前回からほぼ1年半ぶりの更新。
な、レイヴン!」
「よっ、青年達元気だったかい。って待て待て待てッ!」
クレインとの会話中、突如として現れ爽やかに挨拶して来たレイヴンにユーリは剣を抜き、ジュードは拳を構え、アルヴィンは銃口をレイヴンへと向けた。
「なんだよ?」
「なんだよ、じゃないわよッ! なんでいきなり攻撃しようと構えるのッ!?」
とユーリの冷ややかな視線と言葉にレイヴンは冷や汗を流しながら待ったをかけた。
レイヴンは全く最近の若者ってのは…とやれやれと肩をすくめて担いでいた荷物を地面へと降ろした。
「彼はいったい……」
「ア・ジュールの人間だ」
ユーリ達の行動にクレインが怪訝な表情で誰にもとは言わずに呟く。
それ聞いたアルヴィンは決してレイヴンから視線と銃口を外さずに端的にレイヴンの素性を答えた。
「ミラを狙ってきたの? それともエリーゼ?」
「だ~か~ら、話しに混ぜに貰いに来たって言ってるっしょ。大体、ミラちゃんやエリーゼちゃんを狙ってるんなら、青年達の前に姿なんか現さないで最初からあっちの方にむかってるってーの。まあ、あんな怖い嬢ちゃん達だけの所、頼まれても行きたくないけどね…。何されるか分かったもんじゃない」
睨みを利かせ敵意を含めたジュードの質問に、レイヴンは担いでいた麻袋を地面へと置きながらうんざりしたような呆れたような表情で本当に危害は無いと説明し返した。
「まあ、あいつらの前にアンタが姿を現したら問答無用で斬られて爆破されるわな」
「あー確かに。しかもあの面子に対してカロルくんに止めろってのが酷だしな」
「でしょ? だからさっきから一向に下がる気配の無い武器を下げてくれない? ね? おっさんの一生のおねがいだからね?」
ユーリとアルヴィンがレイヴンの言い分を聞いて納得し、渋々と言った感じでそれぞれの武器を仕舞った。
「ったく、ちょっと話しようとしただけで何でこんなに疲れなきゃならんわけ…」
「どう考えてもおっさんの普段の行ないのせいだろ」
「まあ、それは置いといて」
ユーリの的確な指摘にレイヴンは無理矢理話題を変え、クレインへと顔を向けた。
「さっきの反乱の話し、本気でやるつもりなら俺らと手を組まないかい?」
「……それは、ア・ジュールの軍門に下れと言う事ですか?」
「そこまで大仰な事じゃ無いって。ま、詳しい事は中で話さないかい? こんな話し、外でするようなことじゃないでしょ」
レイヴンはそう言って屋敷の中でゆっくりと話そうと提案をあげる。が、
「…いいえ、残念ですがそれはできません。あなたが敵国の人間である事には変わりませんので、そう易々と懐に入れるにはいきません」
クレインはそれを拒否した。
「ま、だろうね。じゃあちょっとこいつで信用してもらおうかね」」
「…?」
そう言ってレイヴンは先ほどまでのヘラヘラした表情を引っ込め、クレインや皆が
「ッ!? …おいおっさん。こりゃあちょっとシャレって言うには
と、ユーリの怒気の含んだ声と睨みに中身を見たジュード達も嫌悪の眼差しでレイヴンを見る。
「ま、そう言うふうに解釈するわなぁ普通。でも言っとくけどコレ、俺がやったんじゃないからね」
と麻袋の中身、ラ・シュガル兵の死体を足先で軽く小突いて言った。
「俺様がのんびりと散歩してたらさ、裏でコソコソとしてたこいつを
レイヴンは説明と共にラ・シュガル兵が持っていた矢とボウガンを見せ、それをローエンが受け取った。
「むむッ。…これは狙撃用のボウガン。それにこの矢…毒が塗られています!」
「なっ!? まさか…」
矢を検分したローエンの言葉にクレインは目を見開き驚きそしてラ・シュガル兵がそれを使って何をやろうとしていたのかを察し、恐怖に震えた。
