鞠莉「あんな化け物相手に警備員が抗えるわけないでしょ! とにかくさっさと倒しなさいよ! 生徒守るのも教師の仕事でしょ!」
戦兎「気軽に言ってくれちゃってそんな事・・・・・・ああもうやりゃぁいいんだろやりゃぁ!」
???『そうそう。やっぱヒーローはそうでないとなぁ・・・』
戦兎「いきなり会話に割って入って来るんじゃないよ・・・・・・って、お前は・・・!」
『ウオオォォオォォォ!』
「くっ・・・!」
迫りくる拳を避けつつ、バックステップで一旦距離を取る。
「・・・受け止めるのはマズいな・・・・・・」
振り下ろされた奴の拳によって生成されたクレーターを見て悪寒が伝った。
大きく膨れ上がった青い身体はマッシブな印象を抱かせ、繰り出される一撃を喰らえばひとたまりもないのは見て伺える。
例えるのならばゴリラのようなスマッシュ―――ストロングスマッシュとでも呼称しようか。
「フッ! ハアァッ!」
『ウウゥゥゥゥッ・・・!』
ドリルクラッシャーでの剣戟もダメージこそ通っているが、決定打には至らない。
強靭な筋肉が備わったその身体。攻撃力だけでなく防御力も高いようだ。
『ウオオォォオォォォ‼』
「うおっとぉッ⁉」
とてつもない圧の裏拳を紙一重で回避。再び距離を置き、落ち着いて思考を巡らせる。
「・・・今のままじゃちょっとリスキーだな・・・」
今こそうまく回避できているが、何かの弾みで一撃を喰らってしまう可能性も捨てきれない。
一旦、こちらも防御に特化した方が良さそうだ。
「んじゃ、早速使わせてもらいますかね」
ドライバーからラビットフルボトルを引き抜き、腰のホルダーに装備してあった別のボトルを装填。
《ハリネズミ!》
「ビルドアップ!」
レバーを回すと即座に別の装甲が形成され、軽快な音声と共にビルドの半身が赤から白に変わる。
ボトルには、ベストマッチと呼ばれる組み合わせがある。
ベストマッチとはその名の通り特に相性のいい組み合わせの事を差し、互いの成分を高め合う事で高いポテンシャルを発揮する。
ベストマッチなボトルの成分同士を組み合わせた形態をベストマッチフォームと呼び、それに対し現在のハリネズミタンクはトライアルフォームと呼ばれる亜種形態。
ボトル同士の組み合わせが最善ではないのでベストマッチフォームと比べると性能では劣るが、時と場合に置いてはこちらの方が有効だったりするケースもある。
まさに今はその瞬間だ。
『ウオオォォオォォォ!』
「よっと・・・、ほい」
次々と殺到してくる打撃を、完全に力が入り切る前に半身から伸びた幾本もの白い棘で防ぐ。
やはりコイツのような力任せに殴りかかってくるような相手にはこちらの方が相性がいい。
「オオォォォォ!」
『ウオオォォッ・・・⁉』
棘状になった握り拳を土手っ腹に打ち込まれ、悶えるストロングスマッシュ。
防御特化のハリネズミタンクフォームならば攻撃と防御を並行して行える。
このように攻撃を捌いて疲弊させた隙を突いて攻撃を繰り返していけば、必ず『決め技』を叩き込むタイミングが生まれるはずだ。
『ウウゥゥゥゥ‼』
「ほっ・・・、よいしょっ・・・!」
巨大な拳と、鋭利な棘がぶつかり合う音が逃げ惑う生徒の悲鳴で満たされた校舎に反響していく。
流石にこうなってしまえばスマッシュのみならず、仮面ライダービルドの存在が世間に知られるのも時間の問題だろう。
「あーもう・・・・・・面倒な状況作りやがって‼」
『ウウゥゥゥゥオッ・・・⁉』
