色々ありましたがとりあえず台風で我が家がチャオされそうなので遺書代わりに更新しておきます(不穏)
『・・・なんだ・・・今日はお前がお出迎えか内海』
不意に目の前で発生した黒霧の中から声が聞こえる。
『会長はどうした? 遂に押っ死んだか?』
「難波会長は今多治見首相と会談中です。なので代わりに私が」
顔を合わせて早々にそんな縁起でもない事をのたまったのはブラッドスターク。
難波重三郎に絶対の服従を誓う˝難波チルドレン˝にとっては親への冒涜に等しい今の発言にも関わらず、内海台は気に掛けるような素振りも見せずに無表情のまま淡々と言葉を返した。
『・・・北都の首相とねぇ・・・、クク・・・、いよいよ戦争でもおっぱじめるつもりかねぇ・・・・・・』
事が自身の目論見通りに進もうとしている故か、心底愉快そうに毒蛇が笑う。
今回多治見首相が難波重工に取引を持ち掛けてきたのは、スタークと裏で繋がっている北都の政府役人がそうするように進言をしたのがきっかけだという事を台は知っている。
全ては、戦争を嗾ける軍備を整えるために。
「多治見首相はファウストの持つスマッシュの技術やガーディアンの強化・・・・・・そして何よりライダーシステムについて興味を示されてるようでしたが」
『だろうな。多治見は三国の首相の中でも特に戦争に貪欲だ。少し餌をちらつかせればすぐ食いつくと思ったよ』
今でこそ東都内で謎のヒーローのような存在として扱われている仮面ライダー及びライダーシステム。
だがその力の矛先を他国に向ければ、スカイウォールの影響で戦闘機や戦車が満足に使用できない現状においてそれは最強の軍事兵器となり得る。
他国を制圧する力を欲している北都政府が食いつくのも当然だ。
『・・・この分なら想定より早く進みそうだ。ライダーシステムが渡れば間違いなく北都は動く』
「その件についてですが、北都に流すというライダーシステムは何時手に入るのかと会長が」
『あぁ、それに関しちゃ心配はいらねぇ』
いくら難波の技術があれど、ライダーシステムのような代物を設計図も無しに完済させることは不可能だ。
だがそのライダーシステムがなければ北都との交渉は成立しない。それはスタークも理解した上で行動していたか、困った様子も見せ淡々と答えた。
「・・・ならいいのですが・・・・・・。まあどちらにしろ、早めの回収をお願いします」
『ハイハイ分かってますよ・・・・・・ったく、相変わらずサイボーグみてーに無愛想だな。たまには笑ったりしたらどうだ?』
言葉に反して面白そうなスタークがどこからか取り出した手鏡に映った己と目を合わせる。
切り揃えた前髪や、スタークの言う無愛想さに拍車をかけるシンプルな眼鏡。唯一激しく自己主張をしているとすれば小さな身長に不釣り合いなバストくらいだろう。
「・・・貴方もそのふざけた態度は相変わらずですね・・・・・・」
『まあ、な。どうして人間ってのはこうも面白いのかねぇ・・・・・・あぁ、勿論例外もいるがな』
スタークの言葉から続くように、ずっと何かを待っていたように奴の手に収まっていた携帯電話が着信音を鳴らす。
その主が誰であるかを確認すると、予想通りだとでも言いたげに、今度もまた愉快そうに笑う。
『おっと、噂をすればその例外さんからか・・・・・・クク・・・』
隠す気もない悪意と狂気を秘め、毒蛇の眼光が妖しく灯った。
(・・・衝動でついやってしまいましたが・・・時期早々でしたでしょうか・・・?)
