「到着だ」
キジル海瀑を抜け、村の入り口に来るとミラが言った。
「ここが……」
「へえ、意外と普通の村だな」
「のどかでいい所じゃねーか」
ユーリたちは村を見渡しそれぞれ感想を言う。ミラは近くにいた村人に近づいていき
「すまない。イバルはどこにいる?」
「ん? イバルならマクスウェル様を追って……」
質問すると、村人はそれに答えながら振り向き、ミラを見ると
「マ、マクスウェル様?!」
驚いて、その場で手を合わせてひざまずいた。
「うむ。今戻った」
「あ、わわ、私なんかにお声をかけてくださるなんて」
ミラに対する村人の態度を見て、アルヴィンは
「やっぱ、本物なんだよな」
そう呟いた。周りにいた村人たちもミラが居ることに気づき、近寄ってきて先ほどの村人と同じように頭を下げ始めた。
「ミラ、すごいんだね」
「さすがマクスウェル様ってところか?」
「ちょっと疑ってたんだがな」
ジュード、ユーリ、アルヴィンが村の反応に思ったことを言った。
「緊張するな。普段のとおりにしていればいい」
ミラが村人たちにそう言うが、村人たちは一向に顔を上げずにいた。ミラは諦めたように嘆息して、質問する。
「イバルは、いないと言ったか?」
「は、はい! いつもより戻りが遅いと心配して……」
「そうか。相変わらず短気だな。手を止めさせてすまなかった」
質問に村人が答えるとミラは礼を言い、ジュードたちに付いてくるようにと合図し、歩き始めた。
「私は、これからすぐに社で再召喚の儀式を行う。だが、
ミラが歩きながら三人に話しかけた。
「ん? 俺たちなんかでいいのか?」
「俺、祭事には縁がないんだがなぁ」
ミラの頼みにユーリとアルヴィンが疑問を言う。
「そんなに難しいことはない。村には四つの祠があり、そこには
「それを社まで運べってか?」
「うむ」
ミラの説明にユーリがそう言うと、頷きかえされた。
「それなら、村の人に頼んでもいいんじゃないの?」
と、アルヴィンが聞く。
「さっきのを見たろう?
ミラはアルヴィンの質問にそう答え、
「なるほどね」
「ふーん。ま、力仕事は男の役目かね」
ユーリとアルヴィンは歩いてる途中でも近寄ってミラに頭を下げる村人を見ながら言葉を返した。そして、村の北側の門まで来ると、ミラは止まり、振り返って
「ジュード、すまない。君の件は儀式のあとで村の者に頼む。もうしばらく待って欲しい」
「あ、うん」
ジュードにそう言った。言われたジュードは声を落としながら返事をした。
「四つ集めて社に運んでくれ。社は村を抜けた先だ」
「じゃあ、手分けして
ミラが説明し終わると、ユーリがそう言い、それぞれ
「これか……、っと。見た目と違ってそんなに重くないんだな」
ユーリとラピードは祠から
「じゃ、戻るか。しかし、変わった形の家だよな、どうやって建ててんだ?」
ユーリが村の建物を見ながら呟いていたら
「この村の家は風と地の精霊術を使って建てている」
「へぇ。精霊術って便利なんだな」
「ところでユーリ。
「ほら、ちゃんとあるって」
ミラの質問にユーリは
「なら、あとはジュードとアルヴィンだけか。……そうだ、二人が戻るまで少しユーリの世界のことを聞かせてくれないか?」
ミラが暇をもてあましユーリの話しを聞きたいと頼んだ。
「別にいいぞ。っつても何はなしゃあいいんだ?」
ユーリはミラの頼みにそう答え、話をしようとする。
「そうだな、ではユーリの世界の家はどんな感じなんだ?」
「あー、そうだな。場所によって結構個性があるからな……、変わった建物で言えばハルルって街があるんだがそこの家は大木がそのまんま家になってたりするぞ。他には、アスピオって言う街は洞窟の中にあってだな……」
「ふむふむ」
とユーリの話に楽しそうにミラは頷きながら聞き入っていた。二人が話しているとジュードとアルヴィンが戻ってきたので、話を終わらせると
「よし、では社へ行くぞ」
ミラが立ち上がりながら言い、社へと向かった。ニ・アケリア参道を通り、社に着いた。
「この奥だ」
