ハ・ミルから出て、ガリー間道を抜けてキジル海瀑に入った一行は辺りを見渡した。
「へぇー、これがキジル海瀑か……。すげぇな、岩が地面から角みてーにのびてやがる」
ユーリがキジル海瀑を見て、感嘆の声を出した。
「このキジル海瀑を超えれば精霊の里、ニ・アケリアか。連中も追って来てないな」
アルヴィンがそう言い後ろを気にしていると
「村の人たちに悪いことしちゃったね……。よくしてくれたのに」
ジュードが俯きながら言うと
「別に俺たちを追って来たって決まったわけでもねーし、ただの偶然ってこともありえるんだ。気にするこたぁねーよ」
「そうそう、ユーリの言うとおり。それに逃げるが勝ちって言葉もあるしな」
「どうするか決めたのは、彼らだ」
ユーリ、アルヴィン、ミラがそれぞれの意見を言い、それを聞いたジュードは
「僕らを守ってくれたのかもしれないんだし、そんな言い方しなくても……」
そう声を荒げて言ったが
「気になるのか。ならジュード、君は戻るといい」
「おいおい……」
ミラはそう言って歩き出してしまった。ユーリも今のセリフに呆れた声を出した。
「短いつきあいだったが、色々感謝している」
「どうしてそうなの?」
さらにミラがそう言うと、ジュードは声を荒げたまま言い返す。
「……もっと感傷的になって欲しいのか? ……それは難しいな。君たち人もよく言うだろ? 感傷に浸ってる暇はない、とな」
しかしミラは淡々とそう言った。二人の言い合いの様子をアルヴィンとユーリは横から眺めながら
「うーん。どうもジュードは少し真面目過ぎるねぇ」
「だな。別に悪いことじゃねぇんだが、融通が利かねーのはなぁ」
と、小声で話し合っていた。アルヴィンとユーリがそうしてる間も、ジュードとミラは
「……使命があるから?」
「そういうことだ」
「やるべきことのためには感傷的になっちゃいけないの?」
と、言い合っていた。
「人は感傷的になっても、なすべきことをなせるものなのか?」
「わからないよ。そんなの……。やってみないと……」
ミラが質問するとジュードは弱々しい声で答えた。すると
「なら、やってみてはどうだ?」
「え?」
ミラからそう返ってきた。ジュードはその言葉に驚き、聞き返した。
「君のなすべきことを、そのままの君で。それで答えが出るかもしれない」
「僕のなすべきこと……」
ミラは微笑みながら言うと、ジュードはミラの顔を見ながらそう呟いた。
「マクスウェル様のようになる必要は無いだろうさ。普通、ああはなれないっって」
「あんま思い詰めるなよジュード。人それぞれってな」
アルヴィンとユーリがフォローを入れると
「ねぇ、アルヴィンとユーリには、なすべきことってある?」
ジュードが不安そうに二人に質問をし、それを聞くとアルヴィンはジュードに歩み寄り
「……さて、な。あるって言ったら余計に迷うだろ。ジュード君。僕もきめなきゃ~ってな」
「…………」
肩に手を回してニヤケながらそう言った。ジュードはムッとした表情でアルヴィンを見上げたが
「んで、どうすんの? 村にもどる?」
アルヴィンが真剣な表情で聞いてきた。ジュードはそれを聞くとミラの方を向いて、
「ううん」
「んじゃ、行こうぜ」
戻らないと、意思表示をした。それを聞いたアルヴィンは明るい声で言った。
「ところで、ユーリはあるの? なすべきこと」
「あ? またその話か」
キジル海瀑を進んでいるとジュードがユーリに話しかけた。
「うん。別にさっきのことを引きずってるわけじゃないよ。ただ聞きそびれちゃったから気になって……」
「俺もちょっと聞きたいかも」
ジュードがそう説明すると、アルヴィンがふざけながら賛同した。
「別になすべきことって言うほど大仰なもんじゃねぇけど、とりあえずこの世界を旅し続けることだな。例の爺さんの依頼がそれだからな」
「ああ、そういえば船の上で言ってたな」
ユーリが言うとアルヴィンは船の上で聞いたことを思い出しながら言った。それから一行がキジル海瀑の半分程まで来ると
「もうすぐニ・アケリアか~。どんなところなんだろう。いいところなの?」
