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「なるほど、また無駄遣いをするところを、みなさんが助けてくれたんだね?」
と、クレインはドロッセルの話を聞いて苦笑した。
「無駄遣いなんて! 協力して買い物をしたのよね」
ドロッセルは頬を膨らませてクレインに講義し、皆から同意を得ようとミラたちを見た。ドロッセルの言葉にクレインとミラたちは苦笑いをした。そんなふうに談笑をしていると、ローエンがやって来て、クレインに耳打ちをした。
「・・・・・・わかった。みなさんのお相手を頼むよ」
「かしこまりました」
クレインはローエンから何かを聞くと、先ほどまでののほほんとした表情から領主としての引き締まった表情になり席を立った。
「申しわけありませんが、僕はこれで」
クレインはミラたちにそう言ったあと、ドロッセルに目配せをして屋敷から出かけて行った。
「俺も、ちょっと」
「どこいくんだ?」
と、まるでタイミングを見計らったかのようにアルヴィンも移動しようとした。それをユーリは疑問に思い、訊ねると
「生理現象。一緒に行くかい?」
「行くかよ」
アルヴィンは遠まわしに答えて、トイレに行った。
「ねぇねぇ、みんな旅の途中なんでしょう? 旅のお話をきかせて」
と、ドロッセルは残ったメンバーに旅の話をしてとお願いした。
「あの……わたし……」
「私、この街から離れたことがなくて……。だから、遠い場所のお話を知りたいの」
エリーゼはドロッセルの言葉に戸惑うが、ドロッセルはお構い無しにエリーゼの隣に座り自分の事を話した。
「わたしも……外に出たことなかったです。でも……」
「カロル君たちがエリーを連れ出してくれたんだー。海や森を通ってねー、波やキノコがすごかったー」
エリーゼとティポはドロッセルの話を聞くと、自分の体験したことを話し始めた。
「エリーは海を渡ったんだ? いいなぁ。私、まだ海を見たことないの」
「海には気をつけろ。岩に化けるタコがいるからな」
「岩に化けるタコさん!?」
ドロッセルはエリーゼの話を聞くと羨ましがっていると、ミラがキジル海瀑の時に戦ったモンスターの事を話した。ドロッセルはそのことに驚いたりしながら楽しく旅の話を聞いていると
「あ、海といえば。貝殻でつくったキレイなアクセサリなら、広場のお店で見たわ」
「キレイなアクセサリ……」
ドロッセルがアクセサリのことを話すとエリーゼはそれを想像して欲しいなぁと思った。
「興味あるの? だったら今度プレゼントするわね。お友達の証よ」
すると、ドロッセルはエリーゼの思ってることを察して、そう言った。するとエリーゼは顔を赤くしてとても嬉しそうにし、
「わーい。生きてる貝は気持ち悪いけど、死んでる貝殻はキレイだよねー」
「あんたねぇ。嬉しいのは分るけど、もっとマシな言い方があるでしょうが……」
ティポもアクセサリを大喜びして言い、リタがティポの言葉にツッコミをいれた。
「プレゼントをするのが友達の証なのか?」
ミラがドロッセルとエリーゼのやり取りを聞いて質問すると、
「ええ。信頼を形にして贈るの」
「タダでもらえると得した気分だしねー」
「ちょっとあんたは黙ってない」
ドロッセルは笑顔で自身の考えを答え、ティポは茶化しているのか思っていることを言い、リタに叩かれた。
「なるほど……」
ミラはそれを聞くと納得したような表情をした。
「ほっほっほ、お嬢様によいお友達ができたようですね。ではゆっくりおくつろぎください」
と、ローエンはそういいながらおかわりのお茶とお菓子をもって現れ置いていった。しばらくして、
「では、我々はそろそろおいとまするとしよう。楽しかったぞ」
「私も楽しかったわ」
そろそろ出発しようとミラがドロッセルに挨拶をし、玄関へ移動しようとすると
「なにするんだよー!」
クレインが歩哨を連れて、ミラたちの前に立ちはだかった。
