戦兎「いやシャイニー☆じゃねーよ。大事な部分省きまくった上に自分の株だけ持ち上げようとしやがって・・・・・・それにスタークとつるんでるとかどういうつもりだお前!」
鞠莉「それはその・・・・・・せ・・・!戦兎だって果南に正体バレちゃったじゃないのよ!あれだけ気を付けろって言ったのに!」
戦兎「前々回の話持ち出してフェードアウトしようとするんじゃないよ。お前なんか疚しい事でも企んでるんじゃないだろうな!」
鞠莉「Oh!I’m can’t speak Japanese!Let’s go Ninete word!」
戦兎「おい…」
「何度お伺いなされても答えは変わりません。お引き取りを」
着物に身を包んだ熟年の女性に深々と頭を下げられ、スーツ姿の男が苦い顔で和室、および武家屋敷のような造りになった建物から撤退していく。
「・・・・・・またですの?」
「・・・あぁ、ダイヤですか」
今のやり取りを傍目で見守っていた黒髪の少女―――黒澤ダイヤは、疲労を表情に滲ませた自身の母親を見やった。
「最近よくウチにいらっしゃいますわね。今月はもう五回目ですわ」
「ええ・・・。それほどあちら様も必死なのでしょう」
すくりと立ち上がり、開いた障子の向こう側の景色に視線を向けるダイヤの母。
その中で最も目を引くものは、遠方に聳え立つスカイウォールだ。
「・・・あの壁が出来てからというもの、この国はすっかり変わってしまいました。国家や土地だけでなく、人も・・・」
十年前、スカイウォールの惨劇がもたらした災厄は国や人々の分裂だけでなく、日本という国の自然環境をも変えてしまった。
特に土壌はその影響を大きく受け、多くの土地が作物の芽吹かない不毛の大地へと変貌してしまった。特に北都はその影響が顕著なのだとか。
「・・・内浦は幸運でしたわ。・・・・・・そしてそれが故に不幸なのです」
東都も多くの土地がやせ細っていく中、ここ内浦はその影響を一切受けていないと言っても過言ではないほど豊穣な土地なのだ。
そしてそれを理由に、政府機関に目を付けられている。
「確かに今は国が苦しい状況なのは理解していますが、わたくし達にはここに住まう方々の生活を守る義務があります・・・・・・譲る訳にはいきません」
ダイヤの家である黒澤家は昔から網元としてこの地域に根強く、かつ極力な影響力を有してきた。
スカイウォールの惨劇以降、名のある家系がかつての地主のような立場を得た事もあってか、今ではここ内浦の土地を管理する役割を担っている。
だからこそこうして、内浦を農耕地に変えたがっている政府の者が度々やってくるのだ。
「・・・ごめんなさいダイヤ。わたくし達は、貴方にこんな責任を負わせなくてはいけない。もっと幸せな人生が―――」
「・・・わたくしはこの家の娘でよかったと、胸を張って言えますわ」
母の言葉を遮るように穏やかな声でそう口にする。
確かに、この黒澤家の長女として生まれた以上、時期に今母の担っている仕事や立場がダイヤに回ってくるのは必然だ。
「・・・・・・本当に、貴方は強いですね・・・」
悲しむような、安堵するような。そんな母の歩き去っていく背中を眺め、ほう、と息をつく。
実際、辛い、どうして自分が。そう思った事は一度や二度ではない。
でも、それでも投げ出さない覚悟を決めたのは、自分にとって何よりも尊い存在がいたから。
「ただいまぁ! お姉ちゃん!」
玄関の戸が開く音と共に、自分を呼ぶ声が聞こえた。
まだあどけなさの残る穢れのない、純粋な声が。
「お姉ちゃん! あのね! 今日ね―――」
振り向いた先で輝いていた笑顔に、日頃から、少なくとも家の外では滅多に解かない表情も緩む。
そうだ。
この笑顔を守りたいから、自分が背負わなくてはいけないんだ。
「・・・何か嬉しいことでもありましたの? ルビィ」
「くぁぁ・・・・・・」
暖かな陽光を全身に浴び、込み上げてきた眠気のままに大きな欠伸をつく。
「あーくそ・・・・・・ねっむ・・・」
授業明けの昼休み。中庭のベンチで一息つくのは購買のパンで腹を満たした身体には難敵だ。昨日も遅くまでボトルを浄化していた戦兎には尚更だ。
加え、今日の午後は受け持っているクラスがないという事が眠気に拍車を掛ける。
「・・・これはあれだな。うん。こんな日当たりのいい場所にベンチを設置したこの学校が悪い。俺悪くない」
