Build The Sunshine   作:がじゃまる

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戦兎「火星で発見されたパンドラボックスの引き起こしたスカイウォールの惨劇から十年、我が国は……って今更どうでもいいわこんな説明! つかどういう事だ前回の話! 俺の出番ねぇじゃねーか! 主役だぞ主役!!」

果南「いやそこなの!? 新キャラとか鞠莉の事とか触れるところいっぱいあるじゃん! ていうか私捕まっちゃったんだけど!?」

戦兎「そんなもんより俺の出番がなかった事の方が大事件だっつの。いいからさっさと˝俺が˝主役の22話いくぞ!」

果南「コイツ子供だ……」


二十二話 追憶のパスト

 

 

「・・・聖霊結界の損傷が魔力構造に変化を・・・・・・天界議決は隠蔽しているようだけど、この私の目を欺けるとでも・・・?」

 

「・・・せ、せーれーけっかい? てんかいぎけつ・・・?」

 

「かの約束の地に降臨した。堕天使ヨハネの魔眼が、その全てを見通すのです!」

 

「え? えぇ・・・?」

 

「リトルデーモンに授けよう・・・・・・この、堕天の力を!」

 

「り、りとるでーもん・・・・・・?」

 

「・・・おい、あんま先輩イジメんな中二病」

 

 津島善子の入部につき、この機会に仲を深めようとか言う千歌の提案で戦兎まで部室に召喚された放課後。

 現在美月が不幸な事にも善子に気に入られてしまい、先程からリトルデーモン(おもちゃ)として儀式に付き合わされている次第である。

 

「・・・オイ高海。他の連中はどうした」

 

「曜ちゃんは久しぶりに水泳部に顔出してて、梨子ちゃん達は用事があるーって」

 

「・・・逃げたなアイツ等・・・」

 

 ここにいない顔触れを思い起こし恨み言を言う。教師の戦兎ですら(無理矢理とは言え)顔は出してやったというのに。

 

「・・・てか! 先生もさっきからパソコン見てばっかりじゃん!」

 

「暇なお前等と違って俺はそれどころじゃないんだよ。顔出してやっただけ有難いと思いなさいよ」

 

「そんなに忙しいんですか?」

 

「ああそうだよ。別に逃げやしねーからお前は津島の御守でもしてろ」

 

 つっけんどんな態度で千歌を突き放し、パソコンと向き合っては何かする訳でもなくエンターキーをカチカチと連打する。

 嘘をついた訳ではない。実際仕事は溜まっているし忙しいのだ。

 

 ただ、それに取り掛かれるような状態ではないだけで。

 

 

――――――鞠莉さんは―――・・・・・・

 

 

 今朝津島善子をスマッシュに変えたあの蝙蝠の怪人が残した言葉。

 もしあの言葉が真実ならば、鞠莉は―――、

 

「チッ・・・・・・」

 

 ポケットに収めていたビルドフォンが振動するのを感じ、取り出して確認してみればスマッシュ反応を探知したことを知らせる警告の色が映る。

 

「・・・こんな時に・・・・・・嫌がらせか・・・?」

 

「あれ⁉ 今逃げないって⁉」

 

「急用だ!」

 

 ほぼ間違いなく蝙蝠とスタークは繋がっている。そう考えれば、この二度目のスマッシュ反応は今朝の一件を知ったスタークが戦兎を誘い出していると考えた方がいいだろう。

 一見罠だが、逆に考えれば鞠莉の事を問いただすチャンスでもある。

 

「・・・上等だ。乗ってやるよその誘い・・・!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《シノビのエンターテイナー! ニンニンコミック! イエェェイ!》

 

《火遁の術!》

 

『アアアァァァァッ・・・・・・!』

 

 忍者にコミック。新たに発見したベストマッチと、その成分を参考にして作り上げた˝四コマ忍法刀˝の放つ紅蓮の太刀が廃工場に出現したスマッシュに炸裂。

 バトル漫画の必殺技の如き威力の爆炎を直撃させられ、スマッシュはものの一撃で緑炎を吹き出して倒れ伏した。

 

