戦兎「・・・」
鞠莉「・・・」
千歌「・・・」
曜「・・・」
ダイヤ「?どうかしましたか?そんな顔をして・・・・・・」
戦鞠千曜「・・・あらすじ紹介がまともに進行してる・・・?」
ダイヤ「今までどんな体たらくでしたの・・・・・・貴方達・・・・・・?」
「―――つーわけで、理不尽にもこのクラスの担任を受け持つ事になった三海戦兎だ。テキトーによろしくしといてくれ」
女生徒の好奇の視線を浴びながら、気怠そうにチョークを走らせて自身の名前を黒板に板書する戦兎。
「担当科目は物理な。授業後にここが分かんねーとか質問に来られてもめんどくせーから一発で理解できるようにしてやる。まあ、大船に乗ったつもりでこのてぇんさい物理教師に任せなさいな」
倦怠感は隠さず、されど鷹揚に胸を張り、鼻高々に痛々しい事を何の恥ずかしげもなく言ってのける。
生徒たちのポカンとした顔を眺めた際に額を抑える鞠莉とダイヤが垣間見えたが気にしない。
「・・・こんな感じでいいよな。はい、終わり。もうお前等の大好きな休み時間にしてくれていいぞ。そんじゃーな」
「ちょ・・・! 待ちなさい‼ 教師として生徒の模範となる態度をですね―――」
ガタンと音を立てて椅子から立ち上がり、マイペース全開で自己紹介を終えて足早に教室から出て行った戦兎への説教と追跡を始めるダイヤ。
後にこの光景が見慣れた恒例行事となる事を知る者は、まだこの教室にはいないのだった。
「・・・マジでなんなんだあの硬度十・・・。面倒な仕事まで押し付けやがって・・・」
放課後。
今日一日の態度に関してみっちりダイヤに絞られた戦兎が呻くように愚痴を零しながら生徒会室から脱出する。
「授業はちゃんとやったしいいだろうが・・・・・・まあ確かにちょっと調子に乗った節はあるけどよ・・・」
結果から言うと授業自体は悪くはなかったのだ。むしろ好評だった。
だが途中分かりやすいと生徒に称賛された結果、調子に乗ってかなり専門的な分野の話に発展してしまい混乱させてしまったのは申し訳ないと思っている。実際ダイヤにもお折檻を頂いてしまったし。
次回の授業はその辺も気を遣って臨むとしよう。
「・・・教師ってのも案外ハマり役かもな」
初めは文句こそ言っていたが、教師というのも案外楽しいものだった。
戦兎にとっては何でもない物理の法則や数式も、高校三年生の生徒達にすれば理解しがたい異物のようなもの。それを戦兎の授業によって理解出来た生徒達の表情を見るのも・・・・・・悪くはない。
この分ならモチベーションも保てそうだし、鞠莉に要求された建設費とやらも何とかなるだろう。
「・・・一応鞠莉の奴に例の一つでも言っといた方がいいのかね―――」
「あっ! 三海せんせー!」
鞠莉の元に足を向けようか迷っていると、聞き覚えこそあるがあまり馴染みのない声音が戦兎の名を呼んだ。
振り返ってみれば、みかん色の髪を揺らしてこちらに駆け寄ってくる少女が一人。
「・・・えっと・・・・・・浜見、だったか?」
「高海です! 名前くらい覚えてくださいよ!」
ふくれっ面でそう言われるが、あまり人と関わってこなかったので顔はともかく名前を覚えるのは得意ではないのだ。
そうだ、彼女は高海千歌。
先日鞠莉達のクラスの担任に指名された際、ダイヤに自身の立ち上げた部活を承認してもらうべく生徒会室に乗り込んできた少女だ。
だがそれだけなら戦兎の担当外である二年生の彼女が声を掛けては来ないだろう。
「今日の仕事は終わったんですか?」
「まぁな、天才ですから」
彼女がこうして柔和な笑みを向けてくる理由は、同じ日にあった出来事が起因している。
「それじゃあ、部活行きましょうか!」
あの日、ダイヤに部活には顧問が必要だと言われた千歌は、勢いに任せて戦兎が自分たちの顧問だと言い放ってしまった。