徐々に抵抗する意思も薄れ、意味不明な言い訳を一言。
そしてそのまま睡眠欲に全面的な降伏を試みたその時―――、
「あ! せんせー!」
「う・・・・・・」
ここ数日間で何度聞いたかも分からない、いつもいつも都合の悪いタイミングで何かしらの面倒事をもたらしてくる、この声。
首だけ動かして確認してみれば、やはりそう。
戦兎にとっての疫病神、高海千歌の登場である。
「・・・どこにでも現れやがって・・・・・・・・・ゴキ〇リかよ・・・」
「? なんか言いました?」
「何でもない。・・・・・・それより何しに来たんだお前」
失礼すぎる発言は本人の耳に届いていなかったのをいいことに誤魔化しつつ、また何か事案を引っ提げてきたのではないかと内心ビクビクしながら問いかける。
「練習しようと思って・・・ほら、スクールアイドルの!」
偉いでしょ?とでも言いたげに胸を張る千歌。そもそも誰が強制した訳でもない上にコイツ自身がやりたいと言って始めた事なのだから偉いもクソもないだろうに。
「一人かお前? 相方はどうした」
「曜ちゃんは水泳部の方で用事があるらしくて・・・・・・桜内さんはまだ手伝ってくれそうにないし・・・」
「・・・・・・まだ勧誘してやがったのか・・・」
新学期早々に転校という創作染みたイベントもさることながら、並外れた容姿や達者なピアノの腕。それに加え作曲まで出来るというハイパー転校生、桜内梨子がここ浦の星女学院に転入してきて早一週間。
流石に一週間も経てば千歌のしつこい勧誘も収まったものかと思っていたが・・・今も粘り強く食いついているらしい。
「・・・嫌われても知らねーからな」
「大丈夫です! 最初は「ごめんなさい!」だったのが、最近は「・・・ゴメンナサイ」になってきたから!」
「アウトじゃねーか」
何かしらよくない感情を抱かれているのは火を見るよりも明らかだった。
冗談で言ったつもりの小言がまさか現実になりつつあっていようとは。
「・・・まあ、ほどほどにしとけよ。じゃな」
「え? いやいや、先生も付き合ってくださいよ」
薄々この後の展開を予想し、逃走しようとしたところで掛かった声にやはりこうなるのかと肩を落とす。
「お前、手伝ってくれる友達とかいないの?」
「近くにいるし先生でいいかなーって」
「適当だなオイ」
「いいから! これ持ってて! 顧問でしょ!」
一応戦兎が教職員だということを理解しているのか否か、無理矢理音楽アプリを起動した自身の携帯端末を押し付けてくるその姿にズキズキと頭が痛む。
「・・・・・・こんなんだから変な噂が立つんだろ・・・」
「? なんか言いました?」
「何でもない!」
ここは女子校。何かと色恋沙汰の噂が大好きな女子という生物の巣窟なのだ。
現に、最近一部の生徒や教師間で「三海戦兎と高海千歌はデキている」という根も葉もないくせに尾ヒレだけは付きまくった噂が実しやかに囁かれている事を戦兎は知っている。
「それじゃ、いっきまーす」
そんな事は露ほどにも思っていないだろう千歌は呑気に音楽を再生し、そのリズムに合わせてたどたどしいステップを刻み始める。
「・・・・・・ったく・・・」
早速遠巻きから今のやり取りを眺めていた女生徒がヒソヒソと噂し始めたのを横目に、戦兎は深いため息をつくのだった。
「・・・・・・で。なーんで今度はお前の子守りをしなきゃいけねーんだよ」
「子守りって・・・ただ顔出しに来ただけじゃない・・・」
放課後。
教師という職務からも高海千歌の子守りからも解放され、ようやく自分の世界に没頭できると思った矢先に来訪してきた鞠莉に非難の目を向ける。
「何の用だ。悪いが今はお前の遊び相手をしてる暇はねーぞ」
「私だってわざわざ戦兎と遊びにここまで来るほど暇じゃありまセーン。・・・・・・最近どうなの? ビルドとしての方は」
「・・・珍しいな。お前がそっちに興味示すなんて」
「っ・・・! ほ・・・ほら! 一応教師の仕事押し付けたのはマリーなんだし、そのせいでビルドの活動に支障とか来してたらSo Badかなーって」
無理矢理就職させた割にはその辺の心配はしてくれていたらしい。
何故だか焦ったように見えたが、とりあえずは気にしないでおく。