『絶好調じゃねーか。ハザードレベルも順調に上がってるようで何より何より』

 

「スターク・・・」

 

 廃棄された資材の影から姿を現すブラッドスターク。やはりスマッシュは戦兎をおびき寄せる餌だったか。

 

『・・・その様子じゃ、俺がお前をおびき寄せた理由も大体分かってるみたいだな』

 

「ああ、こちとら聞きたい事がたっぷりあるんでな」

 

 刀を構え直し、奴の挙動に備え警戒心を張り巡らせる。

 

『おいおいそう身構えんなって。今日はお前とやり合いに来たんじゃない』

 

「・・・だったらコイツはどう説明するつもりだ」

 

 ビルドフォンに映し出された、目を閉じて横たわる果南と、その横でわざとらしくピースサインで自撮りをするスタークの姿。

 ここへと向かう途中に送られてきた差出人不明の写真だが、差出人がコイツである事は間違いない。

 

『なに、ちょっとレンタルさせてもらったから、返却しにな』

 

「・・・んんっ・・・・・・!」

 

「松浦・・・・・・!」

 

 廃材の裏から乱雑に放られ、果南が地面を転がる。

 紅潮した顔で悶えるように荒い呼吸を続ける様子からよからぬ事態を想像し、咄嗟に駆け寄る戦兎。

 

「せん・・・・・・、ぁんっ・・・・・・!」

 

「・・・⁉ まさか・・・」

 

 ひとまず抱き起そうとその腕に触れると、痛がるかのように身体をビクつかせた果南から短い悲鳴が漏れる。

 その反応を目にした戦兎の頭に浮かび上がったのは、先日そこにいるスタークから渡されたUSB内のデータにあった一文。

 

『ガスがまだ身体に馴染んでないみたいだな。むしろあの量を注入されてよくその程度で済んだもんだ』

 

「・・・! お前ガスを・・・⁉」

 

 スタークの言葉が戦兎の想像が現実で起きた事を物語る。

 体内のネビュラガスが安定せずに細胞を刺激し続ける事で起こる身体感覚の過剰反応。それはつまり果南が人体実験を施されたという事に他ならない。

 

「テメェ・・・・・・どういうつもりだ」

 

『こうでもしないと譲ろうとしない交渉相手だったもんでね。悪いが利用させてもらったよ』

 

「交渉相手だぁ・・・?」

 

『ああ。お前等もよく知ってるな』

 

 戦兎から視線を外し、スタークがおもむろにエンプティボトルを取り出す。

 その開閉口が向けられた先で地に伏せていたスマッシュの装甲が崩れてゆき、徐々に人の姿へと変わってゆく。

 

『・・・クク・・・・・・』

 

「っ・・・・・・⁉」

 

 成分が抜け落ち、完全に露わとなった金髪の少女の姿。

 彼女が小原鞠莉だと頭が理解するのにはそう時間はかからなかった。

 

『・・・もう、俺とコイツが繋がってる事には気付いてるんだろ?』

 

 ぐったりと地面に四肢を投げだす鞠莉を見降ろし、スタークが短く言う。

 

『・・・コイツは東都に戻ってくるしばらく前、お前が仮面ライダーとして暗躍している事を知った俺はお前にボトルを集めさせるために小原に接触した。・・・・・・俺と組めばお前の望みも果たされると言ってな』

 

 続き綴られたスタークと鞠莉の繋がりの始まり。

その言葉が、いつの日かの果南の訴えが事実であることを証明する。

 

『小原はすぐに俺と手を組んだよ。コイツにとっちゃ仮面ライダービルドやスクールアイドルは望みを叶えるための駒でしかなかった。・・・利用されてたんだよお前は』

 

