果南「え?」
戦兎「一つ!パンドラボックスの光を浴びて黒澤までもが豹変! 二つ!その黒澤がボトルを狙って俺達を襲撃! 三つ!松浦を人質に取られボトルを全て奪われてしまう!」
果南「え?え?」
謎の声「カウントザボトール! 現在ビルドが使えるボトルは―――?」エニシングゴーズソーノコーコーロガー
果南「いやオーズじゃんこれぇ!」
こんな茶番ですが遂にアレが登場です
「ラビット・・・ターンク・・・・・・ベストマッーチ!」
パネルに填められた二本のボトルにより浮かび上がった二文字が結合する。
「タカと・・・ガトリングも~・・・・・・ベストマァッーチ!」
一本一本填められたボトルがパネルを彩っていくのを紅潮した様子で眺める少女に冷ややかな視線を注ぎつつ、残りの三人が淡々と言葉を交わす。
その中心である紅身のコブラは、からかい半分の意を込めて黒澤ダイヤへと目元のグラスを向けた。
『しっかしまあ、今回は随分とあっさり奪えてこれたもんだな』
「・・・吹っ切れましたから」
「ねー? やっぱりやって正解だったでしょー?」
「それは結果論だろ。私としては看過できん」
思い思いに言葉を紡ぐ仲間の喧騒に囲まれ鬱陶しそうに溜息をつくダイヤ。
別に馴れ合いをするためにここにいる訳じゃない。己が悲願のためだ。前よりも明瞭になった思考がそう告げる。
「・・・・・・あり?」
やるべき事は果たしたのだし長居する理由はない。臨時休校中にあまり家を空けすぎるのも怪しまれるだろう。
そう思いこの場を去ろうとした瞬間、背後から紫苑の声が耳朶に触れた。
「・・・・・・一本足りない・・・」
「・・・・・・まあ、痣にはなっちまうよな」
痛々しく青紫が広がる果南の腹のそれは、ナイトローグ―――黒澤ダイヤによるもの。
打撲の痕自体は数週間もすれば消えるだろうが、問題は彼女の心の傷だろう。幼い頃からの親友の一人が死に、更にもう一人がその原因となった組織に加担としていたとなれば果南の苦しみは想像するに余りあった。
「・・・大丈夫か?」
流石の戦兎も血が通っていない訳ではない。心配から声をかけるも、果南は手当てのために露出させた胸部を隠そうともせずに虚ろな目で惚けている。
「おい」
「・・・ぅあ・・・、ああ、うん。大丈夫・・・」
二度目でようやく反応し衣服を羽織るも、やはり空虚な瞳はそのまま。
整理がついていない・・・いや、整理どころではないのだろう。
「・・・・・・鞠莉が言ってたの、この事なんだね」
ここは一旦一人にさせておいた方がいいだろうと判断し、とりあえず自宅まで送ろうと腰を上げかけた戦兎に果南がそう零す。
鞠莉の遺言・・・ダイヤを助けて欲しいというのは、間違いなくこの事だろう。
「ダイヤは鞠莉が死んじゃうかもって分かっててむこうに・・・?」
「いや、アイツが鞠莉の件を知ったのは昨日だ。・・・・・・んで死ぬほど驚いてたし戸惑ってたよ」
昨日のダイヤは鞠莉の死どころか、浦女で行われたあの騒動の決行すらも知らない様子だった。
事の真相を知った際の狼狽も相当なものだったが・・・今日の彼女はその様子が一変。まるで人が変わったかのようで―――、
「・・・多分だがな、黒澤もパンドラボックスの光の影響を受けたんだ。それも昨日、学校での騒動の後にな」
「それじゃあ・・・」
「ああ。少なくとも黒澤の豹変っぷりはそういう事だろうよ」
少しだけ果南の表情に希望が戻ったのが分かった。気休めにでもなればと思っていったが想像以上の効果で何よりだ。
「・・・けど、アイツが自分の意志でファウストに入ったって事は事実だからな。そこは忘れんなよ」
「・・・うん」
まあ、着目すべきなのはそこだけではないのだが。
最大の問題は、スカイウォールの惨劇以降行方不明になっていたパンドラボックスの所在がファウスト・・・よりによってあのスタークの管理下にあるという事。
あれだけの兵器性を秘めた物質が奴等の手元にあるのは非常にマズイ。
「・・・まあとりあえず今はボトルの奪還が最優先だな。変身できなきゃ何も出来ん」
「・・・ごめん・・・私のせいで」
「悔やんでる暇があったらお前が持ってるボトル寄越せ。今それしかないんだよ」
