Build The Sunshine   作:がじゃまる

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曜「火星で発見されたパンドラボックスが引き起こした、スカイウォールの惨劇から十年。私達の国は、東都、北都、西都の三つに分かれ、混沌を極めていた! そんな中千歌ちゃんは今ブームになっているスクールアイドルを始めようとしたのだけれど、帰宅中、都市伝説と思われていたスマッシュに襲われてしまう」

千歌「ちょっと曜ちゃん⁉ 前回の話振り返ってないで助けてよ!」

曜「ああちょっと待って・・・! これ読まないと今回の話始まらないから・・・!」

千歌「死んじゃう! そんなことしてる間に千歌死んじゃう!」

曜「ああ・・・ええと・・・・・・ど、どうなる第二話!」



二話 ベストマッチな仕事

 

 

 

 目の前で起きている事を、渡辺曜はまだ完全には理解できないでいた。

 普段通りの帰り道で起きた、イレギュラーな出来事。

 都市伝説かと思われていたスマッシュが突然現れ、親友を・・・千歌を襲っている。

 

「う・・・くぅ・・・・・・!」

 

「千歌ちゃん・・・千歌ちゃん!」

 

 状況は飲み込み切れてはいない。だが、首を掴みあげられてもがく親友を見てただ突っ立っていることなど曜には出来なかった。

 

「この・・・・・・千歌ちゃんを放して‼」

 

 恐怖心を押し殺し、スマッシュの白い身体に体当たりをお見舞いする。

 

『ウウゥゥゥゥ・・・?』

 

 運動神経がよく、同級生よりパワーはあれど、所詮は一介の女子高生。

 当然、そんな自分の攻撃が未知の怪物に通用する訳がない。

 

『ウゥアアァァ‼』

 

「きゃう・・・!」

 

 無造作に振るわれた右腕に振り払われ、ごろごろと砂浜を転がる。

 痛みと口に入った砂の味に顔を顰めながらも顔を上げた先では、スマッシュの腕から伸びた鋭利な棘が夕陽を受けて朱色の光を灯していた。

 そしてそれが向けられているのは・・・千歌だ。

 

「千歌ちゃん! 逃げて‼」

 

 悲鳴に近い声でそう叫ぶも、呼吸に限界がきて意識を失った千歌の耳には届かない。

 

『ウゥアアァァァァァァゥゥゥゥゥゥ‼』

 

「だめぇぇっ‼」

 

 己の非力さを恨む中、スマッシュの凶刃が千歌を貫かんと迫る。

 

 だが、

 

「ハアァァ‼」

 

『ッ――――――⁉』

 

次の瞬間視界に入ったのは迸る鮮血ではなく、突如として現れた赤と青の影に蹴り飛ばされたスマッシュの姿だった。

 

「っ・・・・・・! 千歌ちゃん!」

 

 スマッシュの腕から解放され、力なく砂浜に倒れ込んだ千歌に駆け寄る曜。

 意識こそ失っているが目立った外傷はなく、何より呼吸があることに安堵する。

 

(そうだ・・・)

 

 たった今スマッシュを攻撃し、千歌を救ったのは何者だったのか。

 その答えを求めて視線を戻すと、そこには。

 

「ギリギリか間に合ったか・・・・・・あっぶねー」

 

 兎と戦車を模したような単眼に、赤と青が螺旋状になった体色。人型をしていて、身体は強固そうな装甲に覆われている。

 

 一言でいうならば・・・・・・不審者がいた。

 

 

 

 

 

 

「さてと・・・・・・じゃ、ぱっぱと片付けるとしますかね」

 

 少女の無事を確認し、先程探知網に引っ掛かったであろうスマッシュと対峙する。

 特徴的なのは白い身体から伸びる鋭い嘴と無数の棘―――差し詰めニードルスマッシュとでも称したところか。

 

『ウゥアアァァァァァァ!』

 

「フッ! ホッ!」

 

 嘴や腕部に備わった刃を駆使して繰り出される刺突や切断攻撃を尽く処理。

 大振りな一撃はラビットの瞬発力で回避し、力の籠っていない攻撃はタンクの防御力で受け止める。

 

「なるほど・・・・・・」

 

 一般人には脅威以外の何物でもないが、今の自分にとっては大した敵じゃない。

 単眼から伸びるアンテナ風の突起物をなぞるように指を滑らせ、戦略を纏め終わった事を宣言する。

 

「勝利の法則は・・・決まった!」

 

