果南「そこに赤い怪人が現れ、私の家の店に来ていたお客さんを何とスマッシュに変えてしまう。先生は一人時間を稼いで私達を逃がしてくれたけど、スマッシュは二体いる事に気付いて戻ってきた私は先生が仮面ライダーの変身を解く瞬間を目撃してしまう………さあどうなる八話!」
戦兎「・・・・・・いや、マジでどうすんだこれ・・・」
「おじゃましまーす・・・」
戦兎の後に続いて部屋に入った青髪の少女が、書類やらガラクタやらで散乱した床を踏む。
「・・・・・・コーヒー、飲めるか?」
「え・・・、あ、はい。お構いなく・・・」
パソコン前の椅子という定位置に腰かけた後、戦兎は適当に引っ張り出してきたパイプ椅子に座らせた少女―――松浦果南と顔を合わせた。
「・・・色々聞きたい事はあるが・・・・・・まずなんで戻ってきた」
湯を注いだカップに本来は鞠莉が来た時用のインスタントコーヒーをぶち込みつつ、咎めるように視線と言葉を向ける。
「・・・・・・うちに来たお客さん、二人いたから・・・」
「・・・それでもう一人の方もスマッシュされてるかもしれないと思って、俺に警告しに戻ってきたと?」
こくんと首を縦に振る果南。俯いた彼女の表情を見れば、反省と言うか、申し訳なく思っているのは伺えた。
こうなってはあまり責める気にもなれまい。
「まあ、この話はもういいや・・・・・・それより」
淹れ終えたコーヒーを一杯彼女に手渡し、本題に移る。
「答えろ。どこまで見た」
戦兎が果南を居住地兼基地のここに連れていたのには訳がある。
スタークが遣わしたスマッシュとの戦闘後、あろうことか仮面ライダーとは何の関りもない彼女に変身解除の瞬間を見られてしまったのだ。
「えっと・・・・・・なんか色が変わってから先生に戻るまで・・・」
となると、スタークが去り、ライオンクリーナーにビルドアップした辺りかららしい。
一方的に押されている状況は目撃されていなかったので自尊心は保ったが、それでも安心できない事には変わりない。
・・・さて、これからどうしたものか・・・。
「とりあえず、この事は絶対に他言するな。お前自身にも危険が及ぶ可能性がある」
果南がビルドの正体を知ってしまった事がスタークにバレていないのが唯一の救いだ。あの外道の事だ。もしその事をしれば平然と果南に魔の手を伸ばすだろう。
「・・・あの・・・」
そんな戦兎の心配を知ってか知らずか、おずおずと顔を覗き込んでくる果南。
「・・・何なんですか、その・・・・・・仮面ライダーって・・・」
興味半分、遠慮半分といった様子の顔だ。
仕方ない。知られてしまった以上、最低限の知識は与えておくのが彼女の安全の為だろう。
「・・・・・・スマッシュの事は知ってるよな?」
「・・・まあ、さっきも現れたし・・・」
少なくともスマッシュの存在程度は認知している事を確認し、キーボードを叩いてパソコンにとあるデータを表示する。
「・・・もう知っちまっただろうけど、スマッシュの正体は人体実験を受けた人間だ。そしてそのスマッシュに対抗するためにこの俺が作り出したのがライダーシステム。仮面ライダーはライダーシステムで変身する・・・・・・いわばヒーローってやつだ」
液晶画面に映し出された˝仮面ライダービルド˝の情報。
ビルドの各形態の能力値や小難しい化学記号などが羅列する中、ライダーシステムの本質である˝ビルドドライバー˝を指さす。
「つっても、このドライバーを使えば誰もが皆仮面ライダーになれるわけじゃない。適応しない人間がライダーシステムを使おうとすると酷い目に遭うのは実証済みだからな」
「・・・じゃあ先生はなんで仮面ライダーに・・・?」
「・・・・・・」
これまで饒舌に語っていた戦兎が急に言い籠った事を訝しく思ったのか、果南は不安げに眉を寄せる。
別に何かとんでもない事実がある訳ではない。ただ、確証がないだけだ。
「・・・・・・ここからは俺の憶測なんだが・・・・・・多分、仮面ライダーになるにも人体実験を受ける必要がある。現に俺も人体実験されてるらしいしな」