「あぁ、うん・・・」
くいくいと手招きで要求すれば。果南がポケットに忍ばせていたフルボトルを手渡してくれる。やはり肌身離さず持っていたか。
「・・・一本で変身できるの?」
「うんにゃ。一本じゃ成分が足りん。だからボトルの成分を二本分にするアイテムを作る」
あっけらかんと話す戦兎に果南は目を丸くしているが、別にやってやれない事はない。むしろ作る理由がなかっただけで理論上の設計図は出来ていたのだ。
ボトル一本より二本の方がエネルギー運搬の効率がいいし、能力のバリエーションも増える。だからこそお蔵入りとなっていたが・・・まさかこんなところで役に立つ事になるとは。
「ぱっぱと作るぞ・・・・・・鞠莉との約束も果たさなきゃだしな」
「・・・・・・! うん・・・!」
パソコンを起動して設計図を表示した戦兎に続き、数拍遅れて言葉の意味を理解した果南がその傍による。
知り得ている故の苦悩を共有できるからこその、妙な連帯感が二人を包んでいた。
二日が経ち、政府の調査機関が手を引いた浦の星女学院には異様な緊張感が舞い降りていた。
「・・・なんか、大変な事になっちゃったね」
「・・・仕方ないよ。あんな事まで起こったら・・・・・・」
手を引いたのはあくまでも調査機関だけ。もう既に何度もスマッシュやそれを率いる集団の襲撃を受けている浦女には国の重要施設並みの警護ガーディアンや兵士による監視が設置されていた。
学校内に内通者がいるかもしれない。首相補佐官のその一声でこの体制を敷く事となったらしい。
「・・・そういえば千歌ちゃん、今日部活は出来そう?」
「うん! 私はもう大丈夫だし、こんな時だからこそ私達が盛り上げないと!」
まだ放課後となって間もないが校舎に残っている生徒はほとんどいない。監視がある環境の心地悪さに部活動のある生徒ですらそそくさと帰宅してしまったのだ。
残っているのはいい意味でも悪い意味でも台風の目と呼ばれているスクールアイドル部くらいだ。
「三人は先に部室行っててよ。私先生呼んでくる!」
「あ・・・ちょっと待って。今日は先生呼ばない方がいいかも・・・」
台風の原動力の八割を担っている千歌が職員室へと足を向けるが、駆け出す前にそれを美月が制止する。
「なんか凄く疲れてるみたいだったし、今日は休ませてあげた方が・・・・・・」
「あー・・・確かにいつもに増してクマ凄かったかも・・・・・・」
「ふふ・・・また研究、かな?」
「・・・案外部活から逃げるためだったりしてね」
「めんどくさがりだもんねー」
何故か始まった三海戦兎の悪口大会はさておき、それなら仕方ないかと千歌が三人の輪へと戻り、再び談笑を始めて部室へと向かう。
「・・・そういえばさ」
(主に戦兎の悪口で)会話も弾み、そろそろ部室に差し掛かろうとしたその時。ふと思い出したように曜が別の話題を切り出す。
「・・・なんかさ、ちょっと変じゃなかった? 三海先生とダイヤさん」
「そう? いつも通り仲悪そうに見えたけど・・・・・・」
「いつも通りがそれなのがちょっと悲しいなぁ・・・。いやさ、今日はなんかピリピリしてるって言うか・・・・・・」
状況も相まり、どことなく不安を煽る形で会話は止む。
その不安が別の場所で現実となっていることを、彼女達はまだ知らない。
―――――終わりにしよう
あの時口にした言葉がずっと心に靄をかけていた。
この靄の正体はきっと後悔。いつまでも離れる事のなかったそれは、今になって大きな痛みとなって私を襲った。
もっと別な言葉が言えたのではないだろうか。もっと別な選択肢があったのではないのだろうか。
そうすれば鞠莉、ダイヤとの関係も、ずっとあの頃のまま―――、
「・・・はぁ・・・」
一仕事を終え、自室の椅子に腰かける共に溜息。すぐ傍に置いたボトルを胸元に寄せては思いを馳せる。
「・・・・・・こんなことしてても仕方ないよね」
靄を振り払うように腰を上げる。
そうだ。うじうじしていたところでどうにもならない。また鞠莉と同じ結果を導くだけだ。
もうあんな気持ちは味わいたくない。ダイヤを救いたい。