 迫りくる白刃を奴の懐に転がり込む形で回避し、針の生えていない急所に戦車の砲弾が如し重いパンチを叩きこむ。

 鉄筋をもへし折るこの一撃。モロにもらって無事で済むはずがない。

 

『ウゥゥゥッ⁉』

 

 予想通りたまらず悶えたスマッシュから視線は逸らさずに、慣れた手つきでビルドドライバーに触れた。

 

「こいつを・・・」

 

 ドライバーから伸びたパイプから刀身がドリルになったかのような剣―――ドリルクラッシャーが生成され、右腕に納まる。

 最近発明した武器だが・・・、試すにはちょうどいい機会だ。

 

「オオゥラァ!」

 

『ッ――――――‼』

 

 見た目を裏切らずに回転する刀身がニードルスマッシュの胸元を掻っ捌く。

 その後も間髪入れずに連撃が襲いかかり、徐々にスマッシュはグロッキーになっていくのが伺えた。

 

「ははっ! 想像以上の出来だな! やっぱ俺天才!」

 

 興奮気味に自身を賛美しつつドライバーからラビットフルボトルを抜き取り、ドリルクラッシャーのソケット部分に差し込む。

 

《Ready Go!》

 

 兎のエンブレムが浮かび上がり、ドリル部分が赤いエネルギーを纏って高速回転を始める。

 

『ウウゥゥゥゥ‼』

 

 それに危機感を覚えたか、低い唸り声を上げながら突進を仕掛けてくるニードルスマッシュ。

 

「フッ・・・」

 

 そんな隙だらけの姿、どうぞ攻撃してくださいと言っているようなものだ。

 

《ボルテックブレイク!》

 

「ハアァァァァァァ‼」

 

『ッ――――――――‼』

 

 剣戟一閃。

 横一文字に振り抜かれたドリルクラッシャーの必殺技が炸裂し、ニードルスマッシュは緑色の爆炎を噴き上げながら真後ろに倒れ込んだ。

 

『ウゥ・・・アアァ・・・・・・』

 

「ほいっと」

 

 すかさず別のボトルを取り出し、キャップ部分を奴へと向ける。

 これは何の成分も入っていない、いわば空のボトル―――エンプティフルボトル。主にスマッシュの成分を抜き取るために用いるものだ。

 

 何故スマッシュの成分を抜き取る必要があるのか、それは・・・、

 

「うぅ・・・・・・」

 

 成分を完全に吸収されたスマッシュが、若い男性の姿へと変わる。

 世間一般は知られていない事だが、スマッシュの正体は人間。

 これまでに倒してきた個体も、総じて人間だった事から、そう結論に至った。

 

「よし、採集完了」

 

 成分が全て抜き取られると、その人間はすぐに意識を失って頭を落とした。

 大事には至っていないようだが弱っている事に変わりはない。あまり刺激しないのがベストだろう。

 

 だが、

 

「おーい。こんなとこで寝てると風邪ひくぞー」

 

 ぺちぺちと頬を叩き、雑に男の意識を呼び覚ます。

 可哀想だが悠長に起きるまで待ってあげられはしない。こっちにも事情があるのだ。

 

「うぅ・・・・・・あ・・・?」

 

 やがて目を覚ました男は、自分の置かれている状況がよく分かっていないといった様子で瞳孔を開いては閉じている。

 

「・・・アンタ、どっから来たんだ?」

 

 しゃがみ込み、男の顔を覗いては問いかける。

 スマッシュを倒し続けている理由、それはある真実を追っているから。

 

「・・・・・・何の事だ?」

 

 聞きなれた返答が帰ってくる。

 

「ていうか、どこなんだよここ・・・」

 

「・・・・・・アンタもか・・・」

 

 もう何度目かもわからないこの問答に頭を抱える。

 一体いつになったら、求めている答えが帰って来るのやら・・・、

 

 仕方ない。とりあえずいつも通りこの男も病院に連れて―――、

 

「・・・・・・ん?」

 

 ブロロロと、喧しい耳障りな音が上空から耳に滑り込んできた。

 つられて見上げた視線に映り込んだ一基のヘリコプターを見て、記憶の中から今の今まで忘れていた重大な用事が這い上がってくる。

 

「うあぁぁぁ⁉ 最悪だ⁉ 今日アイツが帰って来る日じゃねーか⁉」

 

 一瞬前までの冷静さが嘘のように取り乱し、慌てふためく。

 マズイ。もし彼女が戻ってくる時間に遅れようものならばまた・・・・・・と想像するだけで恐ろしい。

 

