魔術師とジャンヌ ーオルタナティブー   作:北海海助

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一通り見た後にアレ?キャラ崩壊してね?
と思った。
ジャンヌ・オルタってこんなだっけ?
ジャルタマン見てくる。


第二話『パーティー』

部屋は酷い有様だ。

全てが汚い。

そして。

服がはだけてボロボロな俺も汚されてしまった。

理由を説明しよう。

それは昨日のクリスマスパーティー。

そこで起こった悲劇の事件だ。

 

 

「これで足りるか」

 

俺とアヴェンジャーが住んでいる住宅街のすぐ隣にある都市部にあるスーパーマーケット。

店内であらかた今晩の食材をカゴに入れていた時だ。

 

「……飲み物が入ってないじゃない」

「あれホントだ。アヴェンジャー、ジンジャーエールとソーダ、あとお茶取ってきてくれ」

「は?なんで私が……」

「なんで着いてきたんだよ」

「チッ……はいはい」

「舌打ちをいちいちつくんじゃありません」

「チッチッチッ……」

「……おまえ」

 

アヴェンジャーは舌打ちをつきながら飲み物コーナーへ歩いて行った。すんごいマイペースって感じのゆっくりした歩き方で。

 

「……」

 

カゴの中を再度確認する。

パーティー用の食材と飲み物はアヴェンジャーが運んできてくれるからオーケー。

これくらいで良いかな?

あとは……ケーキか。

 

「食べたそうにしてたのアイツだし。……アイツに決めさせるか」

 

その数分後にアヴェンジャーは戻ってきた。

カゴの中に無造作に瓶のジンジャーエールとペットボトルのソーダとお茶が入れられる。

 

「飲み物到着。よし……」

「礼ぐらい言ったらどうなんです?まぁ、貴方のその空っぽな脳ミソでは無理ですか」

「へーへーあんがとあんがと」

 

お決まりの罵倒。

今じゃあ日常会話みたいになってきてるので言われてもなんも響かなくなってきた。

 

 

買った物を全部袋に入れる。

これであとはケーキだけかな。

 

「なぁアヴェンジャー」

「ん?」

「ケーキ何がいい?」

 

袋を持ってすぐ向かえにあるケーキ販売コーナーに目を向ける。ガラス張りのケースに色々とケーキが入れられているのが見えた。

 

「……アレ」

「え?」

 

ウソだろマジですか。

アヴェンジャーが指をさしたケーキ。

それはクリスマス限定超巨大ホールケーキとかいう名前を付けられたケーキだった。

 

「あのな。あぁいう高い奴じゃなくてな」

「何言ってんの?よく見なさい」

「え?」

 

よくよく見ればクリスマス大特価超大安売りという表記が出されていた。うんとても安いね。

 

「後で食えなくなっても知らんぞ俺は」

「舐めないでくれないかしら。私に限界なんてものは存在しないわ……!」

 

そんなドヤ顔で言われても。

フフンと頬を上げてドヤ顔をするアヴェンジャー。ホントに大丈夫なのかこの子は。

 

「あのこのクリスマス限定っての一つください」

「エッ」

 

店員さんがギョッとする。

うんそんな気はしてた。

多分初めて今売れたなコレ。

 

 

片手で持つのは困難。

だから巨大ケーキはアヴェンジャーに持たせることに。アヴェンジャーは満足気な顔をして笑っている。

こういう所は普通の女の子なんだけどなぁ。

 

「アヴェンジャー」

「ん?」

「嬉しいか?」

「ナッ!?……何がですか?」

「いやめっちゃニヤニヤしてんじゃん」

「し、してない!!!」

「アハハ顔が赤いぞ」

「み、見るな!!こっちを見るな!!!」

 

白い息を荒げながら頬を赤く染めて怒鳴る。

弄るのは楽しいんだけどなぁ。

反応が面白いし。

 

「っと。家が見えてきた」

 

俺達が住んでいる一軒家が見えてきた。

どこにでもある普通の家だ。

アヴェンジャーは一足先に敷地内へと入っていく。

 

「ただいまっと」

 

ポケットから出した鍵で開けて中へ入る。

外は冬真っ只中、家の中は断然暖かい。

思わずため息が出てしまう。

 

「アヴェンジャー。ケーキは冷蔵庫の中に頑張って入れてくれ。あと手洗いウガイはちゃんとしろよ」

「わかってるわよ。そんなこといちいち言わなくてもできるから」

 

