Build The Sunshine   作:がじゃまる

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ウルトラマンタイガが1話目から面白過ぎて5周した作者です


十七話 マリーゴールドの狂気

 

 

 

 

―――・・・今までずっとそんなことしてたんだ・・・。私達の前からいなくなってからずっと・・・!

 

 消えない。

 

 ―――人の想いを踏み躙ってまでやりたい事って何⁉ そうまでしないとできない事なの⁉

 

 消えない。

 

―――・・・なんでさ・・・・・・なんでこんなことして何も感じないの⁉ それとも何? 何も気付かずに手のひらで踊ってる千歌達を見るのが楽しいの⁉

 

 何度も反芻する声が、消えない。

 

「・・・・・・果南・・・」

 

 暗い部屋の中、自らの身体を毛布に包んだ鞠莉の小さな呟きが闇に溶けてゆく。

 

 スタークの提案した計画は、仮面ライダービルドと、浦の星女学院スクールアイドルAqoursによって完遂された。これで鞠莉の望みにまた一つ近づいたはずだ。

 

 だが、その代償は鞠莉にとって途方もなく大きいものだった。

 

 

 スタークとの繋がりがバレた。

 知られたくなかった・・・いや、知られてはいけなかった果南に。最悪の形で。

 

「なんで・・・・・・なんでなんでなんでなんで・・・」

 

 どうする? いっそ果南もダイヤと同じく˝こちら側˝に引き込むか?

 けれどダイヤの引き込みはあくまでも彼女が黒澤家の人間だから出来た事。果南にも当てはめられるものではない。

 それに果南の性格上、関係のない人達を巻き込むこの計画を承諾する訳がないだろう。

 

 つまり、これで果南とは完全に対立した形になってしまった。

 

「っ・・・・・・!」

 

 ダメだ。果南はこちら側に・・・最悪でも決別するような事になってはいけなかった・・・こうなるから知られたくなかったというのに・・・。

 

 これでは例え内浦を守ることが出来ても、鞠莉が真に願った望みは果たされない。

 それだけは何としてでも避けなければならないのだ。

 

 

「絶対・・・三人で・・・・・!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「鞠莉さんが?」

 

「ああ、なんか変だと思うところとか無かったか?」

 

 一波乱あったAqoursのファーストライブから数日が経った。

 校内がまだその余韻に浸る中、相変わらず平常運転なダイヤに対し戦兎がそう問う。

 

「変も何も・・・・・・あの人はいつも変ですからねえ・・・」

 

「それに関しては完全に同意するが・・・そうじゃない。何つーかこう、変のベクトルが違うっつーか・・・いつもと違うみたいな・・・」

 

 果南が目撃してしまったと言った事から始まった、小原鞠莉がブラッドスタークと繋がっているかもしれないという疑惑。

 果南の言葉を完全に信じた訳ではないが、戦兎もここ最近の鞠莉には違和感を覚えていた部分はあった。だからこその行動だ。

 

「・・・・・・いえ、特に心当たりは・・・」

 

「・・・そ、ならいいんだ」

 

疑っている反面、心のどこかで鞠莉を信じたいという気持ちもある。鞠莉を疑い切る事も信じ切ることも出来ない自分がもどかしい。

 

「悪かったな急に変な事聞いて。忘れてくれ」

 

 この学校で最も鞠莉に近く、尚且つ付き合いも長いダイヤなら何か知っているかもと思ったが、やはりそう簡単にはハッキリしない。

 まあ言ってもまだ調べ始めたばかりだ。他のルートを当たってみるとしよう。

 

 

 

 

 

「・・・・・・はぁ・・・」

 

 扉が閉じられ、戦兎の背中が見えなくなったのを確認してから深くため息をつくダイヤ。

 

「もう出てきて大丈夫ですわよ」

 

 視線は動かさずに発した声の後、生徒会室にあるもう一つの扉がガチャリと開く。

 遅れてダイヤが豪奢な金髪を視界に知れた後、理事長であるその少女は静かに口を開いた。

 

「Sorryダイヤ・・・。匿ってもらっちゃって」

 

「お気にせず。貴女の行動の尻拭いなど今に始まった事ではありませんし」

 

「・・・辛辣ね」

 

