「まったく、あのオヤジは何考えてんのよ!」
ミラたち一行がジャオとレイヴンを振りきり、サマンガン樹界から出てしばらくした後、リタが
「まあ、おっさんの行動がおかしいのはいつも通りだし、気にしないほうがいいんじゃねーか?」
「確かに。レイヴンだから仕方ないんじゃない?」
ユーリとカロルは先ほどサマンガン樹界で出会った
「……そうね。いくら愚痴ったっておっさんをぶっ飛ばせるわけじゃないし、今は我慢しときましょ。でも次ぎ会ったら、そんときは……」
リタはその後ブツブツと小さな声で何かしら物騒なことを言ったが、それは誰にも聞こえなかった。
「ふむ、あのレイヴンとか言う男はなにやら、あまり好かれていないみたいだな」
と、ユーリたちの会話を聞いていたミラはカロルにそう聞いた。
「ん? あ、いや、別に好かれてないって訳じゃないよ。だたちょっと自由過ぎると言うか何というか……。でも、ああ見えてギルドと騎士団、両方にとってすごい人なんだよ」
「あのおっさんがか?」
「まあ、全然そう見えないってのはあるよね」
アルヴィンは胡散臭そうな顔をして聞くと、カロルは苦笑いした。
「……あの、ユーリと……あのおじさんは……友達なのに、戦うことになって……、私のせいで……」
「けんかしちゃって、大丈夫ー?」
と、エリーゼが俯きながら泣きそうな声でユーリに言った。
「ん? あー別に全然平気だろ。確かにおっさんたちとは敵対関係になったみてぇだけど、だからって仲間じゃなくなるって訳じゃねーからな」
「そうよ。それに敵対してくれたおかげで、堂々とおっさんを痛めつけられるしね」
「えっと……」
「ま、簡単に言やぁお前らが気に病むことはねぇってこった」
「……はい。あ、ありがとう……です」
と、ユーリとリタの言葉にエリーゼは頬をほんのり赤くさせお礼を言った。そして、ミラたちが話しながら、またしばらく進んで行くと、
「お、見えてきた。あれがカラハ・シャールだ」
アルヴィンが遠目に大きな門を見ながら言った。そしてミラたち一行は街に入った。
「やっとカラハ・シャールに着いたね」
「えらく遠回りしちまったな」
街へ入るとジュードとアルヴィンが検問のせいで樹界を通ってきたことに対し、しみじみと言った。
「もうでっかいおじさんたち来ないかなー?」
ティポが街の出入り口を見ながら不安そうにする。それを聞いたミラは
「この雰囲気の中までは追ってこれまい」
と、街の様子を見て判断する。
「……おっ、この店、なかなかいい品がそろってるな」
アルヴィンもミラと同様に街の様子を観察し、多少兵士が多いと思いながらも近くに開いていた店に視線を移す。
「いらっしゃい! どうぞ見て言ってくださいよ」
「骨董か……ふむふむ」
皆は思い思いに骨董店の品を見始める。
「なあ、なんだが街のあちこちに妙に物騒なのがいるけど何かあったのか?」
そんな中、そういった物に興味が無いユーリは店主に話しかける。
「ええ。なんでも首都の軍事研究所にスパイが入ったらしくてね。王の親衛隊が直々に出張ってきて、怪しい奴らを検問してるんですよ。まったく迷惑な話で……」
「へえ、そりゃ、確かに迷惑な奴らだな」
と、ユーリはまるで他人事のようにすまし顔で店主の言葉に同意する。
「お、分かってくれるかい兄ちゃん、ん? あんた……」
店主はユーリを見た後、ジュードとミラも見て訝しい表情になった。
「……キレイなカップ」
「でも、こーゆーのって高いんだよねー」
そんな時、カチャリと元々いた女性客が1つのカップを取って見ており、たまたま女性の近くにいたエリーゼとティポもそのカップを見て思ったことを言った。
「そりゃあ、そいつは『イフリート紋』が浮かぶ逸品ですからねぇ」
と、店主はユーリたちから視線を移し、女性にカップの説明をした。
「『イフリート紋』! イフリートさんが焼いた品なのね」
女性は店主の説明に顔をほころばせていたが、ミラが急に女性からカップを引ったくり、まじまじとカップを観察すると、それをお手玉をするように投げたりしながら
「ふむ。それは無かろう。彼は秩序を重んじる生真面目な奴だ。こんな奔放な紋様は好まない」
とカップのイフリート紋を偽者だと指摘した。
「ほっほっほ、面白いですね。四大精霊をまるで知人のように」
すると突然背後から声をかけられ、振り向くとそこには気の良さそうな老人が立っていた。老人はさらに
「確かに、本物のイフリート紋は、もっと幾何学的な法則性をもつものです」
そう言いながらカップのソーサーを手に取り、裏側を見て、
「おや。このカップがつくられたのは十八年前のようですね?」
「それが……何か?」