これは紛れもない自分の気持ちだから。もう、それから目を逸らしたくない。
「・・・・・・そっちはどうなの? ダイヤ」
「・・・気付いてらしたのですね」
肌に触れる冷ややかな潮風の吹く方、窓枠から逆さになって果南を伺う蝙蝠。その覆面の奥に隠れた彼女をしっかりと見つめる。
「・・・わたくしがここに来た意味・・・・・・理解しているでしょう? それとももっと痛い目を見なければ理解出来ませんか?」
「・・・それでもいいよ。ダイヤと話せるなら」
「っ・・・!」
時間を取りたくないのか、静かな口調で返す果南への苛立ちを隠すことなく蝙蝠が窓枠を超えて部屋へと侵入。
その黒い影が、視界命一杯に広がった。
「・・・二日連続でお友達人質に取るなんざどういう了見だ黒澤。お母さんそんな子に育てた覚えはありませんよ!」
「・・・・・・そもそもあなたが母親だった記憶がないのですが」
目まぐるしく流れてゆく景色が固定されたと思えば、そこは鞠莉の命が失われ、ダイヤとの関係にも亀裂が入ったあの砂浜。
そこに一人立つ戦兎を視界に定めると、ナイトローグは果南を拘束する腕に力を籠めては彼へと歩み寄った。
「・・・やってくれましたわね。早く最後の一本を渡してください」
「早速それかよ・・・・・・お前もうちょっと余裕持って生きようぜ?」
「ふざけるのも大概にしなさい! 貴方も状況が理解出来ないのですか?」
改めての意思表示か、スチームブレードを果南に突き付けボトルを要求するナイトローグ。
その様子は如何にも余裕がなく、思い通りに進まない物事に苛立ちを覚えているように映った。
「そうカッカすんなって。確認せず持っていったのはお前だし、そもそも俺は所持してる分のボトルはちゃんと持ってきてたしな」
「・・・だったらどうして一本足りないということが起きるのですか」
「だから言ったろ? ・・・・・・˝俺の所持してる分˝って」
「なにを―――ッ・・・!?」
戦兎に気を取られている隙を突くように青いボトルが二者間の間を舞う。
そのボトルが自身の人質に取っている果南から投げ渡されたものだと気が付いたナイトローグは、その苛立ちを隠そうともせずに深々と息をついた。
「・・・果南さんが持っていたのですね・・・」
「当たり前だろ。お前は親友の形見をわざわざ他人に預けるのか?」
その言葉が静寂を呼び込み、音の空白を埋めるように波の音が自己主張を増す。
「・・・なるほど、それが鞠莉さんの・・・・・・」
一拍置いた後に答えたナイトローグの声音は果南が戦兎から聞いていたような戸惑いを含むものではなく、むしろどこか達観したような含みを持つものだった。
「こいつはスマッシュにされた鞠莉から採取した成分・・・・・・言っちまえば鞠莉の魂みたいなもんだ。それがあんな連中に利用されていいのかお前」
「・・・知った事ではありません。それに鞠莉さんの死はあの人が我を突きそうとした結果ですわ・・・・・・死すべくして死んだのですよ」
「・・・・・・お前、いくらパンドラボックスの影響とは言え限度があるだろ」
感情に呼びかけるような声も届かず、むしろ親友の情など最初からなかったかのような口ぶりのナイトローグに戦兎が明らかな怒りを見せる。
果南の知る限り、戦兎が直接自分に関係のないことで怒りを見せるのは・・・初めてだった。
「・・・話しても無駄だな。ぱっぱとそのひん曲がった性格矯正して今の言葉死ぬほど後悔させてやる」
「今の貴方に何が出来るのですか? 変身も出来ず、おまけに人質だって―――」
《○△□―――ッ!!》
ナイトローグの言葉を遮る形で機械的な咆哮が上がり、遅れて放出された青い炎が彼女へと襲い掛かる。
ダメージを与えるほどの火力こそないが、それは果南が脱出する隙を作るには十分だった。
「ロボット・・・・・・?」
「天才舐めんなよ。これくらい朝飯前だっての」
口元から炎を溢しながら戦兎の下へと飛翔する一体の龍。
クローズドラゴン。見ての通りドラゴン型の自立行動メカにして、同時にボトルの力を増幅させる力を持ったデバイスだ。
《ウェイクアップ!》