「ととととにかくこんなことしてる場合じゃねぇ・・・。早く戻らねぇと・・・」

 

 即座にスマッシュの成分を吸収したエンプティフルボトルをしまい、展開したマシンビルダーに跨る。

 

「ちょっと君、この人病院まで連れてってあげて~。命の恩人からのおねがーい!」

 

「えっ⁉ ちょ・・・ちょっと・・・・・・」

 

 銀髪の少女に無理矢理男の事を押し付けると、フルパワーでエンジンを切り、全速力でこの場から離脱する。

 

「えぇ・・・・・・何なのこれ・・・・・・?」

 

 少女の方も、いきなりそんな事を言われて行動に移せるわけがない。

 何が起こったのかわからぬまま、ただ茫然と小さくなっていく変人の背中を眺める事しか出来ないのだった。

 

 

 

 

 

 

 

「ふふふ・・・。Too be lateよ」

 

 豪奢なマリーゴールドの髪が眼前で揺れている。

 

「ぐぅ・・・!」

 

 結論から言うと時間には間に合わず、戻ってきた頃には既に約束を交わしていた少女はソファーに座って優雅に茶を啜っている。

 その彼女が浮かべる不敵な笑みに、三海戦兎は恐怖を禁じ得なかった。

 

「二年ブゥーリデスネ~。元気にしてた~?」

 

「お、おう・・・。久しぶりだな。鞠莉・・・」

 

 おかしなアクセントのかかった日本語で話す彼女の名は小原鞠莉。

 数年前、記憶を失くして当てもなく彷徨っていた戦兎を見つけ、生活の場まで提供してくれた命の恩人だ。

 二年前から海外の学校に留学していたのだが、単位を取り終えたので戻ってきたそうな。

 

「でも、遅刻とは感心しませんネ~♪」

 

「ま、待て! スマッシュ! スマッシュが出てたんだよ! ほらこれ!」

 

 懐から取り出したボトルを鞠莉に見せつける。

 スマッシュの成分を吸収した事で元のエンプティフルボトルよりも膨れ上がり、蜘蛛の巣のような黒い紋様が表面に浮かび上がっている。

 

「Oh! これが今回の収穫?」

 

「そ、そう! これのせいで遅れたって訳! だから―――」

 

「それとこれでは話が別デース!」

 

 キッパリとこちらの言い訳を遮断し、腕をワキワキさせながら歩み寄ってくる金色の影に戦兎の表情が凍り付く。

 その隙を突き、鞠莉は一瞬で戦兎に肉薄した。

 

「シャァァァァイニィィィィィィィィッ‼」

 

「ぎゃああぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ⁉」

 

 

 

 

 

 

「っ・・・! っ・・・!」

 

「ふ~・・・堪能した~♪」

 

 ようやく解放され、戦兎はげんなりとした表情で息を荒げる。

 

「・・・・・・何が悲しくて年下の女にセクハラされないといけないんだよ・・・・・・チクショウ・・・」

 

「二年前より筋肉増えたんじゃない? 戦兎」

 

 満足気にサムズアップをしてくる鞠莉を恨めし気に睨む。どうしてこの女は年上の異性の身体を遠慮なく触れるのだろうか。

 

「・・・お前さ、腐っても花の女子高生だよな? 野郎にセクハラして楽しむ女子高生ってどうなの? 生き物として」

 

「ノンノン。女の子の胸とか触ってる方が楽しいに決まってるじゃない? 仕方なく戦兎でFrustrationを発散してるのよ」

 

「なんでお前が被害者みたいな面してんだよ・・・・・・」

 

 世界中誰がどう見ても戦兎が被害者だろうに。

 だがまあ、そんなこと言っても破天荒な彼女には通じないのでもう忘れるとしよう。

 

「それで? ちょっとは記憶戻ったの?」

 

「いんや。さっぱりだ。スマッシュにされた奴に聞いてみても覚えてないの一点張り。俺の失った記憶に辿り着くにゃ程遠いね」

 

 鞠莉と出会った時、戦兎はいわゆる記憶喪失になっていた。

 残っていた記憶はガスマスクの研究員達と、謎の赤いマスクの男のいる実験場で、何かをされたという、曖昧なものだけ。

 

「・・・今のとこ、スマッシュにされた人間が唯一の手掛かりなんだがな・・・」

 

