Build The Sunshine   作:がじゃまる

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令和初更新。
前回の宣言通りあんま前書きコントのネタ考える時間がないので、アレは前説が必要なくらい話が動いた時限定にしようかと。

今後もたまに来るくだらないコントにお付き合いくださるとうれしいです。


十一話 蠢くコンスピラシー

 

 

 

『邪魔、するぜ』

 

 意匠が施され、厳格な造りとなっている扉が開かれる。

 同時に室内へ入り込んできたブラッドスタークの存在を確認し、抹茶菓子をつついていた年老いた男―――難波重三郎は眉を寄せた。

 

「・・・茶の時間だったんだがな」

 

『おっと、そいつぁ悪い事しちまったな』

 

 軽く謝罪の仕草を見せつつ、スタークは難波の正面に置かれた椅子に腰かける。

 

「今日はどうした? まさか私の一服を邪魔しに来た訳じゃあるまいな」

 

『そんな事の為にわざわざ来るほど暇じゃねぇよ。・・・・・・頼んでたモノを受け取りに来たのと、ちょっとした世間話をね』

 

「はは・・・お前の世間話がロクなものだった試しはないな」

 

 表面上は親し気に、されと完全に腹を割らないように気を張った様子で嫌味を言った後、難波は小型の通信機に向けて一言。

 

「私だ。・・・例の物を持ってこい」

 

 

 ほどなくして要求した代物が届けられ、ジュラルミンケースの中に入れられた˝ソレ˝がスタークの手に渡る。

 

「お前も不思議な事をいうものだな。まさか既に持っている銃をもう一丁作れなど・・・」

 

『あぁ・・・ちょっといい感じの候補が見つかったもんでな』

 

 コウモリの顔が刻まれた白と紫のボトルを片手で弄び、スタークが愉快そうに笑う。

 

『アンタ等には感謝してるよ。まさかトランスチームシステムを再現できちまうたぁ・・・流石、天下の難波重工だな』

 

 難波重工。

 スカイウォールの惨劇以降、本部を構える西都のみならず、日本列島全土に商品シェアを誇る国内最大級の重工業メーカー・・・と言うのはあくまでも表の顔。

 その裏では秘密裏に兵器の製造、開発や密輸などを行っており、誰が呼んだか、裏社会で付いた異名は˝死の商人˝。

 

 この難波重三郎はその会長という訳だ。

 

「何を当り前な事を・・・・・・我々の技術をもってすれば造作もない事だ」

 

『くく・・・世界の産業を難波重工が掌握するのも時間の問題だろうなぁ・・・』

 

 最終的に求める形こそ違えど、一時の共鳴を見せた黒い陰謀が静かに騒めく。

 悪意に満ちたもの、純粋な欲望によるもの。その黒さは、底が知れない。

 

『ああそうだ。これはちょっとした提案なんだが・・・・・・東都とは手を切れ』

 

 おもむろにそう言われ、難波は腑に落ちない顔をする。

 

「・・・どういうつもりだ。東都と連携しろと提案してきたのはお前だったはずだぞ」

 

『ここらが潮時って事だよ。・・・・・・もう小原の娘に利用価値はない』

 

 一拍の間が開く。

 東都政府の管轄内にある地域でかなりの影響力を持つグループの一つである小原家。難波重工が東都と結んだのもこの小原家との繋がりを持つためだった。

 

 全てはある一つの、共通した目的の達成を目指して。

 

「お前の方から声を掛けておいて無情なものだな。・・・だがあの娘も自分の目的の上でお前と手を結んだのだろう? こちらが裏切るとなれば黙っていないはず。・・・・・・どう口封じするつもりだ?」

 

『さあな・・・・・・記憶を消してその辺にポイ捨てでもするか?』

 

 玩具に遊び飽きた子供のように言い捨てるスターク。

 だが目元のグラスに宿る不気味な光には子供の萎えなどと言う生温いものはなく、本当にやりかねない狂気と冷酷さが滲んでいた。

 

『・・・今組むなら北都だろうな。軍事力を強化してるあそこ政府なら、難波の技術は喉から手が出るほど欲しいはずだ』

 

「面白い事を言うな・・・・・・戦争でも起こすつもりか?」

 

『その方がアンタ等には好都合だろ。戦争でおたくらの兵器が猛威を振るえばこの国に・・・いや、世界に難波重工の力を見せつけるまたとない機会になるぞ?』

 

