがなんとも物悲しいですね。そういう絶妙に不幸な星の元に生まれ、やさぐれながらそれでも精一杯突っ張って生きている人です。ちなみに現役時代は貴重な喫煙女子繫がりもあって、割と糸巻さんとは仲良かったのよ。あの人の場合は元々歯に衣着せない物言いをしてくるタイプの方が(参考:鼓、朝顔等)ウマが合いやすいので、そういう意味でも何かとその合法ロリ体形とは真逆のアンニュイな彼女はつるんでいて心地よかったのでしょう。脱獄教唆のシーン(ターン30)にはそういう昔馴染みならではの仲の良さが書けているといいなあと思いながら会話させてました。

 

Last File-デュエルポリスの戦いについて

 

 これまで散々振りまいてきた伏線や謎がついに収束する、泣いても笑っても最終章。この後語りまで含めても全46話と前作の136話に比べてえらく早い幕引きのように思えるかもしれませんが、通しで見ると割と短めの話にする、というのは書き始める前から決めていた既定路線でした。というか当初の予定だと1年以内に全部終わらせる予定だったのに、なぜにこれほど時間が伸びた……?いや私のせいですが。

 この章を書くにあたり決めていたこととしては、「糸巻の過去」「鳥居の帰還」「竹丸の成長」「巴との因縁の終わり」そして「一連の事件にケリをつける」、この5つです。やっぱり、終わらせるならきっちりやりきってからじゃないとエンディングなんて胸を張って言えませんからね。

 まあ過去話の経緯だとか、あのふたりにしかできなかった巴戦のラストだとか、色々と言いたいことはありますが、あえて語りたいことをひとつに絞りましょう。ずばり、最終決戦の展開です。主役2人とラスボスとの変則マッチ、無敵だった糸巻の作中初敗北、そして全てを終わらせた鳥居の一撃。どうでしょう、皆様の期待を裏切らず、それでいて予想を裏切ることはできたでしょうか。読者の皆様がどう思ったかはさておき、あれもかなり初期からこんな感じにしようと思っていた流れに大体沿った形です。

 まず最初にあの戦いで、七宝寺が鳥居の方から先に潰そうとした理由は明確にあります。彼にとって、糸巻太夫という女はプロ時代に幾度も相手をし、それ以降のデュエルポリスとなってからも交流のある、いわば勝手知ったる相手です。それに対し鳥居の情報は、直前の裏デュエルコロシアムで優勝した際の記録しか持ち得ていない。つまり、より不確定要素の大きい相手だったわけです……これ逆に言えば、彼は糸巻相手ならば確実に勝てると踏んでいたという何よりの証拠になるんですよね。タイマンなら負けることはないからこそ、そちらを放置することになってもほんのわずかにでも可能性がある方を真っ先に叩く。

 ただ彼にとって想定外だったのは、糸巻もまた同じことを考え同じ理由から全力で鳥居を守りにかかったことです。戦闘破壊耐性を持つ麗神を真っ先に立て攻撃誘導まですることで自分のライフ減少もいとわずにグランドマンの攻撃をいなしつつ鳥居のライフを守り、返しのターンではあえて除去ではなく打点での正面突破を図ることでおそらく引いているであろうと読んでいたオネスティ・ネオスを自分に対し使わせ手札と勝機を少しでも削る。またこれがどこまで計算づくだったかは本人以外には定かではありませんが、さらに自分が敗北する様を見せつけることで鳥居の心に残っていた怒りとためらいすらも打ち消してみせる、と、徹頭徹尾この1戦での彼女は鳥居のサポート役に回りました。そこの読み違いこそが、あの七宝寺が最終決戦で犯した唯一のミスだったわけですね。無論、糸巻が自分たちの時代はもう終わりであると考え新たな世代への交代を求めていることは彼自身もずっと前から承知していましたが、どうしてもかつてのやり直しと復興に妄執を燃やす老人にはそれが理解できず、ゆえに対策を取ろうとすら思えなかった。それがあの戦いの全てです。

 

24、復讐者-剣順平(つるぎじゅんぺい)

 彼個人がなにをどうしようが身の回りの破滅を止められなかったという点では、この男こそが作中一番の被害者といってもいいのかもしれませんね。どうすればよかったのか、という問いに対し、明確な回答を与えることが私にはできません。犯した罪をその命で償うことになり、何が起きたかもわからないうちに苦しみもなく父親の元へ行けたことを、救いと称していいものか。

 

25、幻影の最終防衛ライン-本源氏轍(ほんげんじわだち)

 前話が前話で書いてるうちにこっちのメンタルにも傷をつけていったものだから、今度は人間的に成熟した安定感のあるダンディズムが書きたかった……すーぐバランスとろうとしてキャラ付けするなこいつ。でもそういった誕生経緯もあって私の個人的な受けはよかったのか、しれっと2話連続で出番があるうえにきっちり白星まで拾っていったとレギュラーメンバー以外ではかなり優遇された人。最後には世代交代の時期が来たことを認めて新たなデュエリストたちに後を託して去っていきましたが、その姿は糸巻さんからすると羨ましいものでもあったでしょう。誰かに面と向かってそう問われると、本人は頑として認めないでしょうが。

