「あ、ミラ。どうしたの? というかユーリ、社の中にいたの?」
「まあな。で、お前らもどうしたんだ? てっきり村に戻ってると思ってたぜ」
ジュードが社から出てきた二人に聞くと、ユーリがそう言い返した。
「うん。ちょっと」
「ふむ。ではこれから村のものに君のことを頼みに行くとしよう」
ジュードがユーリの質問に言い淀んでいると、ミラがそう言ってきた。しかし、ジュードは険しい表情をして考え込みそれを見たミラは
「どうした? 村になじめるか心配なのか?」
と、ジュードに聞いた。
「ううん。そうじゃなくて……。ミラは……これからどうするの? クルスニクの槍を壊しに、イル・ファンに戻るの?」
聞かれたジュードは、少し考えてからミラに聞き返した。
「ああ。四大のことと、あの場にいたマナを吸い出された人間たちを考えると、クルスニクの槍とは、マナを集めて使用される兵器なのだろう。あれが今すぐ使われることはないだろうが、やつらのマナ確保は続くと考えているからな。」
ミラはジュードの質問にそう答え、聞いたジュードは
「でね……それ、ひとりでやるの?」
と、さらに質問した。
「ん? いや。ユーリが手伝ってくれることになった」
「えっ? ホントなのユーリ」
「ああ」
とミラが言うと、横で聞いていた驚いてカロルがユーリに聞き、ユーリはそれを肯定した。
「回りくどいぞ。ジュード。何が言いたい?」
「……二人は、どうしてそんなに強いのかなって」
「ふむ。強い、か。考えたこともないな。私にはなすべきことがある。私は、それを完遂するために行動しているだけなのだから」
ミラはジュードの質問に簡潔に答えた。答えを聞いたジュードはさらに
「で、でも今の力で……たった二人じゃ無理なんじゃない? 死んじゃうかもしれない」
と、ミラとユーリに聞いたが
「だが、やらねばなるまい。もう決めたことだ」
「そうだな。俺も手伝うって決めたし。まあ、死ぬ気なんてねぇけどよ」
二人は自分の決意を言った。
「……やっぱり強いよ」
ジュードは二人の決意を聞き、俯きながら呟いた。そして、そんなミラとユーリを見て、
「ミラとユーリって凄く似てるよね」
と、カロルが言ってきた。
「ん、そうか?」
「うん、そっくり。自分で決めたことにを意地でも貫くところとか特に」
ユーリは聞き返すと、カロルは苦笑しながら言い返した。
「そうなのか? ……ふむ、よくわからんがなんだか少し嬉しいな」
「嬉しいのか?」
ミラはカロルの言葉を聞いて、微笑みながら言い。ユーリは何で? というふうに首を傾げた。
「ふむ。では村に……」
「ミラ!」
「ん?」
ミラが村へ戻ろうと促そうとしたら、ジュードが呼び止め
「僕も行っていいかな。一緒に」
と、言った。ミラはジュードの言葉に驚いた表情になった。
「君は、私に関わって普通の生活を失ったのだろう? 後悔していたのではないのか?」
「うん……。ホント言うと少し。でも、いくら後悔したって戻れないものは戻れない……。だったら、今の僕の力でもできること……、僕もミラの手伝いをしようかなって」
ミラが聞くと、ジュードはそう答えた。
「君たちは本当にお節介だな。皆を巻き込まぬよう、遅れて社を出たというのに」
ミラはそれを聞くと一旦皆を見渡してそう言った。
「そうだったの?」
「うむ。君たちとの短い旅路で学んだ気を遣う、というヤツだ。なかなか難しいな。とにかく村に行こう。こうなってしまった以上、急いで発つ意味も弱くなってしまったしな」
ミラはそう言って、皆と村に下りて行った。山を下り、村に入るとアルヴィンが門の近くに座っていた。
「よう。遅かったな。ミラたちも一緒か。身の振り方、決まったんだな」
アルヴィンはミラたちを見つけると、そう言いながらジュードに近づいていった。
「うん。ミラたちと行くことにしたよ」
「どういう心境の変化だよ……。後悔するんじゃないのか?」