 あれやこれやと模索し、殆ど確証に近いものを抱きながらも、それでも鞠莉の事を信じようとした。

 そんな戦兎の心境を見透かすように語られる真実は、残酷だった。

 

『まず最初に小原の理事長という立場を利用し、お前を浦の星の教師に就任させた。俺達の目の届く場所に置くためにな。元の担任を病院送りにしてお前を小原のクラスの担任にしたのもそのためだ。・・・・・・上手く進み過ぎてるとは思わなかったのか?』

 

「っ・・・」

 

 スタークと鞠莉の繋がりが立証されたという事は、必然的に戦兎の感じた違和感や疑念も的中する事となる。

 戦兎の就職も何もかも、奴等の手の回った事だったのだ。

 

「・・・だったら」

 

『ん・・・?』

 

「だったら・・・、どうして、鞠莉を・・・・・・」

 

 途切れ途切れのか細い声の主は、まだロクに動けないでいる果南。

 戦兎とはまた別の複雑な感情を鞠莉に対し抱いていた故か、自身がこんな状態にも関わらず、提携者である鞠莉をスマッシュに変えたスタークの行動を非難するような目を向けた。

 

『・・・・・・小原はここら一帯を狙ってる東都政府からここ・・・お前等で言う内浦を守りたかったそうなんだが・・・・・・この頃どうも我を通そうとしてきてな・・・・・・』

 

「・・・だから切り捨てたってのか」

 

『正解。まあ、その内どこかでこうするつもりではいたんだけどな』

 

 自分が接触するのは自分にとって利のある者だけで、価値がなくなれば切り捨てる・・・そう言わんばかりのスターク。

 手を組んだ鞠莉ですらも、奴にとっては利用する駒の一つにしか過ぎなかったという事。

 

『切り捨てるとは言っても、まだコイツから引き出すべき情報があった。だが今の状態じゃ口を割りそうもなかったんでな。・・・・・・だから俺は小原が絶対に手を出すなと念押ししていた黒澤ダイヤ。そしてお前、松浦果南を使って揺さぶる事にした』

 

「それで松浦にガスを・・・」

 

『ああ。おかげで楽に聞き出せたよ。これでもうコイツに用はない・・・・・・』

 

 言葉を途中で区切り、それを継ぐ前にスタークは鞠莉の傍へと歩み寄る。

 

「って訳にもいかなくてなァ。今のコイツは最高の実験体なんだよ」

 

「ッ・・・! やめろッ!」

 

《風遁の術!》

 

 鞠莉へと腕を伸びたスタークを巻き起こした旋風で牽制。

 その一瞬の隙の間に奴の眼前へと肉薄し、振り抜いた刀で腕を弾く。

 

『一度スマッシュになった人間にもう一度ガスを注入した前例はない・・・・・・お前だって気になるだろ?』

 

「そんな訳ねぇだろ!」

 

 忍者の成分。俊敏性と機動性を生かした動きで殺到と後退を繰り返し、奴を翻弄するように攻撃を連続する。

 

「科学で誰かが傷付くのが間違ってるだなんて御大層な事抜かすつもりはねぇ・・・・・・けど、胸糞悪いんだよ!」

 

《分身の術!》

 

《火遁の術!》

 

 交錯した瞬刻に四コマ忍法刀のトリガーを三回引き、忍者とコミックの両成分を合成させた分身を三人生成。計四人となったビルドが四方から火焔を放出せんとしたその刹那―――、

 

『・・・本当に、お前は変わったなァ・・・・・・』

 

 スタークの胸部にあるコブラのモジュールが妖しく光を放ち、歪んで映る。

 それが光による目の錯覚などではなく実際に隆起しているのだと気付いたその瞬間には、ゆうに奴の三、四倍はあろう体躯を持った大蛇が解き放たれていた。

 

「ぐっ・・・・・・!」

 

 体当たりで分身の内一体を消滅させた大蛇が勢いそのままに意識のない鞠莉へと向かっていく。

 スタークの狙いには気付くも時既に遅し。咢を開いた大蛇は鞠莉へと突っ込み、一瞬の内に彼女の身体を丸々飲み込んだ。

 