別に、それだけならば何の問題もない。なかったのだ。
だがあの小原鞠莉とか言う成金金髪理事長が権力に物を言わせて千歌の立ち上げた部活を正式に部として認めた上に戦兎に顧問を押し付けやがり、今に至るのだ。
「あー、思い出したらムカついてきた。絶対礼なんて言わねぇ」
「どうかしました?」
「いや、何でもない。・・・・・・つかお前もお前だ。俺がいつ顧問をやるなんて言ったよ?」
「え・・・?」
今のままで輝いていた千歌の瞳に陰りが差す。
「でも、理事長はいいって!」
「あんなん鞠莉が勝手に約束しただけだろ。俺は認めてねぇよ」
話が長引くと面倒くさくなるタイプだと察し、短くそう言い残してこの場から去ろうとする。
戦兎は教師以前に仮面ライダーだ。いつどこでスマッシュが出現するか分からない以上、あまり仕事に拘束されるのは好ましくない。
彼女には悪いが、ここは非情な行動を取らせてもら―――、
「ダメですかぁ・・・?」
「うぐっ・・・・・・⁉」
袖口をちょこっとつまみ、小動物感溢れる上目遣いで戦兎の顔を見上げてくる千歌。
まだあどけなさが抜けきっていない彼女の容姿から放たれるそれは強烈で、生徒相手にも関わらず不思議な感覚になってしまう。
あの場にいた鞠莉、ダイヤ、曜の容姿がずば抜け過ぎていて隠れていたが、千歌の顔立ちだってかなり整っている方だ。よってその破壊力は・・・半端ではない。
「三海先生以外に頼りに出来る人がいないんですよ~・・・!」
「ああもう分かった! 分かったからその顔やめろ!」
これ以上おかしな気分になる前に千歌を引き剥がし、仕方なく承諾する。
この娘、狙ってか天然かは知らないが・・・・・・末恐ろしい。
「いひひー♪ それじゃ行きましょー!」
悪戯っぽく笑い、戦兎の腕を掴んでは千歌は廊下を突き進んでいく。
「おい・・・・・・高海・・・・・・」
周りから突き刺さる女生徒や教職員の視線が痛い。
きっと後々この件でまた面倒くさい事になるのだろうなと薄々感じつつ、もはや抵抗する事すら怠くなった戦兎は諦めて手を引かれるのだった。
「・・・・・・で? ここなのか、活動場所」
見渡す限りに青い世界が広がる。
千歌に引っ張られるままやってきたのは、先日ニードルスマッシュが現れた砂浜だった。
「あはは・・・、学校はもう他の部活に占拠されてて・・・・・・。部室もないし・・・」
千歌がダイヤに言い放った練習は自分の家の前の砂間派でやるという宣言がまさか現実になるとは思っても見てなかった。
ていうか部室も活動場所も校内にない部活を果たして部活と呼べるのだろうか。
「・・・・・・しかし、スクールアイドル部ねぇ・・・」
ぽつりと、二年前の出来事を思い出しつつ千歌達の部活の名を口にする。
まさか鞠莉が戻って来てから、再びその言葉に触れる事になろうとは思ってもみていなかった。
鞠莉が快くスクールアイドル部を認めたのも、二年前の事と千歌達を重ねたからなのだろうか。
「・・・もう吹っ切れたのかね・・・」
「? なんか言いました?」
「ただの考え事だ。気にすんな」
独り言に千歌が反応してしまい、即座に誤魔化す。
戦兎が原因であの事が千歌達に知れてしまうのは鞠莉に申し訳ないし、何より彼女達のやる気に水を差しかねない。
この場では封じ込めておくことが一番だろう。
「まあ、それならいいんですけど・・・・・・。じゃあ曜ちゃん、練習しよっか!」
くるりと踵を返し、千歌は少し離れた場所で準備体操をしていた曜に駆け寄っていく。
職員室で教職員同士が話しているのを耳にした程度だが、曜は水泳競技の一つである高飛び込みで全国級の実力を持っているそうな。
当然そちらの方の練習もあるだろうが、幼馴染の為に協力してあげているらしい。