アルヴィンはジュードの言葉に驚いて、再度尋ねた。
「うーん……でも、もう決めたんだ。ミラの手伝いをするって」
「あっそ」
と、ジュードの答えに納得したのかアルヴィンはそう返した。
「アルヴィン、今まで世話になったな」
「別にいいって。勝手について来ただけだしよ。あーそれと、村のじいさんがこれ払うって渡されたんだけど?」
ミラがアルヴィンに礼をいった。アルヴィンは照れくさそうにした後、ミラにお金が入った袋を渡した
「村の人が?」
「ああ。マクスウェル様を守ってくれてありがとう~ってな。俺は要らないって言ったんだけどよ、どうしてもって」
ミラが怪訝そうに袋を見ると、アルヴィンが事情を簡単に説明した。
「ふむ。長老だろう。いらぬことを。これは私の方から返しておこう」
ミラは事情を聞くと、そう言って袋を持って行こうとしたら
「ちょっと待ってよミラ」
「ん? なんだカロル」
カロルがミラを呼び止めた。
「えっとね。長老さんに突き返すのは止めてあげて」
「ん? なぜだ。これは村の物であるし、勝手な勘違いで貰うわけにもいくまい」
カロルはミラに突然そう言うが、ミラはそう言い返した。
「そうじゃなくて、きっと村長さんはそれに感謝とか色々な気持ちもたくさん込めて渡してくれたんだと思うんだ。だから、それを突き返すって言うのは長老さんの気持ちを無碍にしちゃうと同じだと思うんだ。だからね」
とカロルはミラにちゃんと説明をした。
「む、そういうものなのか? しかし、それでは困った。これはどうすれば」
「貰っちまえばいいんじゃねーのか。じいさんにはミラからサンキュって言っとけば喜ぶと思うぜ」
と、説明を聞いたミラが困っていたらアルヴィンがそう言った。
「しかしだな」
「じいさんもじいさんなりの誇りがあんだよ。カロルの言ったとおり断るのも失礼ってもんだ」
「そうか」
ミラがまだ煮え切らない態度をしていたのでアルヴィンがさらに言って、ミラはやっと納得した。
「さてと、じいさんに待てと言われて待ってはいるものの、一向に来なくてな」
「村にはいるんだろ?」
「ああ。捜してみるとしよう」
ミラが納得したあと、アルヴィンはそう言って村を見渡すとユーリとミラがそう言い、皆で村長を捜し始めた。村人たちから話しを聞き、一行は村の集会場に入り村長を見つけた。
「マ、マクスウェル様! それに皆様も。お待たせして申し訳ございませんっ!」
村長は慌てた様子でミラたちに謝罪をした。
「構わぬ。それより謝礼を用意していると聞いているぞ」
「はい。私たち、戦うことは無理でもマクスウェル様のお力になれるようにと。以前、村の皆で出し合ったお金がありましてな」
ミラが村長に訊ねると、村長はミラのためにと笑顔で説明した。
「……そうか」
「ね。言ったとおりでしょ。」
ミラは村長の言葉を聞いて少し俯き、カロルはそんなミラに得意げに声をかけた。
「お前たちの誇り、ありがたく受け取るとしよう」
ミラは顔を上げて村長にそう言い、村長はユーリたちにお金を渡した。
「ところでアルヴィン。お前はこれからどうするんだ?」
「ん? そうだな。とりあえず仕事探さなきゃならねーし、なんにしろイラート海停に戻んなきゃな。あんたらもまたイラート海停に戻るんだろ?」
ミラがアルヴィンに聞くと、アルヴィンはそう答える。
「そうだな。イル・ファンに戻るには海停を使うしかないから」
「じゃあ、もうしばらくはご一緒ってことで」
ミラがそう言うとアルヴィンはとりあえず海停までと言った。
「まだついてくるのかよ。そのうち、俺らみたいに指名手配されるぜ」
と、ユーリはアルヴィンに冗談めかしに言うと
「えっ? ユーリまた指名手配されてるの?」
「む。言っとくが俺は何も悪いことしてねぇーからな」
と、カロルはジト目でユーリを見て、ユーリはそう言い訳した。そうしていると集会場の扉が勢いよく開き