ジュードが明るい声色ミラにそう尋ねた。
「うむ。私は気に入っている。瞑想すると力が研ぎ澄まされる気がする。落ち着けるところだ」
「へぇ~」
ミラはそう答え、ジュードは期待をするような表情をした。
「ちょっと休憩。岩場歩きで、足痛え」
二人が話していると、後ろで様子を見ていたアルヴィンがいきなりそう提案した。
「到着してから休めばいいだろう?」
「そう言うなって。ニ・アケリアは逃げやしないさ。な? 休もうぜ?」
ミラは村についてからにしろ、と言うが、アルヴィンはジュードの肩に手を乗せながら言い返しながら、ジュードにも休もうと誘いを掛けた。
「え、うん。じゃあ、そうしようか」
声を掛けられたジュードがそう言ったので、それぞれ休憩を取り始めた。
「お前って結構気を遣えるんだな」
「何言ってんの、俺は心優しい傭兵だぜ? ジュードが無理に気持ちを切り替えようとしてるのなんて見てりゃあすぐ分かるって」
ユーリが話しかけると、アルヴィンはジュードを見て、そう言い返してきた。
「……無理してるように見えちゃったんだ」
ジュードはアルヴィンの言葉を聞いて、声を落としながらそう言い、さらに
「でも、ホントに大丈夫だよ。僕、難しく考えないようにするの得意な方だから」
そう続けた。それを聞いたアルヴィンは
「そっか」
と、微笑した。
「ウォーーーーーーン!!! バウッバウッ!!!」
「なっ! くっ!?」
三人が話していたら、奥の方に歩いていったミラのうめき声とラピードの鳴き声が聞こえてきた。それを聞いたユーリたちは、すぐさまミラたちの所へ向かって行った。するとそこにはメガネを着け本を持った青い服を着た女性がミラを精霊術で拘束していた。
「誰だ!」
ユーリが女性に対してそう言うが、女性はそれには答えずに
「今は、この
アルヴィンを見ながらそう言ってきた。
「放してくれよ。どんな用かは知らないが、彼女、俺の大事な
アルヴィンは女性にそう言いながら前に出て行くが
「近づかないで。どうなるか、わからないわよ」
女性にそう言われ、アルヴィンは動きを止めた。ユーリたちはミラが人質になって動けないでいると、
「アルヴィン、そのまま聞いて」
ジュードが小声でアルヴィンに話しかけた。
「右上の岩。撃てる? もしかしたらミラを助けられるかもしれない」
「すぐ撃っていいのか?」
ジュードの提案にアルヴィンは銃を取り出し聞き返す。
「え、うん」
ジュードはすぐに信じてもらえるとは思ってなかったのか、アルヴィンの言葉に驚いたがすぐに頷いた。アルヴィンがそれを聞き、銃の弾を確認していると
「あら! この
女性が話しかけてきたが、アルヴィンは無視して岩めがけて発砲した。弾は全て岩に当たると、突然岩が動き出し、岩の下から手足の様な物が現た。ソレは岩に擬態した
キュィィィィィィィィ!
という鳴声と共に空から高速で飛んできた竜の背に乗った女性に手を掴まれて助けられた。
「……っ!? なっ、ジュディス!?」
ユーリは竜の背に乗った女性を見て驚きながらその女性の名前を言う。
「あら。久しぶりね、ユーリ。元気だったかしら?」
ジュディスは助けた女性を引き上げながら暢気に挨拶をしてきた。
「ユーリ知り合い?」
「ああ、ギルドの仲間だ」
ジュードが聞くとユーリは簡単に答えた。
「おいジュディス、聞きたい事があるんだが、いいか?」
「別に私はかまわないのだけれども、彼女がねぇ。それに後ろの方を何とかしたほうがいいわよ?」
ユーリがジュディスに話しを聞こうとするが、ジュディスの方は女性に睨まれており話をさせてくれなさそうで、さらに先ほどの魔物が後ろの方でミラとアルヴィンに襲い掛かろうとしており、ユーリはそんな周りの様子を見て、
「ちっ、今度会ったときには話し聞かせてもらうからな」
「ええ、それじゃあね」
ジュディスにそう言葉を掛けて、背後の魔物を倒しにジュードと向かい。ジュディスたちは飛んで行ってしまった。
「二人とも遅いぞ」
「まったく、俺らにこんなの押し付けて美女とお話しなんてずるいぞ」
ユーリとジュードが加勢に来ると、ボロボロのミラとアルヴィンがそう言い、それに
