シュタインズ・ゲート世界線のとあるクリスマスイブ 作:こもれび
遅ればせながら、STEINS;GATE 0完結おめでとうございます!!
シュタゲは展開の複雑さから正史を読み解くことは本当に難しいのですけど、骨子としてはアニメ版が本当に好きなんです。
困った顔のクリスがもうたまらなくて!!
そんな感じで書き上げました。
おかりんやクリスの声が脳内再生されるといいなあ(笑)
「よう岡部。今日の合コンどうすんだよ。お前も来るだろ?」
午後の選択講義が終わり、俺は隣の席でテキストを片づけている猫背でひょろ高い男へとそう声を掛けた。
そいつは一度俺へと視線を向けたあと、気まずそうに下を向いてポソリと答える。
「あ……、えと、わりぃ。俺はやめとく」
まあ、そう言うだろうとは思っていたけどな。
だが、ここで引き下がる俺ではないのだ。
なにしろ今日の合コン、メンズが一人足りないのだから。
まあ、普段なら、やった女の子一人余るじゃん、ハーレムハーレム超ラッキーってなるとこなんだけど、今日のお相手はお嬢様が集まる○○女子大学のテニスサークル。
我等、電大テニスサークルが再三にわたって心からのお誘い(しつこくアプローチ)した成果で、漸く合コンにこぎつけたというのだが、向こうからの申し出で、人数はきっちり合わせてくださいとのこと。
先方は6人らしいのだが、我が部は今5人しかおらず、このままでは約束を違えて白けさせることにもなりかねない。
そういうわけで、俺は同じ学部で比較的よく話す、この岡部をターゲットに据えたのだ。
こいつの名前は岡部倫太郎。
背の高い痩せっぽちで、普段ほとんどしゃべらない気弱そうなやつなんだが、他の選択科目で一緒になる橋田とかいうデブと一緒の時は結構話している感じ。
だけどそれ以外は、基本自分から話してこないし、普段から何を考えているのか良く分からないやつだ。
だが、なぜか『女子にモテる』。
そう、なぜかこいつの周りにはいつも女が集まっているのだ。
大学帰りにおっとりした少しタレ目の女の子(巨乳)と待ち合わせしていたり、猫耳の可愛いメイドさんに纏わりつかれていたり、グラマーなメガネ美女と並んで携帯打ってたり、可憐な巫女さんに何やら話しかけていたり。
とにかく、女子と一緒にいない日がないと言っても過言ではないのだ。
一見して気弱そうだし、人畜無害アピール光線でも出しているということなのか?
それともフェロモンでも出し続けているのか?
とにかくだ。
過去に一度、こいつを連れた状態で女子に声を掛けてみたら、一発でナンパに成功。
特にこいつは何をしたわけでもないのだが、彼女たちと一緒に食事をしている最中も、さりげなく女子に気遣いをして好感度を上げつつ、でも自分からは積極的に動かないというまさに理想的な『当て馬』くんなのだ。
こいつがいれば場の雰囲気が良いままに、意中の子を口説きまくれるというわけ。
最高の数合わせ要員。
それになにより、今回の合コン相手というのが、所謂その時ナンパした女の子の一人が所属しているサークルなわけで、その時の話題に触れるとなれば岡部が居た方が何かと良いに決まっている。
俺の中では岡部が参加するのは決定事項なのだ。
そういうわけで、俺は更に食い下がった。
「なあ、岡部ぇ。今夜はクリスマスだぜ? イブだぜ、イブ。彼氏のいない女の子たちだってみんな何かドキドキするようなことがおきないかって、わくわくしてるんだよ。彼氏彼女のいない者同士が集まって織りなす一時のアバンちゅーーる。お前だって気になるだろ? な? な?」
そう、こんな街中何処へ行っても華やかなこの日に、初対面とはいえ男女が会ってアルコールこみの飲食を共にするのだ。
男だって女だって期待しないわけがない。
そう、きっと、楽しみ過ぎて、密かに用意していたとっておきの勝負下着とか着てきちゃってるんだよ、むふふ。
あ、勝負下着準備オーケーは俺のことなんだけどもな。
そんなことを思いつつ、乗ってくるだろうと思って岡部の顔を見て見たら……
心底嫌そうな顔になっていた。
なんでだ!!