モージュールモードとなったクローズドラゴンに果南の手渡したボトルが装填され、更にそれをビルドドライバーへと差し込む戦兎。
戦兎曰く、クローズドラゴンは元々の理論上の設計図にあったボトルの成分を二本分にする力をあのボトルだけに特化させたものだという。
だからこそその力も二倍以上になるらしいのだが―――、
「ぐッ・・・、・・・ううぅぅぅ・・・あ・・・ッ!」
そのパワーが大きすぎる故か、レバーを回す度に発生する紫電が戦兎の身体を駆け巡る。
しかもそのエネルギーは仮面ライダーとしての装甲が形成される度に強さを増してゆき、それに比例し戦兎に掛かる負担も倍増してゆく。
《Are you Ready?》
「変・・・身・・・・・・!」
それでも何とか装甲を完成させるまでに至り、レバーを回す手を止めると共に変身を宣言。
だがこの時点での蓄積ダメージが設計時のそれを超えていたのか、合着と同時に発生した一際大きい紫電が戦兎の身体を打ち―――、
「がああああぁぁ・・・!? ぅぁ・・・・・・!」
仮面ライダーへの変身が完了する前に装甲が掻き消え、その直後に戦兎が崩れ落ちる。
「ちょ・・・大丈夫?」
「・・・何をしてくるのかと思いましたが・・・・・・とんだ茶番でしたわね」
地に伏せる戦兎に近づく者は二人。変身の失敗を見て駆け寄った果南と、変わらずボトルを奪おうとするナイトローグ。
咄嗟に果南がボトルを庇うように前へ出るが、ナイトローグはそんなもの障害でもないというようにその足を止めない。
「・・・・・・果南さん。それも貴方の言っていた˝友達˝の形なのですか?」
その傍らに彼女が口にした事に少しホッとする。聞いてはいてくれたようだ。
ここに連れて来られるまでに話した今の果南の気持ち・・・ダイヤへの率直な想いを。
「・・・人が身命を賭してでもやり遂げようとすることに背中を押すのが友達というものだと思っていましたが」
「・・・・・・間違ってたらぶん殴ってでも止めるのも友達だよ・・・・・・もうあんな後悔はしたくないし、させたくない」
「あくまでもわたくしのためと言い張るのですね・・・・・・片腹痛いですわ」
それでも彼女は止まろうとしなかった。・・・いや、この程度で止まってはくれない事は分かっていた。
この想いを口に出す事・・・それ自体が大事だから。
「貴方のそれはただの傲慢・・・現実を受け入れようとしていないだけです」
「・・・ダイヤがそう思うなら、きっとそうなんだろうね。・・・けど、目を逸らして逃げ続けるよりずっとマシだよ」
そう。これはただのワガママ。
けれどこれを突きとおす事がダイヤを元に戻す事へ繋がる。そう信じているから。
「だから・・・・・・ぶん殴ってでも止めるよ」
「やれるものならやってみなさいな。昔ならいざ知れず、今の貴方にわたくしを止める力など―――」
「あるよ」
勝ち誇った様子のナイトローグにキッパリと答える。
そんな果南が、次の瞬間に手を伸ばしたのは―――――、
「ごめん先生、これ貸して」
「は・・・? や、ちょおま・・・!」
足元の戦兎から引っ手繰ったビルドドライバーを彼の見様見真似で腰に巻き付ける。
そして果南の意志に答応えるように飛来した龍をその手に掴み、真っ直ぐにナイトローグを見据えた。
「・・・待て松浦! お前のハザードレベルじゃまだ無理だ!」
「難しいことはよく分かんないけど・・・無理なら出来るようにすればいい」
《ウェイクアップ!》
無理矢理な理論で戦兎を黙らせた後、待機状態へと移行したクローズドラゴンへ鞠莉の形見―――ドラゴンフルボトルを叩き入れる。
途端にそれらを掴む腕から電撃を浴びたかのような痛みが全身へと広がってゆくが、そんな事はお構いなしにクローズドラゴンをビルドドライバーへと装填。
《クローズドラゴン!》
「あうぅ・・・! くううぅ・・・!」
クローズドラゴンを介したドラゴンボトルの成分がビルドドライバーへと充填された途端に、ネビュラガスを投与された時とは比較にならない程の痛みが全身を駆け巡った。
一瞬でも気を抜けば意識を持っていかれそうな、体感したことのない激しい痛み。
「ぁああ・・・! うあああぁぁぁ・・・・・・ッ!!
