「すまないな、2人とも。参考になった。剣、と言うより戦い方はユーリに教えてもらっているが精霊術は学ぶ機会がなかったからな」
「別にいいわよ。わたしもこの世界の術式を調べたかったし、色々参考になったわ」
「私もリタさん達が別の世界からやってきたと言う事や、その別世界テルカ・リュミレースの術式や理論の話が出来てとても有意義でした。むしろ私の方が感謝したいものです。それにミラさんには指導の必要はなかったのではないですか?」
夜。辺りに灯りも少なく暗くなっている広場をミラ、リタ、ローエンが話しながら歩いていた。
「いや、技術として扱った事がなかったのでな。今までは感覚だけだったんだ」
「技術を学ばずに感覚だけであれほど? それはすごい」
「確かにすごいけど、でもローエンのに比べて術式は雑だった。あれじゃあマナの無駄遣いの上に効果も減少しちゃうわ」
「リタさんは厳しいですね」
3人の会話は精霊術についてことこで、四大精霊が居なくなってしまったミラとリーゼ・マクシアの術式を調べたいリタに教授するというものとだった。
ローエンは優しく微笑みながらミラの術を褒めるも、リタは反対に厳しく至らない点を指摘した。
「しかしこの先の事を考えるといつまでも感覚だけでとはいかないだろうからな。出来うる限り厳しくしてもらっても構わん。色々と頼む」
「ん」
「私などでよろしければ、いつでも」
ミラは2人に言われたことに頷き、再度頭を下げた。そんなミラにリタは小さく答えてローエンはいつものように微笑み返した。
「ん?あれはジュード?」
「それにガキんちょじゃない」
3人が屋敷に近づいくとジュードとカロルの姿を見つけた。
「何か言い争っている様ですね。エリーゼさんのことでしょうか。先ほど彼女を見て、思い悩んでいる表情をしていましたし」
「ああ、その事ね」
「ふむ、同じお人好しな性格でもあのように対立をするものなのか。人間とは難儀な物だな。おい、ふた……」
「ここは私にお任せを」
2人の言い争いに声を掛けようとしたミラをローエンは制して2人へと近づいていった。ローエンが歩いて行ったあとミラとリタの2人は空気を読みジュード達から見えない位置に移動して話が終わるまで待つことにした。
「でも、だったらッ」
「それでもそんなのはダメだよ!」
「お二人とも、どうされたのですか?」
「あ」
「ローエン」
カロルとジュードが言い合いをしている中、ローエンは2人に近づきながら話しかけた。
「何か剣呑な雰囲気のようですが……、よろしければ相談にのりましょう」
「……うん。ありがとう」
「その、実は…」
「エリーゼさんのこと、ですかな?」
「えッ? あ、うん……」
カロルがローエンに言い争っていた原因を話そうとしたらローエンはまるで分かっていたようにその理由を言い当てられ、カロルとジュードの2人は驚き目を見開いた。そんな2人の様子にローエンは微笑むと話を続け始める。
「彼女がこの旅路に加わった経緯は、お嬢様より伺いました」
「ドロッセルさんに?」
「はい。エリーゼさんが嬉しそうに語ってくれたそうです」
ジュードの疑問の声にローエンは頷きエリーゼが話した事をドロッセルからまた聞きしたのだと言う事を説明した。ローエンが大体の事を知ってる分かった2人はこれから先、エリーゼの事をどうしたいのかをそれぞれ話し始めるのだった。
「エリーゼは、ミラがやろうとしてることとは関係ないから……。これ以上巻き込まない方がいいかなって。……ねえ、ローエン。この家でエリーゼを引き取ってもらえないかな。ドロッセルさんとも仲良しだし。クレインさんもローエンも、エリーゼにはよくしてくれるから……」
「確かにジュードの言う通りミラの事とエリーは関係ないし、クレインさんの所でお世話してもらえればそれはそれでエリーの為かもしれないけど……。でも、エリーに何も言わないで一方的に決めるのはよくないよ! 僕はエリーが思う様にさせてあげたい。 エリーと話して付いて来たいって言うんだったら、これからも一緒に旅をしてあげたいんだ」
ジュードはこれ以上エリーゼに危険な目に遭ってほしくないから多少無理にでも安全な場所に置いていくべきだと。
そしてカロルは危険な目には合わせたくはないけど、でもエリーゼの気持ちを無下にはしたくないと言う主張をお互いに話した。
「お二人は、他人である彼女のためにそこまで考えていたのですね」
「ミラやアルヴィンにはお節介、お人好しって言われちゃうけど、ほっとけないから」