ムッとした顔で睨んでくる。

しつこかったですねすみません。

最近はインフルエンザとかも流行ってるみたいだし気をつけていかないと。って考えてしまうとしつこくなっちゃうんだよなぁ。

 

「……」

 

なんだろう。

俺はアイツの母親かなんかなんだろうか。

 

「? 何見てんの?」

「いや。反抗期っていつ抜けんのかなぁって」

「喧嘩売ってんの?」

 

売ってないです。

さて、買った食材はすべて台所の調理台に。

飲み物は適当に冷蔵庫へぶち込む。

 

「よし調理開始だな」

 

アヴェンジャーは超高速で部屋着に着替えてコタツへイン。その速さはどこかの大英雄を超えていたと思う。

 

 

時刻は七時過ぎ。

夕食にはちょうどいい時間だ。

そして我が家の食卓テーブルにはローストチキンやケーキが並んでいた。

 

「アヴェンジャー、何飲みたい?」

「ジンジャーエール」

 

要望の通りにアヴェンジャーのコップに瓶からジンジャーエールを注ぐ。

俺は……。俺もジンジャーエールでいいか。

 

「んじゃ食うか」

 

こうして俺とアヴェンジャーのクリスマスパーティーは始まった。

乾いていた喉を潤すためにコップの中のジンジャーエールを口に運ぶ。

そこでだ。

そこで違和感を感じたのだ。

 

「あれ。これジンジャーエールか?」

 

なんか前に飲んだやつとは味が違うような。

チラリとアヴェンジャーの方を見る。

既に二杯目をコップに注ぎ、猛スピードで飲み干していた。

 

「おいアヴェンジャー?」

 

声を掛けても返事がない。

それよりもブツブツと何か言っている。

 

「ねぇ」

「ん、あ、なに?」

 

突然こちらへ話しかけてきた。

その時の顔は火照っているかのように赤く染まっていた。どこか色気のある表情に思わず面食らう。

 

「なんでアンタは。そんなにわらしにちょっかいかけてくるわけ?なに好きなの?」

「……は?」

 

呂律が回ってないような喋り方。

ニヤニヤと笑みを浮かべながら話すアヴェンジャー。その感じはどこか酔っ払ったオッサンの様であった。

 

「ねぇえ。どっちなのぉ?あ。恥ずかしくて言えないんだぁ?この恥ずかしがり屋め……!」

 

グイグイと手で俺の胸を押す。

なにこれ。

なにこのウザイ感じ。

 

「ん―――」

「?……おいどうし――ッッ!!!???」

 

バキッ!!

効果音が一つ。

流れるように倒れる俺。

 

「ッッデエェェェェ!!!!」

「アハハハハ」

 

コイツ思いっきり瓶で殴りやがった!!

しかも躊躇なく頭!!!

アヴェンジャーの握る割れた瓶を見る。

たまたま見えたラベルには『神殺し』の文字が入っていた。

 

「酒じゃねえぇぇかぁぁああ!!!!」

「ウァ―――」

 

ジロリとアヴェンジャーの獲物を見るような目が俺をゆっくりと見下ろす。

 

「おい!アヴェンジャー!目ぇさま」

「……んふ」

「―――ッ!?」

 

アヴェンジャーは悶える俺の体に馬乗りになる。

艶っぽい息を吐きながら顔を近づけてきた。

ほんのりと酒の匂いがする。

 

「おい離れろよ、つか目ェ覚めせ」

「黙りなさい」

 

グッとアヴェンジャーの肩を抑える。

それでもアヴェンジャーは肩を抑える俺の手を握りグイッと離す。

 

「筋力Aの馬鹿力が……ッ!!」

「ねぇ」

「んは……ッ!?」

 

耳元で囁く。

その度に背筋がゾゾと凍りつく。

 

「いつもいつもアヴェンジャーってウザったいのよ。もう聖杯戦争は終わったのよ?それなのにいちいちクラス名で呼ぶなんてバカバカしいと思わない?」

「何が言いたい……?」

「名前で呼びなさいよ」

 

震えた声が聞こえる。

耳元で言われたその言葉はハッキリと俺に伝わった。

 

「ジャンヌ・ダルクって名前で言ってよ」

「……嫌だね」

 

