「これが…魔法…」
「来ます!」
「…ってこの後どうするの!?」
まだ起動をしただけで使い方が分からない。跳び掛かってくる化け物をどうにかかわすが思わず目で追った先で
「…ぐっ…」
〈―protection.〉
機械音声と共に展開した桜色の障壁が化け物を受け止め、化け物が道路や電柱を破壊しつつ周囲に四散するがすぐひとつに集まり始める。ひやりとしつつこの隙に距離をとりながらフェレットから説明を聞く。
「基本的な攻撃や防御はイメージだけで扱えます!ですがあの思念体を止めるには封印を行う必要があるんです!」
「その封印ってのは?!」
「高度な魔法を行うための呪文が必要です!心を澄ませて、貴女の呪文が浮かぶはずです!」
眼を瞑り痛みを無視して意識を集中すると胸に熱を感じた。仄かな鼓動がレイジングハートと共鳴する。
「リリカルマジカル!」
〈sealing mode.set up.〉
呼応した杖が
「ジュエルシード シリアル21、封印!」
〈sealing.〉
もがく思念体はそのまま桜色の帯に貫き、絡めとられて断末魔の唸りとともに霧散する。後には破壊された路面と青い宝石のようなものが一つ残されていた。
「…ふぅ」
「これがジュエルシードです。レイジングハートで触れれば回収できます。」
指示通りレイジングハートを近づけるとジュエルシードを引きよせ格納した。そのあと、役目は終わりとばかりにバリアジャケットが解除され服とデバイスが元に戻る。
「これで…終わり、かな」
「はい、あなたのおかげで…ありがとう…」
「えっちょ、ちょっと!」
糸が切れたように倒れ伏すフェレットに焦るが特に危険な状態ではないようだ。頭の痛みも和らいできた。そうこうしているうちに遠くからサイレンが聞こえてくる。この瓦礫の散らばる惨状で見つかるといろいろと面倒なのでフェレットを回収して素早くこの場を後にした。
「じゃあ改めて、私は高町なのは。皆にはなのはって呼ばれてるよ。」
「僕はユーノ・スクライア。スクライアが部族名で、ユーノが名前です。」
現場から離れた公園で目が覚めた
「やあ、なのは。お早いお帰りだな?」
「…ただいまお兄ちゃん」
*
結局兄に捕まり無断外出を咎められ、姉の仲裁が入ったり可愛い物に目がない母がユーノを見て暴走したりしてそのまま一夜が明けてしまった。
目覚ましを二つセットしどうにか目覚め、学校の片手間に念話――所謂テレパシーで色々と説明を受けている。ジュエルシードはユーノの世界で発見された古代遺産であり、遺跡発掘を仕事にしていたユーノがそれを発見。当局に保管依頼をして移送をしている最中に運んでいた時空間船が爆発事故を起こし、その際に全部で21個あるジュエルシードがこちらの世界に散らばってしまったらしい。ジュエルシードは願いを歪めて叶える半端な願望器のうえ長期にわたって放置すれば昨日のような暴走もありうるという。そんな危険な遺産を発見してしまった責任を感じてひとりで捜索に訪れたが、昨夜回収したひとつを合わせてもまだ2つしか見つかっていない。魔力が回復するまで休ませてもらったら、またひとりでジュエルシード探しに出る…と言うユーノに改めて協力を申し出たところだ。
『でも、昨日みたいに危険なこともあるんだ』
『それこそ一人でなんて行かせられないよ、私なら手伝えるでしょう?』
『そりゃあ…なのはの才能は目を見張るものがあるけど…でも、だからって』
『お父さんがね、困っている人がいて助けてあげられる力が自分にあるなら、そのときは迷っちゃいけないって。それにほら、そういうのは慣れてるから』
『慣れ?…うん、わかった、ありがとう』
放課後となり、アリサとすずかとも別れる。
『それじゃもうすぐ家につくから…っ!』
『今の感じ、新しいジュエルシードだ!』
妙な感覚を覚える。ジュエルシード発動の魔力の余波だ。
「原生生物を取り込んでいる…実態がある分手ごわくなっているはず!」
「大丈夫…だと思う」
四足の獣のような、おそらくは犬か何かを取り込んだであろう思念体は唸り声をあげこちらを睨んでいる。が、どういうわけか対面しても昨日ほど頭痛がひどくはない。手早くレイジングハートを起動し、構える。
「えっと、封印すればいいんだよね?いくよレイジングハート」
〈all right.sealing mode.set up.〉
突進してくる思念体を後ろへ跳んでかわし、階段を少し降りたところへ着地する。そのまま思念体が体制を整える前にレイジングハートを向けて呪文を唱える。当然視線はそちらを向き鈍い痛みが走るが無視する。
「リリカルマジカル。ジュエルシード、シリアル16。封印!」
〈sealing. receipt number XVI.〉
「よし、これでいいかな?」
「うん…これ以上無いくらいに」
ジュエルシードは無事封印され、元となった犬とその飼い主は多少混乱しつつも帰って行った。その様子を隠れて見送り、ユーノが改めて言う。
「なのは、本当にありがとう。これからよろしく」
「こちらこそ、よろしくね」
色々と考えることはありそうだが、ひとまずこれから、がんばろう。