「松浦ッ!!」
亀裂のような紋様が更なる痛みを伴って頬を侵食してゆくが、それでもレバーを回す手を止めることはしなかった。
痛い。確かに痛い。今すぐにでも逃れたいと思ってしまう程に。
けどこの痛みから逃げれば、きっと別の痛みが襲ってくるはずだ。それはきっと、あの時と同じ。
鞠莉を失った痛みは、もっと、もっと痛かった。
それに比べればこの程度・・・・・・問題にもなりはしない。
《Are you Ready?》
問われる覚悟に深く息を吸い込む。
これに応えればこの先何が待ち受けることとなるのか。さらに辛い事が起こるかもしれない。また別の大切なものを失うかもしれない。そんな雑多な思考が脳内を駆け巡る。
けれどそんな事はどうでもいいと、ハッキリと言える。
今はダイヤを止めることが出来ればそれでいい。そう思えた。
――――――『一緒に行こう・・・果南!』
この声が、背中を押してくれる限り。
「行こう・・・・・・・・・・・・鞠莉!!」
親友の遺した力がまるで抱きしめるかのように果南を包み、その姿を龍へと変身させる。
《Wake up burning! Get CROSS-Z DRAGON! Yeah!》
「嘘だろ・・・」
理論での限界をぶち破り、目の前に現れた新たな˝仮面ライダー˝に驚嘆の声を漏らす戦兎。
素体はビルドのような螺旋状のボディでありつつ、その上から金色のファイヤーシンボルが刻まれた装甲が重ねられ、頭部の意匠にもドラゴンボトルの成分が表れている。
蒼龍のライダー――――仮面ライダークローズ。
「あああぁぁぁぁ!!」
ダイヤを想う気持ちが特定の閾値を超え、ライダーシステムに適応するまでにハザードレベルを引き上げた・・・そうとしか考えられない。
そんな奇跡とも呼べる初変身の余韻を噛み締める事もなく、直後にクローズがナイトローグへの突撃を開始。
「・・・全く、貴方は・・・・・・」
驚いたような仕草を見せつつも、それはそれとして割り切ったらしいナイトローグが迎撃のために腰を低く構える。
マズイ。いくら変身できたとはいえ果南は戦闘に関しては全くの素人。元々武術の心得がある上にネビュラガスでの強化、更に光の影響で自我のタガが外れたダイヤに勝てる保証などどこにもありはしない。
むしろ更に状況を悪くする可能性だって―――、
「っ・・・ああぁぁ・・・・・・!?」
「・・・・・・は?」
十数秒の攻防の後、突き上げられたクローズのアッパーカットを受けたナイトローグが宙を舞う。
「っ・・・、どうなって・・・?」
「う・・・らぁぁぁッ!」
「ぐっ・・・うぅぅ・・・・・・!」
始めて余裕を崩したナイトローグに更なる攻撃が加わり、蒼炎を纏った右ストレートは両腕のガードごとその黒い身体を後方へと殴り飛ばす。
戦兎の予想を反し、今の戦況は圧倒的にクローズの優勢だった。
「・・・はは、冗談だろアイツ・・・・・・」
思わず笑いが漏れた。
多かれ少なかれ、戦いに身を置く者にはそれぞれの型・・・所謂戦闘スタイルがある。
例えば戦兎はビルドとしての経験が培った攻守のバランスに優れたスタイルで、ダイヤは日本武術を基礎にした攻防一体のスタイル。
なら果南のそれは何なのか。彼女は戦闘の経験もなければ武道の心得もない。ナイトローグへの攻撃も出鱈目に打ち込んでいるだけのように見える・・・・・・だがそれがこの状況を生み出しているのだ。
「だああぁぁ!」
「がはっ・・・!」
型がある者の戦闘はある程度パターンがあり、それを見切れば行動の予測がつくのだが果南にはそれがない。出鱈目に粗削りな、かつ予測不可能な攻撃を繰り出しているだけ。
そしてその無茶苦茶な日本武術を基礎とし、相手の攻撃を利用したカウンターを得意とするダイヤが最も苦手とする相手だ。