『・・・言っただろ。お前とやり合うつもりはないってな。チャオ』

 

「っ・・・、待てッ!」

 

 黒霧に包まれたスタークと大蛇の姿が消え、静寂だけが目の前に残される。

 

「クソッ・・・・・・」

 

 行き場を失った感情を地団駄に乗せて発散させる。

 追跡するにも手段もない。それに今は果南への処置が優先か。

 

《隠れ身の術!》

 

 してやられた。

 これまでこそスタークに一矢報いた事すらもなかったが、今回ばかりは更にその色が濃く映る。

 

 そんな残根を置き去るように、戦兎もまた発生させた霧の中に姿を消した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・なるほど」

 

 研究室のソファーベッドに横たえさせた果南から話を伺い、こうなった経緯を把握する。

 果南がスタークに昏倒、そして誘拐されたのは今日の早朝。つまりは戦兎が善子をスマッシュに変えた蝙蝠と接触していた時間帯だ。

 

 つまり今朝のスマッシュ騒動は戦兎を引き寄せるための揺動で、奴等の狙いは果南であったいう事になる。やはり蝙蝠がスタークと繋がっていると見たのは正しかったらしい。

 

「・・・ともかくこれでお前も人体実験の被験者の仲間入りか・・・・・・。人間じゃなくなった気分はどうだ?」

 

「・・・・・・それより、あの話どういう事? 鞠莉が私とダイヤには手を出すなって・・・・・・」

 

 戦兎のわざとらしい嫌味は歯牙にもかけず、果南は疑念と戸惑いが混じった瞳を向けてくる。

 鞠莉に対しよからぬ感情を抱いていた彼女だ。あんな事を明かされて戸惑わない訳がない。

 

 それにここまで巻き込まれているのだ。彼女にはその事を知る権利がある。

 

「・・・教えてもいいが条件がある。二年前、お前と鞠莉に何があったか教えろ」

 

 だが、戦兎にもまだ事の全容が把握できたわけではない。

 そのためには鞠莉の過去、二年前の一件を知る必要がある。

 

「・・・・・・鞠莉とスクールアイドルをやってた親友ってのは・・・、お前と黒澤だな?」

 

「っ・・・」

 

 明らかな動揺が戦兎の推測が正しいことを証明する。

 

「言う機会もなかったから黙ってたが、元々俺はそれなりに把握してた。鞠莉がスクールアイドルをやっていた事。それに二人の親友が伴っていた事。そして数か月後に突然やめて海外に行っちまったこともな」

 

 ビルドとして活動する前、鞠莉の楽しそうにスクールアイドル活動に勤しむ姿と、東都を出る直前の哀愁に満ちた姿は今でも鮮明に覚えている。

 最近までは鞠莉の心情を慮って自ら触れることはしなかったが、今は状況が違う。

 

「お前にとってもあんま触れたくねぇ過去なのは分かる。けど、知らない事には前に進めないんだ。・・・・・・だから頼む」

 

 戦兎があえて積極的に聞かなかったというのもあるが、果南はこれまで鞠莉と過去に何があったか放そうとしなかった。

 そんな果南でも、今の戦兎には折れたのか―――、

 

「・・・・・・そうだよ。二年前、私は鞠莉やダイヤと一緒にスクールアイドルを始めた」

 

 低い声音に乗り、語り始められる過去。

 

「あの時浦女には廃校になるかもって噂があって、ラブライブで優勝したスクールアイドルが自分の学校の廃校を救ったって話に影響された二人に誘われて始めたんだ・・・・・・」

 

 そのグループこそがAqours。今でこそ千歌達のグループの名前のようになっているが、あれは戦兎のうっかりのせいで借用されたに過ぎず、元は鞠莉達のグループの名前だった。

 