「すまねぇ。遅れた分はキッチリやってやるよ」
「すぐに回復するね」
ユーリはミラたちの前に出て構え魔物の攻撃を捌き、ジュードはミラたちに治癒術を掛け回復させる。ユーリはラピードと連携しながら魔物に攻撃を仕掛けるが、硬い殻と長い触手で思うようにダメージを与えられずにいたが、回復したミラとアルヴィン、それと二人を治療してたジュードが戦線に復帰し、反撃に出る。
「で、どうする? 意外に硬いぞ」
「……誰かが囮になって、その隙に倒すしかないと思う」
「んじゃ、誰が囮やる?」
ユーリが聞くとジュードが作戦を提案し、それにアルヴィンが誰が囮をやるか聞く、
「なら、俺とジュードが囮、アルヴィンは俺たちを援護してくれ。ミラ、ラピード、よろしく頼む」
ユーリが言うと
「うん」「了解」「任された」「ワウッ!」
と、それぞれ頷き、行動に入った。囮組の二人は魔物に突込み、左右に分かれて同時に攻撃をしかけ魔物の気を逸らし、アルヴィンも離れた所から攻撃を放ち、魔物が動きにくいように牽制する。そして、魔物が三人に気を取られて、動きが鈍くなって来た所を、
「アサルトダンス!」
ミラが姿勢を低くして魔物本体に5連撃を与えて、
「ウォーン!」
怯んだ魔物にラピードはすばやく距離をつめて、必殺の斬撃を与え、魔物は動かなくなった。
「魔物が岩に擬態してたのか。よく気づいたな」
「魔物があの女ではなく、真っ直ぐお前たちに向かうとは考えなかったのか?」
魔物を倒すと、それぞれ構えを解き一息つくと、アルヴィンとミラがジュードに話しかけた。するとジュードは
「それでもよかったんだ。そうすれば、アルヴィンがあの人の死角に入れる位置だったからね」
そう説明した。
「すごいな。あの一瞬でそこまで考えるなんてよ」
それを聞いたユーリは感嘆した。
「大したものだ。誰にでもできることではないな」
それにミラも同意しジュードを褒めた。
「僕にしかできないこと……」
二人に褒められて、ジュードはそう呟き、頬を綻ばせた。
「ありがとう。みんな」
ミラはユーリたちを見て、そう言い微笑んだ。ユーリとアルヴィンはそれに微笑し、ジュードは顔を赤くした。
「さて、行こうぜ」
アルヴィンがそう言い、一行はキジル海瀑の移動を再開した。
「そうだ、ねぇユーリ。さっきの人たちって誰なの? 知り合いだったみたいだけど」
しばらく進むとジュードが先ほどの二人のことをユーリに聞いた。
「あー、本を持ってた方はしらねぇが、もう一人の方はジュディスつって、ギルドの仲間だ」
「む? ではユーリはあいつらの手先なのか?」
ユーリの説明にミラは警戒して聞き返す。
「違うって。俺の予想だけど、たぶん雇われたとかそんなんじゃねーのか? 実際、あいつとは全然会ってなかったしな。俺の方はいいとしてもう一人の方はアルヴィンの知り合いみたいじゃねーの?」
ユーリは警戒するミラにそう言って安心させ、アルヴィンに話をふる。
「あー、あれね。なんか向こうは知ってたみたいだけど、俺は」
「傭兵とは、恨みを買う商売のようだな」
アルヴィンが答えていると、それを聞いたミラがそんなふうに言い、アルヴィンは苦笑いをした。
「でも、キレイな人たちだったね」
「ああいうのが好み? ジュード君は年上好みか」
ジュードがジュディスたちのことを言うと、アルヴィンはニヤつきながらからかう。
「よくわからないけど、そうなのかも」
ジュードは慣れたのか、アルヴィンのからかいに笑いながら返した。そして、一行はキジル海瀑を抜け、ニ・アケリアに入った。
~チャット~
『必殺の一撃』
ミ「ユーリ!最後にラピードがおこなった攻撃は凄まじいな!」
ユ「ん?ああ、フェイタルストライクのことか」
ジュ「なにそれ?」
ユ「ん~、なんつーか……。会心の一撃って奴かな。相手が怯んで隙を見つけたらすかさず強力な一発をお見舞いしてやるって感じだ」
ア「へぇ~。それって凄いことじゃねーか。ラピードやるじゃねぇか」
ラピード(以後ラ)「ワフッ」
ア「あれ?」
ユ「『気安く触るな』だってよ」
ア「つれないねー」