「うん。ほっとけない病だからね」
「ふふふ、ほっとけない病ですか。さて、お二人のお話はわかりました。ジュードさんの言い分もカロルさんの言い分もよく分かりました。その上で、私はその事をきちんとエリーゼさんにお話しすることがよろしいかと。
私の考えを述べてさせてもらいますと、お嬢様から聞き及んだ事から察するに話を聞けばエリーゼさんは確実に付いて行くとおっしゃるでしょう。ですが、だからと言って彼女をこれ以上の危険に巻き込むような事もやはりよろしくないかと思います。
ですので、少々時間を掛けてでもきちんと3人でお話し合いを行いべきだと私は思います」
と、ローエンは微笑みながらも2人の目を見て真摯に自らの考えを言い聞かせた。
「そう……かもだね。ちゃんと話をしなきゃね」
「僕も、ただ単にエリーの気持ちだけを優先しちゃダメだったのかな」
「何事も考え方、見方1つです。エリーゼさんがどのような選択をするにしろ、ここに残る場合はこのローエンにお任せください。旦那様とお嬢様には私から口添えをさせていただきます。さあ、もう遅い時間です。夜更かしは身体に毒ですよ」
「うん。ありがとうローエン。おやすみなさい」
「おやすみローエン」
「はい。おやすみなさい」
ジュードとカロルはローエンに挨拶をすると屋敷へと戻っていった。
「やはり、エリーゼさんのことで揉めていたようです」
ローエンは2人を見送るとリタとミラが待っていた門へと戻り、2人に声を掛けた。
「だろうとは思ってたけどね」
「そうか。2人は自らに課した責任をしっかり受け止めていたのか」
「責任ねぇ。ま、自分達で蒔いた種をきちんと処理しようとしてるみたいだし、何も文句はないけどね」
ローエンの言葉にミラは関心をリタは当たり前の事だと肩をすくめた。そんな2人の様子にローエンは小さく微笑み、
「賢い子達ですね。特にカロルさんは年齢に似合わないほどです」
「そお? まだまだ甘々だと思うけど? まあでもあの頃に比べれば多少は成長したとは思ってやらなくもないかしらね」
「ふむ、これが噂にに聞くツンデレというやつか」
「ツンデレ言うなッ!」
ジュード達が戻っていった屋敷の扉を見ながら言ったローエンの言葉にリタは仏頂面で言い返すも、その様子を見たミラが放った言葉にリタは目を吊り上げ顔を赤くして怒鳴り返した。
「ふふふ。さて我々もお休みにしましょう。夜更かしはお身体の毒ですから」
ローエンは2人の様子に笑顔を浮かべながら戻りましょうと促して、3人は屋敷へと入っていった。
「あ、おはようユーリ」
「あんたやっと起きてきたの?」
朝、ユーリは大きなあくびをしながら一階へと下りるとすでに起きていたカロルとリタが声を掛けてきた。
「おう、おはようさん。……ん? 他のみんなは?」
「例の侵入経路の確認にローエンが少し出るからって見送りに外に出てるわよ」
ユーリは2人に軽く返事を返した後、屋敷に内にミラ達が居ない事に首を傾げ疑問を口にするとリタが簡単に説明をする。説明を聞いたユーリはそうなのかと納得し自身も挨拶しておくかと屋敷の外へと移動していった。
「ではローエン。よろしく頼む」
「かしこまりました」
「よう。もう出るのか?」
クレインがローエンに事を頼んでいるところにユーリは声を掛けた。
「おや、ユーリさん。お話はお聞きで?」
「いまさっきリタからな」
「そうでしたか。そういう事ですので少し出てまいります」
ローエンはユーリの返答に軽くお辞儀をして出かける旨を言った。
「ローエン、どのくらいで戻ってくるの?」
「そうですね。馬を使えば1日もあれば戻れるかと思います」
ドロッセルの問いにローエンがあごに手を当て大体の予測を答え返した。
「それならもしかしたら明日には皆さんとお別れかもしれないのよね」
ローエンの答えを聞いたドロッセルはジュード達を見て悲しそうな表情をした。それを聞いたカロルとエリーゼ、ティポは寂しそうな表情をし、そんな3人を見てジュードとアルヴィンは複雑そうな表情を。そしてミラ、ユーリ、リタは仕方がないと言うような表情をしたのだった。
「首尾よく進んでいればそうなるかもしれないな」
「それなら。約束してたお買い物にいきましょう♪」
アルヴィンの言葉にドロッセルはお茶会をしたときにエリーゼとカロルと約束したことを思い出し、今から行こうと2人に提案をした。
「お買い物? 行こう行こう!」
「うん!」
「決まりね♪ さっそく行きましょ」