「ミラ様!」
と、イバルが入ってきた。
「またいずこかへ赴かれるのですか?」
「ああ、留守を頼む」
イバルがミラに訊ねると、ミラはそう言った。が
「自分も、ご一緒いたします!こんなどこの誰ともわからんヤツらにミラ様のお世話を任せられません!」
イバルはミラの世話をするのは自分だ、とユーリたちを見ながら言ったが
「イバル!お前の使命を言ってみろ」
「え、あ、自分の使命はミラ様のお世話をすろこと、です」
「それだけか?」
「……戦えない、ニ・アケリアの者を守ることです……。」
ミラに使命のことで叱咤されて、イバルは俯きながら答えた。
「理解したか?私の旅の供はユーリたちが果たしてくれる。お前はもうひとつの使命を果たすんだ」
「しかし、こいつらのせいでミラ様は精霊達を!」
とイバルはミラに言われたが、イバルは納得できずに反論するも
「それは私の落ち度だ。それどころかユーリがいなければ、ニ・アケリアに戻れなかったかもしれない」
ミラはユーリたちを見てイバルに言った。
「しかし!」
「なすべきことをもちながら、それを放棄しようというのか?イバル」
「……いえ」
それでも、食い下がるイバルにミラは冷たい視線で言うと、イバルもさすがに引き下がった。
「さぁ、出発しよう。海停が封鎖されていなければよいのだが」
イバルとの話も付き、ミラは出発を促す。
「……海停に行くなら、途中、またハ・ミルを通ることになるな」
アルヴィンはミラにそう言うと
「ふむ。では、まずハ・ミルを目指そうか」
「ん?急がなくていいのか?」
ミラはアルヴィンの提案に頷いた。それにユーリは疑問を抱く。
「確かに急ぎたいが、ア・ジュール内でラ・シュガル軍の動向を探れる貴重な場所だ。もしかしたらイル・ファンに潜り込む妙案が眠ってるかもしれん」
「じゃあ、ハ・ミル経由で海停ってことで」
ミラはユーリの疑問に答えて、それを聞いたアルヴィンはルートを確認した。
「マクスウェル様、行ってらっしゃいませ」
「うむ」
「ミラ様!お、お気をつけて!」
村長がそう言うと、少々放心していたイバルはミラが出て行こうとしいてるのに気づいて意識を戻し、腕を大きく振って見送り、ミラたちはそれに答えて集会場を出て行った。
~チャット~
『ほっけない病』
ミ「なあ、ジュード。ほっとけない病とはいったいなんなのだ?」
ジュ「へ?ほっとけない病?なにそれ」
ミ「うむ。なんでもユーリが罹っている病らしいのだが」
ジュ「うーん。聞いたことないなぁ。ねぇユーリ、一体どんな病気なの?」
ユ「ん?ああ。困っているヤツを“ほっとけなくなる”病気だ。これに罹ると、誰でも構わず助けたくなっちまう困った病気だよ」
ア「それは、ただのお人よしっていうんじゃないのか?」
『カロル・カペルの場合』
ユ「そういえば、お前なんで社の掃除なんかしてたんだ?」
カロル(以後カ)「え?あ、うん。僕がこっちに来たとき、落ちた場所があの社の前だったんだ。そこをイバルに見つけられて……」
ア「それで、なんで掃除なんだ?」
カ「うん。見つけられた後、怪しいヤツっていきなり攻撃されて。訳を話しても聞いてくれないし、その後捕まって、村に連れて行かれたんだけど事情をちゃんと話したら村長さんの好意で村の手伝いをする代わりに住まわしてもらってたんだ。で、色々出来るってわかったらイバルが『お前は役に立つから巫子である俺様のサポートをさせてやる。光栄に思え!』って言って雑用をやらされるはめに」
ジュ「で、掃除なんだ」
カ「ホント酷いんだよ!俺様は忙しいからって自分の家の家事までやらさせるんだから!」
ユ「あー、なんかイバルの気持ちスゲェーわかるわ」
カ「ひどっ!いいよ。僕なんて所詮そんなもんだよ。いいんだいいんだ、僕は使い走りてすよー」
ユ「あ、いや、わりぃ。元気出せ」