「あ、そうだお前等。俺今日はまだ用事あるからそこまで長くは面倒見れねーぞ」
「? 用事って?」
「あのお堅い生徒会長に仕事押し付けられたんだよ。休学中の生徒の家に家庭訪問して来いってな」
戦兎のクラスに一つだけあった何も置かれていない机。考えてみればそれが彼女の席だったのだろう。
「・・・ん? 休学中・・・」
何か心当たりでもあったのか、小首を傾げて反応したのは曜だった。
「なんだ? そいつの事知ってんのか?」
「あー・・・、もしかしたらですけど・・・、その子って淡島に住んでたりします?」
「・・・・・・そうだけど」
「やっぱり・・・」
あまりペラペラと生徒の居住地域を口にするものでもないとは思うが、様子からして知り合いのようだし問題はないだろう。
「どうする千歌ちゃん? 先生いなくなっても練習続ける?」
「う~ん・・・。また変なのに襲われても困るしなぁ・・・・・・」
繰り返すようだが、先日千歌達がスマッシュに襲われた場所もここだ。過ぎた事とは言え、まだ若い女子高生ともなれば心配にもなる。
戦兎を顧問としてここに連れてきたのも、監督者を連れておくことで少しでも安全であろうと考えた故なのだろう。アホの子っぽく見えるがちゃんと考えられる子らしい。
この分ならば今日はすぐに切り上げてくれるだろ―――、
「じゃあ! 私達も先生に着いていきます!」
とか一瞬でも考えた戦兎が馬鹿だったらしい。
一方その頃。眼前に海を臨む、淡島の林の一角。
「―――りょーかい」
太陽を遮る木々の合間を通り抜けた木漏れ日が、不気味に歪んだ口元を照らす。
今のところ計画は順調に進んでいる。引き続き仮面ライダービルドには自分の手の平の上で踊ってもらうとしよう。
「・・・・・・じゃあ、ちょっと遊ぼうか・・・」
通話を終えた端末をポケットにしまい、その代わりに取り出したのは風変わりな銃が一丁。
トランスチームガン。
˝トランスチームシステム˝と呼ばれる、三海戦兎の持つライダーシステムとはまた違った機能を持つ、拳銃型変身デバイスだ。
フルボトルの特性を引き出せるといった点では共通しているが、ライダーシステムとは大きく異なる要素をいくつか持っている。
その一つが―――、これだ。
《コブラ!》
フルボトルとはまた違うボトル―――コブラロストフルボトルをスロットに装填。
そして―――、
「・・・蒸血」
《ミストマッチ!》
トリガーを弾いた事で銃口から黒い霧が噴出され、身体を包んだそれの中で幾つも、何度も、赤い閃光が爆ぜては消える。
《コッ・・・コブラ・・・コブラ・・・・・・ファイヤー!》
『はは・・・やっぱこっちの方が俺にはしっくりくるなぁ・・・』
やがて霧散していった黒の世界から姿を現したのは、ワインレッドの装甲と、随所に彫られたコブラの紋様が特徴的な怪人。
『さてと・・・』
「ありがとうございましたー! またお越しください!」
目元に施された毒々しい緑のグラス越しに見下ろした視線の先には、歩き去っていく二人の女性と、それを見送る青い髪をポニーテールで纏めたウェットスーツ姿の少女が一人。
・・・丁度いい、あれを利用させてもらおう。
『今日も楽しませてくれよな。・・・・・・正義のヒーローさん・・・・・・』
拳銃をくるくると手元で回しつつ、赤い影―――ブラッドスタークは悪意に満ちた笑いを零した。
あの外道コブラまさか「あの子」に手ぇ出すつもりじゃないだろうな・・・?(はぐぅ)
その子が心配すぎて戦兎が何やかんやスクールアイドル部の顧問になっちゃった事とかどうでもいいっすね。はい。
次回は三その年生最後の一人の子を出すつもりですが・・・・・・スタークの野郎が変な事やらかしませんように()
・・・・・・てか未だ誰一人として登場の気配を見せない一年生ェ・・・
それでは次回で!