ティポとカロルが元気よく返事を仕返し、エリーゼは笑顔で小さくうなずた。3人の了承を得たロッセルも笑顔になった。
「まて、話が見えない」
「え? ちょ、あたしも!?」
そしてドロッセルはミラの腕を取り、エリーゼはリタの腕を掴んで街の方へと歩きだした。
「エリー達とお買い物の約束したもの。明日お別れかもしれないのならチャンスは今日だけだよね?」
「そう、らしいな。行ってくるがいい」
ミラはドロッセルの言葉に困惑しながらも皆で楽しんで来いと言う意味で言い返したのだが、ドロッセルとエリーゼにカロルは笑顔になり
「じゃあ出発~」
「「「出発~」」」
と腕を振り上げて何事もなかったかのようにミラとリタを引きずって歩みを再開させた。
「だから、なぜこうなるんだ? 私が行く必要はないだろう?」
「……諦めなさい。こういう手合いは話を聞かないから」
「いいんじゃねーの?」
「たまには人間の女の子っぽいことするのもおもしろいかもよ」
ミラはちょっと待てとさらに混乱して周りに助けを求める視線を送るも、リタは過去の経験談から観念しており、半笑いのアルヴィンとジュードからは楽しんでこいと見送られた。
「ふむ、なるほど。だが厳密には私に人の性別の概念は当てはまらないぞ。現出する際に人の女性の像を成したが………」
3人の言葉にミラはそういうものなのかと考えて納得して、そして何故かジュードの言った事に注釈を言いながらおとなしく街へと引きずられて行った。
しばらくしてドロッセル達の姿が見えなくなるとクレインは難しい顔になり、何かを考えるそぶりをすると、
「この今の幸せのために、僕も決心しなけらばいけない……。やはり、民の命をもてあそび、独裁に走る王に、これ以上従うことはできない」
と、空を見上げながら何かを決意するように言った。
「……反乱を起こすのか?」
「……戦争になるの?」
クレインの言葉を聞いてユーリは眉を
「ナハティガルの独裁は、ア・ジュール侵攻も視野に入れたものと考えられます。そして彼は、民の命を犠牲にしてでもその野心を満たそうとするでしょう。このままでは、ラ・シュガル、ア・ジュールともに無為に命が奪われる。僕は領主です。僕のなすべきこと、それは、この地に生きる民を守ること」
「……なすべきこと……」
クレインは遠くない未来に起こるだろうこと、そしてそんな事はさせないと。させないために自身がやるべきことをジュード達に語った。それを聞いたジュードは何か思うところがあるのか小さく呟く。
「勝算はあんのか。今まで見てきた感じ、あんたんとこの王様ってのは相当アレっぽいぜ? 負ければあんたは勿論のこと、最悪この街に住んでる奴ら全員あの谷ん中と同じような場所に、ってこともあり得るんだぞ」
とユーリはクレインの行動の末に失敗した場合どうなるか分かってるのかと、険しい表情で問い詰める。
「はい。分かっているつもりです。そして、今の私にあのナハティガルを止めるだけの力が無い事も。ですので皆さん、どうか力を貸してくれませんか?」
「…わりーが俺はミラの手伝いをするって決めてんだ」
「うーん。まあ俺は傭兵だし報酬次第ってとこかねぇ?」
「……ぼ、僕は」
ユーリの問いにクレインはそんな結末にならないためにとユーリ達に協力を求めた。だがユーリ、アルヴィン、ジュードと反応を見るも芳しくなく、クレインは残念そうに顔を俯かせた。
「…ッ! ガウガウッ」
「その面白そうな話し、俺っちも混ぜてほしいなー」
その時、突如ラピードが吠え、皆が吠えた方向を向くとニヤケ面で紫色の羽織を着て大きな麻袋を担いだ男が近づいて来た。
~チャット会話~
[買い物]
リタ「ふーん。色々あるのねぇ」
ミラ「そうだな。むぐむぐ。人間の作る物と言うのはどれも素晴らしい物が、もぐもぐ、たくさんある」
リタ「あんたいったいどんだけ買ってんの!? しかも口周りベッタベタじゃない!」
ミラ「うむ。とても素晴らしい匂いがしたのでな」
リタ「あーもう。両手に抱えちゃってッ! ほら拭いてあげるから」
ミラ「ふむ。リタはまるで『お母さん』とやらみたいだな」
リタ「だれがお母さんだッ!!」
[可愛いもの]
ドロッセル「わあ、これいいわね」
ティポ「わはぁ。キレイだね~」
エリーゼ「あ、これ、すごくカワイイ」(巨大化して戦いそうな人形を持って)
カロル「え? それが?」
ティポ「匠の技だね!」
エリーゼ「可愛く、無い?」
カロル「そ、そんなことなよ……。(女の子ってわかんないなぁ)」