カツン、カツンと、至る所にハイプが張り巡らされた薄暗い通路に反響する足音。
この道を更に進んだその奥、実験場のような装いの空間で佇む三人の人影を視界に捉え、黒澤ダイヤは足を止めた。
「・・・・・・君が黒澤ダイヤ君・・・かな?」
「え、えぇ・・・そうですが・・・・・・、・・・ッ⁉」
三人の内一人、こちらに振り返っては所在を伺ってきた男の顔を見て思わず目を見開く。
高級感のある、少なくともどこかしらのブランドの物であろうスーツに身を包んだ精悍な印象を抱かせる彼は、紛れもなく東都政府首相補佐官の伊能博行その人だった。
「おおぉ~! 美人さんだ~! お人形みたーい!」
「・・・落ち着け」
伊能と同じくスーツを着込んだ長い黒髪の女性と、その横でぴょこぴょこと跳ねて暗い朱色の髪を揺らす少女の顔は初見であったが、その胸につけられたバッジはそれぞれ北都と西都のものだ。
「何故、三都の政府機関の方々がここに・・・・・・?」
「何故って、あたしたちも˝ファウスト˝のメンバーだからだよ? スタークから聞かなかった?」
「・・・え?」
政府機関の者であることを証明する西都のバッジとは不似合いなあどけない容姿の少女にあっけらかんと答えられ、腑抜けた声が出る。
そんなダイヤの様子を見て、今度は凛とした雰囲気の女性が口を動かした。
「何も不思議な事じゃない。政府の者が裏の顔を持っていたり他国と繋がりを持っていたりすることなどよくある話だ。現に私もこの国を変えるべくこうして東都や西都の者と手を組んだ訳だしな。・・・・・・君だってそのつもりでスタークの誘いに乗ったのだろう?」
各政府のお偉いさんがこのような形で暗躍していた事。そして淡々と語られる政府機関の黒い部分。流石に戸惑いを隠せない。
「黒澤家の後継ぎともなると流石に知らないという事はないと思うが・・・・・・一応自己紹介しておこう。東都政府首相補佐官の伊能だ」
「・・・北都政府の才賀京香だ。そしてこの喧しいのが―――」
「西都の最上紫苑だよー! よろしくダイヤちゃーん!」
「ぴぎゃっ・・・⁉」
人懐っこい笑みの中で紫苑の瞳が剣呑な光を宿し、背後に回ったと思った次の瞬間には胸に実った双丘を想いきり鷲掴みにされる。
「ななな何を・・・!」
「うーん・・・なんかイマイチ・・・」
いきなり人の胸を揉みつけたと思えば頂いた感想も失礼極まりない。躊躇なく初対面の人間にセクハラをかましてくるあたり先程決別した金髪のようなタイプなのだろう。
「まあでもサイズが全てじゃないからまだ――――――ぎゃむッ⁉」
「・・・スマン。早々に見苦しいところを見せた・・・」
脳天に手刀を落とされた紫苑が京香に引き摺られていく。何というかこう、政府の者だというからもっと堅苦しい様相を想像していたが、この感じでは普段身の回りでバカやっている連中と大差ない。
まあ、ダイヤとしてはこの方が馴染みやすくて有難いのだが。胸を揉まれたこと以外。
「・・・仲良くできそうなら次の話に移りたいが・・・他の者に聞かれると少々マズイ事なのでね。場所を移そうか」
「え、えぇ・・・」
奥の方に部屋があるという伊能に続いて再び暗い通路を進む。
ダイヤをこの実験場のような場所から遠ざけたがるような振る舞いが少し引っ掛かるが、ここは素直に従っておくとしよう。
「京香―、ダイヤちゃんに手ぇ出さないでよー! あたしが唾つけたんだからねー!」
「お前以外誰もそんな真似はしない。いいからさっさと行け」
去り際、この場でやる事があるという紫苑が一人残り、防護服に身を包んだガスマスクの作業員達に指示を飛ばしているのが遠目で伺えた。
この後少し遅れて聞こえたくぐもった声にデジャヴのようなものを覚えたが、この時は特に気に留めようとはしなかった。
「どういうことよスタークッ!!」
到着と同時にヒステリックが怒号を浴びせられたスタークがやれやれと肩を竦める。
そんな態度に既に燃え上がっていた炎がさらに過熱したのを感じ、小原鞠莉は怒りのままに二の句を継いだ。
「ダイヤに何したの・・・? 手は出すなって散々言ってきたわよね⁉」
鞠莉の前で、ダイヤは確かに姿を変えた。
スタークのものと同様の銃を使い、スタークと酷似した姿に。
そして彼女の所持していた˝ロストボトル˝が何よりも奴との関連を物語っている。