「まあ、ぶっちゃけると支障は来しまくってるが・・・気にするほどのもんでもねーよ。ボトルも順調に集まってるしな」
ボトル。
その単語を口にした瞬間、ほんの一瞬だが、鞠莉の目の色が変わった気がした。
「今ボトルって何本あるの?」
「やけにグイグイ来るな・・・・・・、ちょっと待て」
研究兼雑魚寝用机の真横。
散らかりまくっている室内で唯一綺麗に整理されたスペースに並べられた色とりどりのフルボトル達を指さす。
「・・・元々持ってた奴にスタークの野郎がよこしたガトリングと、最近浄化した忍者とタカを加えて・・・・・・」
ラビット、ライオン、ゴリラ、タカ、忍者、ハリネズミの有機物系のフルボトル六本。
タンク、掃除機、ガトリング、ロック、ライトの無機物系のフルボトル五本。
計十一本だ。
「・・・・・・あと九本・・・」
不意に漏れた声が、曖昧な響きで耳朶に触れる。
「・・・ぁ? なんか言った?」
「Never Mind.ただのMonologよ」
どこかデジャヴのあるやり取りを交わしつつ、小難しい顔をする鞠莉の瞳を伺う。
底の知れない深さとドス黒さを感じる、あの瞳。
少なくとも以前は無かった、最近彼女が日本に帰ってきてから見るようになったあの瞳の正体は、何なのか。
「・・・そういやお前さ、なんで戻ってきたんだ?」
「・・・え?」
そこで、少し探りを入れる。
「留学先からだよ。別に戻って来てほしくなかったとか言う訳じゃねーが・・・・・・正直、いくら単位取り終えたからって今の日本に戻ってくる理由が分からん。あっちの方がよっぽど安全だろうに」
出会った当初から何を考えているか分からないという印象はあった。
それは今とて変わりは無いのだが、何かこう、あの時とは異質なものを感じる。
「・・・・・・何か理由でもあんのか」
今の鞠莉はどこかおかしい。
直感がそう告げた。
「・・・理由がなかったら戻ってこないわよ」
そしてそれを確信へと導くように、鞠莉の纏う雰囲気が一変。
戦兎が彼女の腹を探っている事に勘付いてしまったらしい。
「絶対やらなきゃいけないの・・・・・・・・・誰にも邪魔なんてさせない」
警告でもするかのように、底冷えする声音と暗い瞳が戦兎に向けられる。
ふとした瞬間に灯る剣呑な煌きには、激しく、獰猛な、得体の知れない狂気が宿っていた。
(・・・・・・普通じゃねぇ・・・)
一体何が。
何があの破天荒で、能天気で、それでいて純粋な優しさを持っていた鞠莉をここまで変えてしまったのか。
(・・・・・・・・・鞠莉・・・!)
恐怖よりも先に哀愁が湧き上がり、確かな痛みと共に胸を抉った。
暗く、狭い室内で佇む紅い影。
『そーかい・・・・・・ご苦労さん』
電話を介して得た報告に、意識せずとも声が弾む。
自身の計画の進行に確かな愉快を覚え、ブラッドスタークは笑った。
『・・・・・・十一本か・・・・・・いいじゃねーか・・・!』
こちら側で所持しているボトルも何本かある。あと数回ビルドにボトルを浄化させれば、自ずと計画は完遂されるだろう。
そうなれば第一段階はクリア。自然と笑いが漏れるのも無理はない。
『・・・お前もそう思うだろ・・・?』
「んんッ! んんん~~ッ!」
ゆっくりと毒蛇の視線が向けられた先でくぐもった悲鳴を上げる初々しいセーラー服姿の一人の少女。
手足は拘束。口元に張り付けられたテープにより言葉を発する事も許されず、長いワインレッドの髪を揺らしながら釣り目気味の瞳に涙を溜めるその姿は実に不憫で・・・・・・滑稽だ。
『協力してもらうぜェ・・・・・・˝スクールアイドル˝の為になァ・・・』
《デビルスチーム!》
「ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛ッッッッ!!??」
刀身が振り下ろされ、擦り切れるような断末魔が黒霧の中で散華した。
およよ?鞠莉さんだけじゃなくダイヤさんにもbatなsmellが………この世界線の彼女達は何か重いものを背負っているようですね(他人事)
ダイヤさんママの喋り方は独断と偏見で決めましたのでご了承を
そんな三年生達の空気が不穏になる一方でスタークは平常運転なようで
どうせこれからもバンバンデビルスチームしていくんでしょう()
それでは次回で!(余談)新しいウルトラマンカッコよくね?タロウの息子って!