社の前に来たミラがそう言う
「ミラは、ここに住んでるの?」
「住んでいる、か。そう考えたことはないが、そういうことになるか」
ジュードの質問にミラがそう答えた。
「何もないところだなぁ。退屈じゃなかったのか?」
次に社の周りを見渡していたアルヴィンがそう聞くと
「私の使命においては、なんの問題もない。人の記した書物などを読んだりもしたがな」
「ふーん」
ミラはそのように答えた。
「さぁ、儀式をすませよう」
ミラがそう言い、社に入ろうとすると
「まったく、酷いよイバルは。僕に雑用押し付けて自分はどっか行っちゃうんだから」
中から声が聞こえてきた。
「む? 誰かいる」
ミラは剣を抜き、警戒する。
「村の誰かなんじゃない?」
「いや、違う。社には
ジュードの質問にミラは答えながらも気配を消して社に近づく。
「……今の声って」
そんな中ユーリは聞き覚えのある声に驚きつつも、面白そうなことになりそうだったので何も言わずに成り行きを見る。
「はぁ、なんでこんなことになっちゃたんだろ。僕帰れるのかなぁ」
社の中に入ると鞄を提げた子供が箒を持って掃除をしていた。ミラは子供に近づき
「おい、お前。一体何者だ」
剣を突きつけ子供に聞いた。
「へ? って、うわぁ!!」
振り向いた子供はいきなり目の前に剣先があることに驚き、足を縺れさせて後ろに転んだ。
「え!? なに? ちょっ、危ないっって!」
「お前は何者だと聞いている」
転んだ子供はさらに剣を近づけてくるミラにそう言うが、ミラは気にせず問い詰める。
「ちょっとミラ、やりすぎじゃない? その子怖がってるじゃない」
と、ジュードが注意するが
「しかしだな、何もないとはいえ勝手に社に入ってる不審者に情をかけてやる必要もあるまい」
「そうだな。怪しきは罰せよ、なんて言葉もあるしな」
ミラとアルヴィンはジュードの言葉をバッサリと切り捨て、子供に向き直る。
「えええ!? 不審者? 僕が? 違うってば! 僕はイバルから自分がいない間、ここの掃除とかをするように言われただけだって」
「そうなのか? しかし私が知る限りお前みたいな村人はいなかったはずだが」
「それは、その、色々事情があって……」
子供は弁明しようとするが、ミラの質問に言葉を濁す。
「やはり怪しいな。とりあえず抵抗しないのであれば、縄で縛って村の者につきだす。抵抗するのであれば致し方ない」
ミラはそう言って、剣を構える。
「そ、そんな! 僕なにも悪いことしてないのに」
「坊主悪いが、大人しく捕まってくれな」
子供が落ち込んでいるところにアルヴィンがそう声をかけ、
「そうだぜ、悪いことしたら罰則だろ?」
「ワウッ!」
とユーリとラピードも子供にニヤケながら声をかけた。
「ううう……って、へ?! あ、あー!! ユーリ! それにラピード」
すると、ユーリの声を聞いた子供がユーリとラピードを指差して驚き叫んだ。
「よ、カロル。楽しそうだな」
「楽しくないよ!」
ユーリはカロルと呼ばれた子供に声をかけた。
「ん? なんだ、ユーリの知り合いだったのか?」
「おう。俺の仲間だ」
ミラが剣を仕舞いながらユーリに聞くとそう返ってきた。
「なら、なんで早く教えてくれなかったんだ?」
「いや、なんか面白かったから」
「ヒドイよ、ユーリ!」
アルヴィンが聞くと、ユーリは笑いながらそう言い、カロルはそれを聞いて非難した。
「とりあえず紹介してもらっていい?」
「あ、うん。僕の名前はカロル・カペル。ギルド『
ジュードがそう言うとカロルが自己紹介をした。
「ん?
アルヴィンがカロルの話しを聞いて、ユーリに聞く。
「ああそうだ」
「ふむ。それはすごいな。こんな子供が組織のリーダーとは」
「えへへ。そうかなぁ」
アルヴィンの質問にユーリが答え、それを聞いていたミラは驚きカロルを褒めた。
「さて、カロルと話したいことが山ほどあるが、とりあえず先に儀式をやっちまおうぜ」
とユーリが言うと
「ああ、そうだな。では
ミラはみんなに儀式の準備を指示した。