「おかしいですね。イフリートの召喚は二十年前から不可能になっていませんか?」
「う……」
と、老人が指摘すると、店主は苦虫を噛み潰したような表情になり目を逸らす。そんな店主の態度に女性は残念そうにミラからカップを返してもらいが
「残念、イフリートさんがつくったんじゃないのね……。でもいただくわ。このカップが素敵なことに変わりないもの」
と、笑顔でカップを購入すると店主へ言った。
「は、はい。……お値段の方は勉強させていただきます……」
店主は騙した後ろめたさにいくらか値引きをして女性にカップを売った。
「ふふ、あなたたちのおかげで、いい買い物が出来ちゃった。あ、私はドロッセル・K・シャールよ。よろしくね」
「執事のローエンと申します。どうぞお見知りおきを」
と、カップを買った女性ドロッセルと老人ローエンは自己紹介をしてきた。
「お礼に、お茶にご招待させていただけないかしら?」
ドロッセルは笑顔でお礼にとお茶の招待をとミラたちを誘うと
「お、いいね。じゃあ後でお邪魔するとしますか」
アルヴィンがノリノリで承諾した。
「私の家は、街の南西地区です。お待ちしておりますわ」
ドロッセルはそれを聞くと、家の場所をミラたちに教え、ローエンと共に家へ戻っていった。二人が見えなくなると
「ちょっと、タレ目。あんた何勝手なこと言ってのよ」
「リタの言うとおりだ。私たちにそんな暇などないのだがな」
リタとミラがアルヴィンに対して苦情を言った。
「まあまあ。この街にいる間は利用させてもらう方が色々好都合だろ。ってかタレ目って……」
「確かに、下手に宿に泊まって通報されたら厄介だしな」
アルヴィンは現状の街の様子を見て、そう言い返し。過去に通報された経験のあるユーリもそれに納得した。
「ふむ。では街の様子をうかがってから、お茶にするとするか」
ミラも一理あると考えたのか、アルヴィンの提案を受けれた。
ドロッセルと分かれたミラたちは、しばらく街の様子を見て回った後、街の南西地区へと足を伸ばした。
「お待ちしておりましたわ」
南西地区へ行くとドロッセルが手を振って呼んでくれた。
「わあ、すごい家」
カロルはドロッセルの屋敷を見て、感嘆の声を出した。皆が屋敷を見ていると、中から兵士が現れた。
「ラ・シュガル兵!」
ミラは兵を見た瞬間驚きの声を上げ、腰の剣に手を伸ばすが
「待て」
と、アルヴィンに制止された。しばらく見ていると兵士のあとに壮年の男が二人出てきた。男たちは兵士に護衛されながら、屋敷の入り口に停めてあった。馬車に乗り込み去っていった。
「今のは……」
「……お客様はお帰りになりましたか」
ローエンは屋敷から出てきた男を見ると、何故か神妙な声でそう言った。ドロッセルは馬車が完全に去ると、ミラたちに笑顔で手招きをし、屋敷へ案内をする。
「やぁ、お帰り。お友達かい?」
屋敷に近づくと、そこには青年がおりドロッセルに声をかけた。
「お兄様! 紹介します。……あ、まだみんなの名前きいてなかった」
ドロッセルは青年を兄と呼んで笑顔で近づき、ミラたちのことを紹介しようとしたが、ミラたちの名前を聞いていないことに気づき、しまった、という感じで首を傾げた。
「ははは、妹がお世話になったようですね。ドロッセルの兄、クレイン・K・シャールです」
「クレイン様は、カラハ・シャールを治める領主様です」
と、青年クレインは自己紹介し、ローエンはクレインの紹介の補足をした。
「立ち話もなんです。さぁ、どうぞ屋敷の中へ」
クレインはそう言ってミラたちを屋敷の中へ招き入れた。
~チャット会話~
[レイヴンという男]
ユ「へぇ、ここがカラハ・シャールか。賑やかでいい街じゃねーか」
リ「(キョロキョロ)」
カ「リタ。さっきから何キョロキョロしてるの?」
リ「ん? あのおっさんを探してんのよ」
エ「えっ……でも、ここなら……追ってこないって」
ユ「あー、確かにジャオって奴は無理だろうが、レイヴンの奴なら普通に居そうだよな」
???「へっくしゅ!! っとやばいやばい」
ユ・リ・カ・エ『!?』
[はじめての街]
エ「わぁ、いっぱい人がいます」
カ「あ、エリーはこういう大きい街ははじめてなんだね」
エ「はいです」
ティポ「でも、たくさん人がいて、ウザいね」
ジュ「ティポ、そんなこと言っちゃダメだよ」
リ「でも実際、大きい街ってロクでもない奴らがいるから気をつけなさいよ」
エ「ロクでもない?」
リ「そ。例えばほらあそこでユーリにシメられてる奴とかね」
ユ「なんだ?まだやるってのか。あ゛あ゛?」
男「す、すいませんでしたっ!」
エ・ティポ「街って怖い」
カ「いや、アレは悪い例だから……」