「・・・・・・らしいって・・・」
「ワリ、それが俺記憶喪失ってやつでして。あんまりその辺の記憶はない」
あっけらかんとそう告げると、目を丸くされてしまう。
まあ普通はそうなるだろう。記憶喪失と聞いても動揺するどころか嬉々として質問攻めにしてくる奴など鞠莉くらいだ。
「恐らく、人間をスマッシュにする実験も、仮面ライダーにする実験も過程は同じ。・・・何らかの要因でスマッシュ化しなかった人間がライダーシステムに適応―――つまりは仮面ライダーになれると俺は考えている」
「・・・それが・・・先生って事?」
「・・・変身できるって事はそうなんじゃないか? 詳しくは知らねーけどな」
ビルドドライバーが完成した際、興奮そのままに使ってみればあら不思議。特に問題なく変身できてしまった。
当初は変身適性の事など知らなかったが故の行為だ。もし適合できていなかったらと思うと恐ろしい。
「話は終わりだ。・・・・・・繰り返すが絶対この事は他の奴に知られるなよ。何の弾みでスタークの奴にバレるか分かんねーんだ」
「スタークって・・・さっきの?」
「ああ・・・。スマッシュを放ったり、俺に人体実験をしたのもアイツだ。そんな奴に俺とお前が繋がってるって事を知られてみろ。お前まで人体実験のモルモットにされるかもしれねーぞ」
「っ・・・」
果南の瞳に怯えの色が滲んだのが分かった。
普通の女子高生よりは肝が太そうには見えるが、やはりまだ子供。自分が得体の知れない怪物に改造されるかもと思えば怖くもなるだろう。
「こんな秘密押し付けてすまないとは思うが・・・・・・お前の為だ。理解してくれ」
「・・・心配してくれてるんですか?」
「アホ言え。誰かを巻き込むのが不本意なだけだ。ほら行くぞ。一応送ってってやる」
努めて無愛想に接する戦兎に対し、何やら面白そうかつ嬉しそうに果南が口元を緩める。
「・・・んだよ、気持ちワリーな・・・」
内心を見透かしてくるような視線から逃れようとした時、そう言えば一口もつけていなかったコーヒーが目に入る。
とりあえず淹れたものは飲んでおかないと勿体無いと考え、二人同時にカップのコーヒーを口に含んだ。
「「まっず・・・!」」
「ちょっと! どういう事よ‼」
薄暗い室内に荒々しい怒号が反響する。
声の主である金髪の少女は、紅いマスクの怪人に臆することなく怒り心頭といった様子の表情を向けていた。
『どうもこうも俺は俺のやりたいようにやっただけだよ。・・・・・・お前と同じでな』
「・・・ダイヤや果南に手を出さないって約束はどうなったの」
『手は出してないだろ。偶然その果南とやらがスマッシュにした人間の近くにいただけだ』
自らの行いを咎められているのにも拘らず、怪人、もといブラッドスタークは一切悪びれる様子もなくふざけた態度を見せる。
「危険に晒したら変わりないでしょ! もしスマッシュに襲われて大怪我でも負わせたらどうするつもりだったのよ!」
『どうもこうも、そこまでは俺の管轄じゃないしなァ・・・』
「っ・・・! アンタ・・・何のために私が戻ってきたと思って―――」
『・・・ハイハイ。分かった分かった。その二人に危険が及ばないように行動すればいいんだろ?』
頑として譲らないといった姿勢を前に、両手を挙げて面倒くさそうに妥協の意志を見せるスターク。
だが何か言いたげに凭れ掛かっていた壁から離れると、目の前の少女に目元のグラスを向けた。
『・・・けど、これだけは覚えておけ。あくまでも俺の目的はビルドにボトルを浄化させる事だ。お前のお友達を守る事じゃない』
右手で銃の形を作り、彼女の胸に向けて人差し指を向ける。
『俺達の目的は別、今は偶然利害が一致して協力しているだけだ。あんまりワガママ言うようなら・・・・・・分かってるよな?』
「・・・・・・Off Courseよ・・・」
今の仕草の意味を受け取った少女が苦々しい表情で立ち去っていく。
様々な感情が入り混じるその背中を眺めつつ、スタークは彼女に聞こえないような声量で小さく呟いた。