八つ当たりの感情も込めた回し蹴りがクリーンヒットし、ストロングスマッシュの身体が薙ぎ払った。
今だ。
瞬時にそう判断し、ラビットフルボトルを再度ドライバーに差し込む。
《ラビット!》
「ビルドアップ!」
《鋼のムーンサルト! イェェェイ!》
トライアルフォームでは発揮できない。ベストマッチフォームだからこそ発揮できる『必殺技』がビルドにはある。
《Ready Go!》
レバーが回されると同時に巨大な数式が浮かび上がり、X軸で左右から挟み込むようにしてスマッシュを拘束。そしてビルド自身はラビットの跳躍力で飛び上がる。
《ボルテックフィニッシュ‼》
飛び蹴りのポーズで放物線を描いた数式の上から滑り降りるように急降下を開始し、最も威力が伝わる角度で奴へと激突。
「ハアァァァァァァ‼」
『ッ――――――‼』
緑色の爆炎が吹き上がり、その中でくず折れるストロングスマッシュの姿が伺えた。
「・・・これで大した成分じゃなかったら覚えてろよ・・・」
いまさら言ってもどうにもならない文句を口にしつつ、エンプティフルボトルを奴へと向ける。
即座にスマッシュから成分とネビュラガスが抜け落ち、今回も犠牲になったのであろうスーツ姿の男性の姿になった。
(・・・・・・しかし、妙だな)
今は始業前。登校中の生徒もまだ大勢いるはずだ。
なのになぜ、あのスマッシュは騒ぎになる事なく学校内に侵入できたのか・・・。
「・・・ん?」
再び男に視線を戻すと、彼の首から下げられたあるものに意識が向く。
顔写真と名前が記された長方形の紙。これは今朝戦兎が鞠莉から受け取った物と同じ。
と、いう事は、彼はこの学校の教師という事になる。
「・・・どういう事だ・・・?」
教師という職に就いた者が、スマッシュに変貌して自身の勤める学校に来襲する・・・流石に偶然とは考えにくい。
そしてスマッシュに対抗する仮面ライダーである自分が来たタイミングでの出現。
まるで、戦兎がこの学校に赴任するタイミングを狙ったかのような・・・・・・、
『ほぉう・・・、中々やるな・・・・・・』
「ッ・・・⁉」
突如耳に滑り込んだ声音に反応し、咄嗟に振り返ったところで思考が止まる。
『よお。久しぶり・・・・・・か?』
コブラの意匠に、赤と緑の配色。
短時間ながらもしっかりと記憶に焼き付いたその光景が脳内の駆け巡った。
「・・・お前は・・・・・・!」
仮面の下に隠した双眸をこれでもかと吊り上げ、眼前で佇む影に敵意の視線を突き刺す。
間違いない。コイツだ。
コイツが、唯一残されていた記憶の中にいた・・・・・・コブラの男。
『その反応だと、人体実験の時の記憶はあるみたいだな』
戦兎の確信を決定づけるようにコブラ男が言の葉を紡ぐ。
やはり、記憶を失う前の戦兎が何かしらの人体実験をされた事は確定。
その事実と、ありありと滲む奴の狂気を前に、警戒心と共に憤りが募った。
「・・・俺の身体に何をした・・・・・」
『・・・はぁ・・・、感動の再開だってのに、会って早々そんな質問とは釣れないねぇ・・・・・・』
「うるせぇ! 知ってるんなら答えろ‼」
再形成したドリルクラッシャーの束を握る手に力を込め、自身の怒りを声に変え、吐き出す。
そんな憎悪を気に留める様子もなく、コブラ男の纏う余裕の雰囲気は崩れる気配を見せない。
『・・・そうだなぁ・・・じゃあ・・・』
不意に腰元から一丁の拳銃が取り出される。
漆黒の中に鈍色の装飾が施されており、少なくともただの拳銃でない事は伺える。
『俺に勝ったら教えてやるよォ‼』