「ま、そういうこと。ね? つまり俺っちはあんたの命の恩人みたいなもんなわけだし、そろそろ信用してもいいんじゃない?」
「えっと、それって屁理屈じゃ…」
「青春くんは黙らっしゃい! 余計な茶々いれないの!」
「青春くん!?」
偶然クレインを助けた事を自分の成果にしようとするレイヴンにジュードは呆れ気味に言い返そうとしたら、逆に妙な呼ばれ方をされ驚き、固まってしまった。
「……わかりました。ローエンお茶の準備を」
「かしこまりました」
クレインは僅かに悩むも仕方なくレイヴンの言葉を信じ、屋敷へと招いた。
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丁度レイヴンが屋敷へと招かれている頃……
「決めた。エリーには、これをプレゼントするわね」
「うわー。高そー。ドロッセル君はお金持ちだねー」
ミラ達は商店をあちらこちらと見て回りながら買い物を楽しんでいた。
「ちょっと、ティポっ!?」
ティポの無遠慮な言葉にカロルは驚き
「ありがとう、ドロッセル」
「うふ、どういたしまして」
と、エリーゼの言葉に微笑み返した。
「うむ……?」
そんな中、露店を見ていたミラはそこに並んでいた商品の1つを手に取り興味深げにしげしげと見つめる。
「何? ソレ、気に入ったの?」
ミラがそういった物に興味を抱いたことが珍しく思ったのか、リタはミラが手に取ったペンダントを見ながら言った。
「あ、いや、私も同じような物をもっているのだ」
リタの言葉にミラはペンダントを戻すと懐から小石程度の大きさの玉を取り出して見せた。
「うわー、ただのガラス玉だー!」
「とってもキレイな色ね」
ガラス玉を見たティポは相変わらずの発言をし、ドロッセルはその綺麗さに感嘆の声を上げた。
「ミラ……どうしたんですか、これ?」
「昔、人間の子どもにもらった物だ」
「へぇ、あんたでもそう言うの大切にするんだ。てっきり使命に必要無いとか言って突き返してるもんだと思ってた」
エリーゼの質問にミラが答えると、その内容を聞いたリタは素なのかそれとも
「ちょっとリタぁ。なんでそんな言い方しかできないの? ぁだッ!?」
「別に普通に聞いただけじゃない。何よ、文句あんの? 殴るわよ」
「もう殴ってるじゃん」
カロルがリタの言い方を咎めようと苦情を言うとリタは眉を顰め心外だと言う様にカロルを殴り黙らせた。
「いや、私も貰った直後は特に必要性を感じてなかったのだが、これをくれた子の顔を見ていたらどういう訳か断れなくてな」
だがミラはそんなリタの言葉に気を悪くしたふうでも無く、ガラス玉を貰った時の事を話した。
「うふふ。大切にしてきたのね。なら、失くさないようにしないと」
「それなら、こちらのようにペンダントにして差し上げましょうか? ついでにこいつもセットでどうです? 安くしておきますよ」
「そうしてもらった方がいいわ。やってもらいましょう」
そんな会話を聞いていた露天商の店主が先ほどミラが手に取った物を
それにドロッセルは笑顔で賛同し、ミラもそうだなとペンダントを購入。そしてミラはガラス玉を渡して購入したペンダントと同じように加工してもらった。
「ふむ、これはなかなかよさそうだ。店主、感謝するぞ」
露天商から買った物と加工してもらった物、2つのペンダントを見ながらミラは満足気に頷き店主へと礼を言った。
「わッ、やめてください!」
と、ペンダントをしげしげと見ていると突然広場の向かい側の方から悲鳴が聞こえてきた。
ミラ達はその悲鳴に驚き、振り返ると奥の方から武装したラ・シュガル兵が続々と現れた。
「グアッ!」
