Build The Sunshine   作:がじゃまる

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半年更新を放置しておいてしれっと帰ってくる俺、参上
言い訳はしません。シンプルに忘れてました()


二十九話 二面性エクスペディション

 

「……で、あれから身体の方に異常はねぇのか?」

 

「どこか痛むとかそういうのはないよ、大丈夫」

 

 授業に用いる教材を運ぶ名目で呼び出した果南と隣歩く。

 急激にハザードレベルを上昇に加え仮面ライダーへの変身。多少なり身体への影響は出ているものと思っていたが、当の果南は至ってピンピンしている。

 

「体質もあるんだろうが鍛えてるとこうも違うか。流石水ゴリラってとこだな」

 

「ちょっと、そのあだ名誰から聞いたの? ねえ?」

 

 本人の手前軽く流したが、果南の変化は異常だ。

 常人なら肉体すら残らない量のネビュラガスを投与されたのにも関わらず一日と待たずに適応し、その上数日で仮面ライダーへの変身が可能になる3.0までハザードレベルを上昇させた。

 

 科学的に考えて人間の身体が耐えられる成長速度と負荷じゃない。確実に果南には何かがある。

 

「…ま、それは一旦置いとくとして、問題はボトルの方だな」

 

 懐を弄り、先日スタークから投げ渡された二本のボトルを手の中で転がす。

 元々所持していたロックボトルに、恐らくダイヤが持っていたものと思われるダイヤモンドボトル。現状戦兎の所持する唯一の戦力……なのだが。

 

「あの野郎、ご丁寧に無機物のボトルだけ返却しやがるとはいい趣味してんな…」

 

「それじゃ変身できないの? 一応二本あるけど」

 

「二本ありゃ何でもいいって話じゃないんだよ。基本的にボトルの組み合わせは有機物と無機物ってのがビルドドライバーのセオリーだからな」

 

 ボトル同士の相性が良いベストマッチフォームは勿論のこと、トライアルフォームだってボトルの組み合わせは有機物と無機物だ。基本的にこれを崩すのは好ましくはない。

 

「まあ要するに、今の俺は変身できねぇ、よしんば変身できても普段通りに戦うのは無理ってこった」

 

 スタークがボトルを返却してきた狙いは不明だが、どうであれ状況は変わらない。

 今後奴等が何かしかけてきたとしても、今の戦兎には対抗する術がないのだ。

 

「今すぐにでも取り返しに行きたいとこだが場所が場所だしな……」

 

「…何それ」

 

 ビルドフォン片手に首を傾げる戦兎を訝しく思ったか、果南も覗いてきたそれに表示されていたのは簡易的な地図と何かの反応を示す赤いマーク。

 

「俺がタダでボトル手渡す訳ないでしょうが。一応発信機を取り付けて追えるようにしてたんだよ……だが」

 

「簡単に行けない場所ってこと?」

 

「そういうこった。東都先端科学物理センター……東都の中心部じゃねーか」

 

 東都政府はかつてこの日本という国の首都だった場所……つまりは東京に置かれている。

 日本地図では静岡に位置するこの場所からはそれほど離れているという訳ではないが、それでも気軽に行けるような距離ではない。

 

 まして今の戦兎は教師だ。無職だった以前と比べれば思うように行動できないのも痛い。

 

「まあそっちはその内ケリをつける…………お前も頑張れよ」

 

「……うん」

 

 決意の表情で口元を結んだ果南。その制服姿は新鮮に思えた。

 

 彼女が休学を終え登校を再開したのは丁度今日から。

 鞠莉のことにダイヤのこと。特に後者のことを考えるととても復学をお勧めできる状況ではないが、それでも復学を決意したのは果南なりの覚悟なのだろう。

 

 逃げずに立ち向かう。そう決めたのは彼女自身なのだから。

 

「……で、こっちはどうしたもんかね」

 

 果南と別れまた一人思考に耽る。

 東都先端科学物理センターの立地もそうなのだが、一番の問題はそこが政府の運営する機関であるということ。

 

 そこに奪われたボトルがあるということはつまり、ファウストが政府と繋がっている可能性が現実味を帯びてきてしまったということに他ならない。

 

「うーわ、どうすんだこれ。詰んでね?」

 

 政府の研究機関ともなれば警備も他の比ではないだろうし、万一捕まるような事態になれば何が起こるか分かったものじゃない。

 とはいえボトルを取り返さない限りは何もできない以上乗り込む他に選択肢はない訳だが、偵察やそれを踏まえた作戦を練るとなれば最低でも二日は欲しい。

 

 だが繰り返すが戦兎は新任の教師。そんな時間を確保するのは簡単なことじゃない。

 