「ッ・・・⁉」
瞬間、高速で地を這うように動いた奴の姿だけが視界に映り込み―――、
「があっ・・・・・・!」
それが攻撃だと認識した時には、既に強力な回し蹴りが鳩尾に叩き込まれていた。
全身を駆け抜けた重い衝撃に意識が飛びかけるが、何とか堪えて奴を視線で追う。
「ぐっ・・・! このっ・・・・・・!」
決死に拳をつき出すが、奴の残像を貫くのみ。
続き繰り出す攻撃も、一向に赤き身体を捉える事は出来ない。
『どうしたァ? その程度か⁉』
「あぐぁっ・・・・・・!」
胸部に銃口があてがわれ、即座に打ち込まれる何十発もの銃弾。装甲とぶつかり合った熱で火花が上がり、パラパラと宙を舞う。
「てんめっ・・・!」
そうただなすがままにやられたままでいられるか。
肉体が抉られるような痛みに襲われつつも、吹き飛ばされるよりも早く奴の腕を取っては身を翻す。
「調子乗ってんじゃ・・・・・・ねぇっ‼」
『ぐおっ・・・!』
掴んでさえしまえばあの高速移動も怖くはない。
お返しだと言わんばかりに力の込めたヤクザキックで反撃の火蓋を切り、立て続け様にタンクの馬力を生かした強烈なアッパーカットを切り込んだ。
『くく・・・・・・ハザードレベル3.3か・・・』
「何ごちゃごちゃ抜かしてん・・・・・・だっ‼」
余裕を崩さずに笑う奴に向け、瞬時に握り直したドリルクラッシャーを斜めに切り下ろす。
だがその攻撃はいつの間にか握られていた、バルブの装着された黒い剣によって受け止められてしまっていた。
『いいぞぉ・・・、もっと俺の求めるレベルに到達してこい!』
《エレキスチーム!》
「ぐうぅっ・・・!」
刺突が突き刺さると共に電撃が放出され、痛みと痺れが全身に広がっていく。
さらに追撃のストレートパンチに殴り飛ばされ、ゴロゴロと地面を転がったビルドを奴は心底楽しそうに見下ろした。
『おっと、言い忘れてたなぁ・・・。俺の名はブラッドスターク。よろしくな』
「っ・・・! お前とよろしくするつもりはねぇ!」
ドリルクラッシャーの刀身部分を前後に入れ替え、ブレードモードからガンモードに移行。一旦距離を置きつつトリガーを引き、弾幕をばら撒く。
『熱いねぇ。さっすが、東都の平和を守るヒーローだッ!』
「なぁっ・・・・・・⁉」
目の前で起こった予想外の光景に目を見開く。
コブラ男―――改めブラッドスタークが放った銃弾は何とビルドが撃ち出した銃弾と尽く衝突し、奴に到達する前に全弾打ち落としてしまったのだ。
「うそだろ・・・?」
『射撃の腕はまだまだみたいだな・・・。手本を見せてやるよっ!』
「うおっ・・・!」
反射的に飛びのき、音速で迫る弾丸を辛うじて回避。
しかしその後もスタークの銃撃は的確にビルドを狙い撃ち、ただでさえなかった余裕が削られていく。
「こうなったら・・・!」
ホルダーから別のボトルを手に取り、振る事で成分を活性化。
所持しているボトルはこれまでに使った三本だけではない。ラビットタンクで対処できない以上、別のフォームで叩くのがベストだ。
《掃除機!》
「ビルドアップ!」
タンクフルボトルの代わりに掃除機フルボトルを差し込み、レバーを回して装甲を形成、そして装着。
半身が青から緑に変わり、腕先に掃除機のヘッドを模した吸引機が装備される。
「行くぞ!」
『フハハ・・・! 来い!』
駆け出したビルドに、スタークの発射した正確無比な銃撃が迫る。
だがそこまでは予想済み。だからこそこのフォームにビルドアップしたのだ。