「・・・二人に誘われた時は全然興味もなかった・・・・・・けど、いろんなスクールアイドルを見て少しは憧れたし、何より二人とああやって目標に向かって頑張るのが楽しかった・・・・・・・・・・・・・・・なのに、鞠莉は何も言わないでスクールアイドルどころか学校も辞めて海外に行った」

 

 語る果南の拳に力が籠る。

 廃校に瀕していた浦女に、果南達に何も言わずにスクールアイドルを辞めた鞠莉。初耳な事実こそあるが、まだ足りない。

 

 あと一押し、˝蝙蝠の証言˝を裏付ける何かが―――、

 

「・・・小原家が浦女を買収して廃校を回避したって話を聞いたのはその後・・・・・・鞠莉は学校さえ救えれば他はどうでもよかったんだ・・・!」

 

「買収・・・・・・」

 

 なるほど。いくら小原家の娘とは言え齢十八の少女が理事長に就任出来たことはいささか疑問だったが、親族経営という穴があったか。

 そんな納得と共に―――合点がいった。

 

「・・・なるほどな」

 

 蝙蝠によって明かされた事実に、果南の語った過去。

 

 そこから導き出されることは―――、

 

「・・・まずお前の質問に対する答えだが・・・、鞠莉がお前等に手を出すなっつってたのは、アイツが他の何よりお前等を大事に思ってたからだ」

 

「え・・・?」

 

 予想外。果南の顔はそう語っている。

 まあそうなるだろう。なにせ果南は鞠莉に利用され、気持ちを踏み躙られたと思っていたのだから。

 

「お前等とスクールアイドルを始めた日、アイツ馬鹿みてーにはしゃぎながら俺に報告してきたよ。そんな奴が進んでお前等の気持ちを蔑ろにすると思うか?」

 

「でも・・・、だったらなんで・・・」

 

 果南達の事を大事に思っていても、実際にとった行動はその気持ちとは矛盾するようなもの。

 

 一見繋がらない点と点だが・・・、蝙蝠の供述がそれを結び付ける。

 

「・・・お前、スカイウォールの惨劇で起きた事知ってるか?」

 

「・・・日本を三つに分断して土壌とか地形を変えた・・・、じゃないの?」

 

「ああそうだ。一般に知れ渡ってる情報だとな」

 

 唐突な問いに訝し気ながらも答えた果南に対しそう言う。

 スカイウォールの惨劇は日本を三国に分断した。これは紛れもない事実だが、あの事件による弊害はこれだけじゃない。

 

「・・・こんな事実が知れ渡ったら各政府への支持がガタつくから一般に対しては公開されてないんだが・・・・・・スカイウォールの惨劇が起きたのは、火星から帰還した探査機の成果を発表するセレモニー中にパンドラボックスが作動したからってのは知ってるな」

 

「う、うん・・・。授業でやった・・・」

 

「その時セレモニーに出席してた連中・・・つまり今の三都の首脳陣だが、奴等全員パンドラボックスの光を浴びておかしくなってやがる」

 

「ッ・・・⁉」

 

 目を剥く果南の反応は小原家の情報網伝いでこの事を知った時の戦兎と同じだった。

 それもそうだ。よもや一国を預かる首相が謎の外的要因で狂ってしまった人物だとは夢にも思うまい。

 

「パンドラボックスの光には人の好戦的な気質を剥き出しにし、欲望のままに行動するようにさせちまう作用がある。どんなに他人思いで優しかった奴だろうと、アレを浴びりゃ強情で独善的な自己中に早変わりだ・・・・・・あとはもう言わなくても分かるだろ?」

 

「・・・じゃあ、鞠莉は・・・・・・」

 

「そう。十年前、鞠莉もあの場所にいた」

 

 資金援助をしていた事から来賓として招かれた父親に鞠莉もついてゆき、あの事件が起こった事で鞠莉もパンドラボックスの光を浴びた・・・と、蝙蝠はそう語った。

 その結果鞠莉の人格が歪み、今の状態になってしまったと。

 