 せめて何かこう、都合の良いイベントでも起きてくれればいいのだが———、

 

「東京だ―――ッ!!」

 

 気休めにスクールアイドル部のアホ面でも拝みに行こうと部活棟を訪れたその時、丁度筆頭のアホの子が部室から飛び出してきたのが目に入る。

 すぐ真横にいた戦兎の存在にも気付かずに大騒ぎしているが何があったのか。最近暑くなってきたしとうとう頭をやられてしまったのだろうか。

 

「…あのアホみかんの騒ぎっぷりはなんだ。遂にイカれたか?」

 

「顔出して早々に思慮の欠片もないこと言うずらね……」

 

「本当に教師なのかしらこの男……」

 

 戦兎も戦兎だが生徒からの言われようも散々だった。千歌がやたら馴れ馴れしいせいか、特に最近は新顔の一年生にも舐められる始末である。

 

「東京で開催されるイベントの運営から招待メールが来たんです。それで千歌ちゃん、さっきから大騒ぎで……」

 

 最後の良心石動美月が解説した内容を聞き流す……つもりでいたのだが重要なフレーズに意識が縫い留められる。

 

 Aqoursに東京のイベントから招待が来た。確かに美月はそう言ったのだ。

 そして千歌や他の部員を見る限りでは、皆明らかに参加する気満々である。

 

「…せ、先生……?」

 

 刹那、戦兎の浮かべていた笑みは、美月ですらドン引きするレベルの悪人面だったという。

 

 

 

 

 

 

 

 

 薄暗く、じめじめとしたコンクリートに覆われた空間。

 湿気以上にその場を満たすのは火花でも散るような緊張感。スーツを着込んだ女が蛇の装甲を纏った怪人へと詰め寄っていく。

 

「どういうつもりか説明してもらおうかスターク」

 

『どうもこうも、俺ァただ今後の計画への布石を巻いたに過ぎない』

 

 射貫くような剣幕の京香に問い詰められても、スタークは飄々とした態度を崩すことなく、自らのペースで言を語る。

 

『お前達に伝えてなかったのは謝るよ。けど、松浦を仮面ライダーにする目的が達成された今、そろそろ、次の段階に移る頃だと思ってな』

 

「…てことは、ついにやるんだね」

 

 にやりと笑みを深めた紫苑に続き、スタークもそのマスクの裏で低く笑いを漏らす。

 毒々しい目元のグラスが映しているのは、その計画の先に描かれる未来。

 

『つー訳だ……頼むぜ、京香』

 

「……全く、お前達はいつもいつも」

 

『…ビルドに渡したボトルは撒き餌だ。すぐ釣り針の方にも引っ掛かってくれるだろうよ』

 

 嫌気を隠すことなく溜息をついた京香の瞳が、次の瞬間には迷いのない、紅い光を宿す。

 その胸の北都政府のバッジが、これから起こることを予感させるように妖しく灯った。

 

『さぁ……戦争の始まりだ……!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「東京だ―――ッ!!」

 

 数日後。

 電車に揺られること数時間、遂に目的の場所に辿り着いた一行は皆一様に目を輝かせその街並みを見回している。

 

「はしゃぐな、馬鹿がバレる」

 

「あー! スクールアイドルのお店!」

 

「未来ずらぁ……!」

 

「……聞いちゃいねぇか」

 

 本来ここに来た目的も忘れ、皆心の赴くままに散らばってゆく。やはり女子という生き物は手に負えない。

 

「…お前等は落ち着いてんな、何とかしろよアイツ等」

 

「まあ、割りと最近までこっちにいましたし……」

 

「人、多い……」

 

 だがまあ、イベントは明日だ。そちらに支障が出ない範囲ならば自由に行動させても問題はないだろう。

 それにそちらの方が戦兎としても好都合だ。

 

「俺は宿の手続きとか済ませてくるからお前等はあのバカ共のお守りでもしといてくれ。遊び終わったら連絡寄越せよ」

 

 と、それっぽい文言を並べてその場を離れる。勿論宿になど向かう訳もない。

 

「よう松浦。迷子にならずついてこれてて一安心だぜ」

 

「私のこと幾つだと思ってんのさ…」

 

 予め集合場所を指定しておいた果南と落ち合う。彼女をここに呼んだのも戦兎だ。

 果南はスクールアイドル部ではないので勿論交通費は戦兎負担。財布には痛いが致し方あるまい。

 

「悪いが観光は無しだぞ。金出したのは俺だ、決定権は俺にある」

 

 彼女もここに連れてきた理由は二つ。

 

 まず一つは先日果南にも話した通り今あるボトルではビルドに変身できないこと。もし戦闘になれば彼女のドラゴンボトルを拝借する必要がある。

 