『・・・・・・ほおぅ・・・』
感心したように喉を鳴らしたスタークの目線の先では、ビルドの左腕から伸びる掃除機に吸引されていく銃弾が。
「ハアァァ!」
『おっと・・・』
ラビットの瞬発力と機動力を駆使し、奴の高速移動が最高速度に到達する前に攻撃を仕掛ける。
更に掃除機の力で吸引した弾は全てビルドのエネルギーに変換することが出来るので、相手の攻撃を吸収すればするほどこちらは素早くなるのだ。
「フッ・・・! オオラァ!」
『はははっ! ボトルの特性は上手く生かせてるみたいだなぁ!』
常識を逸脱した速度で繰り広げられる攻防戦の中で、愉悦が浮かぶスタークの笑いが尚も余裕がある事を知らしめてくる。
この男・・・底が知れない。
『だが・・・・・・』
そして連撃の隙を突くようにして奴が取り出した代物に、注意の大半を持って行かれる事となる。
シャカシャカと音を立てて振られる灰色の中に機関砲の銃口が刻まれたソレは―――、
「ボトル・・・?」
《フルボトル!》
拳銃と短剣が合体し、一丁のライフル銃となった奴の得物に差し込まれたのは、紛れもなくフルボトル。
自分以外にもボトルを所持していた者がいた事にも驚きだが、今はそれどころではない。
とてつもなく・・・・・・ヤバい気配がする。
「ぐっ・・・・・・!」
瞬時に危険を察知し、次の瞬間には飛んできているであろう銃弾の雨を吸収すべく掃除機の吸引部分を奴に向ける。
『まだ・・・・・・・・・甘い』
《スチームアタック!》
「なぁっ・・・⁉」
蒸気と共に銃口から放たれた、とても視認できる量ではない無数の黒い点は、もはや雨と呼ぶには生温過ぎた。
「がっ・・・ああぁぁぁぁぁぁぁ・・・・・・!!」
掃除機の吸引の網を容易く打ち破った銃弾の嵐が全身を襲い、敢無く身体が後方へ吹き飛ぶ。
『・・・おいおい。ヒーローがんな情けない有様でいいのかよ?』
「ぐ・・・うぅ・・・・・・」
身体のありとあらゆる部位が軋み、痛む。
ピシピシと紫電を迸らせるビルドの装甲がライダーシステムの限界が近づいているのを告げる中、スタークが歩み寄ってくるのが見えた。
『仕方ない・・・。今日のところはここら辺で退いてやる。・・・・・・コイツは餞別だ』
銃のスロットから引き抜かれたボトルがビルドの眼前に投げ落とされる。
『また今度遊んでやるよ・・・・・・チャオ~♪』
ひらひらと手を振る奴の身体が黒い煙に包み込まれていく。
「まてっ・・・!」
何とか腕を伸ばすが、何もない虚空を切り裂く感覚が指先から広がるのみ。
ぽすんと手の平が地面に被さった時には、既にスタークの姿は影も形のなく消失していた。
「・・・・・・ブラッドスターク・・・!」
残されたボトルを強く握りしめ、自分の運命を狂わせた者の名を口にする。
奴を倒して全てを問い詰めるどころか、一泡吹かせる事すら叶わなかった。
「クソッ・・・・・・!」
気落ちする感覚とは裏腹に、また別の何かが奥底から湧き上がってくる。
地面に叩きつけた拳が鈍い音を鳴らし、誰もいなくなった中庭へと孤独に霧散していった。
てな訳で、鬼畜外道腐れコブラことブラッドスターク登場!のっけからやりたい放題やってますねコイツ。
本編の様に誰が正体なのか考察してみてくださいね。
設定はビルド本編のものを軸にしていますが、若干変更している部分もあるのでご了承を。
・・・・・・で、いつになったら今作の万丈ポジ(実質ヒロイン)をお披露目できるのやら・・・。
それでは次回で!