 その一言に焚きつけられたか、難波の瞳孔に火が宿る。

 

 

「・・・いいだろう。お前の好きにやってみろ・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・なあ松浦・・・・・・海の音ってなんだ? 潜水した時に耳がゴボゴボいうやつか?」

 

「・・・分かんないけど確実にソレではないと思う」

 

 春らしい温かさも出てきた休日の昼下がり。

 唐突に千歌から「海の音が聞きたい」との連絡が入り、戦兎は訳も分からぬまま集合場所に指定された松浦家のダイビングショップに赴いていた。

 

「千歌はダイビングさせてとしか言って来なかったし・・・・・・先生は何か聞いてないの?」

 

「聞いてたら今困ってねぇっての。・・・まあ、アイツの事だしスクールアイドルやる上でのヒントでも探してるんじゃねーの?」

 

「・・・・・・スクールアイドルねぇ・・・」

 

 以前妹のような幼馴染だと言っていた千歌の事にも関わらず、関心がなさそうに、というよりは拒絶するように果南はそう呟く。

 

「・・・・・・ていうか、よく認めてもらえたね。今千歌と曜の二人しかいないんでしょ?」

 

「・・・まー、最初は黒澤の奴も人数不足を理由に認めない姿勢だったんだけどな・・・。鞠莉の奴が理事長の権限使って強引に認めさせやがったから・・・」

 

「鞠莉が・・・?」

 

 何気なく口にした鞠莉の名前に驚いたような反応を見せる。

 そりゃあまだ学生の身である鞠莉が理事長の椅子に座っている事と聞けば誰でも驚くだろうが、そういった類とはまた別のものを感じた。

 

「・・・? なんだお前、アイツの事知ってんのか?」

 

「・・・まあ、同級生だし・・・・・・」

 

 こちらの問いかけに対する返答もどこかぎこちない。

 どうやら、ただの知り合い、という訳ではなさそうだ。

 

「ていうか鞠莉だけ名前呼びって・・・・・・どういう関係なの?」

 

 一変して警戒するような雰囲気に切り替わった果南の瞳が向けられる。

 何というべきか、一線を越えた関係とかそういうのを危ぶんでいる様子ではなく、敵意に近いものが込められているのが伺えた。

 

「・・・助けられたんだよ。アイツに」

 

 一瞬迷った後、静かに切り出す。

 

「・・・俺が人体実験を受けて記憶喪失になったのは話したろ。それで当てもなく彷徨ってた俺を救ってくれたのが鞠莉だ」

 

 既に戦兎が仮面ライダービルドだと知られている果南だ。こんな事を話したところで問題はないだろう。

 

「・・・それ以来アイツにゃ随分世話になってるからな。感謝してもし切れねーよ」

 

「・・・ふぅん・・・」

 

 こんな事絶対冷やかしてくる本人の前では口が裂けても言えないが、それでも鞠莉に恩義を覚えているのは確かだ。

 しかし、それを知っても尚果南の表情は緊張の糸を解こうとしない。

 

「・・・人の恩人を悪くは言いたくないけど・・・・・・」

 

 厳かに言の葉を紡いだ彼女の瞳。

その奥には煮え切らない感情が渦巻いていて、

 

「・・・・・・あんまり信用しちゃダメだよ。鞠莉の事」

 

 その言葉は静かに、されど有無を言わせぬ気迫を込めて戦兎を圧する。

 

「・・・・・・」

 

 否定したいところ、いや、否定すべきなのだろうが、今の戦兎にはそれが出来ない。

ここ最近、東都に戻って来てからの鞠莉が不意に覗かせる、得体の知れない狂気を秘めた表情。

アレを目の当たりにしてしまった今、戦兎自身も彼女を疑い始めていたから。

 

「・・・・・お前、何か知ってんのか」

 

 果南がこっちに戻って来てからの鞠莉に接触していたかは分からない。

 だが、「信用してはいけない」と言わせるからには、果南と鞠莉の間に何かがあったはずだ。

 

「・・・知らないよ・・・・・・・・・分かるわけないじゃん」

 

 ただならぬものを感じ取り、それ以上は何も問わなかった。

 今ここで執拗に問い詰めて果南と険悪な状態になってしまうのは避けた方がよいだろう。ほどなくして合流するであろう千歌達に何か勘付かれてはマズい。

 