「まだ、お帰りいただくわけにはいきません。……あなた方が、イル・ファンの研究所に侵入したと知ったいじょうはね」
クレインはミラたちを鋭い眼差しで見渡した。
「ふーん。で、犯罪者は捕まえて軍にでも引き渡すってか?」
「ちょ、ユーリ」
ユーリは研究所に侵入したことを否定せず、むしろ堂々と公言し、そんなユーリにカロルは動揺した。
「いいえ。イル・ファンの研究所で見たことを教えて欲しいのです。……ラ・シュガルはナハティガルが王位に就いてからすっかり変わってしまった。何がなされているのか、
クレインはユーリの言葉を否定し、研究所のことを教えてほしいと表情を暗くして聞いてきた。ミラはユーリとジュードに目配せをしたあと、研究所であったこと話し始めた。そんな中、
「ねぇ、マナってどう言うこと?」
「あと、人体実験ってなにさ」
「ん? ああ、そうか。お前らには話してなかったけか。実はな……」
と、リタとカロルが怪訝な顔をして聞いてきたので、ユーリは経緯を教えた。
「なにそれっ! 酷すぎるよ」
「マナに精霊術、兵器に人体実験。ちょっとこれは色々詳しく調べたほうがいいかもしれないわね」
二人がユーリの話を聞き終わると、それぞれ思ったことを言った。それと同じぐらいにミラとクレインの話も終わり、
「……ドロッセルの友達を捕まえるつもりはありません。ですが、即刻この街を離れていただきたい」
「ま、そりゃそうよね」
クレインの言葉を聞いていたリタはそう言い、他の皆もしょうがないという感じで屋敷のから出ていった。その途中、
「なあ、一ついいか? 俺らの事誰から聞いたんだ」
と、ユーリはクレインに質問をした。
「アルヴィンです。彼から教えていただきました」
「やっぱりか。サンキュー」
「ちっ、あいつもおっさんと同じ類の奴ってことね」
クレインの返答にユーリは目を細め、リタは殺気を出し、他のみんなも多少戸惑った。
屋敷から出た後、ミラたちは中央広場まで来ると、アルヴィンが鳥で手紙をやり取りしている所を見つけた。アルヴィンもミラたちが来たことに気づいて、手を軽く上げた。
「あんのぉタレ目がぁ!」
「ちょ、ま、リタ落ち着いてって」
今にもアルヴィンに殴りかかる、又は魔術をぶっ放しそうになるリタをカロルはなんとか抑える。
「アルヴィン君、ヒドイよー! バカー、アホー、もう略してバホー!」
「なぜ、私たちをクレインに売った?」
近づいてくるアルヴィンにミラはティポの悪口を一旦やめさせ、質問した。
「売ったなんて人聞きの悪い。シャール卿が、今の政権に不満をもってるってのは有名だからな。情報を得るには、うってつけだ。交換で、こっちの情報を出しただけ。いい情報きけたろ?」
「なにしゃあしゃあと言ってんだよ。ったく」
アルヴィンはミラたちの事情をバラしたことに何も思ってないらしく、いつものようにチャラけた感じのまま、理由を説明した。
「ラ・シュガル王ナハティガル……。こいつが元凶のようだ。ナハティガルを討たなければ第二、第三のクルスニクの槍が作られるかもしれん」
ミラはクレインから聞かされたナハティガルのしていることを考え、目的を明確にする。
「ええっ、それって王様を討つってことだよね……?」
「ああ。国は混乱するだろうが、見過ごすことは出来ない」
「確かに人さまの命を平然と奪うようなやり方なんざ許せねぇだろ」
カロルの困惑した言葉にミラとユーリはそう答えた。そんな時、
「お前らは……手配書の!?」
と、街を警邏していた兵士達がミラ、ジュード、ユーリを見つけて叫んできた。
「はっ、往来で堂々としすぎたかもな」
アルヴィンがそう言い、みな臨戦態勢になると
「南西の風2……いい風ですね」
屋敷のほうからローエンが歩いてやってきた。ローエンは一旦ミラたちを向くと
「この場は、私が……」
と言い、懐から三本のナイフを取り出した。
「おい! じいさん! こっちを向け! 何をたくらんでいる」
