双龍 上   作:文月りんと

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日本 無人島 1973年2月


3.呼び声

 無人島にある洞窟。洞窟の中から足音が木霊する。直後、二人の人影が現れた。

 走っている二人は身を隠せそうな場所を見つけるとすぐにしゃがみ込んだ。直後、背後の無人島のそこかしこが大爆発していった。

 爆発が止み、煙が晴れていくと、海岸の岩場に立っていたのは仮面ライダー1号と2号の二人だった。

 

『大丈夫か、一文字!』

 

『問題無いぞ、本郷! これでゲルショッカー残党も最期だな』

 

『…あぁ、そう思いたいな』

 

 互いの身体を支えながら、それぞれのサイクロンを呼び出す。そして、ライダー達はその場から立ち去っていった。

 

 数分後、ライダー達が出てきた岩壁から、三人の男女が現れた。しかし、みな致命傷に近い怪我があり、全員、このままでは亡くなる運命なのだろう。

 

「忌まわしき…仮面ライダーめ!」

 

 悔しそうに近くの岩に握り拳を叩きつける女性。拳から青い色の血が吹き出る。人の姿をしているが、どうやら三人とも怪人のようだ。

 

「これでゲルショッカーも壊滅か…」

 

 片腕が無くなり、落胆している男。そんな片腕男の肩に手を置き、右目を包帯でぐるぐる巻にした男が声をかけた。

 

「諦めるな」

 

 包帯男が高らかに宣言する。

 

「!」

 

「基地から持ち出せたこの本にも書いてあっただろう…『絶望を感じる時、それは希望を感じる時でもある』と」

 

「確かにそんな記述はあったが…」

 

 包帯男は持っていた本を掲げ、仲間に見せつけた。その本は通常の本と違い、カバー部分が皮でなく、なにか人間の皮膚のようなものを連想させるグロテスクなデザインをしていた。

 

「だが、おまえが読んでいた本は…その、魔道書の類いだったんだろう?」

 片腕男が疑問を投げかける。

 

「そうだ。オレは他にも重要な記述を見つけたのだ。未知なる世界から力ある者を喚び出すという方法がな…」

 

「召喚?そんな事が可能なのか?」

 

 女は半信半疑の表情で包帯男に質問する。 

 

「できるさ。今がその時だ。私はあの憎き仮面ライダーを倒すためなら、この命をなげうってでも、試してみたい方法がある」

 

「…よし、のった。どうせこのままじゃ死ぬ運命だ、アタシの命もくれてやる」

 

 女は覚悟を決めたようで包帯男をじっと見つめる。

 

「ありがとう。おまえはどうする?」

 

「……僕も乗った。何をすれば良い?」

 

 包帯男は不敵な笑みをこぼす。

 

「…さぁ、これで完成だ」

 

 数分後、自分たちの血で描いた魔法陣と、周辺に生息していた小動物の死骸、魔法陣を三方から囲むようにそれぞれ男女が立っていた。

 

「…流石に血を流しすぎたか……僕はそろそろお暇したいんだが」と片腕男。

 

「裏の組織に入っているのに、お暇か。良いご身分だな」と包帯男。

 

「救援も期待できない今の状況じゃあ、こんなもんにすがるしかないよねぇ…」と女が言った。

 

「それでは、召喚の呪文を始めよう。呪文は、『全てを破壊し、全てを繋げ』だ」

 

「「「『全てを破壊し、全てを繋げ』…『全てを破壊し、全てを繋げ』…『全てを破壊し、全てを繋げ』……」」」

 

 三人が呪文を唱え始めると、徐々に魔法陣が赤色からピンクのような色を輝き出す。

 

「おおっ!見ろ、魔法陣が!…ぐっ、があああああ!!!」

 

 片腕男が声と同時にどこか苦しいのか、胸元をおさえると直後、目は白目に変わり、口から赤い泡を吹きはじめた。数秒後、男の意識は立ったまま動かなくなり、魔法陣に吸い込まれるように消えた。

 

「「『全てを破壊し、全てを繋げ』…『全てを破壊し、全てを繋げ』…『全てを破壊し、全てを繋げ』……」」

 

 残りの二人は包帯男に構うこと無く呪文を続けていく。

 

「きゃっ!」

 

 魔法陣から雷が発生し、女の身体を直撃する。

 

「次は…アタシの番みたいだ。…じゃあね、このクソッ…な時間の中で…あんたと…

過ごせて…」

 

 女は全てを言う前にこの空間から消失した。

 

「クソッ、早く来いよぉ!!『全てを破壊し、全てを繋げ』…『全てを破壊し、全てを繋げ』…『全てを破壊し、全てを繋げ』……」

 

 包帯男が我を忘れ狂ったように一人で呪文を続けると、魔法陣が描かれた地面に亀裂が入り、周囲が暗闇に包まれていく。

 

「そうだ、俺たちに……よこせぇぇぇ!!」

 

 包帯男の叫びと同時に、なにかエンジン音のような音が聞こえた。周囲を見渡したが、自分の目の前にはちょうど自分と同じ高さに浮かぶ不思議な暗闇が現れていた。その中に更にどす黒い色をした玉のようなものが見える。

 

「これで…我が、いや我らの宿願が叶うぞ!!ガハハハハハッ!!」

 

『うるさい…』

 

 包帯男の高笑いが耳障りなのか不機嫌な声が暗闇の玉から聞こえてきた。

 

「!? あなたが魔道書に書かれていた破滅の王ですか!」

 

『だから、うるさい。貴様、静かにしないとこの世界から消すぞ』

 

「も、申し訳ありません!」

 

 すぐに跪き、暗闇の玉に向かって、頭を垂れる包帯男。

 

『…ふわぁぁぁっ、ま、いいか。ひとまず貴様とこの世界のことを教えてもらうぞ。話はそれからだ。あとは…お前の名前も聞かせろ』

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