 もう一つは彼女自身の安全のためだ。スターク等のことを考えると、ボトル無しで一人置いていくのはあまり気が進まなかった。

 

「しっかし、東京にお呼ばれたぁまた御大層なこった」

 

 スカイウォールの惨劇以降、ライブイベント等の催物は下火になりつつある。

 それでもこうしてスクールアイドルのイベントが開催されるのは、やはりもうスクールアイドルがただの高校生の部活動という範囲では収まりきらなくなってきているという証拠だろう。

 

「あのアホみかんも舞い上がってたからな。浮足立って失敗しなきゃいいが」

 

「まあ、ね……」

 

 果南の顔に影が差す。

 かつてAqoursとして活動していた際、彼女達も同じイベントに参加したことは鞠莉から聞かされていた。

 

 そして同時に、それが彼女達最後の挑戦になったことも。

 

「……とにかくだ。スクールアイドル絡みだからこそ警戒しなきゃな。それをカモフラージュに各政府が何か仕掛けてきてることも考えられる」

 

 この話題は失敗だったかと自省しつつ、注意喚起へと移行する。

 

 調べてみたところ、今回のイベントは北都や西都からもスクールアイドルが招待されているらしい。

 その人気や高校生という肩書き故に、スクールアイドルは分裂した地域間を移動する規制、そしてその際の検査も緩い場合が殆どだ。

 

 つまりスクールアイドルに扮した各政府のスパイ、ないしは兵士を派遣することも可能だということ。

 

「…考えすぎじゃない」

 

「そうとも限んねーんだよ。各政府の首脳みてーなパンドラボックスの光の影響受けてる奴が手段選ばないのはお前だって知ってんだろ」

 

 果南の言う通り考えすぎなのかもしれないが、難波重工などのことを考えると特に西都は油断できない。

 それにスタークのような連中が暗躍してる昨今だ。警戒するに越したことはないだろう。

 

「まあまずはその心配よりボトルだボトル」

 

「いきなり殴り込むとか言わないよね…?」

 

「な訳あるかバーロ、下見だよ下見」

 

 あくまでも外部から窺い知れる程度の情報しか入ってこないだろうが、それでもないよりマシだろう。

 ファウストの組織性的に表立って東都政府が絡んでいるとは考えにくい以上、恐らくボトルが保管されているのは建物の地下、それもその場所を把握しているのは一部の者だけと考えられる。

 

 東都政府としてもファウストとしても、表立ってその存在を知られるのは好ましくないはずだ。つまり、その場所にさえ入ってしまえば騒ぎになることはまずないだろう。

 

「……ま、下見つってもどこから侵入できるかを探る程度だがな。正直いざ突入したらあとは行き当たりばったりだ」

 

「いやそれ無計画って言うんじゃ———」

 

 

 

 

 

 

——————ドオォォォン……!

 

 

 

 

 

「「ッ……!?」」

 

 比較的近距離から聞こえてきた爆発音に反応し、無意識に音源の方向へ視線をやる戦兎達。

 ビル群の合間から覗く黒煙は、少なからずただ事ではないことが起きていると告げた。

 

「あそこは…!」

 

「あっ! ちょっと!」

 

 混乱の声が渦巻く街中を掛け、濛々と煙の上がる地点へと急ぐ。

 自分が地図を見誤っていなかったならば、あの場所は———、

 

「チッ……!」

 

 嫌な予感が当たってしまったか。

 厳重な警備システムもろともフロントを消し飛ばされたその建物の名は東都先端科学物理センター。

 

 しかも湧いて出てくるガーディアンを悉く破壊している二つの影は、色こそ違えど以前浦女で戦兎からボトルを強奪したあの歯車の怪人と同型のもの。

 

「…なんだぁ、お前等……」

 

 その片割れ、右半身に白い歯車を装着した方がこちらの存在に気が付く。

 恐らくスタークやローグと似たようなシステムを利用しているものなのだろうが、その風貌も相まって奴等よりもより機械的……いや、兵器然としているというべきか。

 

「……ビルド」

 

 万一を考え腰に巻き付けていたビルドドライバーを視認し、もう片方の歯車がその名を口にする。

 白に対しこちらは青緑、しかも両者で装飾の施されている部分が左右逆になっている……などとのんきに外見を観察している場合ではない。

 

「ッ……! 松浦! ボトルッ!」

 

 一瞬で戦場と化した東京に悲鳴が飛び交う。

 それら全てを掻き消すように響いた銃声が、更なる厄災の始まりを告げた。

 

 




色々すっ飛ばしてレッツゴー東京
千歌達が東京の街に胸躍らせる裏で巻き起こる陰謀……まあ、最後の2人組は知っての通り奴等ですよ


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