受肉したサーヴァント。

元英霊にして人間。

神の声を聞くことができたとされる聖人。

かつての百年戦争においてオルレアンの乙女と謳われた聖処女、ジャンヌ・ダルク。

 

「なんで……?なんでよ……!」

「そんな怒ることかよ」

 

彼女はどこか寂しそうで、そして憤りを感じながら出す震えた声で囁いた。

 

「危険だからだ」

「……?」

「お前にも言ったろ?封印指定執行者のこと」

 

封印指定。

それは魔術協会から与えられる称号。

と同時に標本にしますという通達でもある。

 

「危険なんだよアイツらは」

「そんなの私がなんとか」

「お前じゃ無理だ」

 

かつて俺はとある封印指定執行者と会ったことがある。その時に思いっきり腕を弾き飛ばされた経験がある。その時から俺は右手が義手だ。正確に言えば限りなく人間の腕に近い義手。

その時から封印指定執行者に対して少しトラウマがあった。

 

「頼むよ。これはお前を想って」

 

言ってるんだ、そう言おうとした時だ。

ガシリと胸倉を掴まれた。

 

「私のこと想ってるなら私の少しのワガママくらい聞いてくれたって良いじゃない……ッ!!」

 

怒鳴られた。

彼女は涙ぐみながら俺に言う。

 

「もういい。我慢はやめる」

「は?我慢なんてしてないだろ」

 

寧ろ自分のしたいことやってんじゃん。

漫画買ったりゲームしたり。

 

「うぇ……ッ!?」

 

グイッと胸倉を引かれる。

さらに俺とアヴェンジャーの距離が近くなった。

 

「あ、あの!?なにするんですか?」

「何って。……キスに決まってるじゃない」

 

キッス!?!?!?

ちょっとたった二杯でここまで酔えるか!?

 

「本気で目を覚ませ!!?」

「覚めてるわよ」

「いやいや!!今のお前ホントおかしいから!!」

「うっさいわね」

 

そして。

ゆっくりとアヴェンジャーは迫る。

 

 

「……」

 

俺は今、アヴェンジャーの口を手で抑えていた。

あと数センチで本当にキスをしていたところだ。

 

「……あ。おい」

「アンタは。私のこと嫌いなの?」

「嫌いじゃねぇよ」

「好きなの?」

「ホント酒の力ってスゲーな。お前自分で今何言ってるか理解してんのか?普段のお前ならこんなこと聞かねぇのに」

 

ガシッと俺の手を握る。

力は強く俺は苦虫を噛み潰したような顔をする。

 

「わかった。俺の負けだ」

「は?」

「そこを退いてくれ。ジャンヌ」

 

ここはもう潔く願いを聞こう。

名前で呼んだら素直にアヴェンジャー、もといジャンヌは俺から退けてくれた。

 

「フゥ……アベ。ジャンヌ今日はもう……」

「ん……ん……ん……」

 

あれれ?なんか飲んでるゾー?

ってそれ酒!?

瓶は割れたはずなのにどうして!?

いや殴る前に注いでおいたのか!?

 

「ぷは……フフフ」

「あれ、なにその顔」

 

目一杯ゴキュゴキュとコップに注がれたお酒を飲み干した後。まるで黒い笑みを浮かべながらジャンヌは俺を見つめる。

ガシーン!!すごいスピードで俺の胸倉を掴み。

ビリビリッ!!

俺のTシャツはいとも簡単に裂けていった。

 

「いや―――ッ!!??」

「ウフフフ」

「キャ―――ッ!!なんかキャラ違うよジャンヌさん!いつものグてっとした冷静さはどうしたと言うんですの――ッ!?」

 

ジャンヌは再び俺の体に馬乗りになる。

そして耳元でフゥと息を吹かれた。

 

「んはぁ……じゃなくて!?」

「私がいっぱい慰めてあげる」

「い、いやぁ―――ッ!!!???」

 

この日を境に俺は。

男としての何かと純情を失った。

 

 

結局。

ジャンヌが寝落ちするまで俺は耐えた。

 

「ん……あれ?パーティー……って!!??」

「あぁジャンヌおはよう」

 

起きて早々に赤面するジャンヌ。

そのまま俺との距離を取る。

 

「な、なんで裸なの!?近付くな汚れる!!」

「え、えぇなんで?」

 

そしてこの日から。

俺は天才魔術師の他にド変態というレッテルを貼られたのであった。


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