「お前な、そんな嫌そうな顔すんじゃねえよ。いいか? お前これはチャンスなんだそ? お前に彼女がいるのかいないのかは知らないが、その日限りの楽しい楽しい女の子とのいちゃいちゃタイムが待ってるんだぞ。だーいじょうぶだって、お前の知り合いの女達にはバレることはねえから。それに、今回来るのはこの前お前も会った、あのくりくりにこちゃんマークのサークル仲間なんだよ。ほら、この前インスタ見たろうが、めっちゃ美人の5人組み」
「ほぅ」
おっと、やっと反応しやがった。
岡部はちらりと顔を上げると、俺へと聞いてきた。
「この前、お前がナンパした、その子も来るのか?」
「ああ、来るぜ。おっと、なんだよ、お前あの子が気になってたのか、あのにこちゃん。そういやこの前も結構仲良さげに話してたよな。安心しろって誰も邪魔したりしねえから。よし、ならお前も参加な。ハイ決定」
「お、おい……」
俺は岡部が何か言おうとするのを遮ってすぐに他の部員へと電話した。
俺が一気に畳みかけるように話しているのを聞きながら、岡部は半ば絶望的な顔になって首を振りつつ立ち上がって廊下へと出ようとしていた。
俺はそんな奴へと、合流時間と場所についてを言うと、奴は諦めたように片手を上げて答えた。
その直後、岡部に近寄ってから、こっちをちらちら見ながら何かを話しかけていたのは、さっきの授業の講師でもあった、牧瀬 紅莉栖女史。
俺達より年下のはずだが、アメリカのとある大学の研究員で、学界に論文を発表したりしている天才なんだそうだ。
まあ、頭の固い融通の利かないかん時のつまらなそうな女だ。美人の部類だがはっきり言って興味はない。
岡部もどうせ態度が悪いとか、そんな難癖をつけられているのだろう。
俺は顔を真っ赤にした牧瀬紅莉栖に怒鳴られている岡部に少しだけ同情した。
× × ×
俺は待ち合わせ場所でもある渋谷駅前に来た。
すでにほかのサークル仲間も集まっていて、女の子のグループもほぼ揃っていた。
まだ来ていないのは、岡部と、例のくりくりにこちゃんマークだけだ。
くりくりにこちゃんマークとは、要はこの前ナンパした女の子のことだが、小柄で少しぽっちゃりした目の大きな女の子で、とにかくずっとにこにこ笑っていたのが印象的だった。
それがにこちゃんマークっぽかったので、俺は勝手にそう呼んでいたというだけの話。
まあ、相対的に彼女の美醜を評価するのであれば、中の下といったところだろう。
決してブスではないが、さりとて美人の部類でもない。
今ここに集まっている、彼女のサークル仲間達とは比べるべくもない。
ここにいる5人は、グラビア写真集から出てきたと言われても信じてしまいそうなほどの美人が揃っていた。はっきりいって、めちゃくちゃ滾る。
それは俺だけでは当然ないわけで、他のサークル仲間ももう目の色がおかしい。
というか、鼻の下伸びすぎだ。
その時なにかしらの視線を感じてふと顔を向けて見たら、通りの向こうの看板の陰に、少し赤毛っぽい長髪で、サングラスをかけてダッフルコートを着た女の姿があった。
なんだあれは、怪しすぎる。
でも、どっかで見たような……はて?
「おまたせ~~」
「よぉ」
そんな声がして振り向けば、岡部と例のにこちゃんマークが二人で並んでこっちへと向かってきていた。
岡部の格好はさっき大学で会った時のままだが、にこちゃんマークの方は薄いブルーのワンピース姿で、綺麗というよりは可愛い感じか。
うーん、惜しい。
確かに頑張っている感じだが、やっぱり他の子達と比べると格段に見劣りする。
50点だな。
まあ、岡部と仲良さそうだし、今日は二人でいちゃいちゃしてればいいだろ。
俺達は、こっちのグラビアモデルを攻略しちゃうからな。
ようやくこれで準備オーケー。
楽しい楽しいクリスマスイブがやっと始まる。
そんな風に浮かれていた時期が確かにありました。
まさか、あんな展開になるなんて、この時の俺には知るよしもなかった。
× × ×