 苦笑いをする鞠莉に、普段のウザったらしい程の明るさはない。

 

「・・・姿を隠して正解でしたわね。三海先生、何やら貴方の事を探っているようです」

 

「・・・・・・何で戦兎まで・・・」

 

「・・・まあ、それは追々、貴方の方で対処してもらうとして・・・・・・」

 

 楚々とした表情を保ったまま、ダイヤが鞠莉に歩み寄った直後。その雰囲気とは対照的な荒々しさをもって叩きつけられた壁が重い音を立てて揺れる。

 

「今回の件・・・・・・いくら何でも度が過ぎているのではなくて?」

 

「Oh・・・壁ドンなんて大胆ね・・・」

 

「茶化さないで頂けます? これでも怒ってますのよ、わたくし」

 

 Aqoursのファーストライブの日。スマッシュと共に暴走した東都のガーディアンが浦女を襲撃した事はマスメディアによって大きく取り上げられる程の事件となった。

 その騒動を企てた張本人こそが、この小原鞠莉なのだ。

 

「自分が何をしたのか分かっているのですか? 仮面ライダーがいなければ怪我人・・・いや、死人が出てもおかしくない状況でしたのよ」

 

「・・・ダイヤこそ分かってるでしょ? 今回のガーディアンの暴走で一時とは言え東都政府は信頼を落としてる。そして逆に、事態の収拾に一役買ったAqoursを支持する声が増えてるのは」

 

 淡々と語る鞠莉は仄暗い雰囲気こそ纏っているものの、反省している様子は全く見受けられない。

 

「もしこんな状況で内浦を併合して浦女を廃校、強いては浦女のスクールアイドルであるAqoursを解散・・・なんてことにしたら批判は免れない。今回の件で政府は内浦に手を出しにくくなったはずよ。・・・それはダイヤとしても好ましいでしょ?」

 

 もとより三都間でいつ戦争が勃発してもおかしくない国勢の中、希望や平和の象徴のような形で人気を博していたスクールアイドル。東都政府によって恐怖を与えられた人々にあるグループが笑顔を灯したという今回の一件は、世間のスクールアイドルへの支持により一層拍車を掛ける事となっただろう。

 

 そんな中政府がある地域を併合した事によりスクールアイドルグループ―――よりによって政府の技術の暴走に巻き込まれながらも人々を笑顔にしたAqoursを潰す、などと言う事態になれば世間からの非難は免れない。鞠莉の言う通り、東都政府が強硬手段に出にくくなったのは事実だ。

 

 だが、

 

「だとしてもやり方と言うものがあったでしょう! どうしてよりにもよってこんな危険な手段を・・・・・・ルビィだってあの場にいたのですよ⁉」

 

 体育館の一部損害及び、中にいた人々を危険に晒し、加えて東都ガーディアンが暴走するように仕掛けたハッキング。今回の鞠莉の所業はとても正気だとは思えない。

 

「それに高海さん達を利用するようなやり方・・・やっぱりわたくしは納得できませんわ」

 

「・・・随分と気に掛けるよね、ちかっち達の事」

 

 何かを懐かしむように儚く微笑んだ後、一転して瞳を濁らせた鞠莉は抑揚のない声音をダイヤに向けた。

 

「理解してよ、ダイヤ。もう真面目なだけじゃどうにもならないって事くらい分かるでしょ?」

 

「・・・貴方・・・・・・本当に変わってしまったのですね・・・」

 

 もう目の前の彼女に、共に笑い合っていたかつての姿はない。

 ただ自らの望みを果たさんと暴走する、ブレーキの壊れた列車だ。

 

「こうでもしないと、全部なくなっちゃうからね・・・・・・・・・やるしかないの」

 

 止められる気がしなかった。

 たかだか地主程度の規模の家と、政府にも影響力を持つ家。黒澤家と小原家では力の差があり過ぎる。

・・・いや、例えそんなものがなくても、今の鞠莉に対抗する覚悟や気概も今のダイヤにはない。

 

「事が全部うまく行ったら、きっと分かってくれるよ。ダイヤも・・・・・・・・・・・・果南だって・・・」

 

 自分自身に言い聞かせるようにそう呟いた後、鞠莉は再び扉の向こうに姿を消す。

 嵐のような狂気が過ぎ去り、静寂の戻った生徒会室の中、ダイヤは何も出来ない自分を呪った。

 