『・・・確かに黒澤ダイヤにトランスチームシステムを与えたのは俺だ。だがそれは黒澤自身が選んだ道だ。俺はその手助けをしたに過ぎない』
「手助け・・・・・・?」
『ああ。アイツはお前に対抗する術を求めてた。俺が力を与えたのも、アイツがそれを望んでいたからだ』
「自分は悪くないって言うの・・・・・・? ふざけないで!!」
悪びれる様子もなく飄々とそう言ってのけるスタークを強く睨む。
『ふざけるも何も、黒澤にああさせたのはお前が原因だろ。黒澤の気持ちを鑑みずにスクールアイドルを・・・アイツの妹とそのお友達を利用しようとしたのはどこのどいつだ?』
「元はといえばアンタが提案した事でしょ!」
『だが最終的にそれを飲んで実行に移したのはお前だ。黒澤の意見を聞こうともせず、自分の事だけを考えてなぁ・・・』
射殺すような視線を受けてなお、スタークは悪意を隠す気もなく笑う。
奴が狙ってこの状況を作り出した事は明白。だがその言葉通り自分の考えのみで動いたのは自分だという事は揺るがぬ事実だ。
『お前との約束は˝俺自身が直接お前のお友達に危害を及ぼさないこと˝だ。そのお友達が自分から俺に接触してくることは含まれないだろ? 約束は破ってない』
追撃のように言葉を重ね、歯嚙みする鞠莉に対し愉しそうに˝ダイヤに見限られた˝という事実を突きつけてくるスターク。
『・・・・・・まあ、黒澤に関しては、だけどな』
「え・・・?」
そして、その賢しさと邪悪さは、更なる衝撃をもって鞠莉に襲い掛かる事となる。
『んっ・・・・・・んん・・・!』
「かな・・・・・・ん・・・・・・?」
一転して無機質となったスタークの声音と共に奴の持つ液晶端末に映し出された、複数人の手によってガラス張りの箱へと押し込まれる青髪の少女。
『・・・生憎こっちにもあまり時間ってもんが残ってなくてね』
鞠莉が声を上げる一歩前を取るようにして、今の今まで悦していた者とは思えない冷淡な視線が刺さる。
「・・・何が目的・・・・・・?」
映像に映されているのは紛れもなく松浦果南。
スタークが彼女を拉致し、こうして人質のように扱っている事は、何かしらの要求を鞠莉に飲ませようとしているという事に他ならない。
『・・・お、察しの良い奴は嫌いじゃない。だがそれを黒澤に対しても出来ていたらまた何か変わったかもしれないのになぁ』
「うるさい! いいから要求を言いなさい・・・・・・!」
完全に約束を破ったコイツのいう事など聞きなくないが、そうしなかった場合果南に何をされるか分かったものではない。
もし果南に何かあれば、鞠莉の理想は根幹から崩れ去る事になる。
『身構えんなって、別に大した要求じゃない。俺は˝パネル˝さえ手に入ればそれでいいんだ』
「っ・・・・・・⁉」
奴の口から出たフレーズに目を向く。
「アンタ・・・何でそれ・・・・・・?」
『さぁな。それをお前が知る必要はない。・・・それで? どうするんだよ?』
決断を促しているのか、スタークが端末の音量を上げたことでよりはっきりと果南のくぐもった断片的な悲鳴が耳朶を打つ。
きっとスタークは、この時点で鞠莉に選択肢がなくなる事だって見越していたのだろう。
「・・・―――よ」
静かに動いた鞠莉の口から紡がれた答え。
それを聞き届け、満足そうにスタークが漏らした微笑の後―――、
「むっ・・・んんんんんんん――――――ッッッ!!!???」
液晶に映し出される映像をガス状の何かが覆い尽くし、同時に苦痛に満ちた悲鳴が上がる。
「え・・・・・・」
一瞬ポカンと何が起こったか分からないといったように硬直した鞠莉だったが、すぐに事態を理解しその元凶であるスタークへと怒声を向けた。
「なんで・・・・・・約束と違うじゃない!!」
『・・・クク・・・・・・ハハハハハハハハハハッ!!』
胸倉を掴まん勢いで迫ってきた鞠莉が可笑しくて仕方ないとでもいうように不気味な高笑いが上がる。
『・・・俺が今までお前に手を貸していたのは、そうする事で俺に利があったからだ。だがボトルの浄化も大方終わり、パネルの場所も分かった今、俺の目的は達成された』
乱雑に投げ捨てられた端末に変わり毒蛇の手に漆黒の短剣が握られ、その刀身が鈍く光った。
『・・・・・・お前はもう用済みなんだよ』
《デビルスチーム!!》