「っ・・・、っ・・・・・・、貴方も馬鹿ですね・・・・・・もう戻れなくなりますよ・・・」
「それでもいいよ。・・・今のダイヤとはこうでもしないと分かり合えそうにないし」
加え、二本分となったドラゴンボトルの圧倒的な火力。
それが元々高い果南の身体能力に相乗し、荒波のような攻撃に乗ることでナイトローグを圧倒するまでに至っているのだ。
「分かり合う・・・? まだ寝惚けた事を言うのですね・・・・・・わたくしは―――」
「今すぐに分かってくれなくてもいいよ。でもいつか絶対、本当のダイヤを取り戻すから」
《Ready Go!》
回されたレバーによりボトルの成分が更に活性化。放出されたエネルギーが龍となりクローズの周囲を舞う。
《ドラゴニックフィニッシュ!!》
背後に回った龍の吐き出した蒼炎を右足に纏い、勢いそのままに放たれたボレーキック。
それはナイトローグの防御をいとも簡単に打ち砕き、盛大な爆発を伴ってその身を吹き飛ばした。
「ぁ・・・・・・ぐぅ・・・・・・」
煙を上げながら地面を転がったナイトローグの装甲が霧散し、ダイヤの顔が露わになる。
その様子を確認し、何か声でもかけるのか果南もボトルを引き抜き―――、
「っ・・・・・・」
「松浦・・・!」
クローズの装甲が掻き消えた途端に完全に脱力した果南がふらりと身体を傾け、咄嗟に起き上がった戦兎が彼女を抱きとめる。
急激にハザードレベルを上げて変身にまで至った反動か、既に立っている事すらままならないようだった。
「まだです・・・わたくしは・・・・・・」
『・・・っと、そいつぁルール違反じゃないのか? お前は勝負に負けた』
ボトルの奪取を諦めようとしないダイヤを制する四人目の声。
音もなく現れたスタークは戦兎達とダイヤの間に割って入ると、果南の検討を賞するように含みのある拍手を彼女に送った。
『俺が戦ってそのボトルを奪っていってもいいが・・・・・・ここは松浦の成長を祝って退いてやるとするよ。コイツは賞品だ』
「っ・・・!? 貴方何を・・・」
「お前は黙ってろ」
ダイヤから奪った二本のボトルをこちらへと投げ渡してくるスターク。そのうちの一本は元々戦兎の所持していたロックボトルであることに眉を寄せた。
「・・・何のつもりだ? ボトルを集めてパンドラボックスを開くんじゃなかったのか?」
ボトルを要求してきた際にダイヤが言った奴等の目的をそのまま口にする。
二本とは言えパンドラボックスを開くために必要なボトルを返すのは目的から遠のくのみでなく、変身できない戦兎に戦力を再度与える事になる。
一体、この行為に何の意味があるのか・・・。
『・・・なぁに。俺ぁただ、お前等の成長が楽しみなだけだよ。それに比べりゃパンドラボックスなんざ些末な事だ。チャオ』
そう言い残し、黒霧に紛れダイヤごと消えてゆくスターク。
まさか松浦が仮面ライダーになるのも計算の上・・・いや、それが狙いだったとでもいうのだろうか。
(いや・・・まさかな・・・・・・)
脳裏を過った不穏な考えを振り払い、果南を抱えたまま元来た道を進む。
スタークの狙いがどうであれ、今やるべきは彼女の介抱と労い。それが最適解であることは間違いなかった。
はい。遂に2号ライダーのクローズ参戦です。しかも変身者は松浦さんという…()
ぱっとした思い付きでしたがやっと変身させられましたね……ちなみに思い立った切っ掛けはユニット対抗戦キービジュアルの果南があまりにも万丈感を醸し出してたからです()
こんな感じでパッとした思い付きのために今後もいろいろ犠牲にしていきますがお付き合いして頂けるとうれしいでせう…
それでは次回で