 

26、ロストテクノロジスト-徳川学三郎(とくがわがくさぶろう)

 プラント近辺の海中に潜み、ミスト・ウォームを実体化させることで迷いの霧を起こしていた張本人。割とそれ以上でも以下でもない。時系列的に巴の組織も七曜のいた組織もかなり長いことドンパチやっていたせいでいくら戦略上超重要拠点とはいえこの地に割けるだけの実力者がだいぶ不足しており、彼のような2軍、とまではいわないまでも1,5軍程度のデュエリストですら動員せざるを得ないという事情があった。

 

27、ノーネームド-引戸卿士(ひきどきょうし)

 糸巻の元マネージャー。元同僚のプロ崩れは散々いろいろな形で出してきたので、1回ぐらいは出したかったそれとは違う斜め方向での過去からのアプローチ。やっぱ糸巻大夫という女は気を回す立場に置いてもそこそこの仕事はできるけどこの人や鼓のようにその性格をよく知り手綱を握れるフォロー役を別に立てて自由に動かす方が何かとうまくいくのよね。

 ただこの人の場合語りたいのは、そのキャラクター性よりもむしろ使用デッキの方ですね。登場回(ターン33)にも書いてますがあれは私にしては珍しく、というか前作合わせても唯一私自身でギミックを考えたオリジナルなものではないです。あれはツイッターの方で大変お世話になったある方の原案に私が口を出して完成したもので、まあ色々とあった結果ただでさえその人には何かとお世話になりっぱなしだったのにこれ以上迷惑をかけるわけにはいかない、と私の方から一方的に距離をとっているため今ではすっかり疎遠になっていますが……。

 

エンディングについて&総括

 

 どちらかといえば糸巻たちよりも清明を軸に締めた今回のエンディング。以前もちらりと書きましたが、本来はこの場に彼はいないはずでした。元々のプロットでは糸巻と鳥居のタッグで七宝時の執念を打ち破ることにこそ成功するもののそこに時間をかけすぎたせいでもはやプラントの大爆発は避けきれず、その規模とエネルギーからいって海を隔てた家紋町にまで深刻な影響が出ることは容易に想像の付く、しかしもはや手の打ちようもないためせめて避難誘導のために一同がプラントを脱出した……というところで実は単身その場に残っていた清明がダークシグナーの能力を限界以上に駆使してプラントを丸々取り込むサイズの巨大地上絵、というか海上絵を作成。「デュエル終了まで何人たりとも出入り不可」の性質を生かしてその結界の内部だけで爆発のエネルギーを無理やり押し込める荒業で家紋町の、ひいては日本の危機を救うも、紫色の炎の線が海上から消えたときそこに清明の姿は跡形もなく……という大変ヒロイックなお話が展開される予定でした。まあ結果的にやめたんですが。やめて正解だったような、やっぱ書いとけばよかったような。まあ上述のように清明の物語はまだ終わっていませんので、そっちを選んだ場合でも吹き飛んだ肉片から再生するもチャクチャルさんが力を使い果たして休眠状態になる生存ルートだけは用意するつもりでしたが。

 ……そう考えるとすっごい平和に終わりましたよね、本編。

 ただどちらにせよ今にして思えばちょっと反省しているのが、清明の出番が多すぎること。勝率自体はぶっちゃけ大したことないんですが、これは単なるゲストキャラの存在感ではない。ちょうど入れ替わりで鳥居がややこしいことになり、糸巻さんも裏デュエルコロシアムのころの余裕がやや薄れ、主役2人が揺らいでいた時期だったのでやや書きにくくなったとはいえ長年主役張ってきたアドバンテージのある彼に無意識のうちについ頼ってしまったんですよね。いっそ精霊のカードについての話が終わったら早々に離脱させておくべきだったか。

 

 

 

 

 

 それでは、これにておしまいです。この話は続けようと思えばいくらでも続けられるものですが、それでもこれにて閉幕させていただきます。

 正直なところ、ああすればよかったこうすればよかった、そういった思いや後悔は尽きません。が、それは裏を返せば彼女ら彼らが単なる私の意思でのみ行動する人形などではなく、自分の意思で動く確固たる人格を持つ存在だということなのかもしれないとも思います。ひとつの人格だからこそ間違えることもあるし、はたから見ていれば無駄や無意味にしか思えない行動を取ることもある。しかしこれまで綴ってきたこの物語は、この世界の人々にとっては紛れもないその人たちの人生のかたちです。

 糸巻大夫、鳥居浄瑠、その他たくさんのキャラクターたちへ。ありがとう、そしてご苦労様でした。これからも、その人生を悔いなく生き抜いてください。

 そして読者の皆様。途中で著しく執筆ペースが落ちるわ1年で終了の予定がどんどん遅れるわ、なにかとグダグダなペースでしか更新のできなかった本作に最後までお付き合いいただき、謹んで感謝申し上げます。




次の作品については、今のところ執筆予定はないです。
いや書こうと常々思っているもの自体はあるんですが、こればかりはどう転ぶか私自身にも皆目見当がつきません。
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