『もうちょっと利用しやすいと思ってたが・・・・・・・・・仕方ない』
全身を黒い霧が包むと共に装甲を解除し、˝この身体˝の声で笑う。
「ふふ・・・さぁてと・・・・・」
紅いマスクに下に隠されていた素顔が、不気味に、過激に、微笑んだ。
「ん、じゃあ授業終わりな。お疲れさん」
数日後。
松浦果南に正体がバレようと、仕事をしないといけない事に変わりはない。今日も今日とて生徒相手に教鞭を振るった戦兎が眠そうに教室を後にする。
「・・・もう少しシャキッとした顔は出来ないのですか?」
「まーたお前か黒澤・・・・・・今回は何の用だ?」
「今回はお説教をしに来た訳ではないのでご安心を・・・。スクールアイドル部、調子はどうですの?」
鞠莉が二つ返事でスクールアイドル部を承認して以降、ダイヤは何かと千歌達を気に掛けている。
「別に、いつも通り高海の奴が訳分かんねー事ばっか言ってるだけだよ」
「そうですか・・・」
忙しいはずの彼女が一部活に肩入れと言うか、親身になっているからには何か理由があるのだろうが・・・まさかダイヤも二年前の事に関わっていたのだろうか。
丁度いい。彼女ならきちんと答えてくれるだろうし、聞いてみる価値はあるだろ―――、
「ごめんなさぁ~~~いッ!」
「・・・・・・」
突如として悲鳴のような声が外から聞こえ、タイミングの悪さに顔を顰める。
「・・・なんだ・・・?」
不可解に思い窓から校庭を見下ろしてみれば、体育の時間なのだろうか。野暮ったいジャージに身を包んだ少女が、長いワインレッドの髪を靡かせながら必死に何かから逃げている。
その後方から彼女を追いかけているのは・・・・・・千歌だ。
「どうしても作曲出来る人が必要で―――うあっ!」
「・・・・・・何やってんだアイツ」
不思議な奴だとは思っていたが、何をどう思ってああなったのか全く分からない。結局ずっこけて鬼ごっこを繰り広げていた少女には逃げられてしまっているし。
「あら、桜内さんじゃありませんか」
戦兎と同じように校庭を見下ろし、そう口にするダイヤ。
「知ってんのか?」
「最近この学校に来た転校生ですわ。なんでもピアノをやっていて、作曲が出来るとか・・・」
「ああ、なるほど・・・・・・」
スクールアイドル。もといその大会であるラブライブに参加するにはいくつか規定がある。
その内の一つが˝未発表˝の曲である事。つまり既存の曲や、他所様の作った曲は使えない。自分達のグループで作曲をするしかないのだ。
先日曲が作れなくて悲鳴を上げていた千歌の事だ、作曲が出来る人間が来たと知ればすぐさまスカウトに向かうだろう。あれは恐らくその結果だ。
「傍迷惑な奴だな・・・」
「全くですわ。・・・・・・誰かさんに似て」
少し間を開けてそう呟いたダイヤの瞳が揺れる。
千歌を羨むような、それでいて何かを懐かしむような、哀愁を映す瞳。
「・・・なあ、黒澤。お前―――」
少なくとも出会ってからは初めて見る彼女のそんな瞳の裏に隠れた何かに気後れし、言いかけた言葉が途切れてしまう。
「勧誘もほどほどにと、高海さんにお伝えください。理由がどうであれ、桜内さんの意志が第一ですから」
去り行くその背中からは、もうあの哀愁は感じない。いつもの通り背筋の糸をこれでもかと伸ばした黒澤ダイヤだ。
「・・・・・・」
追う気にもなれず、ただ黙って疑念交じりの視線を向けるだけ。
「大丈夫! 悪いようにはしないからぁ―――!」
「ごめんなさ~~~~い‼」
静まり返った廊下に、外で追いかけっこを繰り広げる二人の声が溶け込んでいった。
さらっと桜内さん登場。あと一年生だけっすね。
まあそんな事はさておき、スタークと怪しげな関係にあった少女ですが…ええ、˝彼女˝です。
この先の展開についてのアナウンスですが……端的に申すと苦手な人はとことん苦手な展開となります。
具体的に何が起こるかはネタバレになるので言えませんが………まあ、関連タグにラブライブに付いちゃいけないタグがいっぱい付く事になるかと。
まあ、もうしばらくはこれまで通りに行きますけどね
それでは次回で~