「……抵抗するな。容赦せんぞ」
現れたラ・シュガル兵たちは広場に居た街の人達に武器を突き付け追い回し、駆け付けた衛兵達にも躊躇無く攻撃をくわえ始めたのだった。
「乱暴はおやめなさい! 一体なんのつもりです! ラ・シュガル軍は、この町から退去するよう領主から命を受けたはずですよ!」
ドロッセルはそんな光景を見てすぐさま攻撃を止めるようにと声を上げた。
「あなたは……?」
するとラ・シュガル兵達の後方から一人の男が現れ、ドロッセルへ何者かを尋ねた。
「シャール家の者です」
「ふん、何にも知らぬ小娘が」
ドロッセルが男の質問に自分の身分を答え返すと、男の隣に居た兵士が馬鹿にした口調でドロッセルを鼻で笑うが男が手で制して黙らせ、そして……
「これは王勅命による反乱分子掃討作戦。おとなしくしていただきましょうか」
と、ラ・シュガル軍がカラハ・シャールおこなっている行動理由を簡潔に説明した。
「な、なんですって?」
それを聞いたドロッセルはあまりの事に驚き、かすれたような声が出た。
「捕らえなさい。謀反を画策した領主家シャールの者です」
男はドロッセルの心情などお構いなしにラ・シュガル兵にドロッセルを捕まえるように指示し、兵たちが動き始めた。
「マズイよこれ。早く逃げなきゃッ!」
「ああ。何かが起きてる。完全に包囲される前に退くぞ。皆遅れるな」
「あんたこそ!」
「わ、わかりました!」
カロルの悲痛な叫びにミラも共感し、腰の剣を引き抜き構え、カロル、リタ、エリーゼもそれぞれ武器を構え戦闘態勢へと移行した。
「はあああああぁ!」
「な! と、取り押さえなさい!」
男はこの状況なら投降すると思っていたのか、ミラの呼気に驚き尻もちをつくも兵士たちに命令を飛ばしミラ達を捕らえるようにと叫んだ。
兵士たちは男の命令に従い武器を構えミラ達へを襲い掛かる。
ラ・シュガル兵の数は多く、普通ならばあっという間に取り囲まれ捕らえられてしまうような状況であり、ラ・シュガル兵達も逃げられまいと高を括っていた。
しかし、ミラ達の攻撃はラ・シュガル兵達の予想以上に苛烈であり、ラ・シュガル兵達は次々に倒され全滅までとはいかないものの、このままいけば逃げられる程度には数を減らしていた
が……
「きゃあああッ!」
「えッ? ドロッセル! うがッ!?」
突然の悲鳴にカロルが振り向くと、どこぞに潜んでいたのであろうラ・シュガル兵がドロッセルの首元に刃物を突き付けており、それに驚いたカロルはその隙を突かれて精霊術を撃ち込まれ気絶してしまった。
「カロル!? こンのぉ!!」
「そこまでだ」
リタが術でドロッセルから兵を引き離そうとしようとした直前、先ほどの男がストップをかけた。
「ご、ごめんなさい」
「これでもまだ抵抗を続けるかね?」
と、男の方を向くとそこにはドロッセルと同じように羽交い絞めにされ首元に刃物を突き付けられているエリーゼがおり、更には気絶したカロルにも兵士が近づいて剣をカロルへと向けた。
「ちぃッ!」
「……」
人質を取られ、身動きが取れなくなり詰んだ状況にリタとミラは忌々しそうにラ・シュガルの男を睨みつけた。
「武器を捨てろ。抵抗すればどうなるかわかっているな?」
「くそっ」
「この状況では仕方ない…か」
リタとミラは自分の得物を地面へと投げ捨て両手を上げて無抵抗の意思を示した。
「よろしい。全員とらえなさい」
男はミラとリタが完全に降参したのを確認すると兵たちに命じて縄をかけ、街の門に止めてあった護送用の馬車へと連れ込ませた。
その後、馬車には他にも幾人もの街の人々が連れ込まれ、ある程度の人数になると馬車はカラハ・シャールより出発して行った。