兵士は凄み、ローエンを向かせようとして叫んだ。その声にローエンは振り向き、と同時に素早い動きで先ほど取り出したナイフを空中へ投げた。
「おおっと。怖い怖い……。おや? 後ろのお二人。陣形が開き過ぎではありませんか? その位置は、一呼吸で互いをフォローできる間合いではありませんよ?」
そして、ローエンはおどけながらも兵士たちに話しかけた。
「貴様……余計な口を叩くな!」
兵士はなれなれしく話しかけてくるローエンに対し、怒鳴りつけるが
「そしてあなた。もう少し前ではありませんか? それでは私はともかく、後ろのみなさんを拘束できません」
ローエンは気にした風でもなく兵士に話しかけた。兵士はまるで知ったような口調で話すローエンに対し、ふん、と鼻で笑い数歩後ろへ下がった。それを見たローエンは笑顔で
「いい子ですね」
と言い、兵士を見事に誘導させた直後、上空からローエンが投げたナイフが兵士を取り囲むように落ちてきて
「うぐっ! これは……」
「では、これで失礼します。さぁ、みなさんこちらへ」
ナイフを基点に地面に術式を発動させて兵士を拘束した。ローエンはミラたちへ向きかえると皆を兵士から逃がした。
「ローエン君、すごいー! こわいおじさんたちもイチコロだね!」
「いえいえ。イチコロなど、とてもとても。私程度では、ただの足止めです」
「ありがとう。ローエン。助かったよ」
「いえいえ」
兵士たちからそれなりに距離を取った後、ティポはローエンの実力を褒めて、カロルはお礼をいった。ローエンはそれに笑顔で言葉を返した。
「それでローエン。我々に用があるのだろ?」
話が一区切りすると、ミラはローエンに対して質問をした。
「おや、直球ですね。……実はみなさんにお願いがあるのです」
ローエンは一旦佇まいを直してから、ミラたちにお願いを申し出た。
「お尋ね者のいる一行に? あんまり楽しそうな話じゃなさそうだ」
「先ほどラ・シュガル王が屋敷に来られ、王命により街の民を強制徴用いたしました」
アルヴィンの茶化しに気を悪くした風もなくローエンは事情を説明し始めた。
「何? ナハティガルが着ていたのか?」
「もしかして、あの馬車に乗っていった奴らか?」
ミラと驚き、ユーリは屋敷から出て行った二人の男について思い出す。
「はい。その通りです。先刻馬車に乗って出て行かれた額に傷のあるお方がナハティガル王です」
「あの人が……ラ・シュガルの王様……」
ローエンの説明でエリーゼは屋敷から出て行くナハティガル思い出した。
「しかし、なんで強制徴用なんて……」
「そんなの決まってんじゃない。人体実験に使うつもりなのよ。ったく、ホントに人の命をなんだと思ってんのよ」
アルヴィンが徴用に疑問を持つとリタが忌々しいという表情でそう吐きすてた。
「民の危険を感じた旦那様は、徴収された者たちを連れ戻しに向かわれました。しかし、ナハティガルは反抗者を許すような男ではない……」
「ドロッセルのお兄さん……危ないの?」
エリーゼはローエンの話を聞いて心配そうにする。
「力を貸していただけませんか? クレイン様をお助けしたいのです」
「ドロッセル君のお兄さんを助けよ~! ね? エリー」
「うん。クレインさんもだけど、連れて行かれた人たちも心配だし」
「そうだね。クレインさんや連れて行かれた人たちを助けなきゃ!」
ローエンの話を聞き終えると、ティポとジュード、そしてカロルが助けに行くと主張した。
「あーあ、お子様組みは行く気満々みたいだけどどうするんだ?」
「いいだろう。アレを使おうというナハティガルの企みは見過ごせない」
「だってさ」
アルヴィンはミラに話を振ると、ミラもクレインの救出に賛成し、ローエンに引き受ける旨を伝えた。
「ありがとうございます。民が連れ去られた先は、バーミヤ峡谷。急ぎましょう!」
そうして、ミラたちはクレインを助けるためにバーミヤ峡谷へ出発した。