 戦兎が鞠莉の家である小原家に保護された時に身体から検出された成分が、スカイウォールの地下から発生している『ネビュラガス』と同じものだった事。

 そしてそれと同じ成分が、スマッシュの身体からも検出されるという事。

 

 これら二つの事から、戦兎は自分の過去がスマッシュ、ないしはスカイウォールに関係があると結論付けた。

 

 

「多分、これまでスマッシュにされてきた人間も俺と同じだ。あのガスマスクの連中と赤マスクに何かされている。・・・・・・ここ二年でわかったのはこのくらいだな。・・・てかたまにテレビ通話で話してたでしょうが」

 

 だからスマッシュにされた人間がどこから来たのかを探れば奴等に辿り着くと思っていたのだが・・・・・・中々思うようにはいかないものだ。

 

「ふ~ん・・・。まあ、それはいいとして・・・・・・」

 

 急に真面目な顔になり、どこからか取り出した電卓を操作する鞠莉。

 やがて操作が終わりこちらに向けられたデジタル画面には、目が痛くなる程度に0が羅列されていた。

 

「この二年間戦兎が住み続けたここの建設費は、いつ払ってくれるのデースか?」

 

「・・・・・・は?」

 

 謎解明のために巡らせていた思考が一瞬にして凍り付く。

 

「え? えぇっ⁉ 何⁉ 建設費とか発生してんの⁉」

 

「Off Course! あったり前デース! 記憶喪失の男に無償で拠点を提供する程ウチは優しくありまセーン!」

 

 戦兎が拠点兼研究室として使っているのは、鞠莉の家が経営しているホテルの敷地の外れにある地下施設。

 過去に使われなくなった施設を買い取って改装した物とは聞いていたが・・・、よもや金銭が発生していようとは。

 

「つかお前、俺をここに連れてきた時その辺の話なんもしてなかっただろうが! 詐欺だ詐欺! 成金ババー!」

 

「・・・・・・つべこべ言ってると追い出すわよ?」

 

「誠に申し訳ございませんでした以後このような発言は謹んで行動します」

 

 鞠莉はリゾートホテルチェーンを経営する小原家の一人娘であり、いわゆる富裕層というもの。東都でもかなりの権力を有している。

 とどのつまり、記憶喪失でロクな権力も持ち合わせない戦兎が逆らっていい相手ではないのだ。小原家によって救われた身としては尚更。

 

「・・・・・・で、でもどうやってそんな大金払えばいいんだよ。自慢じゃないが俺は無職だ」

 

 唯一の仕事といってもいい仮面ライダーとしての活動も金銭なんて発生しない。ボランティアみたいなものだ。よって無一文。

 

「心配ありまセーン! ちゃぁーんとマリーが戦兎にピッタリな職を探しておいたから!」

 

 ハイテンションでそう言うと、これまたどこからか取り出した一枚の紙を見せつけてくる鞠莉。

 

「おお! 気が利くじゃねーか。なんだ? 研究所か? それとも・・・」

 

 自慢になるが、戦兎は物理や化学分野に関してはかなり自信がある。

 記憶は失っていても才は失われていなかったという事。恐らく記憶喪失になる前は学者か何かだったのだろう。

 

「どれどれ・・・・・・?」

 

 鞠莉もそんな戦兎の才能を買ってくれたのだろうと、心を躍らせながら紙に記載された文字を読み上げると・・・。

 

「・・・・・・物理・・・・・・教師ぃ・・・・・・?」

 

 もう一度読み上げてみるが間違いない。そこにはしっかり戦兎を物理教師として採用するという旨が記されていた。

 

「おい鞠莉・・・? これは一体・・・・・?」

 

 予想から大幅に外れた職の斡旋に戦慄きながら顔を上げると、鞠莉はしたり顔で遷都の事を見下ろしており・・・。

 次の瞬間、「委任状 小原鞠莉殿」と書かれたもう一枚の紙を見せつけながら大声で宣言してきた。

 

 

「三海戦兎。浦の星女学院理事長として、貴方をウチの物理教師に任命します‼」

 

 

 

 




はい皆さん。あけましておめでとうございます。新年一発目です。

今作の戦兎君はマスターではなく小原家に保護されたものとします。・・・あれ?そうなると鞠莉さんがスター(殴)
戦兎の苗字が桐生じゃないのは違和感があるかもしれませんがお付き合いください。ほら、あれっすよ。ディケイドのリ・イマジネーションライダーって事で。
ついでに言うと今作のヒロインはちかっちではありません。


それでは次回で!
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