「でも・・・十年前なんてまだ全然・・・・・・」

 

「まだ幼かったのが幸いしたんだろうな・・・けど、十年も経ちゃ否が応でも大人に近づく」

 

 他の大人と違い当時の鞠莉は十歳にも満たない子供。まだ欲望などと言うものをはっきり自覚しておらず、それが故か光の影響は殆どなかったのだろう。

 だが、成長する度に大きくなっていった光の影響が鞠莉を蝕み、暴走させた。

 

「・・・お前が根に持ってる突然学校を辞めたってのは実際のところアイツの意志じゃなくて親父さんがそうするように手を回してたからだ。無理矢理な」

 

 小原家の一人娘である鞠莉はグループの命運を背負っているといっても過言ではないし、将来のためにより良い教育を受けさせたいと思うのは当然の思考だ。彼女同様光の影響を受けた父親なら迷わず断行するはず。

 

「・・・小原家が浦女を買収した理由ってのはいまいちピンとこねーが、こっちは鞠莉の意志が関わってると見て間違いない。そんだけの事をする動機がアイツにはあったって事だし、恐らくそれにゃお前等が関わっている」

 

「・・・・・・」

 

 学校自体に思い入れがあったかもとは言っても、当時はまだ小原家は浦女を買収していないし、鞠莉もまだ入学したばかりの一年生。そこまでの想いが芽生えるとは思えない。

 何より鞠莉がスタークに言ったという「果南とダイヤに手を出すな」という言葉がそれを確信させる。

 

「・・・別にお前等が悪いだなんて事はねぇし、鞠莉の真意が分からん以上お前の怒りが筋違いだとも言い切れない。ただ―――」

 

「・・・・・・」

 

 言い切る前に果南が無言でソファーベッドから立ち上がり、まだ体内でガスが安定し切っていない中ふらふらと研究室の外へと向かおうとする。

 

「お、おい・・・」

 

「・・・・・・ちょっと、一人にさせて・・・」

 

 元々鞠莉を嫌いになれていなかった果南だ。そんな彼女が今の話を聞きどう思ったか。

 それが分かっているからこそ戦兎も引き留めきれず、黙って歩き去るのを見届ける他なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『・・・スマッシュ化するギリギリ・・・、人間の姿を保っていられる限界の数値までガスに浸けて放置するなんざ、相変わらずいい趣味してるなァ・・・』

 

「どうせやるならこっちの方が楽しいじゃーん。それに、こっちの方がスタークには好都合でしょ?」

 

『クク・・・・・・まあな・・・』

 

 スタークが視線を流し、目元のグラスがガラス張りの箱の中の少女へと向く。

 ぐったりと弛緩した全身を液体状のネビュラガスに浸し、半開きの光のない目で虚空を仰ぐ彼女から生気は感じられず、呼吸も虫のそれが如く小さい。

 

「・・・ちょっと弱らせすぎちゃったかな・・・? スマッシュ化する前に死んじゃったらごめんね~」

 

「・・・んぁ、ああぁ・・・⁉ ああああああああああぁぁッッ・・・!!??」

 

 言葉に反する嬉々とした声音の後、ガラスケース満たしたガスの中で断末魔を思わせる悲鳴が反響する。

 紅潮した顔で身を震わせる者、心底愉快そうに笑いを漏らす者。数刻の後にそれらの臨む中でケースが弾け、少女だったスマッシュが炎を噴き上げた。

 

 

 




鞠莉さん本人やダイヤさんのセリフ等で薄々匂わせていましたがそうです。この世界線において鞠莉さんはパンドラボックスの光の影響を受けています。そのせいで自分自身歯止めが利かない状況になってる訳ですね

最後に登場したスマッシュはお察しの方もいらっしゃるでしょうがタンク君からラビット君を寝取ったボトルの元になったアイツです

最後に余談ですがTwitterの方で創作垢作ったので宜しければ
活動報告欄に乗っけてあります
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