 何とかしなくてはいけない事は分かっている。

 これ以上鞠莉が浦の星のスクールアイドルを利用するような事になれば、いずれダイヤにとって望ましくない事態が訪れる事も。

 

 けれども、それをするには力も覚悟も、何もかもが足りない。

 

 

 ―――――その内お前の方から俺に頼み込んでくるだろうからなぁ・・・・・

 

 

「っ・・・!」

 

 ふと脳裏に過った紅い毒蛇の言葉。

 不覚にも一瞬、心が揺らいだのを感じ取ったダイヤは、煩悩を振り払おうと頭を振った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 海辺から吹く潮風が今日も労働を終えた身体を癒してくれる。

 教師としての業務に加え、並行して行っていた鞠莉の審議調査で二重に疲労した戦兎は心地の良い風を浴びつつ身体を伸ばした。

 

「・・・やっぱ学校じゃ有益な情報は見つかんねーわな・・・」

 

 せいぜい何か怪しい行動でも無かったかの聞き込み程度。そんな事で手に入る情報など高が知れている。

 現に今日一部の生徒や教師に聞き回ってみた結果分かった事は、戦兎が千歌のみならず鞠莉とまで特殊な関係にあるのかもしれないと思われていたことぐらいである。どうしてこう女たらしみたいな目で見られているのだろうか。

 

 

 まあ、それはさておき、問題は学校で手に入る情報では鞠莉が白か黒かの確信に至る事は出来ないという事だ。

 正攻法で難しいとなると鞠莉に盗聴器を仕掛けたり小原家のコンピューターにハッキング仕掛けるなどの強硬手段に出ざるを得なくなるが、渡るにはその橋は危なすぎる。

 

 本人にバレるとマズい以上もっと慎重に動いた方がいいのは確かなのだが、戦兎としても早急に真相を明らかにしたい気持ちはあって―――、

 

「だあぁぁッ! 一回考えるの止めだ止め!」

 

 袋小路に迷い込んでいく感覚がし、声を上げて無理矢理思考を遮る。

 せっかく本日の業務から解放されたというのに別な事で頭を疲弊させてどうする。

 そもそもこの場所に来たのも休憩がてら関わっていると疲れるスクールアイドル部の連中から身を隠すためだったではないか。休まないでどうする。

 

「アイツ等に見つかっちゃ休憩もクソもねーからな・・・」

 

 最近戦兎が見つけたここ浦の星女学院の穴場スポット、それがこの屋上。

 授業を終えた生徒たちがぞろぞろと帰宅、ないしは校庭等を占拠して部活動に勤しむ放課後となれば誰もいない場所などここぐらいである。

 

 まず人が来ない為静かで、おまけに時折吹き抜ける風が爽快感を与えてくれる。サボりにはうってつけの場所。いわばベストプレイスだ。

 

 

「うわ~! 結構広いね~!」

 

「ッ⁉」

 

 

 ベストプレイスだったはずなのだ。

 

 虚を突くように背後から聞こえた嫌な予感しかしない声に振り返ってみれば、やはりそこにいたのは疫病神高海千歌。

 

「あぁ! 先生ここにいた!」

 

 よほど神に嫌われているのか、敢無く見つかりゲームオーバー。練習着を着こんでいる以上はこのまま付き合わされるパターンだろう。

 そして、彼女がいるという事は当然付属品の面々もついてくるという訳で。

 そんな戦兎の予想を裏切る事なく、遅れて五人の少女が屋上に姿を現した。

 

「・・・・・・ん? 五人?」

 

 戦兎の記憶が正しければスクールアイドル部の部員は三人だったはずなのだが、どういう事か目の前の人数はその倍の六人。

 

「おい高海、そいつ等どうした」

 

 黒澤ルビィに国木田花丸、そして石動美月と一応全員知っている生徒だが、別に今までスクールアイドル部と共に行動していたような事はなかったはず。

 そうリーダーに思い問いかけると、千歌は嬉しさがひしひしと伝わってくる太陽のような笑みを戦兎に向けた。

 

 

 

 

「新入部員です‼」

 

 

 




次回あたりナイトローグさん出せるからなぁ…って(不穏)
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