「ジュエルシード、シリアル20。封印!」
〈sealing.〉
夜の校舎には場違いに思える光を発し、封印を終える。たった今封印したのはプレーンな思念体。あれから何度かジュエルシードを回収し、ジュエルシード探しにも大分慣れてきた。が、相変わらず頭痛がひどい。何もなくとも痛むことは前から有ったが思念体と相対すると普段の比ではなくなるのだ。
「お疲れさま、なのは」
「ふぅ…ねえユーノ君、普段の思念体とこの前の犬型の思念体の違いってなにかな?」
「違い?うーん、前にも言ったけれど実体の有無じゃないかな。初めから
なるほど二度目に戦った犬を素体とした思念体の時には他の時よりは痛みが弱かった。ということは実体の有る無しが関係しているのだろうか?いや、それよりも――
「急にどうしたの?そりゃあ封印するにあたって情報は多い方がいいとは思うけど」
「えっと、まあそんな感じ…」
いずれ必要になるかも知れないが、
*
私の眼は少々特殊だ。モノには黒い
これらが視えるようになったのは、今よりもっと小さかった頃にあった事故の時。横断歩道を渡っていたら信号を無視した車輌が突っ込んできた、という有りがちで何てことのない事故。当然、今に輪をかけて幼かった私は、速度の出たトラックにゴム毬のように弾き飛ばされて路面に叩きつけられた。
その場にいた人が救急への連絡はしてくれたようで暫く生死の狭間をさ迷いつつも一命を取り留めたが、目が覚めたのはそれから数ヶ月が経ってからだった。
目覚めた私は視界に映る
強迫観念にも似た「良い子」で居ようとする想いを持っていた私は
そんなことがあって以来、まっすぐにモノを見ることが苦手になった。なにせそこに視える
我ながらよくやったと思うが周囲には視界不良として誤魔化しつつ、隙を見ては異常な視界についての実験を行い理解を深めた。結果、わかったことと言えば対象に集中すると
結局視えているモノの性質はある程度分かったものの、それをどうすれば視えなくする事ができるのかは分からなかった。私にできるのはなるべく視線を逸らして
*
アリサとすずかと共に、父がオーナー兼コーチを勤めるサッカーチームの試合の応援を終え、家に帰ってきた。そこへ一緒についてきていたユーノが声をかける。
「応援の最中もなんだかぼーっとしてたし、少し休んだ方がいいんじゃない?」
「あー…うん、そうしようかな」
朝からどこか上の空だったなのはを見て、日々のジュエルシード回収の疲れがたまっているのだとあたりを付けたのだろう言葉がかけられる。実際は昨日気づきかけた眼の謎について考えていただけなのだが思索を深める口実として受け取る。
(思い返すと建物とか家具なんかは線しか視えないけど、人や動物には点も視えるんだよね…)
そんなことをつらつらと考えているとふと魔力の反応を感じた。
「なのは!ジュエルシードだ!」
「―っ!」
適当に父に声をかけつつ家を飛び出す。魔力を感じる方へと走りながら嫌な予感と共に昼間の一場面を思い出す。試合も終わり選手の一人とマネージャーの少女が談笑していた時に一瞬だけ感じたジュエルシードの気配。その時は気のせいと流してしまったが…もしかするとアレがそうだったのかもしれない。そうであるなら、と走る速度をあげるとすぐに街の様子は見えてきた。
「な…何これ…」
街には見たこともないような巨大な樹木が現れていた。市街は大樹に侵食され、アスファルトはひび割れ建物は枝や根に巻き込まれている。
「酷い…こんな被害が…」
「…人間が発動させてしまったんだ。強い思いを持った人間が発動させた時、ジュエルシードは一番強い力を発揮するから」
――ならば、それはやはりあの時に感じたモノか。
「…ねえ、こういう時ってどうすれば良いの?」
「え…あぁ、先ずは元を探さないと。ジュエルシードに近付かなくちゃ封印出来ないから。でもこうも広がってしまうと…」
「元を、見つければいいんだね」
言うが早いかバリアジャケットを展開し、レイジングハートに広域探知を指示する。見つけるのは簡単だ。おそらく純粋な生物ではないだろう大樹に埋め尽くされた視界は
「見つ、けた。すぐにおさえる!」
「ここからじゃあ無理だよ、もっと近くにいかなきゃ」
「…大丈夫、」
眼を凝らし、刺すような痛みを無視して
「レイジングハート!」
〈blade Mode.Set up.〉
長すぎたためかろくに固定もされていない魔力刃がしかし素早く伸長し、大樹の一際太い幹に視える
「視えた――」
とん、と音が聞こえそうな程軽く刃が埋まり、その瞬間街中に広がった樹が消滅した。それを見届け、眼を閉じて熱を持った脳を落ちつける。脚から力が抜け座り込み自然と俯く。
「な、なのは?今のは一体………なのは?」
「…気付いてたのに、これじゃあ…」
「…なのはは良くやってくれてるよ。今回だって僕一人じゃこれより酷くなっていたかも知れないし…」
破壊された街並み、幸い数は居ない様だが出てしまった怪我人。気づけていたにも関わらず止められなかった被害。これは、自分の責任だ。ユーノの「手伝い」としてしか認識していなかった甘えが起きなくて済んだはずの災害を発生させてしまった。
(ユーノ君の「手伝い」じゃあなくて…これは私が始めたことなんだ。だったら、もっと私の全力で!)
もう、こんなことは起こさせない。始まりは巻き込まれたのだとしても、そこへ飛び込んだのは自分の意思だ。なら、最後まで責任は持つべきだろう。何より、守れたはずの平和を乱すのは本意じゃあない。
ジュエルシードの発動元には意識を取り戻した様子の男女がいた。怪我をしたのか、マネージャーの肩を借りて歩く少年の姿を遠目に見ながら、もうこんなことは繰り返させないと決意を新たにした。
インフル後モチベーションが下がっていたので遅れました。