 

「せんせー! 果南ちゃーん!」

 

 

 噂をすれば何とやら。重い雰囲気をぶち壊す能天気な声と共にみかん髪と銀髪の少女が船着き場から駆け寄ってくるのが見えた。

 戦兎をここに呼び出した張本人高海千歌と、そのお供渡辺曜だ。

 

「お。来たね千歌。それと曜も」

 

 何か計画している千歌の気持ちに水を差さないためか、今の今まで見せていた仏頂面から一変、普段の何も考えてなさそうな顔で接する果南。

 それは果南の優しさの表れなのだろうが、そうなってくるとやはり彼女があれほど険しい表情になる要因を作っている鞠莉との関係が余計に際立つ。

 

 鞠莉に、スクールアイドル。

 果南の反応がどこか不通と異なる事物を繋ぎ合わせると、浮上してくるのはやはり二年前の事。

 ほぼ間違いなく、果南はアレに関わっていたのだろう。

 

「で、今日はどうしたの? 千歌がダイビングしたいって言うなんて珍しいじゃん」

 

「あー、えっとねー」

 

 ある一つの確信を得たところで、一度考えるのを止めた。

 せっかく果南が幼馴染のために気遣いを見せているのだ。戦兎が難しい顔をしてそれを無下にしては悪い。

 

「今日はお客さんを連れてきてるのだー!」

 

 ばばーん、と己の口で効果音を添えた千歌が指し示した方向を二人揃って見やる。

 直後、そこで目にした長いワインレッドの髪に強い見覚えを感じた。

 

「あれ? 梨子ちゃん?」

 

「え・・・? あ、この前の・・・・・・」

 

 それは先方も同様だったようで、戦兎と果南を見かけては目を丸くしている。

 

「あれ? 知り合い?」

 

「うん・・・。前に、ちょっとあって・・・・・・」

 

 曜に問われ、苦笑いと共に頷いた彼女は桜内梨子。

 最近戦兎の勤務先である浦の星女学院に転入してきた生徒であり、先日ブラッドスタークの手によってスマッシュに変貌させられていた少女だ。

 

「なんだ。千歌達と知り合いだったんだね。それで? 梨子ちゃんがダイビングしたいって言ってるの?」

 

「うん。なんか海の音っていうのが聞きたいらしくて・・・。桜内さん、小さい頃からずっとピアノやってるんだけど、今スランプ中で弾けなくなってるらしいんだ。それで海の音が聞けたら何か変わるんじゃないかなって」

 

「ふーん・・・」

 

 海の音と言うのが何なのかは依然謎のままだが、ピアニストである梨子独自の感性から生まれた表現らしい。

 きっと長く音楽に触れてきた分、同じ音でも戦兎達とは感じ取るものが違うのだろう。

 

「・・・で? お前は何が目的だ?」

 

 尽くせる手は尽くしてスランプを脱却しようとする梨子の姿勢に感心しつつ、何か裏がありそうなみかん娘に小声で耳打ちする。

 あれだけしつこく梨子を勧誘していたコイツの事だ。何の要求も無しに引き受けるとは考えにくい。

 

「・・・え? 私はただ桜内さんが困ってるみたいだから助けてあげたいなーって・・・」

 

「・・・マジ?」

 

「はい! 友達が困ってたら力にならないと!」

 

 曇りのない綺麗な笑顔と瞳でそう返され、なんだか見返り前提の善意だと思い込んでいた自分が穢れた存在のように思えてくる。

 人間性で言えば仮面ライダーである戦兎よりよっぽど千歌の方がヒーローらしい。

 

「じゃあ全員揃ったみたいだし、とりあえず着替えよっか。潜らない先生はちょっとここで待ってて」

 

 果南の声が掛かり、ひょこひょことその後についてゆく二年生一同。

 内一人に対してそこはかとない敗北感を覚えながら、戦兎はその背中を見送るのだった。

 

 

 




話の進みが遅い事に定評がある男です。ちょいと序盤の内に張っておきたい伏線が多くてですね……。

難波会長が登場しましたが名前も容姿も原典と同じです。そこまでキーパーソンって訳でもないし変える必要ないかなと。
どうせどこぞの地球外生命体に「ハグしよっ♪」されてタヒにますから(適当)


それでは次回で!
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